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ワイルド

久しぶりにグリードに会う多恵だが…

バスグル一行が城門をくぐった。先頭の騎士さんは見覚えがある。確か…


『ビビアン王女の専属騎士のウィルソン様だ』


彼はアルディアの舞踏会でお会いした時より一回り成長され、大人の色気が増しモーブルの女性の視線を集めている。


『私的にはゴリマッチョになって残念だな』


そんなつまらない事を考えていたら目の前に馬車が到着した。私に気付いたウィルソン様が微笑みを湛え会釈し馬車の扉を開けた。そして


『およ⁈』


グリード殿下の登場にお迎えをした皆んなが息を呑む。何故ならバスグルに向かわれる前の殿下と印象が全く違うからだ。

バスグルに向かう前のグリード殿下は細マッチョで甘いマスクに優しいオーラを纏った男性ひとだった。

それが日焼けしちょいゴリマッチョになり、顎髭を蓄えワイルドで危険なモテ男で帰ってきたのだ。別のベクトルで城内の女性のハートをわしづかみしている。


『確かビビアン王女が”逞しくなられ、ますます惚れましたの”と手紙に書いてあったわ。これか…』


グリード殿下は真っ直ぐグレン殿下の元に行き、胸に手を当て会釈され陛下の名代を務めるグレン殿下にご挨拶されている。

グレン殿下は緊張した面持ちで挨拶を受け、少し震える手でグリード殿下に握手を求めた。グリード殿下は立派に成長されたグレン殿下を微笑ましく見つめて両手で握手をした。グリード殿下が何か言ったみたいで、グレン殿下は真っ赤な顔し照れている。


『あっシリウスさん…』


グレン殿下の後ろに控えるシリウスさんは嬉しそうだ。側で見ている私も嬉しくなってきた。


「積もる話もおありでしょうが、それは正式な挨拶の後に…」


チェイス様が皆さんを謁見の間に誘導する。するとウィルソン様が目の前に来て騎士の礼をし


「こうしてまた女神の乙女様にお目通できました事に喜びを隠せません。ますますお綺麗になられ…」

「ウィルソン。多恵殿は仰々しい挨拶は苦手なのだ。お前の気持ちも想いも分かるがその辺になさい」


褒め褒め攻撃が始まる前にグリード殿下が止めてくれ、謁見の間へとウィルソン様を促してくれた。相変わらず大人で気遣いの出来るお方だ。流れからグリード殿下にエスコートされ謁見の間に移動となった。道すがら殿下はバスグルであった事柄を楽しそうに話してくれた。そしてすれ違うお仕えの皆さんが殿下に


「お帰りなさいませ」


と声をかけ、殿下は嬉しそうに手を上げて応えている。そんな殿下を微笑ましく見ていたらあっという間に謁見の間に着いた。さぁ!今から公式な挨拶が始まる。何度立ち会っても慣れない。それに2度目とはいえまだ慣れないグレン殿下のご挨拶だから、私が緊張してしまう。

緊張しながらグレン殿下を見守っていたら、少し涙目のシリウスさんが視界に入る。視察でレッグロッドに行くまで、勇ましく男らしい男性ひとだと思っていたけど、彼は案外涙もろくナイーブなところがある。そのギャップに萌えてしまった。ちょろい自分に思わず


「ふふふ…」


口元を手で隠し小さく笑ってしまう。挨拶が終わり静まった瞬間に私の笑い声が目立ってしまい、皆んなからの視線を集めてしまった。


『あちゃータイミング悪し。これじゃグレン殿下のご挨拶を笑ったふうに見えるじゃん!』


ひとり焦ってあたふたしていたら、グレン殿下の後ろに控えるチェイス様が、殿下に何か耳打ちをした。すると何故か殿下が眩しい笑顔を向け親指を立てた。

チェイス様が何を言ったかは分からないが、気不味くならなくて良かった。


『後でチェイス様にお礼を言っておこう』


こうしてやっと公式な挨拶が終わり、グレン殿下は退室されシリウスさんがグリード殿下の元に駆け寄る。そう2人は親友でバスグルに渡った殿下をシリウスさんは気に掛けていた。数名グリード殿下の側近がバスグルに同行しているが、他国でご苦労されてないか心配だったのだろう。


『ビビアン王女の手紙ではそんな心配は不要ぽいけど』


2人は握手をして楽しそうに話している。その様子を微笑ましく見ていたら、ウィルソン様と一緒に騎士さんが1名こちらに向かって歩いてくる。バスグルの騎士服はリリスの箱庭の3国の騎士服と違い、マントもなく装飾も少なく軍服の様だ。ぼんやり見ていたらウィルソン様が目の前に来て胸に手を当て微笑んで


「正式にご面談いただいた時にご紹介させていただきますが、この者は多恵様がバスグル滞在中に護衛するオーエン卿にございます」


いきなりバスグルでの専属騎士を紹介されてしまった。人見知りを発動すると、ウィルソン様の後ろから目の覚めるような碧色の癖毛に蜂蜜色の大きな瞳の美丈夫が微笑み騎士の礼をしている。


第4女神の箱庭の住人はリリスの箱庭の住人と違い、オリエンタルな面立ちをしていて色っぽい。一歩前に出たオーエン卿が


「女神の乙女様にご挨拶申し上げます。高貴なお方の護衛を拝命し恐悦至極に存じます。もし乙女様がお許しいただけるのなら、その美しい指先に親愛の口付けをお許しいただきたく…」

「あ…えっと…」


イケメンにそんな事言われ、イケメン慣れした筈なのに赤面し狼狽えていると


「オーエン殿。多恵殿は奥ゆかしくシャイなのだ。あまり距離を詰めないでやってくれ」


振り返るとグリード殿下が苦笑いをし歩み寄る。オーエン卿はオーバーアクションで”残念”だと言い一歩下がりウィンクした。


『今のでオーエン卿は”ナンパな人”に分類されました』


私は元々ナンパな人は苦手だ。その手の人は距離感ないからね。警戒した私に気付いたグリード殿下が、護衛騎士は他にもいるから安心する様に言ってくれた。本当に気遣いの人だ。


こうして無事にグリード殿下とバスグル御一行が到着され、明日から面会と会合が続く。

今日はこの後の予定はなく、部屋で休む事にした。いつもこんな時はシリウスさんが部屋まで送ってくれるが、今日はグリード殿下の元へ向かった様だ。


リチャードさんと気楽に部屋に戻っていたら、向かいからカイルさんが歩いてきた。どうやらアルディア側と商談があった様だ。カイルさんを見るとお疲れの様で、いつもの軽さはない。


「多恵様!」


私に気がつき手を振りながら駆け寄るカイルさん。そして忙しいと愚痴る。


『これは愚痴を聞いてあげた方がいいのかなぁ…』


そう思いこの後の予定が無いならお茶休憩しようと誘った。目を輝かせて二つ返事したカイルさんはエスコートを代わり、楽しそうに私の部屋へと向かう。そして部屋に着くと急にカイルさんをお招きしたのにお茶の準備がされいてる。対応の速さにまた無線疑惑が私の中で浮上する。


「いやーモーブルは食べ物が美味しく、食事の時間が楽しみで楽しみで」

『あー2回言ったよ…』


そう言いながら楽しそうにお茶菓子を食べているカイルさん。一頻りお茶を飲み終えたら、ここから愚痴のラッシュが始まる。どうやら彼は私のバスグル行きだけでなく、農作物の輸入に関してモーブル側と話し合いも任され超忙しい様だ。


「はぁ…」


一際大きい溜息を吐いたカイルさんはテーブルに頬杖をついて


「アルディアの王宮勤めのサリナ嬢がアーサー殿下の妃になるとお聞きしました。俺が好きになるとその女性は直ぐお相手が決まってしまう。俺は女神リリスに嫌われているんですかね…」

「出会うのが遅いだけで必ずカイルさんの運命のお相手はいますよ」


そう励ます?と、また溜息を吐いたカイルさんが


「多恵様は愛され選びたい放題でしょうが、モテない俺は切実な悩みなんですよ。俺も想う女性ひとが欲しいですよ」


どうやら私が召喚されてから忙しいらしく、縁組をもらってもお見合いする間も無いそうだ。


『意外だ…』


カイルさんは正統派の美形で、アルディアでもモーブルでも女性の視線を集めていたし、身分も次期王の右腕で将来有望株なんだけどなぁ…


仕事とプライベートの愚痴を吐き出したカイルさんはスッキリした顔をし帰って行った。

やっと落ち着きソファーでまったりしていたら、モリーナさんが明日の予定を知らせてくれる。明日は早速バスグル側と労働者の一時帰国について話し合われる。これでやっとモナちゃん達を家に帰して上げれる。


私の口利きで王家御用達の機織りの工場で働いているモナちゃん。彼女は第一陣で帰る予定になっている。モナちゃんの織物に魅了されたゴードンさんが、モナちゃんがまたモーブルに来てくれるか心配らしく、毎日作業場に出向いていると聞いた。そしてモナちゃんの彼氏ジャスに疎まれているそうだ。


「はぁ〜やっとだよ」


遅くなってしまったけど、バスグルの皆さんを故郷に帰してあげれると思うと、胸が熱くなり幸せな気分で1日を終えた。

お読みいただき、ありがとうございます。

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