第1女神ミア
オーランド殿下の手紙に気になる事が書いてあり、嫌な予感がして…
翌朝。何故かフィラが来なかった。いつもと違うモーニングルティーンに戸惑う。
『フィラ こない たえ さみしい?』
『いつも通りじゃ無いのは落ち着かないわ』
そう言うと尻尾を振って愛嬌を振り撒くてん君。この時点で少し理解した。てん君がこういう行動をとる時は、裏で何か起こっていて隠しているときだ。
『!』
両手でてん君の顔を持ち目を合わせ
『何か隠してる?』
『てってん うそない!』
てん君の瞳は嘘を言っている感じはないが挙動不審。何かあると思ってしまう。
「あまりてんをいじめるな」
振り返るとフィラか立っていて、私の手を取り腕の中に閉じ込めた。そしててん君と視線を合わせ思念で会話している
「何かあったの?」
「あぁ…実はな」
てん君の様子から私が気にする事を分かっていて来てくれたのだろう。初めてあった時より気遣いできる様になったフィラに感動し、フィラから今朝あった事を聞く。
「で!何て答えたの?」
「俺は人とは違うからお世辞は言わない。ありのままを伝えたさ」
「ありのままって…」
何が起こっていたかと言うと、イリアの箱庭の妖精王ロイドから今朝連絡があったそうだ。その連絡は第1女神ミアの箱庭の妖精女王からで、レッグロッドのエミリア嬢に関してだ。
オーランド殿下の手紙にも書いていたが、どうやら第1女神の箱庭のエジアン国の王族から縁組の話が来ているらしく、エミリア嬢の為人をロイドを経由し問い合わせて来たそうだ。ちなみにロイド以外の妖精王は妖力が強く無く、隣の箱庭の妖精王にしか連絡が取れない。第1女神の箱庭は第2女神の箱庭か間にあり、上手く意思疎通が出来ずロイドが仲介した様だ。
「オーランドとの縁組が無くなった話が、エジアンまで届いた様で、乙女の血を引くエミリアを妃に望んだようだ」
この話はオーランド殿下の手紙にも書かれていて、私も昨晩知った所だ。どうやらベスパス公爵家に継がれるレベッカの知識を欲しての事。エジアンは私に接触をしたい訳ではないが、エミリア嬢を娶りたい目的はレベッカの知識だ。すなわち他の箱庭の乙女の知識を得ようとしている。
これに関して私は、私の知識はリリスの箱庭だけでなく、必要ならの他の箱庭でも共有すればいいと思っている。でもそれは女神同志の同意… いや私を召喚したリリスの許可を得れればの話だけど…
でも以前他の女神の箱庭が私に近寄ろうとした時、リリスとボリスは
【異界の知識が必要なら、自分の箱庭の女神が召喚すればいい】
と言い、私に他の箱庭の手助けをする必要はないと言い切った。バスグルに関してはリリスとアリアが話し合いが出来ているからOKみたいだけど。
また一悶着ありそうで思わず嫌な顔をするとフィラは口付け
「俺も乙女や聖人に頼りきりの奴らにいい加減腹が立つ。しかしお前の知識はこの世界で必要なものばかり。求めるなと言いたいがおそらく無理だろう」
フィラはそう言い強く抱きしめる。フィラの顔を見たら何とも言えない表情。その表情を見て歴代の乙女や聖人も同じ様な苦労をしたのかもしれないと思い、ブラックな乙女の役目に遠い目をする。
“コンコン”
そろそろ起きる時間みたいで、アイリスさんが起こし来た。フィラに自ら口付けし帰りを促した。不満そうな顔をしたものの、すんなり帰って行くフィラ。
フィラが帰ると直ぐにてん君が扉まで行き、アイリスさんに合図を送る。すると
「おはようございます」
「フィナさん⁉︎」
「はい。休暇ありがとうございました。少し早いですが今から私がお仕え致します」
そう休暇を取っていたフィナさんが戻って来たのだ。驚いていたらとてもいい表情のフィナさんがテキパキと身支度を手伝ってくれる。支度をしながらフィナさんは休暇中の事を話してくれた。もー汗かく位の激甘な話に渋い日本茶が欲しくなる。
2人は長く邪魔されていた反動か甘い日々を過ごした様だ。元々綺麗だったフィナさんはますます美しくなり、きっと街に出たらナンパのラッシュに合うに違いない。
「ケビンと話し合い多恵様がバスグルかレッグロッドにお渡りになられた後に、婚姻式を挙げる事になりました」
「おめでとう!嬉しいわ!」
《ひとみつ》(人の幸せは蜜の味)の私は胸が温かくなり、さっきまでのブルーな気持ちが消えていった。
ほっこりしながら部屋に行くと朝食が用意されており、いい気分で美味しくいただく。
気分よくデザートを食べていたらフィナさんが
「昨晩アイリス嬢に指示なさったカイル様とのご面会ですが、本日の3刻半で調整致しました」
「ありがとう。なら早く準備しないとね」
急いでデザートを食べカイルさんとの面会に備える。…っとその前に
チェイス様に第1女神の箱庭について探りを入れておきたい。レッグロッド側の情報を鵜呑みせずに、情報を知っておいた方がいいだろう。
食べ終わりフィナさんにお願いし、チェイス様にお伺いを出してもらい返事を待つ。返事は直ぐ来て少しならお時間いただける様で、直ぐにチェイス様の執務室へ急ぐ。
「お忙しいのにお時間いただき、ありがとうございます」
「いえ。多恵様の願いは出来うる限り叶える様に、陛下に仰せつかっておりますから」
そう言い微笑むチェイス様。しかし目の下の隈は隠しきれずお疲れが見て取れる。陛下不在の執務は全て宰相であるチェイス様がカバーしているのだ。
『まだ妖精さんにお願いして、また滋養のある薬草をもらってスムージーを作ろう』
そう思いながらチェイス様から第1女神のミアの箱庭の話を聞く。ミアの箱庭は長く異世界人の召喚は無い。しかし昔に召喚された聖人の知識と技術で箱庭の国は栄えている。
『なら他の箱庭の知識は必要が無いのでは?』
そう口に出しかけて口を噤んだ。何故ならエミリ嬢の縁組の話をモーブルは知らないかも知れない。だから話す内容を気をつけないと…
最新の注意を払ってチェイス様から第1女神の箱庭の話を聞いていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。
『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。
Twitter始めました。#神月いろは です。主にアップ情報だけですがよければ覗いて下さい。




