同衾
やっとキースと過ごす時間を持てたけど…
「お仕事は順調?」
「はぁ…」
深いため息に話題を変えようとしたら、髪を掬い上げられうなじにキスをされ身震いする。そして背中のボタンを外そうとするキースに
「ちょちょっと!」
「愛しい人は疲れ切った婚約者を癒してくれないのですか」
「今はダメだよ」
そう言い身を捩ると悪い顔をしたキースは私の身なりを整え、ソファーに座らせ跪いて私の手を取り
「なら今晩同じ部屋で休みましょう」
「はぁ?」
「妖精王から進展があったと聞き及んでいますよ。同じ婚約者の私には与えてくれないのですか?」
フィラはキースに何を言ったの⁈ 気が動転して固まるとキースは頬を撫でて
「多恵がリリスの役目を終えるまで、婚姻も交わるのもしたくない事は分かっています。私達はそれを理解いた上で貴女と婚約した。だが愛する人にもっと触れたい近づきたいと思うのは自然な事で…」
分かっている。女も好きな男性に触れたいし近づきた。でも不器用な私は最後までしてしまうと、他の事が襲ろ過になってしまうし、他の人に気を配れない。だから終わるまでしないと決またの。
でも…最後までじゃないなら…いいの?かなぁ?
「確かにフィラと夜を共にしたよ。でも添い寝に毛が生えた程度の事でキースが望む事は…」
「私は多恵と夜を共にし、朝を迎えるだけでも幸せなのですよ」
「…なら…一緒に寝る?」
勇気を出してそう言うと破顔したキースに押し倒された。暫くの間、口付けの嵐に合い何が何だか分からなくなる。やっと嵐が去り意識がはっきりしてくると、少し涙目のキースが間近に…そして
「無理をしてよかった。今とても幸せです」
「?」
落ち着いたキースに何があったのか聞くと、今回同じ船に乗る為に1か月先の予定を前倒した事。そしてバスグル行が決まってから食事と仮眠以外は仕事に時間を費やし、それでも終わらない仕事を乗船してからもこなしていたそうだ。
その仕事がやっと終わりが見え、やっと私との時間が取れた訳。
「無理しないでね。慣れない船旅にキースが居てくれるのは嬉しいけど、キースが倒れたら嫌だよ」
「乗船後ずっとお相手出来ず申し訳なかった。でも少しでも貴女との時間を持ってしまうと歯止めが聞かないのは、自分が一番よく分かっていたので…」
そう言いまた優しい口付けをくれる。少し窪んだキースの瞳はどんな時も優しくそして熱い。こんなに愛されていいのか不安になる時がある。でも…
「じゃあ…もうお仕事しなくていいの?」
「若干はありますが、先日の様な事はありませんし、寂しい想いはさせませんから」
そう言い私の髪を掬い取り口付ける。なら…頑張っている婚約者を慰めるないとね… ドキドキしながら、早く夕食を食べて私の部屋でゆっくりしようと提案すると
「多恵の部屋は扉続きで侍女や騎士が待機している。恥ずかしがり屋の多恵は気になるでしょう。私の部屋にしましょう」
「でも騎士さんが…」
そう言うとキースは私をソファーに座らせ、頬に口付け部屋を出て行った。意味が分からずお菓子を食べながら待っていると、キースがお休み中のリチャードさんとデュークさん、そして今護衛中のスコットさんの3人を連れて部屋に戻ってきた。
「?」
何が始まるのか見ていたらスコットさんが
「キース殿の部屋では警備は難しい。不測時に対応が遅れる…やはり多恵様の部屋にしていただきたい」
「それでは多恵の気が休まらないと言っているのです。どんな状況下でも護るのが騎士の務めでは無いのか⁉︎」
どうやら私がキースの部屋で休む事を護衛してくれている騎士さんに伝えに行き、今日当番のレッグロッドの騎士から反対されている様だ。そして護衛を担当している他の2国の騎士も巻き込み討論中。
『お2人共お休み中なのにごめんなさい…』
心の中で謝っているとアルディア責任者のデュークさんも、キースの部屋では護りずらいと反対し、リチャードさんはモーブルの船で襲われる事は無いと言い、私の気持を優先すべきだと言い意見が分かれてしまった。ちょっと部屋を変わるだけで大事になり困っているとキースが私を見て
「多恵。てん殿を呼んでいただけますか」
「へ?てん君? 分かった」
そしててん君を呼ぶと私に愛想を振りまき、まっしぐらにキースの元へ行き撫でてもらっている。そしてキースはてん君の前に跪いててん君に何か話している。するとてん君は胸を張り私を見て
『てん まもれる きし いらない』
『へ?』
するとキースがてん君が何を言ったのか聞いて来たので、そのまま伝えると
「リリスの聖獣は乙女である多恵を何があっても護り抜く鉄壁の守り。てん殿に寝室の扉を守ってもらい、何かあれば吠えてもらえば外で待機する騎士殿にも聞こえるでしょう。それに私は騎士では無いが多恵を守れるだけの剣術は習得している。だから…」
キースが説得しているのに騎士の皆さんの視線はてん君に釘付けだ。てん君は頻りに自分一人で大丈夫だと主張する。てん君の愛らしさが勝った?様で騎士の皆さんから許可を得る事は出来た。
こうしてデュークさんとリチャードさんは戻って行き、スコットさんは予定変更に慌てだしく部屋を出て行った。
今回はてん君を味方につけたキースの作戦勝ち。キースの部屋で夜を共にすることが決まり、侍女や従僕さんは慌ただしく準備に走り回っている。心の中で迷惑かけた事を謝りつつ、一緒に寝る事になりド緊張する私。自室なのに緊張しすぎてソファーで固まっていると侍女さんが気まずそうに
「多恵様。夜着はいかがいたしましょか?」
「え?いつものでいいよ」
「え…ですが…婚約者様とご一緒ならこちらの方が…」
そう言い侍女さんは防御・保温力ゼロの夜着を持って来た。マズイ!誤解されている。私致しませんから!
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