ダラス帰城
陛下帰城の朝。いつもと違うフィラに戸惑い
「とうとう彼奴が帰って来るのか…」
そう言い後ろから強く抱きしめるフィラ。陛下が帰城される朝。不服そうに陛下が帰って来ることに文句を言いながら、至る所にキスをし撫でまわすセクハラおやじのフィラ。何故か彼はここ最近機嫌が悪い。機嫌を取ってもダメで知らぬ間に私が何かしたのかと心配していたらてん君が
『フィラ バスグル いけない すねてる』
『へ?』
どうやら妖精王は仕える女神の箱庭から出る事が出来ないらしい。つまり暫くの間私に会えない事に拗ねているのだ。子供の様な態度に可愛いと思い自分から口付けた。するとそれが呼水となり朝からデープな口付けを受ける事になった。
『フィラ しつこい!』
長いキスにとうとうてん君が牙を剥いた。やっと解放された頃にはどろどろに溶かされた私。やっと満足したフィラが帰り、察したフィナさんが起こしに来た。真っ赤な顔の私を見て苦笑いをしたフィナさんに冷たいタオルを渡され、頬を冷やしながら朝食をいただく。
食後は陛下が帰城されるまで予定はなく、部屋でのんびり過ごしていると誰か来たようだ。フィナさんが応対しシリウスさんが来たと告げ会うか聞いてくる。時計を見ると(陛下の帰城まで)まだ半刻弱ある。
「少しの時間で良ければ」
そう返事をし身なりを整えお迎えする。シリウスさんはいつもの騎士服を身にまとい朝から男前が炸裂している。その色気にあてられながらご挨拶を受けると、シリウスさんはフィナさんに退室を命じた。フィナさんが不安げに私を見て確認をしたので頷いた。
「お時間いただきありがとうございます」
「いえ。何かありましたか?」
そう言うとシリウスさんはハグとチークキスをし、手を引き私をソファーに座らせ隣に座り手を握った。そしてこれまた火傷しそうな程熱い眼差しを向けて来る。何を言わず見つめられてどうしていいかわからず困ってしまう。すると眉間に皺を寄せたシリウスさんは
「あと少しで陛下がお戻りになられます」
「ええ…」
「…ですか?」
「はぃ?」
聞きとれずに聞き返すと悋気全開のシリウスさん。恋敵?陛下のお戻りに焦っている様子。見つめる瞳は潤んでいてブルーグレーの瞳はハスキー犬を思い出させる。必死に甘えるハスキーに見えてきて、可愛く感じ思わず頭を撫でてしまった。すると破顔して抱き付いてくるシリウスさん。ここ最近彼のギャップ萌えにやられっぱなしだ。
「…多恵様…そろそろ…」
控えめにフィナさんが時間だと知らせて来る。溜息を吐いたシリウスさんは私の手を取り立ち上がった。激甘な表情から騎士モードに変わったシリウスさんは、胸に手を当て挨拶をし颯爽と退室して行った。
シリウスさんが退室するとフィナさんが着替えを促し、陛下のお迎え準備を急ぎ部屋を出て正門へ。正門前に皆さんがお迎えの為に集まっており、私に気付いたグレン殿下が走って来る。そして開口一番
「フィルにとって多恵殿は"母"かも知れないが、僕は違うから!」
「はぁ…」
そう告げると殿下は私の手に口付けを落とし、シリウスさんの元へ戻って行った。唖然としていると付き添いのリチャードさんが
「多恵様を慕う者が多く、求婚者や婚約者は気が気じゃないですね」
「グレン殿下のあれは…」
「殿下もお年頃なのです」
「他人事だと思ってるでしょう!」
そう言うとまた楽しそうに笑うリチャードさん。すると遠くから鋭い視線を感じ視線の先を見ると、アラン様が笑っているリチャードさんを睨んでいる。そう陛下護衛の先触れが到着し、間もなく陛下が帰城されるのだ。きっと気が緩んでいるリチャードさんに怒っているんだ。慌ててアラン様に頭を下げ、まだ気づいたいないリチャードさんの袖を引っ張り、視線をアラン様へ。するとアラン様を見たリチャードさんは顔を青くし頭を下げ姿勢を正した。
『あ…普段から私で遊ぶからばちが当たったんだ。リチャードさん説教部屋確定だなぁ…』
そんな事を思いながら真っ直ぐ正門を見ていた。するとゆっくり陛下を乗せた馬車が門をくぐり、グレン殿下とフィル殿下そしてグリード殿下が一歩前に出て陛下をお迎えする。ゆっくり止まった馬車の扉が開き陛下が降りて来た。
『!』
細マッチョの陛下は更にお痩せになって…いや窶れている。一瞬どよめきが起きフィル殿下がぐずりだした。グレン殿下は唇を噛みしめ真っ直ぐ陛下を見ている。状況を知らないグリード殿下は陛下に駆け寄り陛下を支えた。迎えに来ていた人達は唖然とし時が止まったかのように誰も微動だにしない。すると陛下が大きな声で
「皆の出迎え感謝する。この後予定が立て込んでおる。皆も持ち場に戻ってくれ」
そう言うとチェイス様も解散を皆に伝え、各自持ち場に戻って行く。私も唖然として動けずにいるとエルビス様が駆け寄り
「多恵様。驚かれたと思いますがお部屋にお戻りを」
「あ…はい」
こうしてリチャードさんに手を引かれ自室へ向かう。すれ違う皆さんの動揺は大きく、私も不安になりリチャードさんを見上げた。リチャードさんはいつもの微笑みを湛え
「ご心配には及びません。陛下はお強いお方です」
「そうだよね」
リチャードさん言葉に気を引き締めて部屋へ急いだ。
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