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乗馬

無事?視察を終えやっとモーブルに帰ります。

「急ぎます故、しっかり…そうしっかり俺に掴まって下さい」

「("しっかり"を2度言った)あっはぃ…」


今夜お世話になるブルス子爵邸に日が暮れるまでに着くには馬車では間に合わず、馬で向かう事になりオーランド殿下の馬に乗せてもらう。背後からオーランド殿下に抱きかかえられ密着が半端ない。あたふたしているうちに出発し馬に慣れてくると、殿下の香りに包まれ否が応でも意識してしまう。そして時々殿下と目が合うと破壊力抜群の微笑みを向けられ照れてしまう。

道中は乗馬に慣れない私の為に小まめに休憩を取ってもらい、最後の休憩を終えここからはノンストップで子爵領に向かう。ずっと殿下に抱えられ緊張と揺れに体はガタガタだ。

乗馬を習い1人で乗れる様になれば、こんなガタガタになる事はないかもしれない。


『モーブルに帰ったら乗馬を習いたいと陛下にお願いしてみよう』


そんな事を考えながら殿下に身を委ねていた。すると並走するカイルさんが


「あと半刻もしないうちにブルズ子爵邸に着きます」

「はい。そう言えば殿下達は今晩はどうされるのですか?殿下達も子爵領に?」


だって子爵領に日没後に着いたら帰れないじゃないの?そう思って聞いたら


「我々は貴女を送り届けたら直ぐに帰城します」

「えっ!でも夜は危ないですよ!」


驚いてそう言うと殿下は嬉しそうに


「心配して下さるのか?」

「当たり前でしょう!」


殿下は更に私を引き寄せた。するとカイルさんが笑いながら


「我々騎士は夜間騎乗も訓練し慣れておりますのでご心配ございません」


ご機嫌だった殿下は急に不機嫌になりカイルさんに


「折角多恵様が俺を心配してくれているのに、余計な事を言うなよ」

「おっと!これは失礼。だがオーランド。心配する多恵様の気持ちも考えろよ」

「…」


確かに夜に馬で走るのは危険で、殿下が無事に帰城出来たか心配で夜も寝れない。でも夜の乗馬が慣れてらっしゃるなら少し安心かなぁ…でも


「いくら訓練し慣れているとはいえ、何があるか分かりません。無事城に帰れるようにリリスにお願いしておきますね」

「多恵様…」


頬を染めた殿下は馬上で無ければきっと抱き付き頬にキスしていただろう。ご機嫌な殿下に抱えられ順調に進み、気が付くと日が傾きだし肌寒くなって身震いする。すると殿下が私を引き寄せ更に密着し恥ずかしい。でも殿下の体温で温かくになり震えは止まった。そした殿下の合図でスピードを上げる。日没までに着くには急がないといけない様だ。急ぐのには理由がありレッグロッドは日没後は急激に気温が下がる。どんどん寒く暗くなって来て不安になると、行く先から1騎こちらに向かって走って来る。


「誰?」

「…」


見上げるとオーランド殿下が眉を顰めた。誰が来たのか分からず目を凝らし見ていると


「多恵様!」

「シリウスさん⁈」


そうシリウスさんが迎えに来てくれた。そしてオーランド殿下に並走し熱い視線を向けて来ると、オーランド殿下が私の頭を抱え込んだ。殿下の立派な大胸筋で視界がゼロになってしまい、もがいている内に無事子爵邸に到着した。

やっと殿下の腕が緩み視界が戻ると、屋敷前には視察団の皆さんと子爵様がお出迎え下さった。


『あ…そっか。オーランド殿下も一緒だからね』


そう思っていたらシリウスさんが腕を伸ばし馬から下してくれた。また足腰がガクガクな私を駆け寄ったフィナさんが支えてくれる。すると子爵様は私の前に来て最上級の礼をしご挨拶いただき、知らなかった事とはいえ挨拶しなかった事を陳謝された。反対に申し訳なく


「いえ、黙っていてごめんなさい。行きもお世話になりましたが今日もお世話になります」


そう言いお辞儀した。どうやら先行で到着したシリウスさんが私の正体を明かしたようだ。確かに()()()()()が殿下に抱えられ登場したら困惑するだろうし、もう帰るだけだから隠す必要がないもんね。


子爵様は次に殿下にご挨拶している。殿下とレッグロッドの騎士さんは少し休憩の後に王城に戻るそうだ。子爵様は直ぐに応接室に案内してくれ、何故か右にオーランド殿下、左にシリウスさんという両手に花状態で廊下を歩く。

そして温かいお茶をいただき少しお話した後に、オーランド殿下は帰城される事となった。帰城される殿下のお見送りする為に玄関へ向かう。てっきりシリウスさんもお見送りするのだと思っていたら、気を利かせたシリウスさんは応接室で殿下にご挨拶をしフィナさんの所へ行ってしまった。

隣を歩くオーランド殿下は小さい子の様にくっ付いて離れてくれない。後ろを歩くカイルさんに視線を向けたが目を逸らされてしまった。


『また暫く会えないからなぁ…』


そう思いながらデレる殿下のお相手をしながら長い廊下を歩き、玄関先で集合する騎士さんの元に着いた。殿下の腕から抜けて騎士の皆さんにお世話になったお礼を述べ


「次は乙女としてレッグロッドにきます。その時はよろしくお願いします」


そう言いお辞儀をすると騎士の礼を返してくれた。そして皆さんが見ているのに抱きついて来る殿下。そして耳元で


「貴女が安心してレッグロッドに来れる様に善処します。だからできるだけ早く来てほしい」

「えっと…ダラス陛下と相談して早く来れる様にしますね」


すると殿下は腕を緩め指で頬を突いた。キスをせがまれたが、皆んなが見ていて躊躇すると


“パチン”


カイルさんが指を鳴らすと騎士さんは一斉に後ろを向いた。そしてカイルさんもウィンクをして背を向けた。空気の読める騎士さん達に笑いながら、殿下の肩に手を置いて両頬に口付けた。殿下は目を細め嬉しそうだ。名残惜しそうな殿下にカイルさんが耳打ちをし帰城を促した。こうしてオーランド殿下と騎士の皆さんは騎乗し出発した。


走り去る皆さんを見送り、松明の灯りが小さくなっていくのを見つめていた。そしてとうとう灯りも見えなくなると寂しくなってきた。殿下とは少しの間しか一緒にいなかったのに別れはやはり寂しい。ぼんやり暗闇を見つめていたら手が現れ、前を向くとアダムさんだった。


「冷えてまいりました。お部屋へお戻りを」

「あっはい」


アダムさんに促され屋敷に戻り子爵様と夕食を共にする。食事の席で子爵様からもレッグロッドの話をいろいろ聞くことが出来た。子爵様も王族派でベスパス公爵に思うところがあるようだ。

美味しい夕食を食べてお腹が満たされた上、馬の移動で疲れているのも相まって猛烈に眠くなってきた。視点の合わなくなった私をフィナさんが支えてくれ部屋に戻る。部屋は私の希望通り行きと同じフィナさんと同室。


『フィナさんは嫌かもしれないけど、知らない屋敷(部屋)で1人は寂しいもん』


部屋に行くとフィナさんが湯浴みの準備をし、手伝おうとしてくれるが断り、眠い目を擦りながら湯船に浸かる。


「今日は濃い1日だったなぁ…」


そう呟き目を閉じると意識が遠のく。


「はっ!危ない溺れちゃう」


両手で頬を叩き寝落ちする前に体と髪を洗い上がる。浴室を出るとフィナさんがタオルを持って待ち構え、直ぐに髪をタオルドライしてくれる。湯浴みをし少し目が覚めた私はフィナさんと今日あった事を話し合い、無事視察を終えた事を喜び合う。そして明日の予定をフィナさんから聞いていたら


「ん?」


フィナさんが妙にソワソワしているのに気付く。首を傾げフィナさんを見ていたら、私の視線に気付いたフィナさんが


「先程、シリウス様から明日の宿泊はワイズ子爵邸だとお聞きし緊張してきたのです。あんなに早くケビンに会って話をしたいと思っていたのに…」


そう言い頬を染めるフィナさん。そう明日はバートンさんの所ではなく、フィナさんの幼馴染のケビンさんの所へ行く。

本当はバートンさんの所の方が近いが、私の希望で少し寄り道をし、フィナさんとケビンさんの仲を持つするつもりだ。


あたふたするフィナさんが可愛くて口元が緩む。仲のいい人が幸せそうなのを見て私も胸が温かくなってくる。

こうして疲れているのに遅くまでフィナさんと恋バナをし、日が変わる頃にいい気分で眠りについた。


さぁ!明日はモーブルに帰りますよ!

お読みいただき、ありがとうございます。

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