表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
363/443

実父

チェイスの呼び出しに思い当たる節がなく…

昼食後、重い体を引きずりやっとチェイス様の執務室に着いた。許可を頂き入室すると顔色の悪いチェイス様が出迎えてくれる。やはり陛下不在の負担が大きいようだ。


『エルビス様の窶れ具合はもっとヤバかったもんなぁ…』


後でフィラにお願いして滋養薬草を分けてもらい栄養ドリンクを差し入れしよう。

ソファーに座りチェイス様と向き合うと、書類の山から封筒を取り出し目の前に置いた。


「金融機関設立の案です。一読いただきご助言の程、よろしくお願いいたします」

「はい。しっかり読みたいのでお時間いただきますね」


今回の呼び出しの目的はこれ? これなら文官さんに届て貰えばいいはず。他に何かあるとみた。

すると私の表情から察したチェイス様が笑いながら人払いをした。そして


「流石多恵様です。ご足労いただいたのは別件でございます」

「でしょうね。お聞きします」


チェイス様は座り直し、真っ直ぐ私を見据えて


「グリード王弟殿下が予定より早くお着きになり明日登城なさいます」

「えっ!急ですね」


チェイス様の話では既に港に着き、今晩はタバス伯爵邸に宿泊し明日に登城される。どおりで城内が慌ただしいと思った。バスグル側の受け入れに忙しいんだ。


「今、城内は王妃の容態が良くないと噂になっております。事実をグリード殿下にお伝えするかは、陛下のご判断となり、それまでグリード殿下のお耳にこの事が入らないようしなけれななりません。城内の者には箝口令を出しております。多恵様もそのおつもりでお願いいたします」

「分かりました」


そっか…陛下が今王妃様の元に行き、王妃様の意向を確認しているんだった。その答え次第ではグリード殿下には事後報告になる。呼ばれた理由が分かり安心し、やっと美味しそうなお菓子に手を伸ばしたら


「あともう一つ…」

「?」

「まだ正式にご婚約もされておられませんが、グリード殿下はバスグル側と認識いただきたい」

「え…と、私が知らない間にバスクルと揉めてます?」


今の言い方ではモーブルの内情はグリード殿下に知られたくないと取れる。グリード殿下はモーブルとの労働協定の仲介と、ゆくゆくビビアン王女の王配となる為に、私がモーブルに移ってからずっとバスグルにいる。すなわち正式では無いが()()()()()と認識されている様だ。


すると表情を厳しくしたチェイス様は正式に労働協定を結ぶまで油断できない事。そして少しでもモーブルに有利になる様にしたい事を話した。私には国家間の事は分からないし、仲を取り持つなんて出来ない。だから


「分かりました。慎重な発言を心がけます」


そう告げそれ以上は言及しなかった。これに関しては私が口を挟むことではないからね。

やっとチェイス様との話が終わり、仕事の邪魔にならない様に退室する。少し後味悪い話に気落ちしながら廊下を歩いていると中庭横の廊下に出た。ふと中庭に視線を向けるとベンチにグレン殿下が座っていた。あれ?この時間は講義(勉強)の時間だった様な気が…

気になり近づくと少し離れた所に護衛騎士が控えていた。よく見るとシリウスさんじゃない。余計に気になり声をかける。


「こんにちはグレン殿下。休憩ですか?」

「多恵殿…」


眉尻を下げたグレン殿下は何か言い及んでいる。これは話しを聞いて欲しいだ。殿下の前に行き屈み目線を合わせて


「お話相手は必要ですか?」


そう言うと殿下は嬉しそうな顔をして頷いた。立ち上がり殿下の後方の護衛の騎士さんに時間は大丈夫か確認する。許可をもらいついでに?


「今日はシリウスさんはお休みですか?」


シリウスさんの事を聞いてみた。どうやら連日勤務のシリウスさんは、アラン団長の命令で強制休暇らしい。代わりにシリウスさんの次に長く殿下の護衛を務める聖騎士のデレク様が付き添われている。デレク様はちょいマッチョの塩顔イケメンで伯爵家のご令息だけあり所作がきれいだ。ご挨拶するとデレク様は少し屈み顔を寄せて


「お昼前に宰相様とお話されてから、殿下は元気がありません。是非殿下のお心に寄り添って頂きたくお願い申し上げます」

「あ…分かりました」


次の講義まで半刻程あるので、殿下の部屋に移動する事になった。デレク様の視線が後ろに移り振り返ると、殿下が居て私に手を差し伸べた。どうやら部屋まで小さな紳士がエスコートしてくれる様だ。


小さな手に引かれ殿下の私室に向かっていると、すれ違うお仕え人々は慌ただしい。明日来るバスグルのお迎えに準備に忙しいんだ。その様子を見たグレン殿下の表情は曇る。

思わず殿下の手を握り微笑むと、殿下は見上げて可愛らしい微笑みを返してくれキュン死しそうになる。


やっと部屋に着いて向き合って座ると、侍女さんがお茶を入れくれ退室しデレク様が部屋の隅に控える。すると殿下は席を立ち隣に移動して来て、不安気に私の手をとり


「チェイスから明日、叔父上がご帰国なされると聞いた。僕はどんな顔をして会えばいいのか分からないんだ」


真実を知って初めて実父と顔を合わすのだ。恐らく気持ちの整理がつかないのだろう。グレン殿下は日本でいえば小学生。戸惑って当たり前で、周りの大人がサポートしてやらないといけない。

また高速マッハで母性がやって来て思わず殿下をハグする。すると殿下は見上げてとても愛らしい微笑みを向けてくれた。その微笑みにつられて頬が緩む。

それから暫く殿下の不安な胸の内を聞いた。話して行くうちに殿下は落ち着いて来た様で、顔色も良くなって来た。


「グリード殿下とお会いにある時は、シリウスさんやデレクさんに同席いただき、困った時は頼って下さい。皆んな殿下の味方ですよ」

「多恵殿も同席してくるか?」

「はい。もちろん!」


そう返事すると殿下が手招きしたので屈むと


“ちゅ!”


グレン殿下から頬に口付けをいただきました。可愛い行動に胸キュンしていたら、デレク様が講義の時間だと知らせてくれた。こうして次の予定のある殿下とお別れし部屋に戻った。この時の殿下との約束が後で大変な目に合うなんてこの時は考えもしなかった。

お読みいただき、ありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。


Twitter始めました。#神月いろは です。主にアップ情報だけですがよければ覗いて下さい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ