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好景気

久しぶりの自由時間にいただいた手紙を読むことにし…

今日は予定が無くアルディアの皆さんから貰った沢山の手紙を読み返事を書く事にした。手紙が入った箱を開け固まる私。そう毎回読む順番に悩むのだ。


『やっぱり婚約者から読むべきだよね…』


そう思いながらグラントとキースの手紙を両手に持ちまた固まる。すると膝の上に座るてん君が前足でグラントの手紙と叩いた。驚きてん君を見ると


『グラント てがみ たいせつ におい』

『大切な匂いって何?』


思念でそう聞くとまた手紙を叩くてん君。何かあるのかもしれないと思いグラントの手紙から読む事にした。開封するとやっぱり彼の香水がほのかに香り、彼の腕の温もりを思い出し顔が熱くなる。そして便箋を取り出し読む出すと…


「アイリスさん!濃い目のお茶をお願いします」


そういつもと変わらず極甘な言葉にこそばゆくなる。そして予想していた通りの事が起きていた。陛下から賜った領地の屋敷が完成し、そこに婚約者達の部屋が造られいた。そして婚約者たちは家具等の搬入を済ませ、早く一緒に暮らしたい書いてある。次にバスグル行きに触れ


『陛下は騎士の他に文官1名の同行を決めておられ私は志願しました。しかし希望者が多い上にキースも。キースは友人だが彼には負けたくない。また見知らぬ土地で貴女が涙する事ない様に、同行し貴女を全てのものから守りたい』


確かに婚約者が傍に居てくれたら、知らない国に行っても安心できる。


「でもなぁ…」


そう思いながらグラントの手紙を中断し次にキースの手紙を開封した。開封すると封筒に何か入っていて、よく見ると栞で栞からはキースの香りがする。

また顔が熱くなるのを感じながらキースの手紙を読むと、完成した屋敷に自分キースの部屋が出来た事と、その部屋の寝具は私が好きな青色で揃えた事が書いてある。閨事を匂わす事は書かないでほしい。だって嫌な汗をかいてしまうから。


ちなみにキースはグラントに比べてバスグル行きの事はあまり書いていない。最後に一言だけ


『叶うなら多恵のバスグル行きに同行したい。しかしそれは陛下がお決めになる事です。私の我を通して貴女を困らせたくない』


この一文がキースの性格を表している。それにキースはグラントに比べて港の管理が忙しく自由が効かない。自分の責務をちゃんと理解している。


「こういう職人気質なところは本当に亡くなった父に似ている。だからキースを受け入れる事ができたんだ…」


改めてキースへの想いを認識し心が温かくなる。そして再度グラントの手紙を読むと、グラントは行く気満々だ。この手紙の感じならグラントの同行が有力か⁈

そんな事を思いながら手紙を読み進めると、モーブルに不法入国する為に潜伏していたチャイラ人ブローカーを捕まえバスグル人を保護。そして綿花の収穫を最盛期のバース領で一時的にバスグル人を雇い、モーブルの不法滞在者が帰国する際に一緒に帰国させる事が決まり、トーイ殿下がモーブル側と協議するそうだ。


『良かった… アルディアで待機になっていたバスグルの人がどうなったのか気になっていたんだ』


てん君がグラントの手紙が大切って言ったのはこの事だったんだ。私の気持ちを察し助言してくれたてん君にお礼を言い、手紙を中断し目一杯もふった。満足したてん君が寝たので手紙を再度読む。そしてグラントの手紙にもアーサー殿下とサリナさんの婚約が書かれていて、国は吉報にお祭り騒ぎだと書かれていた。


『親友の伴侶が決まり喜ぶ反面、安心したのです。彼の想いが真剣なのは分かっていたましたが、貴女だけはたとえ誰であっても譲れなかった』


グラントは確かにフィラに対しても敵意剥き出しで怯まなかったなぁ… そんな事を考えながら手紙を読み終えた。

そして次は…やっぱり陛下?


次は陛下の手紙を読むことにし、重厚感のある封筒を緊張しながら開封し便箋を取り出した。

冒頭から感謝の言葉が並び恐縮する。そして恩賞に何か贈りたいと書いてあり、望むものをトーイ殿下に託けて欲しいと書いてある。


「う…ん ない!」


からトーイ殿下に辞退する事を伝えておこうっと。


陛下は私の手紙を受け取り、すぐにアーサー殿下とサリナさんとお見合いを設けた。戸惑いながら見合いを受けたアーサー殿下はそれからサリナさんを意識する様になり、婚約はあっという間にだった様だ。

この婚約について貴族達から意を唱える者が出なかったそうだ。その理由の一つはサリナさんが私の専属侍女だった事。二つ目はサリナさんのご実家のバース領が国に貢献した事が大きい。バース領はバスグル人の一時受け入れに、綿花の輸出量が増え外貨を獲得しアルディア経済は近年稀に見る好景気を齎したからだ。


バース領は賃金体制の見直しから全てプラスに回り、サリナさんの王家のお輿入れも問題なく進んだ。

手紙の文面から陛下も王妃様も喜んでおられるのがよく分かる。【ひとみつ】にいい気分で陛下の手紙を読み終えた。さて次は当事者のサリナさんの手紙を読もう。


読み始めると冒頭からサリナさんらしく、私を気遣う言葉が並び嬉しくて泣きそうになる。

そして丁寧な文でアーサー殿下との婚約が決まった事と、モーブルでの仕事を終えた私を労う言葉が並ぶ。畏まった文面に少し寂しくなって来たら


『多恵さんのお節介のお陰で、想う方から求婚されお受けする事に等なりました。私は正直言うと殿下のお側にお仕えし、叶うなら乳母になれれば幸せだと思っておりました。それがまさら殿下の伴侶になれるなんて…』


サリナさんの文章には戸惑いと喜びが見て取れる。少し余計な事をしたかと不安になっていたら


『殿下の心の中には今も多恵さんが居ます。他の女性なら夫の心に別の女性が居るのは我慢ならないでしょう。しかし私は多恵さんを愛する殿下を愛したのです。私と婚約し多恵さんを心から消してしまう様な殿下ならお受けしなかった』


本当にサリナさんは心が広く、ありのままのアーサー殿下を愛しているんだ。そんな素晴らしい女性に愛された殿下は幸せ者だ。ちゃんと理解してる殿下⁈


「あれれ…最後に小さい文字で何か書いてある?」


目を凝らしその小さい文字を読むと


『想う方の傍に居られるのは嬉しいのですが、多恵さんが役目を終えられアルディアに戻って来られた時に、侍女としてお仕えできないのが残念でなりません。その時は友達として仲良くしていただきたい』


この一文を読み思わず泣いてしまった。


「そんなの当たり前じゃん!サリナさんはズッ友だよ」


友の幸せが自分の事より嬉しい。いい気分でサリナさんの手紙を読み終えた。ほっこりした気持ちで次はアーサー殿下の手紙を開封した。やはり王族らしく丁寧な文面に背筋が伸びる。そしてはじめにサリナさんとの婚約の報告が書いてある。その報告が難しい文に寂しく思っていたら


「あれれ…やだ!殿下もまんざらでもないじゃん」


殿下はサリナさんが全てを受け入れてくれる素晴らしい女性だと称賛し、心置き無く私を推せると書いてある。


「私に想いがあると言いながら、手紙の半分はサリナさんとの惚気話ばっかりじゃん」


人の惚気話に胸ドキしながら手紙を読み終えた頃にはお昼前になっていた。お茶を飲み一息吐くと文箱に目が留まる。


「これを全て読み終えるのはいつになるんだろう」


そう思っていたら誰か部屋に来た。アイリスさんが対応してくれ


「多恵様。チェイス様が午後からお時間いただきたいとの事。如何なさいますか?」

「大丈夫です。チェイス様の都合に合わせます」


こうしてお昼からチェイス様の元へ向かいます。何の話か検討がつかないから少し怖いなぁ…

お読みいただき、ありがとうございます。

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