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いざ港へ

やっと港に向けて出発します。

ケイスさんに手を引かれ謁見の間へ。廊下ですれ違う人達に声をかけてもらい、また寂しさが駆け足でやって来た。


「多恵様。よろしいでしょうか」

「?」


ケイスが優しい眼差しを向け話しかけてきた。どうやらアイリスさんから婚姻祝いの事を聞きそのお礼だった。婚約し更に精悍な顔つきになったケイスさん。ラブラブな時期に長期出張なんて申し訳ないと話すと


「アイリスは私が多恵様のお役に立てる事を喜んでおります。それに帰国後は陛下から長期休暇をいただけるそうなので…」

「なら頑張って早く帰りましょうね」


帰国したら蜜月が待っているケイスさんの気合は半端ない。そんなケイスさんを先輩の2人が微笑ましく見ていた。こうして気楽に話しながら謁見の間に着く。


重厚な扉が開き中に入ると皆さんスタンバイ済み。アッシュさんに手を引かれ定位置へ。

小難しい出国の挨拶をリチャードさんがし、陛下からお言葉をもらう。


『まぁ…いつもながら何となくしか言っている事が分からないんだけどね』


公式な挨拶が終わると同席している皆さんの緊張が解け和やかなムードになる。直ぐにグレン殿下とフィル殿下がかけ寄り抱きついてくる。そして


「まー行くの」

「?」


相変わらずフィル殿下の話が分からず戸惑うとグレン殿下が


「フィルと私は明日母上の元へ向かう事になりました」


そう王妃様の命の火は残り少ない。陛下の話では先に王子達が向かい、私がバスグルに着き政務が落ち着き次第、陛下が王妃様の元へ向かわれるそうだ。移動手段が馬車か馬しかない不便なこの世界で、交代で王妃様な元へ行くのは至難の業だ。


『元の世界なら無理したら日帰りできる距離なのに…あれ?でも』


交代で行くとなったら公爵領での滞在日数が短い。しかしグレン殿下の話を聞き移動日数が合わない事に気付き疑問に思うと


「妖精王が協力して下さるのだ」


背後から声がして振り返ると陛下が手を差し出していた。何も考えずに手を取ると引き寄せられ抱きしめられる。そして陛下は詳細を話してくれた

フィラは瞬間移動テレポート的な事が出来る。本人フィラだけならこの箱庭の中ならどこにでも移動できるが、人を運ぶとなると妖力の消耗が激しく長距離は難しい。しかし体が小さい子供ならある程度の距離の移動は可能となり、フィラが王子たちに力を貸してくれる事になった。話を聞き驚いて間抜けな顔をしてしまう。

だって基本フィラは他人に無関心だ。そんなフィラの心境の変化に驚きを隠せない私。もしかして王妃様に…いや王子に同情したのだろうか。すると陛下は


「王子達は妖精王の力で公爵領~王都間を送っていただける事になった。お陰で私も王子も長くシャーロットの側にいる事が出来る」


そう言い寂しそうに微笑んだ。その微笑みを見て何とも言えない気持ちになる。泣きそうになるが堪えて微笑み


「悔いの無い様に家族の時間を大切にして下さい」

「ありがとう。貴女には感謝しかない」


こうして短い腕で陛下を抱きしめた。


少しするとチェイス様が馬車の待機場までの移動を促し陛下とはここでお別れになる。頬に口付けた陛下は、私の手をシリウスさんに託した。そしてシリウスさんに手を引かれ移動を始める。求婚プロポーズしたとは思えないほど、いつも通りに接してくれるシリウスさん。多分私に気を使わさない様にしてくれているのだろう。その気遣いに感謝し


「色々ありがとうございます。頑張ってきます」

「頑張らなくていいんです。無事にお帰りを」


そう言い腰を引き寄せ微笑みを向けてくれた。ゆっくり廊下を歩くと皆さんから声をかけられ心が温かくなる。きっとあっちに行くと慣れない土地で人見知り発動するけど、きっとバスグルの人達とも仲良くなれる…と思う。


「では皆さんありがとうございました。お仕事終えたらまた帰ってきます」

「ご活躍をお祈り申し上げます」


チェイス様とエルビス様にご挨拶しシリウスさんの手をかり馬車に乗り込む。窓から顔を出してお見送りしてくれる皆さんに手を振っていると、アラン団長の掛け声で馬車はゆっくり発車した。


アルディアを立つ時は寂しくて泣いてしまったけど、今回はまた戻ってくるから泣かないもん。順調に馬車は進み時折並走する騎士さんが微笑みを向けてくれ、ゆったりとした気持ちで過ごすことが出来た。


“コンコン”


御者さんが小窓から間も無く宿泊予定の子爵邸に着くと知らせてくれ、両腕を上げ伸びをして身なりを整える。


「お世話になります」


今晩はエルビス様の遠縁のダーバン子爵様のお屋敷でお世話になる。子爵様は初老のダンディーなおじ様で丁寧なご挨拶を頂く。そして奥様に案内され一旦部屋へ。

貴族にしては質素?いやシンプルな屋敷は穏やかで落ち着き、馬車移動で疲れた体を休めることが出来そうだ。

そして夕食の席でバスグル人の雇入れが話題になった。どうやら今までバスグル人を雇用してこなかった子爵様は、法整備され賃金が明確になった事で新たに雇入れを決めたそうだ。


「何度かチャイラ人ブローカーから紹介はありましたが、紹介料が異常に高い上に何にしても怪しく見送っておりました。しかし陛下が新しい法の元、バスグル人の雇用を勧められるとお聞きし雇入れを決めた次第でございます」


労働基準が機能してきている事に嬉しく思い、改めてバスグル側の法整備を必要性を感じていた。

こうして子爵邸でお世話になり、翌朝早く子爵邸を出発し港を目指す。昨晩熟睡できたので馬車では寝る事なく、窓から見える風景を楽しみながら過ごした。


『あ…潮風?』


開けた窓から香る潮風に気付くと並走するリチャードさんが、まもなく港に着くと教えてくれた。どんどん強くなる潮の匂いにワクワクが止まらない。そして


「アッシュさん!あれですか?」


遠くに大きな客船が見えてきた。思わず窓から身を乗り出すとアラン団長に注意される。

どんどん近づく客船を眺めていたら、客船前に沢山人が集まっている事に気付く。すると人だかりの中に知っている顔が見えて…

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