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ランチのお誘い

お昼前に何かを伝えに来たクレイさんに嫌な予感がする多恵だが…

「あ…昼食(ランチ)のお誘いですよね」

「え?あっそれもあるのですが…」


てっきりサキーダ小公爵様からの昼食のお誘いだと思い込んでいた私とクレイさんは話が噛み合わない。結果から言うと昼食(ランチ)のお誘いはモナちゃん達からで、サキーダ小公爵様からはご挨拶を申し込まれているとの事。先走りの勘違い女でした。モナちゃん達とのランチは嬉しく即OKした。本来平民と貴族が同じテーブルに着く事はない。

しかし私が船旅で暇を持て余した時に、バスグルガールズが話し相手にってくれた事から、護衛責任者のリチャードさんが許可してくれ同席が叶った訳だ。


「護衛騎士からバスグルのレディ達の部屋で食事をされた方が喜ばれると聞き、バスクル人が滞在する部屋の方に昼食を用意させました」

「はい。ありがとうございます」


きっと食事も皆さんと同じものだろうから、畏まったものではないはず。楽しみで顔が綻ぶ。機嫌のいい私にクレイさんが申し訳なさそうに


「あの…サキーダ小公爵閣下のご挨拶は…」

「はい。挨拶だけならお受けしますよ。それに色々お願いされても断るので安心して下さい」


胸を張ってそう言うと同席していたリチャードさんとデュークさんが苦笑いをして首を振った。眉を顰めながら


「今の反応は何ですか」


拗ねてそう言うとデュークさんが


「多恵様は人がいい…いや慈悲深いので情に訴えられると断る事が出来ないのです。そこが心配でなりません」

「ユグラスは押しの強い者が多い。注意しなければ押し切られますよ」


リチャードさんが食い気味にそう言い心配だという。でも断ったら失礼だよね。あまり深く考えて無い私は大丈夫だと言いご挨拶を受ける事にした。


こうして機嫌よくモナちゃん達の元に向かう。船底の一番大きな部屋に着くと、食事の用意がされていいた。そしていつも気楽に迎えてくれるバスグルガールズが緊張した面持ちで待っている。その中にモナちゃんを見つけて駆け寄ると


「たえちゃんと食事のお誘いをしてけど、こんな大事になるなんて思って無くて…なんかごめん…」

「?」


そう言いモナちゃんがテーブルに視線を移した。そこにはいつも私が食べている食事と、明らかに平民の軽食が並んで配膳されている。意味不明な状況に固まると給仕の責任者がきて説明を始めた。てっきりバスグルガールズと同じものを食べるのだと思っていたら、話を聞きつけた船長が反対したらしい。かと言って沢山いるバスクル人に貴族向けの食事を用意する訳にいかず、この様な奇妙なメニューになってしまったようだ。メニューを確認すると…


パンは私が大好きなクロワッサン。スープはバスクルではお袋の味とされている芋のポタージュ。サラダは無くスティック野菜とクリームチーズのディップ。そしてメインはバスグルでよく食べられるチキンのグリル。デザートは今旬のリンゴに似た果物だ。

一緒に食べるバスクルガールズは見た事も無いパンとおしゃれなサラダに目が釘付け。これは早く食べた方がいい様だ。気遣い下さった給仕長にお礼を言い席に着いた。そして楽しい昼食が始まる。

始めバスグルガールズは見よう見まねで行儀よく食べたが、会話が弾み出すとマナーなど気にせず美味しく楽しく食事をする。気取らない食事は楽しい。おしゃべりに夢中でパンを2つ残すと、一番若い女の子が欲しそうに見ている。他の子が見てないのを確認し、そっとその子のお皿にクロワッサンを置いた。目を輝かせて見てくる彼女に頷くと、嬉しそうに食べ始めた。喜んでくれ満足し顔を上げると、隅で控えるスコットさんと目が合う。そして


「!」


優しい眼差しと微笑みを向けられた。それに気付いたバスグルガールズから溜息がこぼれる。美丈夫の微笑みは豪勢な食事に勝る様だ。


「ごちそうさまでした」


こうしてバスグルガールズとの食事を終え、サキーダ小公爵から挨拶を受ける為に部屋に戻る。楽しかった食事に鼻歌交じりで廊下を歩くと、スコットさんが


「楽しい食事会になり、ようございました」

「皆さんのご配慮に感謝です。いつもありがとうございます」


そう言い付添ってくれている騎士さんにもお礼を言う。楽しい船旅も後少しで終わる。最後になるサキーダ小公爵様からのご挨拶も無難にこなそう。そう思いながら部屋に戻ってきた。

部屋に戻るなり侍女さんに着替えを促され着替える。一息つきたいと思ったが小公爵様が来てしまった。立上りお迎えする。


「お初にお目にかかります。サキーダ公爵家アダムと申します。女神の乙女様にお会いでき恐悦至極でございます。また突然の申出をお受けいただき感謝申し上げます」


小麦色の肌に目鼻立ちがハッキリした濃いイケメンのアダム様。濃いが諄くはなく第一印象はいい。まずは


「どうぞお掛け下さい」


ソファーを勧め侍女さんにお茶の用意をお願いする。アダム様はお茶の準備が終わるまでニコニコし私を見ている。リリスの箱庭の男性とまだ違う美丈夫に緊張する。そして侍女さんが退室すると、表情を引き締めて


「ご挨拶し直ぐにこんなお願いをするのは大変失礼なのは承知でお願いいたします」

「…」


出だしから思わぬ言葉に身構えると、後ろに控えていてリチャードさんが一歩前に出た。すると


「お願いがありお目どりをお願いいたしました。個人的な話しゆえに、出来れば乙女様と2人でお話をさせていただきたい」

「多恵様なりません!」


リチャードさんが反対し、アダム様は真剣な顔でお願いする。やっぱりデュークさん達が言った様に、こういう場面では私は断り切れない。それもあるが何だろう…私の勘だがアダム様の話は厄介ごとじゃない気がする。デュークさんとアダム様の言い合いが勃発する中、少し考えて


「分かりました。話しは聞きますが協力やお願い事は聞く事は出来ませんよ。それでもいいなら…」

「流石女神の乙女様だ。慈悲深い」


満面の笑みを浮かべ私の手を取り喜ぶアダム様。直ぐにリチャードさんがアダム様の手を払い、離れる様に警告する。警戒MAXのリチャードさんとデュークさんを説得し下がってもらい、アダム様と向き合って座った。そして落ち着く為にお茶を飲むとアダム様も同じようにお茶と召し上がった。そして


「私の話というのはバスグルのビルス殿下の事でございます」

「ビルス殿下ですか?」


予想外の話題に固まってしまう。そう言えばアダム様はビルス殿下の従弟だと聞いた。だから遠くも無い話題なのかもしれない。でも少し警戒しながら話を聞くと…


「話は分かりましたが、それについては傍がとやかく言う事では無いような気がします」

「ですが今回の乙女様の訪問は彼の未来がかかっているのです」


話しを聞くだけだと言ったけど、聞くだけでは終わりそうにないなぁ…

お読みいただき、ありがとうございます。

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