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順番

モーブル側に補償について話す事になり…

「では多恵様。昼食をとりながら先程のお話をお聞かせいただきたい」

「あ…はい…」


お昼休憩となり一旦部屋に戻ろとしたらチェイス様に呼び止められ、そのままエスコートされチェイス様の執務室に拉致られる。

遠い目をしたら後ろを歩くアッシュさんが小さく笑う。重い足取りの私に反してチェイス様の足取りは軽い。やっとチェイス様の執務室に着くと、急な変更なのに既に2名分の食事が用意されていた。ここで無線的な物が設置されているを確信した私はチェイス様に質問する。


「城内の伝達が早いのは無線的な物があるから?」

「むせん?」


首を傾げるチェイス様。私の質問に答えるより先に無線について聞かれ、要らぬ事を話したと反省し口籠ると


「チェイス様。今はお時間がございません。おそらく()()は多恵様の世界の知識ではないかと。我々がお聞きしていいものでは無い可能性もございます。まずは先に急ぐお話を…」


アッシュさんの助け舟で無線の話は終わり、後日アッシュさんが城内伝達の仕組みを教えてくれた。城内の各所には伝達役がいるらしく、その伝達役は伝達を頼まれるとリレー方式で連絡を回す。その際近道となる秘密通路を通るため、信頼が厚く身元のしっかりしている者しか伝達役になれないそうだ。


やっと席に着き食事が運ばれ食事を始めるが、終始チェイス様の愚痴を聞かされ食が進まない。心配したアッシュさんが何度か声をかけてくれるが状況は変わらず諦め、ストレスまみれのチェイス様の愚痴を聞くことにした。やはりグリード殿下はバスグル寄りの発言が多く、バスクル側の要望を押してくるそうだ。


「亡くなったバスグルの労働者に対して我が国に非があるのは認めますが、元々はバスクルの内情が悪く不正に我が国に入国し起こった事。一方的に我が国に全ての非を押し付けられても…」

「…」


確かにそうなんだけどね。どっちもどっちって気がする。但し人が亡くなったのは確かなんだから、それに対する保障はしないといけないと思う。それは双方が同意する保障であり、やっぱりモーブル側が金銭的な保障が必要だろう。

しかし陛下不在の今は即決は無理。でも予算を立て実現可能か調べる事ならチェイス様でも可能だろう。


そう私が思いついた策は遺族への見舞金。支払い予定の詐取された賃金だけでは遺族の生活はままならない。かと言ってその家族にずっと金銭を負担する訳にも行かない。そこで見舞金として一時金を支払う事を和解とし、それ以降の責務を請求しない旨を書面に残す。

バスクルの遺族は当面の生活費は保証され、モーブルは長い保障をおこなわなくて済む。


『それ以前に亡くなったバスグル人は二国の問題に巻き込まれたのだ。まず初めに誠心誠意の謝罪をしないとね…』


はじめに不正を行った貴族から回収した詐取された賃金と、取り潰しになり没収された貴族の私財額を確認。そしてバスクル人の帰国の費用を差し引いてどのくらい残るか。またどの位の補償するのかを協議し、実現可能か話し合わないといけない。

その旨をチェイス様に説明をする。すると徐に立ち上がったチェイス様が、私の隣に来て跪いて手を取り感謝の言葉を述べた。


「あの気持ちは分かりますが、まずは実現させる為に精査するのが先ですよ。そしてバスグルから同意を得れた時にいっぱい感謝して下さい」

「申し訳ございません。妙案に思わず興奮してしまいまして」


こうして午後からの会議後に予算を組めるか調べてくれる事になり、決済は陛下が戻ってからになった。でも陛下も帰っていきなり補償の話をされても戸惑うだろうから、伝鳥を使い連絡を入れる事になった。


愚痴も言い策を得たチェイス様の顔色は良くなった。でも私はまた確実に痩せたよ。あと少しで午後からの会議が始まるので少しでも回復しようと、紅茶に大量の砂糖を入れ糖分チャージをし会議に向かう。

会議室に戻るとまだ雰囲気は悪く苦笑いをしていたら、グリード殿下が来て


「多恵殿。明日でいいのでお時間をいただけませんか?」

「えっと予定を把握していないので、チェイス様に確認してからでいいでしょうか?」

「ありがとう。ビーから荷物と手紙を預かっているのと、相談したい事があってね」


ビビアン王女からの手紙はわかるけど相談って何?


『怖い怖い…』


心の中で焦っていると表情に出ていた様でグリード殿下が笑っている。そして大したことでは無いと殿下は言うが、王妃様の件あり出来ればあまり話をしたく無いだけど…無理か。

面会を受けてもらい機嫌良くなったグリード殿下が、皆に声をかけ少し会議室の雰囲気は良くなった。

こうしてチェイス様が遅れて到着し午後の会議が始まった。

午後からはバスグル人の帰国の順番が話し合われた。モーブル側は収穫期を加味し順番を決め、バスグルは家族に事情がある者が優先されている。


協議の結果、家族に病人がいる労働者から帰国する事になった。これに関しては双方の優秀な文官さんが詳細を話合い次々と決まり、あっという間に帰国の順が決まった。第1陣は10日後となりグリード殿下とバルグル一行が帰る時に30名ほどが帰国し、3週間ほど空けて第2陣が帰国する。そして全員が帰国するには数ヶ月かかる様だ。


午後からは恙無く会議は進みあっという間に夕刻になり今日の会議を終了した。やっと終わり気が抜け両手を上げて伸びていたら、グリード殿下とチェイス様が振り返りこっち向かってくる。


『やばい!この流れは拉致られる!』


慌てて立ち上がりアッシュさんの元に駆け寄り、アッシュさんの手を取り小走りで会議室を飛び出した。足の短い私は小走りなのにアッシュさんは早歩き! その上焦る私を見て笑っている。


「アッシュさん。笑い事ではありません! 早く部屋に帰らないと、また拉致られます」

「でしたら失礼」


アッシュさんは私に掴まれた手を引っ張り私を抱き上げ、足早に廊下を歩く。悔しいが私が走るより早い。今日の当番騎士のエーデンさんも同じく早い。こうして無事部屋に逃げ帰ることが出来た。けど…

やっと落ち着いた頃に文官さんが来て明日の朝一からグリード殿下とチェイス様及びエルビス様と面会が決まったと告げられる。肩を落としていると文官さんが綺麗な箱を差し出し


「?」

「チェイス様からでございます」


箱を渡した文官さんは礼をし帰り、箱を開けると…


「チョコ?」


箱には沢山のチョコが入っていて…


「あっ!ホワイトチョコ」 


そう大好きなホワイトチョコが箱の真ん中に鎮座している。思わず箱の中をみて顔が綻ぶ。チョコに機嫌取りされたチョロい自分に苦笑いしながら、ホワイトチョコを頬張ったのだった。

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