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指示書

王族の方々との顔合わせも終わり、やっと滞在する部屋に向かう事になり…

「はぁ…」


大きな溜息をつくとリチャードさんが背を支えてくれる。慣れない場所に初めて会う人達。緊張の連続で背中がカチカチに固まってしまい、少しでも動かすと変な音が鳴りそうだ。そんな私を心配しリチャードさんが支えてくれる。


「晩餐までお時間が少しあります故、ゆっくりお休みください」

「はい。そうさせてもらいます」


王族の方々との挨拶を終え滞在する部屋に移動中。案内役の女官さんの後を付いて歩くが、皆さん背が高くゆっくり歩いてくれても私には早い。少し額に汗が滲み出した所で


「すまぬがもう少しゆっくり案内でないか?」

「!」


歩みが遅くなってきた私に気付いたスコットさんが、先導する女官さんにそう言うと、振り返った女官さんは驚いた顔をした。そりゃそうだろう。皆さん170センチ越えの長身でコンパスが長い。私に合わせてゆっくり歩いているつもりでいたのだろう。


『彼女は私がこんなにとろいなんて思わなかったのだろう』


慌ててドレスの裾を持ち早歩きしようとしたら…


「!」


あっという間にアッシュさんに抱っこされてしまった。まるで歩き疲れて父親に抱っこされる幼稚園児だ。後ろでレッグロッドの騎士さん達は驚いた顔をし、デュークさんはスコットさんに何か話している。デュークさんの話を聞いたレッグロッドの騎士さん達は察した顔をしている。その顔を見て嫌な予感かするのは気のせいだろうか…


戸惑いながら案内を再開する女官さんに小さい声で謝る私だった。 


やっと滞在する部屋につき部屋付き侍女さんに手伝ってもらい湯浴みをする。湯船には薬湯?ハーブ湯?変わった香りの湯が張ってある。ゆっくり浸かると発汗し身体中の毛穴から疲れが流れていくようだ。

凄い発汗にのぼせない様に早めに上がると、侍女さん達がマッサージをしてくれ9割回復した。発汗したからかマッサージのお陰か分からないが、肌がツルツルになり気持ちいい。


一息つくとあっという間に晩餐の時間になり、侍女さんに手伝ってもらいドレスに着替える。今回はリリスの箱庭から侍女さんは同行していない。お世話になるバスグルの侍女さんは私の好みを知らないから、どんな仕上がりになるか不安だ。でも自分から伝える勇気もなくお任せすると…


「へ?」


姿見に映る私はいつものシンプルで飾りの少ないドレスと、控えめな装飾品に薄めのメイク。いつもの装いの私に驚く。すると不安気に侍女さんが問題無いか聞いていた。


「私好みにしていただき、ありがとうございます」

「モーブルから多恵様のお世話に関する指示書をいただいており、私はその指示に従ったまででございます」

「そーなの?」


どうやらアイリスさん達がバスグルでお世話をする人に宛てて、色々申し送りをしたため荷物に忍ばせていたようだ。彼女らの気遣いのお陰で気苦労が一つ減った。心で感謝しつつお世話してくれた侍女さんにもお礼を言う。


「多恵様。お迎えに参りました」

「はぁーい。どーぞ」


お迎えが来たようで返事をするとライアンさんが入室。てっきりエスコートはビルス殿下だと思っていたので驚く。間抜けな顔をしていたら微笑みを湛え、正装したライアンさんが目の前に来て手を取ると


「美しい貴女をエスコート出来る事に歓喜しております」

「えっと…ありがとうございます?」


彼の距離のつめ方が苦手でへっぴり腰の私。思わず部屋の隅に待機するリチャードさんに視線を送ると、リチャードさんは困った顔をしている。恐らくリチャードさん達も事前に知らされていない様だ。だがライアンさんの立場的に断る事が出来ないみたい。

仕方なくリチャードさんに苦笑いをし頷くと、リチャードさん達は騎士の礼をした。


こうしてライアンさんにエスコートされ晩餐会の会場へ。道すがらライアンさんはバスグル情報をいろいろ教えてくれる。観光地は多くは無いが歴史ある建造物が多く、視察が少し楽しみになって来た。

少しライアンさんのエスコートに慣れた頃、行く先に4人の令嬢がいるのが見えた。横まで来ると令嬢達は秋波をライアンさんに送り、端に寄り綺麗なカーテシーをし頭を下げた。

私も横を過ぎる時に軽く会釈すると、小さい声で私を蔑む声がした。反対側にいる私ですら聞こえたのにライアンさん反応はない。別に令嬢達の揶揄は気にしないが、バスグル的に国賓が蔑まれたら叱責するべきじゃないの? ライアンさんの対応に困惑すると


「其方達は国賓に向かいその様な発言をしていいと思っておるか⁉︎」


背後で声がし振り向くとビルス殿下が令嬢の前に立ち、低く怒りを含んだ声で叱責していた。


「いえ…私共はその様なつもりでは…」


揶揄した令嬢達に剣に手を掛けた護衛騎士さん達の殺気も相まって、令嬢達の顔色は無くなりシクシクと泣き出した。


『あ…前にもこんな事あったなぁ…』


ぼんやりそんな事を考えていたら、ビルス殿下とライアンさんが険悪な雰囲気になり、間に挟まれた私は固まりどうしていいか分からない。


「ライアン。側の者も聞こえたくらいだ。其方にの耳にも(揶揄は)届いていたはず。何故彼女らを咎めない」

()()()()私の耳に届いていればただでは済まさない。しかしあの時私は多恵様に視察の話をしていて、本当に耳に入らなかったのです」


ちょっと白々しい言い訳に呆れていると、遠くからグリード殿下が走ってくるのが見えた。チャンスだと思いライアンさんのホールドから逃れようとするが、がっつり腰を抱かれ逃げれない。付き添う護衛騎士さん達も困った顔をしている。


「皆待っているのだぞ。ここで何をしている!」


グリード殿下登場で終息すると思ったが、グリード殿下の言葉にも反応しないライアンさん。そしてその態度にビルス殿下の怒りが再発しカオスな状況に。ぐだぐだなってきて苛ついて思わず


「一言いいですか⁈」

「「「?」」」

「バスグルの男性は女性をいつまで待たせるつもりですが!」


そう陰口を言った令嬢達と私を放置しいがみ合っている。泣いていた令嬢達も泣き止み唖然とし、私もいい加減我慢の限界だ。

私の言葉を聞き顔を見たグリード殿下が顔を青くし、胸に手を当て深々と頭を下げた。そして令嬢達に下がるように言い、ライアンさんの手から私の手を取った。そして二人に後で話し合いの場を設けると言いエスコートを始めた。


機嫌の悪い私に謝罪をするグリード殿下。そして言い訳がましいと前置きし


「バスグル王家は一枚岩では無いのです」


発言に驚きグリード殿下の顔を見て思わず


「あ…ご察しいたします…」

「やはり貴女は聡いお方だ」


どこの国でも多かれ少なかれ揉め事はあるものだ。気不味そうなグリード殿下のエスコートを受けながら、()()()()()()に巻き込まれ無い事を願った。



お読みいただき、ありがとうございます。

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