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意外に

シリウスのアプローチどうするの⁈

「たえどのー!」

「はっはい!います」


寝室からグレン殿下の呼び声が聞こえ、反射的に返事をし立ち上がってしまった。我に返り視線を下げると唖然とするシリウスさんがいる。正直言って”助かった”と思った?


「殿下がお呼びです。行ってさし上げて下さい」

「えっと…ごめんなさい。ちょっと行ってきます」


危機を脱したはずなのに残念なような気がする? もー自分が迷宮入りしている。でもそんな事言っている間もなく、再度グレン殿下に呼ばれ急いで寝室に向かう。でも何故か…


“ちゅ!”


シリウスさんの横に来た時に無意識に手招きをした私は、屈んだシリウスさんの唇に触れるだけのキスをして足早に寝室に向かった。


『うわぁ…やっちゃった。きっとあの瞳に絆されたんだ私…』


背中にシリウスさんの熱い視線を受けながら寝室の扉を開けると涙目の殿下がいた。気持ちを切り替え直ぐに殿下に駆け寄り抱きしめるとか弱い声で


「目が覚めたら1人で不安になったんだ」

「大丈夫ですよ。私が側にいますから」


そう言い殿下を再度寝かしつけると、殿下は子守歌を歌ってほしいと願った。歌は下手でも無いけど上手くもなくて思わず苦笑い。少し悩んで雪が小さい頃に見ていた子供番組の歌を思い出し、殿下の手を握りしめ歌い始める。


「母上もよく寝る時に歌ってくれたよ」

「王妃様はお上手でしょうね」

「うん」


目を擦った殿下は直ぐに寝付きそうだ。そして2曲ほど歌うと殿下はまた寝息を立てておやすみになった。時計を見ると後少しで7刻半になり、私もそろそろ眠くなってきた。

音を立てないようにそっと殿下の寝室を出るとシリウスさんが待っていた。


「あ…」


先程のキスを思い出し焦るとシリウスさんは赤子を抱くようにやさしく抱きしめる。そして


「先程の口付けは私の想いに応えたものではないのは理解しています。だが俺の心は歓喜に震えている。次は本当の口付けをいただけるように精進し、ここ(モーブル)で貴女の帰りを待っています」

「えっと…はい」


シリウスさんは腕を解きチークキスをし、外で待機するアッシュさんを呼んだ。入室したアッシュさんはシリウスさんに礼をして私を抱き上げ殿下の寝室を後にした。

疲労困憊の私に護衛騎士さんがショールを掛けてくれると、その暖かさに睡魔が襲ってきた。視点が合わなくなってきた私をみてアッシュさんが


「お疲れ様でした。おやすみ下さってもいいですよ」

「いえ。がんばります」


そう返事したけどやっぱり目覚めたら自室のベットの上だった。


結局目が覚めたのは翌日の2刻過ぎだった。起きた気配に気付いたフィナさんが入室し窓を開けてくれる。朝の澄んだ空気が気持ちがいい。ぼんやり窓の外を見ていたらフィナさんが申し訳なさそうに


「多恵様がおやすみになられた後に、レッグロッド側から面会の申し込みがあり、またアルディア側からも同席したいと連絡を受けております。いかがなさいますか?」


そっか…レッグロッドの説得にトーイ殿下が同席してくれる約束だった。早くバスグル行きを決めないといけないから、朝食後に調整をお願いし身支度を始めてフィラが来ない事に気付く。すると足元に来たてん君が


『たえ フィラ きょう こない』

『そうなの?』


どうやらアリアの妖精女王から連絡が入り来れないそうだ。冷たい様だが忙しいからちょうど良かったかも。そう思っていたら開けた窓から妖精が花束を持って現れた。妖精に話しかけると花の妖精が花束を渡し私の頬に口付けた。そして


『おう から』


妖精国の花にしては珍しく真っ白?っというか少し透けている? 不思議そうに見ていたら溜息を吐いたてん君が


『そのはな 100ねん 1かい さく めずらしい はな』

『!』


どうやら妖精国でも希少種で妖精王しか摘む事が出来ないものらしい。何でこんな希少な花をくれたのだろう?


『フィラ たえ バスグル いく しんぱい と ふあん』


ここから出る事が出来ないフィラはバスグルに同行する事が出来ないって言ってた。この後てん君から同行できないフィラがアリアの妖精女王に働きかけてくれている事を聞かされた。フィラの心遣いに感謝し、フィナさんにこの花を寝室に飾ってもらう様にお願いし朝食をいただく。



「お時間いただきありがとうございます」


今日も朝から元気なカイルさんに苦笑いしお迎えした。トーイ殿下がお見えになるまでカイルさんと雑談をしながら待つ。ご機嫌のカイルさんは昨日届いたオーランド殿下からの文を渡してくれた。絶好調のカイルさんを見ながらこのままいい感じに話がまとまる事を祈っていたらトーイ殿下がお見えになった。


こうしてレッグロッドとの話し合いが始まり…


「我が王は多恵様とアルディア側の意向に沿うとの事にございます」

「「はぁ?」」


急に同行者を減らす事に賛成したカイルさんの顔をマジマジと見ていたら、畏まったカイルさんが


「王から我が国も一日も早く多恵様にお越しいただく為に協力する事と、アルディアが多恵様の意向に沿うなら我が国も同調するとの事にございます」

「ありがとうございます?」


困惑しつつレッグロッドもアルディアと同じく騎士3名の同行で話がつき、あっという間に話し合いが終わった。話しが纏まり安心されたトーイ殿下は先に退室され、私はそのままカイルさんからレッグロッド側の話を聞く事になった。トーイ殿下が退室されると姿勢を崩したカイルさんはいつもの調子になり


「いや~他の王族方に比べるとまだ話しやすいトーイ殿下ですが、オーランド殿下から失礼の無いようにと釘を刺されていたので緊張しましたよ」


そう言って着席したカイルさんはお茶を一気飲みしソファーに深く座る。私も同行者の件が意外に早く片付き気が抜けた。するとカイルさんがレッグロッドが何故態度を軟化させたのか話し出した。


「実はアルディア王から我が王に文が届きアルディア側が同行者3名に決めた事と、多恵様が我が国の為にバスグル(モーブル)の問題を解決を急がれているとお聞きしました。つまり同行者で揉めている場合ではないと知った王が、アルディア側に合わせる事をお決めになってのです」


どうやら陛下(パパ)が娘の為にレッグロッド王を説得してくれたみたい。本当にアルディアの皆さんは私の事を大切に想ってくれる。嬉しくて泣きそうになるとカイルさんがハンカチを差し出した。"大丈夫"だと言い話を進める。


「レッグロッドは多恵様と接する機会が少なく貴女の意向に沿えない事も多い。でも知っておいていただきたい。レッグロッドは貴女を愛し必要としている事を」

「ありがとうございます。私も早くレッグロッドの事を知りお役に立ちたい。だからこれからもよろしくお願いしますねカイルさん」


そう言うと胸に手を当て騎士の礼を返してくれた。そしてまた一頻愚痴を溢したカイルさんはすっきりした顔をして帰って行った。

お読みいただき、ありがとうございます。

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