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時の刻み

バスグル城2日目。今日の予定は?

バスグル城2日目の朝。

身支度をし朝食をいただいていると誰か部屋に来たようだ。


「お食事中失礼いたします。王弟殿下の使いが参り午前中にお時間をいただきたいとの事。如何なさいますか」

「特に予定も約束も無いのでお受けすると伝えてください」


こうして王弟殿下とお会いする事が決まった。時間は決めず私に合わせてくれるそうだ。早く行って早く帰って来たくて、5刻に王弟殿下の執務室に向かう。

ここバスグルとリリスの箱庭は時の刻み方違う。リリスの箱庭は元の世界の3時間が1刻で、アリアの箱庭は2時間で1刻なのだ。昨晩時計の表示が異なる事に気付き侍女さんに教えてもらった。慣れるまで少しかかりそう。

身なりを整えケイスさんに先触れをお願いしハイド様の執務室へ向かう。いつも通り専属の騎士さんがエスコートしてくれ、バスグルの騎士さんが案内をしてくれる。城内はとても入り組んでいて私一人なら迷子になる自信がある。護衛してくれるリリスの騎士さん達も覚える為に注意深く順路を確認している。目新しくてきょろきょろしていたらリチャードさんが


「大丈夫ですか?」

「はい。皆さん友好的で多分?大丈夫です」


そうバスグル城のお仕えする人々は礼儀正しく物静かな印象がある。だが今までも一部の人からは敵意を向けられたので注意はしている。私は神や仏では無いから、万人に好かれるとは思っていない。

そんな事を考えていたらハイド様の執務室に着いた。


「(城で)不便はございませんか?」

「はい。皆さんに良くしていただいています」


軽くハグをしたハイド様が手を取りソファーに案内してくれる。そして少し遅れてライアン様が来た。


「今日お目通りをお願いしたのは、滞在中のスケジュールをお話したくお越しいただきました。昨日お聞きした穀物ですが生産地はバスグルでも奥地にあり、スケジュールの調整が必要ですのでお時間をいただきたい」

「我儘言ってすみませんが、よろしくお願いいたします」


いつになるか分からないがお米の生産地に行ける事になりテンションが上がる。そしてハイド様から受け取った資料を見ながらスケジュールの確認。一頻話が終わると何故か人払いをするハイド様。

同席したリチャードさんとアッシュさんの表情が曇る。そして視線で指示を仰ぐ2人。少し考えて…


「何をお話になりたいのかは分かりませんが先に一言言わせてください」


そう言いハイド様に私はリリスの乙女であり、過度な期待は抱かないで欲しい事を伝えた。ハイド様は飄々とした顔で分かっていると言い、座り直し再度人払いを求めた。

少し不安だが応じるとライアン様がリチャードさんとアッシュさんを部屋の外に出し、少し扉を開けてソファーに戻って来た。護衛が席を外し緊張しているとライアン様が微笑みを向ける。

そしてお茶を一口飲んだハイド様は足を組みかえて徐に


「乙女様はリリスの願いでリリスの箱庭から伴侶をお迎えになるとお聞きしています」


ハイド様の話を聞き心の中で『来たー!』と叫ぶ。きっとバスグルでも夫を迎えて欲しいと言うのだと思い断る準備をしていたら…


「確か婚約された男性が3人いると聞き及んでおります」

「はい。ですからこれ以上は…」


断る気満々で前のめりにそう言うとハイド様は微笑み


「私はまどろっこしいのは好かない。だから結果から話しましょう」

「!」


ハイド様の言葉に固まる私。予想していたのと真逆の話に脳がショートした。ハイド様は話しを続けるが、かなりの衝撃にカップを持ったまま固まる私。その様子に気付いたライアン様が隣に来て、私の手からカップを取りテーブルに置いた。そして許可も無く私の頬に口付けやっと頭が動き出した。


「ちょっと!何するんですか!」

「意識が遠くへ行っておいでなのでショック療法を…」


ライアン様は悪びれる事も無くそう言い微笑んだ。慌てて立上り席を移動し鋭い視線を向けるハイド様に視線を合わせ


「急な事で直ぐに返事する事は出来ません。それに私が決める事ではありません」

「何故です。乙女の貴女が許可すれば皆従うでしょう」

「人の想いは誰かに指示されて決めるものではありません」


高圧的な物言いに頭に来た私は自分でも驚くほど大きな声で


「リチャードさん!アッシュさん!」


直ぐに突入した2人が私の前に立ち守ってくれる。すると立ち上がったハイド様は騎士さんの壁に隠れた私に諭す様に


「この話はバスグルだけでなく、アルディアにとってもいい話。きっとルーク陛下は前向きにお考えになるでしょう。家臣であるファーブス公も反対はしないはずです。後は貴女のお心一つだ」

「…」


何も言えずに黙り込むと


「多恵様はお疲れの様です。失礼させていただきたい」


背後で声がして振り返るといつも温厚なケイスさんが険しい顔をし、私を抱き上げ退室の挨拶をし扉に向かう。こうして殺気だったモーブル騎士さん3人に囲まれハイド様の執務室を後にした。 

お読みいただき、ありがとうございます。

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