パワーブレックファスト
フィラから濃厚な愛を受け寝落ちした多恵。目覚めると…
「あ…おはよう?」
目の前にご立派な大胸筋があり、温かくいい匂いがする。一瞬で昨晩の事を思い出し赤面すると、今までで一番いい顔をしたフィラがキスをして強く抱きしめる。
まだ残念ビキニで収まり悪い胸元が気になりソワソワしているとてん君がよんでいる。てん君をよぶとフィラとの間に割り込み、フィラに牙を剥いた。
『フィラ ひきょう におい べつ つけれる』
『別って何?』
フィラを睨みながら私に説明してくれるてん君。どうやら妖精王の匂いは、肌を合わせなくても数日フィラが身に付けた物を持っているだけでも十分らしい。
『そんな説明受けてない!』
てん君と私の視線を受けたフィラの目は激しく泳ぐ。そして開き直って
『多恵が昨晩拒めば話すつもりだった。それに直接肌を合わせた方が香りはよく付くんだ。それにボリスとリリスに無理強いしないと約束しちゃんと守ったぞ。俺は悪くない』
責めるてん君にとうとうフィラは拗ねてしまった。確かに初めから聞いていたら、身に付ける方を選んでいただろう。でも恥ずかしいけど嫌では無かった。それに婚約者達はずっと我慢してくれているのも分かっている。
暫く会えないフィラが少し先を望むのは当然の事だ。そんな望みなら応えてあげたいと思う。
『てん君ありがとう。でも嫌じゃ無かったし、ずっと待ってくれているフィラの気持ちにも応えたいと思ったの。だからこれ以上はね…』
『たえ いや ない?』
頷くとやっと愛らしい顔に戻ったてん君は、後ろ足でフィラを蹴り戻っていった。まだ気まずそうなフィラに自分からキスをして首元に抱きつき
「待たせてごめんね。早くお仕事終わらせるから」
「でも無理はするな。お前に何かあれば俺は狂ってしまう」
そう言い強く抱きしめた。また肌にフィラの熱を感じ変な気持ちになって来たら、フィラが首の後ろのビキニの紐を解いた!
「ちょっ!」
抱きついているからビキニは落ちる事なくフィラの胸元で止まり、辛うじて胸を隠せている。そして指で胸元を撫でながら頸に口付けを落とす。もう朝なのに再戦にもち込もうとしているフィラに焦り、片手でビキニの紐を持ちもう片方の手でフィラの口元を押さえて抗う。すると
「おはようございます。多恵様ご起床でございますか?」
フィナさんが起こしに来たのだ。時計に目をやると2刻前だ。今朝は陛下との最後の朝食があるから早めに起こしに来たようだ。
「フィラ!もうおしまい。今日は忙しいから早く起きないと」
「ダラスと食事だろ?放っておけ」
「いやいや無理だよ」
まだ戦闘態勢のフィラは止める気がないようで、なかなか解放してくれない。暫く会えないからこの手は使いたく無かったけど…
「私の意思を無視するならボリスに…」
「!」
いきなり腕を緩めたからビキニが落ちそうになった。
『よかった…紐を持っといて…』
直ぐに紐を結びフィラに結界を解くようにお願いする。不機嫌顔のフィラが指を弾き
「起きてます!でも」
「はい。心得ております。入室可能になりましたらお呼び下さいませ」
「あ…はい」
最後まで皆さんに気を使わし申し訳ない。ベッドから降りフィラに背を向け夜着を着てからビキニをとる。すると背後から抱きついたフィラが耳元で
『早くお前と一つになりたい…』
『!』
びっくりして振り返ると口付けて、何故か例のビキニを持って帰っていった。持って帰ってどうするつもりだろう…
『考えるのはやめておこう…』
こうしてフィナさんに入室許可を出し、慌ただしく身支度を済ませ陛下の元へ急ぐ。部屋に着くとチェイス様とエルビル様もいらっしゃり4人で朝食をいただきながら打ち合わせをする事になった。
『朝食ミーティングなんて出来る女って感じ』
のんきにそんな事を思いながらエルビス様の話を聞いていたら、昨晩やっと決まった見舞金の基礎額について報告される。
基礎額は初めモーブルの小作人の平均賃金を用いたが、モーブルの方が物価が高くその額はバスグルでは城勤の高級文官並となってしまう為、バスグルの物価や平均賃金を参考に計算し直していたのだ。
「多恵様にご指摘いただき、養っている家族数も加味し算出し直しております」
資料に目を通すとバスグルの小作人より高い額だが、出稼ぎに出ているので妥当な額だと思う。資料にはしっかりとした計算根拠が記されており、文官さん達がしっかり調べたのが分かる。
「よくお調べになり素晴らしい資料ですね。皆さんのお仕事に感心いたしました」
「お褒めいただき恐縮でございます」
少し窶れた顔をしたお2人はそう言い嬉しそうに微笑んだ。
「バスグル側にも喜んでいただいておりますが、バスグル王から承諾を得ねばならないのでまだ油断できません」
この件に関してはバスグルに行ってからになるのでもう少しかかりそうだ。
報告が終わると他愛のない話をしながら食事をし、食べ終わるとお2人は忙しそうに退室して行った。そして陛下との2人っきりになり当たり前のように人払いされた。少し緊張すると陛下は笑いながら
「口説かないという約束はちゃんと守るから、身構えないでくれ。暫く会えない貴女とゆっくり話したいだけだ」
「あっはい」
変に意識した自意識過剰の自分が恥ずかしくなってくる。そしてモーブルに来てからの事を色々思い出しながら陛下と沢山話をした。一頻り笑っていたら文官さんが声をかけてきた。そろそろ時間のようだ。
陛下は立ち上がり隣に来て手を出してくれる。素直に手を取ると引っ張られ陛下の腕の中に閉じ込められる。そして
「昨晩遅くにシリウスから貴女に求婚し、返事は貴女が戻ってからだといただくと聞いている。私は王としては残念がらねばならんが、心の底では安心したのだ。やはり私は…」
そう言い陛下は頬に口付けた。口説かないと宣言したけど、陛下の瞳にはいつも熱いものを感じる。人の気持ちはそう簡単に割り切れるものではないからなぁ…
「皆さん真剣に想ってくださるので、私も安易に返事せず真剣に考えたいんです」
「私の本心では無いが王としてはシリウスを貴女の夫の1人にして欲しい」
やはり国として乙女との繋がりが欲しいのだろう。でもやっぱり返事は今は無理。だから陛下にも再度帰ったら返事すると伝え、部屋に戻ることにした。扉前で陛下は
「貴女がバスグルに到着したのを確認した後に、私はシャーロットの元へ向かう」
「お互い後悔の無きよう素直な気持ちで…」
そう言うと思わず涙が込み上げ俯いた。すると陛下は私の頬を優しく両手で包み上を向かせ、唇で私の涙を受け止めた。そして幼子を抱くように優しく抱きしめてくれる。
「貴女の想いはシャーロットにちゃんと伝わっている。ありがとう私達家族を想ってくれて」
そうだ。私がバスグル滞在中に王妃様の命の火は消えてしまうのだ。悲しみが込み上げてくると、陛下は腕を緩める
「シャーロットはこの国を愛し安寧を願っている。貴女がバスグルに向かいモーブルのために働いてくれる事に感謝しているはずだ。だからそんな悲しい顔をしないでくれ」
「ごめんなさい。陛下の方が悲しいのに」
陛下の腕の温もりになんとも言えない気持ちになってしまう。でも…
『王妃様が安心出来るように、早くバスグルとの関係を改善しないと』
そう強く思い陛下を見上げて
「バスグルとの交渉はお任せ下さい。しっかり文官さん達をサポートしますから」
「貴女の心強い言葉を信じている」
再度文官さんの呼びかけを受け、チークハグをし陛下の私室を後にした。
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