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朝市

朝になりキースとお別れです。

「あ…仕事が無ければずっと傍らに居れるのに…」


抱き付いたキースがそう言いぎゅうぎゅうに抱きしめてくる。朝になり下船したキースは商談の為にユグラスの各地を回るのでここでお別れ。ずっと離れてくれないキースに公爵家の従者も護衛騎士さんも困り顔だ。

仕方なくキースの頬を両手で持ち触れるだけの口付けを私からすると、キースは目を見開き頬を染めて荒々しい口付けをしてくる。


「人前ではやめてよね!」

「また暫く会えないのです。これくらいは…」


私が少し怒ると解放してくれやっとお別れをします。馬車に乗り込んだキースは窓をあけ愛を囁き見えなくなるまで手を振っていた。

馬車が見えなくなると思わず大きな溜息が出る。愛してくれるのは嬉しいけど、毎度愛情表現が激しいのは困ってしまう。


そうしているうちに下船してきた船長とクレイさんが手続きのために港事務所に行き、私達も朝市に向かう事にした。

用意された馬車の前には少し早いが今日担当のモーブルの騎士の皆さんが待ってくれていた。顔馴染みに安心しご挨拶する。騎士の皆さんは目立たない様に平民の装いをしているが、貴族だけあり高貴なオーラは隠れていない。そんな中平民丸出しの私は側から見たら浮いた存在に見えるだろう。


「多恵様。お時間がございません。そろそろ出発を」


デュークさんにそう言われ馬車に乗り込んみ出発。聞きていた通り港から近くて、あっという間に朝市に着いた。

馬車を降りるとモーブルの騎士3人が居ない。どうやら先に安全確認をしてくれている様だ。私はデュークさんに手を引かれ露店を見て回る。

本当に見た事もない食材や日用品に心躍り一気にテンションが上がる。


できるだけ自由に見てまわりたくて、騎士さんには少し離れてもらうと、強引な客引きやナンパにあってしまう。直ぐに騎士さんが撃退してくれるので心配なし。そしてバース領での教訓。裏路地の近くは歩かない様に気をつける。そして気楽に色々見てまわっていると


「あ…」


思わずメイン通りから外れの露店に走る。慌てて騎士さんが追いかけて来て抱き留められた。


「いけません。一人で行動しては!」

「ごめんなさい。気になるものがあって…」


そうもしかしたら()()がこの世界にあるかもしれない。そう思うと興奮し走り出してしまった。そしてデュークさんと突然現れたアッシュさんに両サイドを固められながら気になる露店へ。

露店のおじさんは帯剣した大柄な男を6人も引き連れた小娘に困惑している。でもそんな事を気にする余裕が無い私は、店先の端にあるある食材を指さし


「おじさん。これなんですか?」


そう言うとおじさんは笑いながら


「お嬢ちゃんは貴族様か?なら知らなくて当然だよ。これはバスグルから輸入した家畜用の穀物さ」

「家畜用⁈」


驚愕し声のボリュームを間違えてしまい、注目を集め騎士さん達が警戒する。でも興奮している私はそれどころでは無くて、おじさんに手にしていいか聞くと、怪訝は顔をしたおじさんはコップにとって手の平に乗せてくれた。それをじっくり見て香りを嗅ぐと…


「!」


嬉しい出会いに泣きそうになる。そして心配そうに見ているデュークさんに


「私これが欲しいです」

「多恵様⁈」


戸惑い固まったデュークさんの肩に手を置いたリチャードさんが


「多恵様はこれをご存じなのですね」

「はい。買っちゃダメなんですか?」


するとリチャードさんとデュークさんが話し合い、デュークさんが露店のおじさんに


「店主。これはバスグルから仕入れたと言ったが、仕入先を教えてくれないか」

「意味が分からんが教えるくらいはいいぜ。このお嬢ちゃんが欲しがっているが買ってくれるのかぃ?」


こうして小袋…恐らく10合くらい?を買ってもらい、袋を抱きかかえニコニコしながらもう少し露天を見て歩く。

目新しい物が多く楽しくてしかたない。奥の方まで来ると食器や衣類などの食料品意外なものが並ぶ。


「あっ」


また懐かしい物が目に入り走り出そうとすると、デュークさんに手を取られ止められた。そして小さい子の様に走り出さない様にデュークさんに注意され、手を引かれ気になる店へ。

そこは調理器具を売っている店で、店先に土鍋に似た鍋があった。これがあればご飯が炊ける。ニヤけながらデュークさんに土鍋が欲しいとの懇願する。するとリチャードさんが危険な物では無いかチェックする。ただの土鍋が危険な訳なくて直ぐにOKが出て買ってもらう。


「お嬢さんそんなものより良いものがあるよ!綺麗な織物はどうだい⁉︎」


後ろで声をかけられ、振り向くと綺麗な反物が沢山売られていた。でも興味のない私は会釈だけし、その場を離脱しようとしたら、店主が


「お嬢ちゃん変わった瞳の色をしてるね。今アリアの箱庭で話題になってる、リリスの乙女みたいだ」


「「「「「「!」」」」」」


その言葉に付き添いの騎士達の空気が変わる。当の本人は『そんな噂出てるんだ』位にしか思ってなかった。するとデュークさんとリチャードさんが視線を合わせた後に店主に


「ウチのお嬢様はよく()()言われるよ。それよりその乙女様はどんな女性なんだ?」


すると店主のおじさんは詳しくは知らないと言い


「バスグルのビルス王子が求婚する位だから目も眩むほどの美女みたいだぜ。なぁお嬢ちゃんもこの反物でドレス作ったら、たちまち乙女様になれるさ!だから買ってきなよ」


どうやら詳しくは無いみたいだ。それよりそんな噂やめて欲しい! 平凡な私に似合わない敬称にテンションは急降下してしまう。

そして騎士さん達が戻りを促し、まだ時間はあるのに船に戻る事になってしまった。馬車の待機場まで移動中も髪色と瞳の色で声をかけられ、”リリスの乙女”に似ていると何度も言われ、騎士さん達の警戒がますます上がる。やっと馬車が見えてきたら、煌びやかな馬車が停まっているのが目に入る。すると隣を歩くリチャードさんが舌打ちをし、アッシュさんに視線を送った。

唯ならぬ雰囲気に怖くなってくると、ケイスさんとアッシュさんが馬車に駆け寄り、私と他の騎士さんは角を曲がり裏路地に入った。


「デュークさん…」

「ご心配に及びません。念の為に馬車を別の場所に移動するだけです。お守りするので心配しないで下さい」


いやいや!殺気立ってる貴方達をみてリラックスなんて出来ないから!

お読みいただき、ありがとうございます。

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