下着
ビビアン王女の贈り物は何かなあ?
「あ…」
箱の中には下着?ブラジャー?らしきものが入っている。この箱庭にはブラジャーは無く、コルセットと一体型したビスチェの様な下着で胸とウエストをホールドする。そのコルセットはハードタイプとソフトタイプとあり、普段はソフトタイプを着用している。
「下着が入っているから殿下は、あんなに真っ赤な顔をして部屋で一人で開封する様に言ったんだ」
この世界の男性は極甘なセリフも言うし閨事もさらっと言うが、こういった事は恥ずかしいのかもしれない。そう思いながらまずは同封されてたビビアン王女の手紙を読む。
手紙にはカノの箱庭は気温が高く住人の服装は肌を露出する者が多く、恐らく他の箱庭の住人が訪れれば驚くだろうと書いている。日本育ちで猛暑を経験した私は薄着に抵抗はない。それに元の体系はゆるキャラだから外でキャミやショートパンツなんて皆無。でも家で一人でいる時は短パンにタンクトップ姿だった。
「あれこれ…水着?」
それを手に取ると生地が違う事に気がつく。もしかして熱い国だから水浴びをしたり泳いだりするのかもしれない。そう思いながら手紙の続きを読むとやっぱり水着のようだ。水浴び用だと書いてある。その手紙を読み落ち込んでしまう。
『それはカノの箱庭のタレックスという国の水浴び用の服になります。この国は年中暑くモーブルのような装いでは直ぐに暑さで倒れてしまう。タレックスの国民は腕や脚を出しそれを身に付け水浴びするのです』
今の私なら着てもいい気がして試着する事にした。そしてある事に気付く。試着中にフィラが来そうだ。こんな時に限って来るような気がする。この箱庭からしたら裸に近い恰好をしていたらフィラを煽ってしまう。本気で迫られたら抗えない。でも着てみたい。好奇心に支配された今の私は、目の前のエロイ白のレースのビキニを着てみたくて仕方ない。
『てん君!』
てん君を呼び思念でお願いする。
『お願いがあるの。結界的なものを張る事は出来る?』
『けっかい?』
結界を知らないてん君に説明をする。すると狭い範囲ならフィラと妖精達から身を隠せるそうだ。後は部屋にいるアイリスさん寝室に入らない様に言えば大丈夫。
『じゃぁ!てん君お願い』
『てん できるこ まかせる』
こうして部屋のカーテンを閉めてアイリスさんに寝室に入らない様に言い、てん君に結界?的なものを張ってもらい早速着替えた。
『あ…』
ビキニを着て鏡の前。鏡には唖然とする私が映っている。ビビアン王女の手紙には私が小柄だから子供用のサイズしか無かったと書いてあった。
『カノの子供の発育良すぎ!』
サイズ感は…ウエストや身周りは丁度いいが、胸のカップとお尻がガバガバなのだ。つまり貧相って事。鏡を何度も見ても貧相な自分がいる。私を不思議そうな顔をしたてん君が見上げている。
ため息を吐いていたら急に立ち上がったてん君が
『フィラ たえ さがしてる みつかる』
『えっ!マジで。ヤバいこんな姿見せれないよ~』
慌てて着替えてビキニは箱に入れ、ベッドの下に隠し身なりを整え深呼吸する。そしててん君は結界的なもの解いた。すると間髪入れずにフィラが現れ抱きしめてくる。
「何があった⁉︎妖精が多恵が消えたと慌てて知らせに来たぞ」
「えっと…」
返答に困っていたらてん君がフィラの脚を叩き
『おんな ひみつ ある フィラ きく よくない』
『はぁ?秘密だと!他の男と逢引か』
私の全てを知りたいフィラが私の行動が分からないのが気に食わない様で食い下がる。でも言える訳ないじゃん。それに貧相で胸もお尻も足りなかったなんて…
結局てん君が盾になってくれ、【女の秘密】で無理やり納得してくれた。不貞腐れたフィラに私から口付けをしお帰りいただいた。
「ビビアン王女はとんでもないモノを贈ってくれたわ」
そう呟き隠したビキニを持って部屋に行き、アイリスさんに衣裳部屋の奥底に隠してもらった。きっとあのビキニが日の目を見る事は無いだろう。そう思いながら早めに休んだ。
翌日、午前中は特に予定はなく部屋でまったりしている。3国とバスグルの皆さんは忙しいみたい。これを期に互いにいい取引と友好が築ける事を願ったいた。
そして昼食前に部屋にチェイス様が来た。やっと陛下の帰城がきまり、チェイス様の表情が柔らかくなった。私がモーブルに来てからずっと忙しかったもんね。
「午後からアルディア側から面会の申し込みが入っております。如何なさいますか?」
「お受けします」
そう返事するとチェイス様がまた困った顔をし話し出した。
どうやら私がバスグルに渡る際に各国から騎士や文官が同行するが、各国が希望者数の折り合い付かず揉めているそうだ。
揉めている光景が目に浮かび苦笑いすると、釣られてチェイス様も苦笑いする。
今私を保護しているモーブルとしては各国5、6名を想定していたが、アルディアとレッグロッドは10名以上を想定していた。
「グリード殿下からそんな大勢は受け入れ出来ないと。連日調整中でございます」
「お疲れ様です」
これに関しては最後まで揉めそうだ。
アルディアもレッグロッドも会談の報告を本国にする為、伝書鳥の往来が頻発し、伝書鳥の世話役が大忙しらしい。後でポテチを差入れしようと思う。
そしてお昼までチェイス様と雑談していたら、チェイス様が目元を押さえる。どうやら書類の読み書きが増え、眼精疲労を起こしているようだ。
「チェイス様。もしお許しいただけるなら、手と腕に触れていいですか?」
「なっ!」
「勘違いしないで下さい。私の居た所では疲れとるマッサージがあり、それを施術したいだけで邪な思いはありませんから」
女性から男性に触れる事はこの世界では恥ずかしい事とされ、品性と慎みの無い女性とみなされる。
少し戸惑い気味のチェイス様から許可を貰い、手のひらと腕の目のツボをゆっくり指圧していく。かなり凝っているチェイスは指圧する度に小さな呻き声を上げ、眉間に皺を寄せている。痛いが施術の後は血行が良くなり楽になるはず。もみ返しを起こさない様に少しだけにした。
指圧を終えるとチェイス様の額に汗が滲む。
「終わりましたよ。初めてだから痛かったでしょ」
「はい。経験した事のない痛みでした。でも…」
チェイス様は驚いた顔し腕や首を回している。そして体が軽くなったと話し顔色が良くなった。きっとツボを押した事で血の巡りがよくなったのだろう。自分で指圧できる様にツボを簡単に説明し、自分でも指圧できる場所を教え疲れた時に軽く刺激する事を勧めた。
「強く押したり長く指圧するのは反対にダメですよ。適度にしてみて下さい」
「ありがとうございます」
こうして指圧をチェイス様が文官さん達にも教え、あっという間に文官さんに広まり、事務効率が上がったそうだ。私はしばらくの間、城内の文官さん達にお礼を言われる事になった。
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