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バスグル王

バスグル王と対面するが、全く事前情報が無く緊張しながら謁見の間に着き…

『女神リリスの乙女 多恵様のご入場でございます』

「!」


謁見の間の重厚な扉が開き文官の大きな声が響き思わず強張る。すると顔を寄せたビルス殿下が声をかけてくれ緊張が少し和らぐ。だって他の3国でも謁見の儀は体験したが、入場時にあんな大きな声で入場なんてした事が無い。【しれっと入って、こそっと定位置に】だったから驚いてしまった。


緊張しながらホールの中央に着くと、ビルス殿下は上座のビビアン王女の横へ移動した。そしてまたあの文官がバスグル王の入場を大きな声で告げる。すると謁見の間の奥の扉が開き、バスグル王が入場し皆一斉に頭を下げる。そして


「貴女がリリスの乙女殿か。遠路はるばるこのバスグルの地までお越しくださった。国を挙げて歓迎する」


王の発言を機に皆頭を上げる。目に入って来たのはビルス殿下そっくりのバスグル王。いや…ビルス殿下より線が細く、少し神経質そうに見える。そんな事をぼんやり考えていたら、私の少し後ろに控えるクレイさんが咳払いの後に、モーブル代表として挨拶を始めた。驚いて振り返ると文官さん達が苦笑いをしている。そう実はバスグル王へのご挨拶は初めに私がしてその後にクレイさんが公式なご挨拶をする予定だった。しかしぼんやりして使いものにならないと判断したクレイさんがら先に公式な挨拶をしてくれたのだ。小難しい挨拶を聞きながら少し俯いて反省。挽回のチャンスを窺っていると


「多恵様…」


クレイさんの挨拶が終わり私に振ってくれた。クレイさんに頷いてから、真っ直ぐにバスグル王を見て


「お初にお目にかかります。川原多恵と申します。バスグルとモーブルの両国の発展と友好のお手伝いをさせていただきます。ご存知の通り私はこの世界の者ではありません。無作法ゆえにご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い致します」


そう言いお辞儀した。日本流の挨拶に一瞬どよめきが起きたが、陛下や王族の方々は微笑みを向けてくれる。後でビビアン王女から聞いたが、私に関しては事前にビルス殿下から聞いていたようだ。


『ですから多恵様の奇行は誰も驚かないので、ご安心下さいませ』


とビビアン王女。いや…そこまで非常識では無いと思うんだけど、事前に話してくれていた事には感謝した。

挨拶を終えると公式な謁見は終わり、別室に移動し陛下及び王族の方々と会談する事になった。またビルス殿下にエスコートされ大広間に移動。暫く歩くと


「アダムが余計な事をしたと報告を受けています。申し訳ございません」

「えっ?あっいえ」


突然で驚くと真面目な顔をした殿下は、私的(プライベート)な事だから忘れて欲しいと言う。私も人の恋愛に首を突っ込む気は無い。でもなんて返していいから分からず苦笑いすると


「聖人様の弔いが終わり、この国の再建の目処が立てば、私はやっと肩の荷を下ろせる。それに多恵様には十分過ぎるほど助けていただき感謝しております。ですから」


ビルス殿下はそう言い再度アダムさんが話した事は気にしないようにと話した。気不味くなり困っていると、大広間に着いてほっとする。


部屋には陛下と王族の皆さんがお揃いだ。上座の席に案内され着席するとお茶が出され人払いされる。そして陛下からの王妃様そして王弟殿下を紹介された。陛下は立ち上がり深々と頭を下げ再度謝罪された。謝罪は王族派のラグズル元公爵子息が私に一服盛り懐柔しようとした事や不法就労に対してだ。


「リリスがお呼びした乙女のお手を煩わせた上に、害する者が出た事は遺憾である。エルバスに手を貸した者に関しては厳しい罰を与えた。側には信頼をおける者を付けた故、安心して欲しい」


非公式な場になり陛下の口調は穏やかで話し易い。少し緊張が解け人見知りも引っ込んで、やっとお茶を飲む余裕も出てきた。この後は明日以降の予定の確認するようだ。お茶飲みほっこりしたところで陛下が


「ビルスから聞きましたが、聖人正清様と乙女様は同郷であると。我々はこれで正清様をご供養ができると喜んでおります」

「あ…それについては後ほどお時間をいただきたいです」


陛下がいう供養では無く国民の幸福度を上げる事が必要。これについてはじっくり話したいからまた別の機会に


「陛下。発言許可を」


声の主に視線を送ると陛下に似た大柄の男性。確か王弟殿下のハイド様だ。陛下は少し考え鋭い視線ハイド様に送る。なんとも言えない間の後に許可された。そして立ち上がったハイド様は胸に手を当てて礼をし、徐に扉まで歩いて行き扉を開いた。

すると青年が一人入室しハイド様と一緒に私の元に歩いて来た。


「!」


部屋の隅にいたデュークさんとスコットさんが駆け寄り私の前に壁をつくった。大きな壁に視界を塞がれ状況が分からない。


「騎士殿。これは私の息子だ。乙女様に紹介したいだけで害する気は無い」

『息子の紹介?なんで?』


疑問に思っていると同席しているグリード殿下が、騎士の2人に後ろに下がるように命じた。アルディアとレッグロッドの騎士である2人はモーブルの王弟の命に従う義務は無い。しかし相手は王族で困っている。だから


「お二人共ありがとう。大丈夫です。ご挨拶お受けします」


そう言い立ち上がり二人の背中を軽く叩いた。二人は騎士の礼をし私の後ろに移動し、ハイド様とご子息に睨みを効かす。そして真ん前に背の高いハイド様とご子息。視線が上で見上げるとご子息を目が合う。


「乙女様に息子をご紹介させていただきたい。ライアンご挨拶を」


ハイド様のご子息ライアン様。20代前半のメガネをかけた美丈夫。グレーの瞳が印象的で少し神経質そうに見える。ハイド様が息子を紹介する意図が見えず警戒すると、ハイド様が


「バスグルに滞在中。ぜひ案内役にお側に置いていただきたい」


ハイド様はそう言いライアン様を推す。予想していない展開に戸惑っていると


「労働協定に関してはグリード殿下とモーブルの文官がバスグル側と話し合い、会議に出席されない乙女様はバスグルを視察される事になるでしょう。そうなると案内役が必要になる筈です」

「確かに…」


そう。労働協定に関してはほぼ出来上がっていて、後はバスグル王への説明と決済のみ。だから正直私は会議に必要無く、オブザーバー的な立場なのだ。

だから話合いの間は、他にできる事がないのでバスグル国内を視察するつもりだった。


『確かに案内役は必要だなぁ…』


少し困った顔をしたスコットさんが、案内なら文官で十分だと食い下がる。しかしハイド様は役人をよく思っていない地方住民も多く、王族に連なる者を同行させた方が安心だと力説。

ハイド様の圧が強くデュークさんに肩を掴まれ、スコットさんは引き下がった。そしてデュークさんは私に視線を送る。


『結局私が決めろって事ね』


断るのも面倒になりハイド様の提案を受け入れる事にした。でもこの提案がトラブルを呼ぶなんてこの時は知らずにいた。

お読みいただき、ありがとうございます。

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