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視察先

妖精女王のお陰でてん君が側に居てくれる様になり…

『たえ あさ 起きる』


久しぶりにてん君を抱っこして眠り超熟睡のフルチャージ。気持ちよく目覚めてん君にキスをする。

てん君も機嫌がよく足取り軽く寝室の扉に向かい…


『あっ!ダメ!』


私の(思念の)叫び声に固まるてん君。危なかった… てん君は昨日妖精女王(エル)のお陰で実体を維持できる様になったところで、部屋付きの侍女さんはまだてん君の存在を知らない。扉を開けていきなり水色のもふもふがいたら絶叫ものだ。てん君にそう説明をすると悪い顔をして


『マリカ みたい こしぬかす?』

『てん君ダメだからね!』


私の真剣な顔に尻尾を下げてベッドに戻ってきた。とりあえず私が先に部屋に行き侍女さんにてん君の存在を明かす。


「!」


侍女さんは目を輝かせてん君をガン見し手がムズムズしている。分かるよ。てん君のもふもふは一級品だからね。

てん君の紹介を終えて朝食を食べていると文官さんが部屋に来た。


「えっと…要件は…」

「視察のスケジュールの件だと仰っておいでです」


視察の件と言われたら断れないじゃん。仕方なくライアン様の面会を受ける事になった。昨日の話を聞き正直会いたく無い。でも視察(仕事)だと言われたら断れない。溜息を吐き朝食を早く済ましお迎えの準備をする。


「合図いただければ、いつでも割って入り追い返しますので」


そう言い心配そうにスコットさんが様子を窺ってくる。大丈夫だと告げライアン様の訪問を待つ。普段は来客時は騎士さんは同席はしない。しかしハイド様の事もあり皆さん警戒中。何度目かの溜息をついた時に先触れが来て戦闘態勢…もといお迎え準備をする。


「おはようございます。朝から貴女にお会いでき幸せです」

「おはようございます。えっと…どうぞ」


朝から甘い雰囲気を醸しだすライアン様を躱し席を勧める。お茶が出され侍女さんが下がると、ライアン様は部屋の隅に控える騎士さん達をみて片眉を上げ、優雅にお茶を召し上がる。そして微笑み社交辞令を炸裂させる。甘い言葉に背中がむず痒くなってきた。我慢の限界が来て


「ライアン様。今日は視察のスケジュールについてお話があると聞きましたが」

「申し訳ない。貴女を目の前にすると口説きたくなるのです」

「とりあえず要件を先にお聞きします」


そう言い塩対応するがさらに甘さを増すライアン様。ふと部屋の隅に目が向くと、一歩前に出て鋭い視線をライアン様に向ける騎士さん達。過保護ぶりに苦笑いするとライアン様はやっと本題に入り


「ビルス殿下より労働協定の話し合いの間は、遠方への視察は止めてほいしと連絡があり、多恵様がお望みの穀物の生産地への視察は早くても一月程後となります」


そう。まだ労働協定の話し合いは続いており、会議中に揉めたり問題が出た時に私の意見が必要になるらしく、暫くの間は遠出しないで欲しいようだ。

お米の産地はバスグル国内でも王都から一番遠く馬車で10日もかかる。行ってしまうと約1ヶ月は戻ってこれない。


「分かりました。スケジュールに関してはモーブルの責任者の方と相談しお決めください」


馬車の移動時間がいまいち分からない私が決めるより、クレイさんに任せた方がいい。


「では明日から2日の予定で、織物産地のニーシジ領へ視察とさせていただきます」


こうして視察の予定も決まりお茶を飲み一息つく。ふと思い立ちライアン様も同行するのか聞くと


「あなたの身に何かあるといけない。勿論同行いたしますよ」

「騎士さんが付いてくれるし、聖獣もいますから」

「?」


聖獣と聞き首を傾げるライアン様。するとてん君が呼んで欲しいと話しかけて来た。でも先に


「女神リリスが私を守る為に聖獣を付けて下さいました。だからご心配いただかなくても大丈夫です」

「ですがリリスの箱庭を離れると実体を維持できないとお聞きしておりますが?」


驚かないで下さいと先に言いてん君を呼ぶ。突然現れたてん君に驚いたライアン様は、てん君の前に膝をついて丁寧な挨拶をした。挨拶を受けるてん君は無表情でライアン様を見ている。そして私を見て


『こいつ かしこい でも うさんくさい』


そう言い私の足元に来て前脚で私の足を叩く。それを見たライアン様はてん君が照れてると勘違いし、てん君を撫でようとした。途端に牙を剥きライアン様を威嚇するてん君。慌てててん君を抱き上げ


「すみません。彼は気を許した人しか触らせないので…」

「私の方こそ聖獣殿の許可もなく、触れようとした事お詫びいたします」


そう言い胸に手を当て謝罪された。気不味くなると文官さんがライアン様を呼びに来て戻って行った。

大きな溜息をつくとてん君が、すりすりしてくれ癒される。


明日の予定が決まり騎士の皆さんは慌ただしく明日の準備を始めた。私は今日は予定は無く明日行くニーシジ領に関する本を探しに書物庫に向かう。

王城の書物庫だけあり所蔵している本は多く心踊る。司書さんにニーシジ領に関する本を教えてもらい、他にバスグルの歴史の本を借りて部屋に戻る。


交代したモーブルの騎士さん達が部屋に来た。スコットさんからライアン様との面会を聞き


「明日のニーシジ領の視察はアルディアとレッグロッドの騎士6名が同行いたしたます。我々はクレイ殿文官に何かあった時の為に、城内で待機する必要があり同行できません」


何かあるわけでは無いが、不測の事態に対応する為に仕方ないそうだ。リチャードさんは父親モードで視察中の注意事項を話す。大丈夫だと笑うと


「お忘れですか?何度も危険な目にあっている事を!」


余計な事を言いリチャードさんの説教が始まり、みかねたケイスさんの助け船でやっと解放されたのだった。


お読みいただき、ありがとうございます。

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