表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
383/442

スパイ容疑

バスグル行きまで後少し?

「あ…」


眉間に皺を寄せたグリード殿下を前に言葉が出ない私。やっとバスグル行きが見えてきてホッとしたのも束の間。午後から予定も無く久しぶりに書物庫に向かっていた時に、グリード殿下に出会しそのまま拉致られたのだ。初めは世間話をしていたんだけど、急に表情を変えた殿下からでっかい爆弾を投下され固まる。

上手く返さないと肯定した事になるのに取り繕えない私。


「やはり貴女は素直で愛らしい。やはり私が掴んだ情報は確かな様だ。正直帰ってくるまで嘘であってほしいと願っていたんですが…」


そうグリード殿下は王妃様の病を知っていた。どうやらモーブルに残っていた殿下の家臣がモーブルの同行を殿下に知らせていた。王妃様が王城を空けたと報告を聞いた殿下は疑問に思い直轄の影に探らせ事実を知った。殿下の表情から覚悟を決めたのが窺い知れる。


『最愛の人の時間がないのを知るのは辛いだろう。どんな言葉かけていいかわからない』


グリード殿下よりずっと年上なのに、こんな時にかける言葉すら浮かばない自分に苛つく。すると殿下は私の横に来て手を握り


「私共を想って下さりありがとうございます。でも私は大丈夫です。彼女シャーロットの意思を尊重し、()()()()()()()()バスグルに帰ります」

「殿下…」


やっと落ち着いて来た私に殿下は、シャーロット様との約束を教えてくれた。約束を交わしたのは私の召喚が分かり殿下か伴侶候補に決まった時。お二人は色々話し合われ約束を交わした。その一つにお互い最後の時は立ち会わない事とし、乙女召喚後は王妃と王弟の立場を守り抜く事を決めた。

恐らくこの時にはシャーロット様はご自分の期限()を知っていて、殿下を想い最愛の人との別れを決心されていたのだろう。改めてシャーロット様は愛情深く素晴らしい女性なのだと痛感した。


『私はそこまで皆を愛しているだろうか…』


私は自分の事で一杯一杯で愛してくれる人に心を砕く事なんてできそうにない。そう思うとブルーになってきた。そんな私に殿下は容赦無く第2の爆弾を投下した。


「聡明な貴女ならお気付きだろうが、グレン殿下は間違いなく私の子だろう」

「!」


瀕死の私にとどめを刺すグリード殿下。慌てて何か言おうとしたら殿下は手でそれを制して


「ここからは私の独り言を聞いてください」


そう言いグレン殿下がなぜ自子である事を知ったかを話し出した。


『もぉ…お二人とも不器用なんだから…』

「嘘をつく時は兄上は鼻を触り、シャーロットは耳を触るんだよ」


殿下はそう言い苦笑いをした。そうお二人(陛下・王妃)は嘘をつく時に癖が出るそうだ。だからグリード殿下は2人が自分に真実を隠そうとしている事に気付き、秘密裏に調べて知っていた。そして2人の気持ちを知ったグリード殿下は知らないフリを通してきた訳だ。


グリード殿下を想い真実を隠し通す陛下と王妃様。真実を知っていて知らないフリをするグリード殿下。お互いを想っての事なのは分かるけど、もっといい方法は無いのだろうか⁈

すると私の表情から察したグリード殿下が


「多恵殿の気持ちは理解できますが、これは我々が選んだ道なのです。それにシャーロットも私もこの決断に悔いは無く納得しています。だから貴女がそんな顔する事はない」


そう言い優しく私の背に手を添える殿下。その殿下の温かい手に泣きそうになる。そして殿下は今回陛下の名代を務めたグレン殿下(我が子)の成長を喜ばれ父親の顔をしていた。


『皆んなが幸せは無理なのかなぁ…』


いまいち納得いかず気持ちが整わない私。するとグリード殿下は


「私は貴女と同じ考えで早くバスグルに渡り、陛下と王妃そして王子に最後の時間を差し上げたい」

「私も同じ事を考えていました」


そう言うとやっとグリード殿下は穏やかな表情をした。そしてグリード殿下はシャーロット様とグレン殿下にしてあげれなかった事を、伴侶となるビビアン王女にして上げたいと話した。


「彼女も王家の柵で苦労している。これからは彼女を支えて幸せにして上げたい」

「お二人ならきっとバスグルをいい国に出来ますよ」


そう話すと照れくさそうにバスグルの未来を語るグリード殿下。希望に満ちた殿下を見ていてバスグルの黒歴史を思い出した。殿下は()()を知った時、殿下はどうするのだろう。そんな事を考えていたら


「何故かは知らされないが長子であるビルス殿は王位を継がずビビアンが継ぐ。どうやらビルス殿はバスグルが落ち着き次第、廃嫡し平民となる様だ」

『確かビルス殿下もそんな話をしていたなぁ…』


愛する人のために身分を捨てる。そんな話は漫画の世界でしか聞いた事ない。そこまで想える相手と出会えた殿下は幸せ者だ。そんなビルス殿下の幸せを願いグリード殿下との面会を終えた。


「お時間いただきありがとうございました」

「こちらこそ」


やっとグリード殿下から解放された私は部屋に戻る。神経を使いふらふらの私にケイスさんが寄り添ってくれる。まるで歩き始めた子供の後を追う父親の様だ。あたふたするケイスさんに大丈夫だと言うと


「多恵様に何かあれば俺はアイリス嬢に嫌われてしまいます」

「そこは私の婚約者や陛下ではなくアイリスさんなんだ…」


ケイスさんの深い愛?を知り改めてアイリスさんの幸せを喜ぶ。そしてやっと自分の足で部屋に戻るとチェイス様が待っていて、グリード殿下と会って何を話してのか聞かれる。詳しくは話せないが、早くバスグルへ渡る為に色々相談したと話すと、急に表情を強張らせチェイス様は人払いをした。

どうやら(私が)完全にバスグル側と繋がっていると思ったチェイス様は、私から情報が漏れてことを疑っているようだ。 


「本当に大した事は話していませんよ!友人のビビアン王女殿下のご様子や、バスグルの話を聞いただけですから」


そう弁明するがチェイス様の視線は緩まない。ヤバいどうやら私スパイ容疑をかけられている?

お読みいただき、ありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。


Twitter始めました。#神月いろは です。主にアップ情報だけですがよければ覗いて下さい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ