フィラの気遣い
王妃の危篤を知り
気持ちが落ち着いた所に”王妃様危篤”なんて…
でもやっと陛下の痩せた理由がわり安心すると優しく抱きしめてくれる陛下。その温かさで我に返り
「王妃様は!」
「大丈夫。危険は脱し安定しているよ。帰城後、公爵からの伝書鳥で知らせもあり心配ないそうだ」
そう聞き力が抜け陛下に支えられてソファーに沈み込んだ。そんな私を陛下が幼子を抱っこするように優しく抱きしめる。甘いチョコを一つ食べ落ち着いた私に、陛下は事の成り行きを話してくれる。
ご実家で穏やかに過ごしていた王妃様。陛下が来て話したいことが多く少し、無理をなさった様だ。
「ずっと床に臥せていたシャーロットがまだ歩けるうちに私と散歩をしたいと言い散歩したのだ。その時の彼女は化粧気も無いのにとても美しく見惚れたよ。そして何もない所で躓き支えたがかなり痩せていて動揺した。散歩から戻る際に階段を上がる事が出来ず抱きかかえたが、あまりの軽さとやせ細った肢体に迂闊にも涙してしまった」
そう言い陛下は表情を曇らせた。陛下は一人病と闘っていた王妃様を見て更に罪悪感が増す。そして嬉しそうに陛下の手を握り、休むことなく話をする王妃様をみて
「長くない自分の時間を知り、私に母として国母として伝えたい事を必死に語っていたよ。常々陰で貴族のご婦人や令嬢と交流を持ち、情報収集をしてくれているのは知っていた。だが私は王妃としての義務でやっているのだと思っていた。しかしやはり彼女は素晴らしい女性で、国を思い行動してくれていたのだ」
そう言い優しい顔をする陛下の横顔を見て、ちゃんと王妃様に愛情をあるのを感じた。恐らく王妃様も陛下の愛を感じられただろう。
「帰城の前夜、いつもより話が長くなり彼女の体調を気遣ったのだが、シャーロットは中々話しを止めず、結局遅い時間まで話し込んでしまった。そして…」
陛下が帰る日の早朝に王妃様の呼吸が浅くなり意識不明に。直ぐ医師に診てもらったが、心拍が上がらず打つ手が無く危険な状態。
覚悟を決めた公爵は唇を噛み締め悲しみに耐え、使用人達は悲しみに暮れていた。そんな時
「シャーロットの寝室にいきなり妖精王が現れ、薬草を医師に渡し直ぐ飲ませる様に指示をなさった。そして…」
フィラの薬草で心拍と呼吸は戻り、陛下の帰城出発の時間前にシャーロット様の意識が戻ったそうだ。医師も安静にしていれば問題無いと診断され危機は脱した。陛下はそれを確認し私がバスグルに渡ったらまた会いに来ると約束し帰城された。
陛下の話を聞いて安心したけど腹が立ってきて思わず
「フィラ!聞こえる?」
そう言うと風が吹いてフィラが現れた。陛下は立上り妖精王に深々と頭を下げ、挨拶と薬草のお礼を述べている。無表情で陛下の挨拶を受けたフィラは私を見て破顔し抱きしめ口付けて
「愛しい婚約者が求めてくれるのはいいもんだな」
そう言い人前で激しい愛情表現をするフィラ。体を捩り抗いフィラの腕から逃れて
「なんで(危篤なのを)教えてくれなかったの⁈」
「教えたところで何もできないお前は気に病むだけだ」
「でも!」
すると陛下が私の手を取って
「妖精王も私も多くのもの背負う貴女に、心配をかけたく無かったのだ。シャーロットも同じ気持ちだったはず」
確かに私はやる事も考える事も多い。それにあのタイミングで危篤を聞かされても、私は何もでき無くて絶対落ち込んでしてしまう。頭では分かっていても気持ちの整理ができず、やり場のない気持ちに黙り込んでしまう。するとフィラは
「お前がバスグル行きを急いでいるのは分かっている。だからお前の役目を早く終えれる様に憂を無くした。何度も言うが俺はお前以外どうなろうと興味はない」
フィラはまだ”終わりの準備”が出来ていない国王一家を助けてくれたのだ。でもそれは私の為なのは分かっている。
「ごめん…フィラありがとう」
「気にするな。俺はお前のためにある」
そう言い抱きしめるフィラ。フィラが出した余命まで後1ヶ月はある。国王一家が納得いく”終わり”を迎えて欲しい。
視線を感じ見上げると優しい琥珀色の瞳が見つめている。そして額に口付けて陛下に視線を向け
「ダラス。多恵に会ってから危うかったお前も真の王になったな」
そう言い陛下の頭を撫でた。撫でられた陛下は苦笑いしている。後でフィラに聞いたが過去に愛に溺れた王の政は混乱し国が傾いたそうだ。確かアルディアのルーク陛下もそんな話をしていた。だから私に想いを向けるダラス陛下を危惧していたそうだ。
「王妃のお陰で己の責務を思い出した様だ。俺はお前の決断を支持する。多恵。これはダラスの自身の問題。だから気に病む事はない。10年後に気が向いたらダラスの想いを受け入れてやれ」
そう言ったフィラはあっさりと帰っていった。この後陛下と留守中の話をし、お疲れの陛下を気遣い早めに面会を終えた。陛下はこの後チェイス様達とバスグル対策(グリード殿下)を話し合うそうだ。でも…
『勘のいいグリード殿下に隠し通せるのだろうか…』
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