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同行者

トーイとの面会でバスクルの同行者について話し合うが…

「殿下はいつまで滞在なさるのですか?」

「ダラス陛下に直々にお渡しする書簡のありますので、陛下がお戻りになられ…と言うか()()()が決まらないと私は帰れないので」


そう。()()()とはバスグルの同行者の事だ。チェイス様に聞いたらアルディア側は10名を望んでいる。最初は7名程だと聞いていたが、陛下が少ないと仰り譲らなかったそうだ。レッグロッドも同じような感じで、話し合いを重ねても一向に折れないとチェイス様が愚痴を溢していた。そこまで頑ななのには理由があるのだろう。この面会を受けたのもその辺を聞きたかったから。

だってバスグルの内政が混乱しているのは知っている筈。そこに合わせて30名近い大所帯を迎えるのは難しいのは目に見えている。私的にはモーブルに関係する問題だから、モーブルから5名程同行すれば十分だと思っているけど、アルディアとレッグロッドも国の面目もあり同行者を出したいのだろう。その気持ちを拒むつもりはないけど…


「私は早くバスグルに行って問題を解決し、レッグロッドに移りたいのです。だから正直早く決めて欲しいです」

「多恵殿の気持ちも分かりますが、我が国にも事情があり…」

「それは教えてもらえないんですか?」


いつも明るいトーイ殿下は伏し目がちになり黙ってしまった。ビビアン王女が薬の影響とはいえ、アルディアに迷惑をかけバスグルを信用出来ないのは分かる。けどモーブルとも和解し改善しようとしているのだ。そこまで頑なになるのは他に理由があるの?


少し考えたトーイ殿下は明日まで待って欲しいと言い、陛下に許可を得ると話した。そして私の手を取り真剣な眼差しを向け


「アルディアは何よ貴女を大切に想っております。そこは知っておい欲しい」

「はい」


こうして明日また会う約束をした。この後気不味さを誤魔化すかの様に、トーイ殿下は明るく振る舞い楽しいお話を聞かせてくれた。

こうして5刻前に殿下は退室された。どうやらこの後にレッグロッド側と会談があるらしい。どっと疲れた私は気が抜けソファーに寝転がりうだうだしているとそのまま眠ってしまった。


目が覚めると寝室のベッド。また皆さんに迷惑をかけたと反省。恐る恐る部屋に行くとフィナさんがやさしく微笑み、食事にするか湯浴みを先にするか聞いてくれる。時計を見ると既に6刻前。湯浴みを先にしゆっくり食事をしてるとフィナさんが明日の予定を教えてくれる。どうやら寝ている間にエルビス様が部屋に来たようだ。

陛下は明日のお昼前に帰城され、そこからは分刻みで予定が入り城内は更に忙しくなる。そして陛下から帰城し一番に私に会いたいと連絡が入っているらしく、昼からの予定を押えられてしまった。


『まぁ…王妃様の容態やその他もろもろ気になっている事があるから、いいんだけど正直怖いな…』


そう思いながらフィナさんの報告を聞いていたら最後に


「グレン殿下とフィル殿下の侍女長からお休みになる前にお会いいただきたいと申出がございました」

「分かりました。ではフィル殿下を先に伺い、その後にグレン殿下の元へ向かうと連絡してください」


こうして王子の寝かしつけ要員として部屋に伺う事が決まり、夜着からワンピースに着替えフィル殿下の元へ向かう。時刻は7刻前。フィル殿下には少し遅い時間だ。

部屋に着き扉を開けるとぬいぐるみを抱っこし、扉の前で待ち構えている殿下にキュン死寸前の私。殿下は来るのが遅いと言わんばかりに「め!」と私のワンピースの裾を引っ張り頬を膨らます。


『可愛い過ぎる…やられた…』


心の中で萌えまくる私。次子供を産むなら男の子が欲しい…


『えっ?誰との子?』


脳裏に婚約者の顔が浮かび、恥ずかしくなって顔に熱くなり一人焦っていると


「まー こち」

「まー?」


確かにフィル殿下は私を見て"まー"と言った。そして私の手を握り寝室の方へ歩いて行く。最近お言葉が増えた来た殿下。でも分からない言葉も多く乳母さんや侍女さんに通訳してもらう事が多い。


『そう言えばここ最近殿下は私を見て"まー"と言う。私の名前に"ま"の文字は無い。先日も侍女さんになんの事か聞いたがはぐらかされてしまった。やっぱり気になり再度侍女さんに聞くが、彼女達は完全に目が泳いでいる。それもバタフライ級に。


『これは直で殿下に聞いた方がいいかも』


そう思いベッドに入り就寝準備が出来た殿下にそれとなく聞いてみた。すると殿下は寝室の壁を指さし


「まー」


小さな指の先には王妃様の肖像画が。確か幼い殿下が王妃様を忘れないように部屋の至る所に王妃様の肖像画を置いていると侍女長が話していた。あれ?"まー"って王妃様。でも何で私も"まー"なの?


そして殿下はまた私を"まー"と呼び、お休みのキスを強請る。嫌な予感満載ではあったが、取りあえず幼い殿下を先に寝かしつける。たどたどしい言葉でいっぱい話した殿下はあっという間に寝付いた。殿下の手が離れたのでゆっくり寝室を出て真っ直ぐに侍女長の元へ行き


「侍女長さん。殿下の"まー"とはどういう意味なんですか?」

「あ…」


口籠る侍女長とそそくさと逃げていく侍女さん達。もー真っ黒な彼女らを集めて追及すると…


「はぁ⁈」

「申し訳ございません。母恋しさに情緒不安の殿下を思いつい…」


そう殿下の"まー"は"お母さん"を指す言葉だった。そう知らぬ間に私はフィル殿下の"母"になっていたのだ。必死に言い訳する侍女さん達に文句の一つも言いたいが、まだ母親が必要なお年頃の殿下。そんな殿下は母と会えず毎日寂しい思いをしている。そんな殿下の為にとった行動に私は怒るこる事が出来なかった。

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