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疲労

「大丈夫か?」

「う…ん。怠いけど寝込む程ではないから大丈夫」


朝起きるとフィラに抱きかかえられていた。熱が出てる感じは無いが体が鉛の様に重く怠い。いつも顔を合わすと喧嘩ばかりのフィラとてん君は心配げに私の顔を覗き込む。強行スケジュールの疲れからのグレン殿下の件が精神的負担になっているのだろう。フィラが手を上げると掃き出し窓から光の玉がオレンジ色の葉を持って飛んできた。そして何故かてん君がベッドから降りて部屋に繋がる扉を叩く。声をかけモリーナさんが入室し私を見て慌てて駆け寄ったが、私の後ろにいるフィラを見て高速で後退りする。


「そこのお前。多恵がバテている。この葉を料理長に渡し蜂蜜と果物…そうだなプラムと一緒にジュースにしてくれ」

「かっ畏まりました!あの…宮廷医師を呼んだ方がよろしいのでは?」


するとフィラは起き上がりベッドから降りて私に布団を掛けて


「多恵は病ではなく疲労だ。妖精の森の薬草で楽になるだろう」

「申し訳ございません。出過ぎた真似を…」

「いや。いつも多恵を世話してくれ感謝している」


思わぬ労いの言葉にモリーナさんは半泣きで部屋を出て行った。するとてん君が胸元に来て顔を寄せて


『フィラ かんしゃ あめ ふる』

『そんな事無いよ。フィラは…多分感謝できるよ』


てん君にはそう言ったがフィラの反応は私も意外だった。暫くするとモリーナさんがジュースを持って来て、私が飲んだのを確認しフィラは帰って行った。まだ全快ではないけど起き上がれる様になり、モリーナさんに身支度を手伝ってもらう。頑張って少しだけ朝を食べソファーで寝転がっていたらエルビス様が部屋に来た。恐らく視察報告の事だろう。入室して来たエルビス様は私をみて深々と頭を下げる。


「?」

「お疲れの所、大変申し訳ございません。陛下とチェイス様が3刻半からお時間をいただきたいと」

「はい。陛下の執務室ですか?」

「あっはい。ですが本当に大丈夫でございますか?」


苦笑いしながら大丈夫だと答えると不安げな顔をしてエルビス様は退室して行った。振り返りモリーナさんに


「そんなに顔色悪い?」

「お疲れなのが目に見えて…」


陛下とチェイス様に心配かけない様にモリーナさんにチークを濃くしてもらう。そして時間が近づきケイスさんが来てくれる。私を見るなり両手を広げるケイスさん。どうやら抱っこしようとしてくれている。お礼をいい断りゆっくり陛下の執務室へ歩き出す。

何度もケイスさんの視線を感じながら自分のペースで廊下を歩く。そしてやっと執務室に着き入室許可を得て扉を開けると目の前に陛下が居た。そして私の顔を見て眉を顰めていきなり抱きかかえ後ろに控えるケイスさんに耳打ちをし部屋のソファーに下してくれた。

座るといつもはいない女官さんがひざ掛けを掛けてくれ、周りに沢山のクッションを置いてくれる。気分はお座りが覚束ない幼児の様だ。


「陛下これは?」

「体調が悪そうなのでな…流石にソファーに寝転がる訳にいかんしな」

『部屋ではしてますけど…』


やっぱりチークでは顔色の悪さは隠せなかった。何かあった時の為に女官さんが部屋の隅に待機し視察の報告会が始まった。本当は団長のシリウスさんが同席するべきだが、グレン殿下の事があるからかいない。直ぐにチェイス様が各自から受けた報告書に書かれている内容に沿って話をし、いつくか事実確認をあった。視察さんの皆さんは優秀で報告書が完璧で付け加える事も無く直ぐに視察の報告は終わった。


「多恵殿の結論は出ましたか?」


チェイス様にそう聞かれ


「期せずしてレッグロッドの貴族派に釘をさせたので、急ぐ必要は無いと思いました。ですから予定通り、バスグルに向かう方向で考えています。出来るだけ早くモナちゃ…いえ、バスグルの人を祖国へ帰してあげたいんです」


そう応えると陛下もチェイス様も表情を明るした。そしてチェイス様が手を上げると部屋に控えていた女官さんが退室した。恐らくグレン殿下の件だろう。座り直しお茶を一口飲み気を引き締める。


「グレンの件だがまだ知るのもは少ない。それに私としては公表するつもりはない」

「はい」

「シャーロットの考えが分からない今、議論しても答えは出ないだろう。故に私がシャーロットとしっかり話をしてくる。その間城内の事はチェイスとエルビスに任せる」

「御意。陛下がお戻りになるまでしっかり守ってみせます」


こうして陛下のデスラート領に訪問が決定し、チェイス様は準備の為に執務室を後にした。残された私。退席した方がいいのか迷い立ち上がると、陛下に手を取られ隣に座らされる。


「薄々グレンが気付いているのは知っていたし、家臣の間で噂になっていた事も。しかしグレンが理解できると年になるまでは曖昧にするつもりだった。シャーロットは何を考えているのかさっぱり分からんのだ」

「…」


ハッキリとした事は分からないが、自分の人生で悔いのない様に()()()()()()()もはっきりさせたかったんだろう。それに殿下は聡明に素直だ。穿った目で見ず真っ直ぐ受け止めてくれると思っての事だろ。


「この後、グレン殿下に会いに行こうと思っています。微力ですがお力に慣れればと…」


そう言うと強く抱きしめる陛下。ずっと難問が降り注ぎ心休まる暇がない陛下。ぬいぐるみになる事で少しでも癒せるなら頑張るよぬいぐるみ役!

そう思いながら陛下の背中をぽんぽんしていた。すると執務室に文官さんが来たようで、陛下の腕が緩み少し離れて座り直す。

すると入室して来た文官さんが、チェイス様がスケジュールを調整してくれた様で、午後から予定を教えてくれる。


4刻からグレン殿下とシリウスさんと昼食。そして5刻半からレイハント様と面談。そして…


「6刻半から陛下との会食となります」

「!」


思わず隣に座る陛下をガン見すると蕩ける様な微笑みをいただく。


『はぁ…今日もきっとまた窶れて滋養強壮のジュースを飲まされるのか…苦くも無いし不味くも無いんだけど…美味しくは無いのよね…』


そう思いながら目の前に置かれた焼き菓子を頬張った。現実逃避をしていたら、陛下が立ち上がりデスクから資料を持って来た。そして私に渡して読むように促す。


「これ…」


そう資料はバスグル人の帰国の計画書だった。どうやら私が視察中に纏めたようだ。早速目を通すとよく出来ている。でも…


「不法滞在者を優先はいいのですが、一度にこれだけ返すと収穫に影響はでませんか?」

「その辺は雇主である貴族に聞き取りをし、無理のないように決めてある」


そう言われてよく見ると収穫期を終えた所は帰国者が多く、収穫期中やこれこら収穫期を迎える所は少ない。


「!」


いきなり眉間に口付けられ絶句する。資料に集中していて気付かなかった。唖然とする私を見て満足げに微笑む陛下。


「いきなり止めて下さい!心臓によくない」

「貴女には眉間の皺など似合わない」

「いや!険しい顔くらい誰でもしますから」


また口付けされても困るから立ち上がり移動し続きを読む。

資料によれば正規で働きに来て、1度でも帰国した事のある者は除外とする事で働き手を確保している。

私が口を出さなくても自分たちで考え行動できている。この調子なら私が()()移っても大丈夫だろう。


また1歩バスグル行きを実感し疲れも飛んでいった。


「ん?」


気がつくとまた陛下が隣で座っている。まるで後追いの子供のようだ。そう思うと可愛く感じ思わず陛下の頭をポンポンしてしまう。嬉しそうな陛下を見ながら


『次はグレン殿下か…』


そう昼からはグレン殿下のサポートが待っていた。資料をテーブルに置きシュガーポットから大量の砂糖をお茶に投入し、午後の決戦に向けエネルギーチャージ。流石に3杯目を入れようとしたら苦笑いをした陛下にとめられてしまった。

こうして視察の報告を無事終え、そのままグレン殿下の元へ。陛下とハグをし執務室を出るとケイスさんがまた両手を広げ待っている。また断り歩き出すと有無を言わせず抱き上げられる。断ると


「陛下から多恵様を一歩たりとも歩かせるなと言いつかっております故」

「あ…察しました。よろしくお願いします」


陛下の過保護発動で歩く事もさせてもらえなくなりました。

お読みいただき、ありがとうございます。

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