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中継地

もしかして第1女神ミアの箱庭は問題だらけ?

チェイス様から聞くミアの箱庭は平和で国同士の諍いも無い。聞けば聞くほど乙女レベッカの知識が必要だとは思えない。


『意図はなく単純にその王族がエミリア嬢に好意を抱いただけ⁈』


そうエミリア嬢は嗅覚破壊者で派手だけど高位貴族だけあり、元はとても綺麗だから姿絵とか見て一目惚れかもしれない。そんな事を考えていたらチェイス様がじっと見て来る。多分何かあると思っている筈だ。


『そりゃそうよね。関係も接触も無いミアの箱庭の事をいきなり聞いた来たんだもん。何かあると思うのが普通よね…』


チェイス様に聞かれたら、どう誤魔化そうかと考えていたらエルビス様が書類を持ってやって来た。チャンスとばかりにお礼を言い退室し部屋に逃げ帰る。


部屋に戻るとカイルさんの先触れがすでに来ていて、フィナさんが焦っていた。直ぐに身なりを整え終わった頃にカイルさんが来た。


「お忙しい所、お時間いただきありがとうございます」


カイルさんは普段と違い表情が固い。何かあるのかと身構えていると、カイルさんは人払いをお願いした。婚約者や候補の方でない男性と二人きりになる事をフィナさんが渋ったが、カイルさんは大切な話があると言いフィナを説得し退室させた。


そしてソファーに着席したら、やっと表情を緩めて


「もー大変ですよ多恵様」

「手紙の件ですか?」


やっといつもの軽い口調になったカイルさんを見て私も気が抜ける。そしてカイルさんはレッグロッドの現状を話し出した。結果から言うと()()()()()()か薬になったらしく、国内の貴族は大人しく私に対する反発も減り、レッグロッド王もオーランド殿下も安堵されているそうだ。


「とはいえ前乙女レベッカの血縁者は上げた腕を下ろす事が出来ず、地味に抵抗していますよ」

「そうなんですね」


眉尻を下げ情けない顔をし愚痴をこぼすカイルさんに苦笑いをし話を聞く。一頻り愚痴をこぼしたカイルさんは熱いお茶を一気飲みして


「オーランド殿下の手紙の通り、第1女神ミアの箱庭のヴェルジルス王国の王太子の従兄弟…つまり王の甥にあらせられるローガン殿が正式に求婚状を送ってこられたのです」

「お2人は面識が?」

「はい一応。まだお二人が幼い頃に確か… 第2女神の箱庭のシュートス王国の建国祭で一度お会いになられておられます」


聞けばローガン様が7歳、エミリア嬢が3歳の時の事で、エミリア嬢は全く記憶にないそうだ。


「エミリア嬢はなんと?」

「それが…」


エミリア嬢は全く相手にしてないそうで、他国の王族相手に放置プレー中らしい。王族相手に大丈夫なのか心配したら


「こんな事を口にするべきでは無いのですが…」


そう言いボリューム下げたカイルさんが真面目な顔をして話す。どうやらベスパス公爵家の家門の一部はオーランド殿下との婚姻を諦め、今回の縁組を望みベスパス公爵とエミリア嬢を説得し始めたそうだ。


「ヴェルジルス側の思惑はこの世界の真ん中にあたるリリスの箱庭に中継地を設け、第4、5女神の箱庭への流通を広げたい様です」


第1女神の箱庭は第2女神の箱庭からさらに遠く、一番近いイリアの箱庭との流通が殆どだ。外貨収入を得たいヴェルジルスが目をつけたのがレッグロッドのベスパス公爵家。エミリア嬢がオーランド殿下の妃候補から外れた事を知り、レッグロッドと縁を持ち中継地にと考えた訳だ。


「じゃあ。乙女レベッカの知識が欲しい訳ではないの?」

「いえ。それもある様です」


どちらにしてもエミリア嬢に惚れての求婚ではないのは確かだ。この世界(特に貴族)は政略結婚は当たり前で、恋愛結婚は少ない。だから普通に考えたら他国の王族の血筋との縁は玉の輿であり、本来なら喜ばしい事のはず。だから家門の貴族達は歓迎している。


「ベスパス公爵家は代々レッグロッド王家との縁を築き、レッグロッド帝国でも王家に次ぐ尊い血筋だと考えています。そして縁を持てるお相手(オーランド殿下)がいて、更に国母となれる機会があるのに、他国へ嫁ぐなとプライドが許さないのでしょう」


レベッカ亡き後、王族と縁はあっても王となる王子に嫁いだ者はいないそうだ。だから余計に王子と釣り合う年齢の娘を儲けた公爵の想いは強い。


「エミリア嬢が国母になれば確実にレッグロッドは滅亡します。やはり妖精に慕われる多恵様が殿下の妃になっていただかないと…」

「それは…」


返事に困り黙り込んでしまう。リリスの願い通り妖精とレッグロッドの仲違いは解決するが、オーランド殿下との婚姻は別の話だ。殿下真っ直ぐで素敵な男性なのは分かっている。しかし結婚するのは話が別。まだ殿下を受け入れる気持ちは私には無い。


『曖昧な返事は期待させてしまう。だから…』


「状況は理解できました。ですが殿下との事は過度の期待を持たないで下さい。リリスの願いで妖精とレッグロッドとの仲直りの手助けはします。だけど殿下との結婚はまた別の話です」


感情を込めずそう淡々と伝えると、青い顔をしたカイルさんは徐に立ち上がり…


「思いが先走り失礼な発言お許し下さい」


お節介に気づいたカイルさんは平身低頭だ。幼い頃から殿下を見守り殿下の幸せを願っての事なのは理解している。でも人の恋愛は当人にしか分からない。でもカイルさんの気持ちも分かるから


「カイルさんの気持ちは分かりました。でもね【縁】があればどんなに遠回りしても邪魔か入っても結ばれるものです。オーランド殿下と私に縁があるかはまだ分かりません。それにまだ出会えていない女性が殿下の本当の相手かもしれません。こういう事は傍は見守るものです」


そう告げ怒っていないのをアピる為に微笑んだ。私が怒っていない事に安堵したカイルさんは、静かに座り少し気まずそうにお茶を飲んだ。

そして何もなかったかの様に、バスグルに派遣する騎士の話を始めた。私もそれ以上何も言わずにカイルさんの報告に耳を傾ける。


「バスグルへは騎士5名と侍女と文官各2名派遣する予定です。人選は先にご紹介した乙女専属騎士に専属侍女を中心に選抜中です」

「えっとバスグルでもご準備されるので、そんなには必要ないかと…」

「これでもバスグルに遠慮し減らした方ですよ。陛下はこの倍は付けるように仰り、宰相様と殿下が説得してこの人員となりました」


レッグロッドだけでこの人数か… あとアルディアとモーブルと… 考えるだけで頭が痛くなる。恐らく昼からトーイ殿下との面談があるはずだ。すごい大所帯になる予感がし、バスグルに行きたく無くなってしまった。


『資料は作るから()()()()は許してくれるかなぁ…』


そんな事を思いながら退室するカイルさんを見送ったのだった。

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