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スロー

今日は婚姻祝いを買いに城下にお出かけします

「またリメイクしたんだ…」


衣裳室でモリーナさんと買い物に行く服を選んでいる。ここ最近忙しく毎日の服は侍女さんに選んでもらっていた。久しぶりの外出に自分で選ぼうと衣裳室に入り服の変りぶりに言葉をなくす。

ドレスから普段着、全て大小有れどほぼリメイクされており笑うしかない。


「ねぇモリーナさん。ゴードンさんって暇なの?」

「いえ。王家お抱えの仕立て屋な上、高位貴族からの依頼もあり休みが無いと聞き及んでおります」


モリーナさんはそう言い苦笑いをした。どうやら私が部屋に居ない時に訪れ、こっそり服やドレスを持ち出しリメイクをし、またこっそり返しに来るそうだ。侍女さん達は始め私に知らせようとしたが、リメイクした衣類が私が好みそうなデザインの為、言い出せなかったそうだ。


「ゴードン氏からも内緒にして欲しいと言われておりました。しかし多恵様がお気に召さないようでしたらお話するつもりでおりましたが、その様な事も無かったので…」

「いや用意いただいた服に不満もないし、好みの物ばかりでいいんだけどね…」


一から作るよりはお金はかからないと思うけど、リメイクとはいえ生地や装飾にお金はかかる。これからバスグルへの補償等にお金が沢山かかるから無駄遣いはして欲しくない。"塵も積もれば"なんとやらだ。

時間が無いから今日は言わないが、エルビス様を通してリメイク禁止令をゴードンさんに出してもらう事にした。

色々あったがやっと服も決まり着替えてお迎えを待つ。暫くするとアダムさんが迎えに来てくれ裏門まで移動。顔見知りとは言え慣れないエスコートに緊張する。だってアダムさんの褒め殺しが凄くてずっと嫌な汗が出てる。早く着いてくれと心の中で叫んでいると、今日護衛してくれる騎士団の皆さんが見えていた。そこに知っている顔があり思わず手をふると…


「多恵様!」

「ジョエルさん。ご無沙汰しています。お元気でしたが?」


久しぶりに会うジョエルさんは顎髭を蓄え、パンプアップし男前が増している。ご実家の事もあり一時はげっそり痩せたが、騎士の道を選ばれ努力されている様だ。男の色気にあてられていたら、背後からため息が。振り返るとモリーナさんが頬を染めジョエルさんに秋波を送っている。あれ?確かあなたお見合い相手と上手くいってるんじゃなかったの? 後で聞いたがジョエルさんはモリーナさんの理想のタイプで、密かにお近付きになりたいと思っていたそうだ。世の女性はお相手が居ても推しには弱い様だ。


「さて参りましょうか」

「あっはい」


今日の護衛は専属騎士のアダムさんとモリーナさん。そして騎士団から5名付き添ってくれる。裏門にには簡素な馬車が用意されており、先にモリーナさんが乗りその後にアダムさんの手を借り乗り込む。予想通り外は簡素でも中は高級なビロードのふかふかのシートが用意されている。何度も言うがこんなところで時間とお金、そして人の手を使わないでほしい。

ゆっくり馬車が出発するとご機嫌のモリーナさんとガールズトークで盛り上がる。そして時折並走するアダムさんとジョエルさんから眩しい微笑みをいただくとモリーナさんの溜息が漏れる。そしてモリーナさんは愚痴?をこぼし、もう少しお相手に色気が欲しいと呟く。突っ込んで話を聞くとお相手は超が付くほど真面目な方で甘い感じが無いそうだ。


『でもぼやき半分、惚気半分なんだよね…結局幸せなんじゃない』  


そう思いながら饒舌に話すモリーナさんに相槌を打っているうちに城下に着いた。ここからは馬車を降りて徒歩で移動。アダムさんとジョエルさんは平服で護衛してくれ、他の騎士さんは離れたところからになる。事前に侍女さん達にリサーチし行きたいお店が3軒ある。まずは大本命の陶器を扱うお店に向かう。ここは王都で一番の老舗で取扱う種類も数も多いそうだ。ここでペアのカップかグラスを見てみる。流石老舗だけあり華やかなデザインの物が多く目移りして選べない。


「多恵様!これ何ていかがですか?」


嬉しそうにモリーナさんが持って来たのはピンクの花柄のペアカップだった。正に新婚さん向きだけど、アイリスさんに贈ったら苦い顔をされそうだ。他も見てて回るとある品に目が止まる。


『メイナさんが言ってたやつだ。これいいなぁ…』


今見てるのは番のスローのガラスの置物。スローとは日本でいう燕に似た小鳥でモーブルにのみ生息。スローはパートナーを決めると一生添い遂げ、片方が亡くなると残された方は亡骸に餌も食べずに寄り添い後を追うそうだ。

その深い愛情から平民の間では夫婦円満のシンボルとされ、置物やスローをモチーフに刺繍したタペストリーをリビング等に飾るそうだ。

目に留まったそれは透明度が高く光が反射しキラキラしてとても綺麗だ。ガン見する私に店主が売り込みに来た。どうやら店主は私の事を貴族の令嬢だと思っている様で、奥から一番大きいサイズのスローのガラス置物を持って来た。でもそれは大き過ぎて反対に可愛くなく、先ほど見ていた手のひらサイズの方が可愛い。


「少し考えてまた来ます」


店主の売り込みに困りそう言い一旦店を出た。次の店に移動しながら貴族の2人(アイリスとフィナ)にスローの置物は失礼にならないかアダムさんとジョエルさんに聞いてみる。


「多恵様がお祝いに贈ったとなれば、途端に貴族の間でも流行る事でしょう」


そう言ってくれたので安心する。出だしからいいものにめぐり会え気分よく次のお店に向っていると、モリーナさんが真っ赤な顔してアダムさんとジョエルさん何かこそこそ話をしている。話を聞いた男性2人は困った顔をして考え込んだ。モリーナさんは何を話したの?

そうしている間にお目当てのお店に到着。ここは衣類を売っているお店の様だ。入ろうとするが何故か2人は姿勢を正し真面目な顔をして立っている。


「入らないんですか?」


そう聞いたらアダムさんは俯き、ジョエルさんは困った顔をして


「この店は俺らは()()()()のでここでお待ちします。何かあればすぐ駆けつけるのでご安心を」

「?」


ジョエルさんの言葉の意味が分からない。戸惑っていると少し興奮気味のモリーナさんに手を引かれ店内へ。一見普通の衣料店だけど…

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