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留学

キースは伝書鳥を飛ばしてまで何を伝えたいのだろう。

恐る恐る手紙を読むと…

『なんだろう…』


伝書鳥を使うくらいだから急ぎの用事? 思い当る節が無く戸惑いながら小さな筒から手紙を取り出し開くと…


『バスグル行の船が我が領の港に寄港します。調整をしユグラス共和国との商談の為に同じ船でバスグルへ向かう事が出来ました。愛する多恵と船旅が出来ると思うと歓喜し眠れぬ夜を過ごしています。詳細はお会いした際に…愛する多恵へ キース・ファーブス』


どうやらバスクル行の船にキースも乗船する様だ。商談って事はお仕事なんだよね。でも会えるのはとても嬉しい。バスクルへ向かうのが少し楽しくなって来た。気分よく午後からはバスグルへ持って行く資料を纏めて過ごす。そして陽が傾きだした頃に、カイルさんから夕食のお誘いを受けた。

着替えてカイルさんが滞在する部屋に向かうと、廊下には慌ただしく行き交う侍女さんと従僕さんがいる。顔見知りの従僕さんに会い挨拶すると、ここ数年で一番忙しいと愚痴っていた。3国の帰国及び私の出国。そして私が出国した後は陛下がまたシャーロット様の元へ向かう為、王城内は凄い事(カオス)になっている。自分のせいでは無いは分かっているが申し訳なくて… そんな私に気付いた従僕さんが


「忙しく大変ですが新しく変わろうとしているモーブルに携れ、子供に自慢できますよ」


そう言い微笑みを向けて気にしない様にと言ってくれた。何度も思うけどリリスの箱庭の住人はいい人しかいない。従僕さんの心遣いに感謝しカイルさんの元へ急ぐ。


「お忙しい所申し訳ございません」


そう言いカイルさんがテーブルの椅子を引いてくれる。着席し食事を始めると、絶好調のカイルさんのトークが炸裂し楽しい食事となった。彼も役目を無事終えて気が抜けた様で、いい意味でお気楽になっている。食事を終えお茶を頂いていると、急に真顔になったカイルさんが


「バスグルへ渡られるという事は、モーブルの問題も解決し(リリスの)箱庭に戻られる時は我が国(レッグロッド)にお越しいただけると認識してよろしいのでしょうか」

「えっと…多分そういう事だと私は認識していますが、詳しくはチェイス様にお聞きください」


そうとしか答えようがない。すると微妙な顔をしたカイルさんが


「私が得た情報では、未だモーブルで伴侶はお決めになっておられないと聞き及んでおります。そうなると我が主君(オーランド殿下)に希望があるのでしょうか?」

「あ…」


一番最後になってしまったレッグロッドは、私との繋がりを得るためにオーランド殿下との縁を切望しているのは分かっている。だからモーブルで伴侶が選ばれないとなると、オーランド殿下が選ばれる可能性が高くなると思っているのだろう。


『夫を選ばなくても困ったら力になるし、私の子が嫌で無いならレッグロッグと養子縁組してもいい』


私はそう思うけど箱庭の皆さんの考えは違うのだろう。でも今日はその話をする気分ではなく


「ごめんなさい。今は何とも言えないです」


そう言い茶を濁した。カイルさんは何か言いかけて口を黙、表情を明るくしいつも通り話してくれる。ふとあの事が気になり聞いてみることにした。でも後で()()()聞いた事を後悔する。


「あれからエミリア嬢の縁組はどうなったんですか?」

 

すると眉間に皺を寄せたカイルさんは


「先ほど連絡が入ってのですが、(第一女神の箱庭)ヴェルジルス王国からローガン様の短期留学の申出があり対応に追われているようです。陛下は多恵様が我が国へお越しになる時期と重なってしまう為、困っておいでです」


ここに来てミアの箱庭が絡んでくると思ってなかった。黙り込むとカイルさんが立ち上がり胸に手を当て深々と頭を下げ、私に迷惑がかからない様にすると誓ってくれた。私がバスグルに行っている間に来て、帰る頃に帰国してくれたらいいんだけど。そもそも留学の短期間ってどのくらいなの? カイルさんに質問すると


「1か月~3か月程が一般的かと」

「なら思いっきり被るじゃないですか」

「…」


カイルさんは額に汗をかきながら、私がレッグロッドに行く前にローガン様にお帰りいただく為に、調整を急いでいると説明する。その話を聞きながら、前にリリスとボリスが言っていたとおり、他の箱庭も絡んできた。 

ため息を吐き遠い目をしたところでカイルさん側近が来てお開きになる。明日の退城までお互い予定が合わず会う事は無い。オーランド殿下宛の手紙は帰国のご挨拶の時に渡すことにし部屋を後にした。


部屋に戻る足取りは重い。また厄介ごとが起こりそうだ。私はどれだけ働けばいいのだろうか。


『マジに箱庭ここの問題が解決したら、アリアにお願いして家族の元へ帰してもらおうかしら…』


そんな事を思いながら部屋に戻ると、何故かトーイ殿下が優雅にお茶を飲んでいた。びっくりしていると立ち上がりご挨拶をいただく。


「えっと…」

「身構えないで下さい。また暫く会えないのです。お話をしたいだけですよ」


そう言い殿下を私の手を取りソファーに誘導してくれる。本当に用はない様で他愛もない話をし楽しい時間を過ごす。そして6刻半を回り殿下はお戻りになる。扉までお見送りに行くと


「(バスグルから)お戻りになられたらレッグロッドですね。夕刻に耳に入った情報が気になっております。陛下と相談の上、対処致しますのでご安心ください」

「へ?」


この後何の事か何度も聞いたが殿下は教えてくれなかった。また不安なまま次の地に行くのだと思うと気が重くなってくる。気落ちした私に


「次お会いする時は妃を伴ってご挨拶に伺います」

「楽しみにしています。殿下の幸せをお祈りしますね」


こうしてお見送りをし早めに就寝準備をする。だって明日はアルディアとレッグロッドの使者が帰国するし、私もバスグルに出発前にお世話になった方々へ挨拶回りをしなければならない。


「明日は忙しいぞ!」


そう呟き癒しのてん君を抱いて眠りについた。

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