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グレンとシリウスの様子がおかしく…

何故か仁王立ちをし廊下で私を待つグレン殿下。その後ろには何とも言えない顔をしているシリウスさんが見える。自分で気づかぬ内に何かしてしまったのかと慌てるが、考えても思い当たる事は無い。どんどん殿下が近づいてくると遠くから7刻の鐘が聞こえて来た。

取りあえず遅くなった事をまずは謝り殿下の機嫌を窺うか…


「遅くなってすみません」

「いいよ。フィルがぐずっていたんだろ?」


私の手を取り殿下は微笑んでくれ胸をなでおろす。アッシュさんに下してもらい殿下に手を引かれ部屋に入ると、テーブルにホットミルクと膝掛が用意されていて殿下が何か話があるのが分かる。

グレン殿下は陛下不在時、名代を努められてから成長なされ所作は紳士だ。私をソファーに座れせ甲斐甲斐しくひざ掛けを掛けてくれる殿下。そのしぐさにキュンとする。

そして着席した殿下が眉尻を下げて


「夕食を陛下と共にし、母上の容態を教えてもらった」


そう言い口を唇を噛みしめる殿下。その様子から陛下が隠すことなく全て話した事が分かった。その顔を見ていたら母性が溢れ抱きしめてあげたくなり、立ち上がろうとすると殿下が手で制し微笑んで


「大丈夫」


と言いホッとミルクを一口飲み深呼吸をし真っ直ぐ私を見据えた。そんな殿下を見て私の方が泣きそうになる。


「父上から叔父上には母上の事を知らせないと聞かされた。叔父上は恐らく何か気付くはずだから、言動に気を付ける様に言われた。正直私は隠し通せるか自信がないよ」


そう言い弱音を吐く殿下。まだ子供の殿下には荷が重すぎる。そう思うと切ない。すると私の肩にシリウスさんが手を置いた。ごつごつした大きな手は温かく切ない気持ちが少し和らぐ。お礼の代わりに見上げて微笑みを返す。そして殿下に視線を戻し


「殿下は一人ではありません。困った時は頼って下さい」

「分かっているよ。シリウスや周りの者が助けてくれるのは」


味方が居てくれても不安は消える事は無い。殿下の気持はよく分かるよ。グリード殿下にバレない様に、やっぱり私が早くバスグル行きを決めないと… 

殿下は残りのホットミルクを飲み干して立上り、私の横に移動し抱き付いた来た。抱き付いた殿下の体温は高くそろそろおねむか?


「殿下おやすみになられますか?」

「うん。ねむい…」


『よし!』


心の中で気合を入れ立上りグレン殿下に手を差し出すと素直に殿下は抱き付いて来た。殿下の後ろでシリウスさんと女官さんが青い顔して焦っている。大丈夫!子供は絶対落とさない。安心して欲しくて2人をみて頷く。私の首に腕をまわし体を預けるグレン殿下を抱き上げ、ガクガクする足を踏ん張りながら殿下を運ぶ。ベッドまでが異常に長く感じながらやっとベットについてゆっくり下すと殿下はもう寝ている。布団を掛け額に口付け、暫く手を握り付き添うと直ぐに規則正しい寝息が聞こえそっと手を離した。


『!』


ほっとした瞬間に体が浮いて驚く。見上げるとそこにはシリウスさんの綺麗なお顔が。シリウスさんは頬に口付けて静かに寝室を出てソファーに下してくれる。そして目の前に跪いて私の手を取りお礼を述べる。

シリウスさんはグレン殿下の家臣だが殿下を見つめる眼差しは"父親"だ。不安な殿下に寄り添い支えている。そんなシリウスさんが私と一緒にバスグルに行くとなると殿下は大丈夫だろうか。


『でもシリウスさんはバスグル行きを志願しているんだ。彼の気持を考えるとダメとは言えないし…』


困っていたらシリウスさんが真っ直ぐ視線を向けて


「俺は多恵様と共にバスグルに赴き貴女を護りたい。しかし今のグレン殿下の事を思うと難しい。それに何も知らされない親友のグリードの代わりに殿下を支えにならねばならない。だから…」


そう言い彼は視線を落とし唇を噛み締めた。前はバスグルへの同行を志願し行く気満々だったシリウスさん。でも今の状況を考えると残った方がいいだろう。押し黙っていたシリウスさんは大きく深呼吸をし真剣な眼差しを向けた。そして


「俺はモーブルの聖騎士です。己の気持ちより忠誠を誓った王と王子を優先せねばならない。だから俺はバスグルには行きません」


そう言い掴んだ手に力を入れた。きっと苦渋の決断だったのだろう。恐らく彼は私がモーブルで伴侶候補を選ぶ気が無い事を感じている筈。きっとこうなる前はバスグルに同行し行動を共にし求婚アプローチするつもりだったのだろう。


「己の望みより忠義を優先したシリウスさんは立派です。そんな貴方は素敵です」


そう言い彼の手を取り両手で包み込んだ。騎士の顔をしていたシリウスさんは蕩ける様な微笑みを向け極甘な愛の言葉を囁く。恥ずかしい反面、こんな素敵な男性に想われている自分が信じられず戸惑ってしまう。すると手を離しソファーに両手を着いて身を乗り出したシリウスさんが


「口付けていいか?」

「!」


いつもみたいに丁寧な口調で無いシリウスさんに鼓動が跳ね上がり固まってしまう。澄んだブルーグレーの瞳に捕われ動けない私にどんどん近づくシリウスさん。そして彼の綺麗な黒髪が私の頬を撫で彼の吐息が頬に当たる。


『このままだとキスしちゃうよ』


心の中で慌てているが動けない自分に只々戸惑っていた。

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