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隠れ蓑

トーイ殿下に頼まれレオを説得中。すると知らなかった事実を知り落ち込んでしまい…

真っ直ぐ見つめるレオさんに困りながら、話のきっかけを必死に探す。すると


「ふふ…」

「レオさん?」


目を細め微笑むレオさん。彼の反応が分からず見ていたら


「やはり多恵様は愛らしく見ていて飽きません」

「えっと… レオさんが縁組を躊躇する理由は何なんですか?」


するとレオさんは目線を下げ自信無さげに


「俺は騎士で考えるより体が先に動く。彼女の兄とは同窓で親交があり、彼女の事はよく聞いていました。彼女は聡明叡智。俺の様な武骨な脳筋には勿体無い」


レオ様はそう言い肩を落とした。精悍な騎士姿しか見た事なくギャップ萌えする私。男前のギャプは破壊力がハンパない。でも私の目から見てレオさんは騎士団副団長だけあり、実力もあり騎士団を纏める技量もある。トーイ殿下の話ではクリスタ嬢はこの縁組に前向きな上、両家も適齢期ギリギリの2人の婚姻を急いできるそうだ。


『後はレオさん次第なんだ。躊躇する理由は本当にそれだけなの?』


根気強くレオさんの話を聞くとやっと躊躇する理由が判明した。それは…


本当マジですか!」

「彼の方が彼女クリスタの想い人なのは兄君に聞き間違いありません。その男性は俺と正反対。想った男性と正反対の俺と一緒になっも彼女は幸せにならない」


そう。クリスタ嬢には長年想いを寄せる男性がいるそうだ。そしてその想い人が…


『まさかキースとは…』


自分の婚約者キースがクリスタ嬢の想い人と聞き動揺する私。キースからも他者他の人からも聞いたことが無い。キースはアルディアの高位貴族の後継ぎで眉目秀麗。国内外の女性の憧れの的だ。話を聞きまた自信が無くなって来て気分テンションが急降下する。

トーイ殿下にレオさんの説得を頼まれたが、今はレオさんの気持がよく分かる。相手が素晴らしい人であればあるほど自分の自信が萎んでいく。例え相手が真剣に自分に気持ちを向けてくれていてもだ。急変した私の顔を見たレオさんが慌てて立上り私の横に来て跪いて


「顔色が良くない。医師を呼びましょか!」

「いえ…体調が悪いのではなく、レオさんの話を聞いていて私も同じ思いをした…いえ、しているので気持ちはよく分かります」

「俺と同じ?」


小首を傾げるレオさんに婚約者達の話をした。婚約者達が真剣に想いを向けてくれていても自分に自信が無く、その想いを疑ってしまう事があると。そして今でも婚約者達が他の女性に想いを寄せられていると不安になる事を隠すことなく話した。レオさんは驚いた顔をしながら最後まで私の話を聞いて


「意外でした。完璧な女性で婚約者の方々の方がご不安に思ってらっしゃるのだと思っておりました。まさか多恵様がそんな悩みをお持ちなんて… 失礼だが親近感がわきます」

()()なんて言われているけど、至って普通なんですよ。でもそんな私に彼らは不安に思うたびに、安心する言葉を送ってくれるんです。そして私も反対に彼らが不安に思う時は私が…」


そう言いかけて恥ずかしくて黙ってしまった。多分顔が赤くなっている。自分から甘い言葉セリフを発しているなんて日本人の私には恥ずかしすぎる。すると少し考え込んだレオさんは


「俺は初めから彼女を知ろうともせず自分を卑下し逃げていました。父からはクリスタ嬢が(この縁組を)望んでいると聞いても、両家が早く婚姻させたく嘘をついているのだと思い、クリスタ嬢もキース殿の婚約が決まり仕方なくと…」

「真意はまだ聞いていないんですよね?」

「怖くて…」


騎士団の副団長であるレオさんがこんなにナイーブなんて知らなかった。しっかり者のクリスタ嬢なら母性をくすぐられるに違いない。良く知らないのに勝手な事を言うけど、2人はお似合いの様な気がする。


「まずはしっかりお話しをしてみてください。為人は実際に会って話さないと分からない。レオさんは人見知りの私が話しやすいお方だから、いつも通りにしてれば大丈夫ですよ」


そう言いレオさんの手を握った。すると握り返したレオさんは急に騎士の顔をして


「国を守る騎士が逃げていては駄目ですね。彼女と向き合い答えを出したいと思います。そこで多恵様にお願いがございます」

「私に出来る事なら」

「真剣に求婚プロポーズするので返事を頂きたい」

「!」


ここにきて求婚プロポーズ⁈。さっきまでクリスタ嬢に向き合うって言ってたじゃん! 急展開に頭がついて行かないのに、私の手を握り真剣な眼差しで極甘な求婚プロポーズをするレオさん。

これ以上婚約者や伴侶候補は困る。真剣なレオさんに正直に自分の気持を伝えることにし


「ごめんなさい。レオさんは素敵な男性だけど恋愛感情は無いんです。でもレオさんとはお話するのはとても楽しい。だから友人ではダメですか?」


平和主義者の私にしてはちゃんと断った方だと思う。すると表情を緩めたレオさんが


「あースッキリしました。断られるのは想定していましたが、やっぱりショックです。でも心は晴れ晴れしこれで前を向けそうだ」


そう言い人懐っこい笑顔を見せてくれた。そして席に戻ったレオさんはお茶を飲み息をついた。でも私は…


『クリスタ嬢がキースに想いを寄せていた事を知らなかった。今は私と婚約しているけど気になる…』

『たえ それ やきもち』

『へ?』


てん君にそう言われ自分の気持を気付き無性にキースに会いたくなる。すると誰かが訪問した様でフィナさん応対するとトーイ殿下だった。心配した殿下が様子を見に来てくれたようだ。


そしてお迎えするとトーイ殿下はレオさんを見て微笑み、レオさんの肩を叩き


「スッキリしいい顔をしている。多恵殿に感謝申し上げる。この男がしっかりしてくれねば第3騎士団は纏まらないのでな」

「殿下ご心配おかけいたしました。多恵様に振っていただき決心がつきました。クリスタ嬢との縁組を受けるつもりです」


レオさんはそう言い殿下に深々と頭を下げた。こうして二人からお礼を言われ()()()面会を終え、ソファーに寝転がる。


そんな私にフィナさんがフルーツが沢山乗ったケーキと香り高いお茶を入れてくれ、頭と心に糖分チャージをし今日の予定を終えた。


後日談。実はクリスタ嬢の想い人はキースでは無く、元第3騎士団副団長のケニー様だった。クリスタ嬢の父親も兄も文官で、屈強な騎士に憧れていたそうだ。そして騎士としては華奢なのに実力のあるケニー様に焦がれ慕ってたが、クリスタ嬢とケニー様の家同士が仲が良くなく打ち明けれずにいた。

そしてクリスタ嬢が年頃になると、次々に持込まれる縁組に困り親友に相談。その友人こそがキースの妹さんで、キースがどんな相手も首を縦に振らない事から、兄であるキースを慕っていると公表しキースを隠れ蓑にした訳だ。



事情を知ったキースは初め妹さんを叱ったようだが、その結果私がやきもちを妬いた事を知り、妹さんを許し…いや感謝したそうだ。その後日読んだだけで卒倒しそうな激甘な恋文が届いたのは言うまでもない。

お読みいただき、ありがとうございます。

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