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暴かれる

城下散策を終え帰り支度の為に王城へ戻り…

帰城するとオーランド殿下が待ち構えていて、馬を降りるなり抱き付かれる。その様子を視察団の皆さんは冷ややかな目で見ている。雰囲気が悪くなりそうで慌てて話題を探し


「殿下。レッグロッドの城下は整備されとても綺麗だし、街の皆さんも親切で買い物も楽しめましたよ」

「…」


オーランド殿下はとても優しい眼差しを向けてくれるが、言葉を発せずただ見つめてくる。すると背後からシリウスさんが声をかけて来て


「殿下。我々は出発の時間がございます。謁見の後にお時間をお取りしますので、一旦エリカ嬢を部屋の方へ」

「…分かった。エリカ嬢。後ほど…」

「あっはい」


こうして一旦部屋に戻り帰りの準備をし、退城前に陛下に謁見する事になった。箱庭に来て1年近く経ったけどレッグロッドの王様に会うのは初めてだ。本来は退城の挨拶は身分の高い者が代表して王に挨拶するのが普通。しかし今回はエミリア嬢の愚行に対し謝罪があり、視察団の皆さんも謁見に同席する事になった。

荷造りを終えると従僕さんが荷物を運んでくれ、視察団の皆さんが待機しているラウンジまでフィナさんと移動する。普段は話をしながら移動するが、まだエミリア嬢に怒りが治まらないフィナさん表情は堅く雑談できる雰囲気は無い。気まずさを感じながらシリウスさん達と合流し謁見の間へ移動。

緊張がエスコートする手から伝わったのか、シリウスさんが引き寄せ頬に口付けをくれて緊張が少しほぐれた。そして暫く歩くと重厚な扉が見えて来た。


『(アルディアでもモーブルでも)謁見の間は何度来ても慣れないのよね…』


そんな事を思いながら入室すると四方に暖炉が設置されているのが目に入る。廊下が肌寒かったから暖かい部屋に気が緩む。ほっこりしたところでシリウスさんにフロアーの中央に連れて行かれ、陛下がお見えになるのを待っていた。しかしなかなか陛下は現れず、暇で周りを見渡すと知っている顔が目に入る。侍女長に文官長それに騎士団の隊長さん達が端に控えている。


『次来る時は乙女としてくるから、皆さんと仲良くしないとね…』


そんな事をぼんやり考えていたら陛下がお見えになられた。

陛下とオーランド殿下が入室され一斉に礼をし、お言葉をいただくまで頭を下げる。

陛下から言葉をいただき頭を上げると、視察団団長のシリウスさんが退城の挨拶を始める。貴族の正式な挨拶や言葉は難しく、いつも何となくしか分からない。ちなみにシリウスさんの今の言葉を要約すると

【今回の視察に感謝する】と【今後も変わらぬ友好を望む】といった感じの挨拶だった。

シリウスさんの挨拶が終わり陛下から退城の許可を得て公式な謁見は終了となる。緊張する謁見が終わり気が抜け、何も考えずまっすぐ前を見ていたら視界に誰か入って来た。よく見るとそこにはオーランド殿下がいて手を差し伸べている。謁見の間は騒然としざわつき出した。今回の謁見は何故か数名の貴族も同席していて、特に令嬢達のヒソヒソ声が目立つ。

慌てて殿下に小声で


「あの…何をするんですか?怖いんだけど…」

「悪い様にはしませんよ」

「嘘だ…」


殿下の手を取らない私に令嬢達からの鋭い視線が容赦なく突き刺さる。するとオーランド殿下は私の手を取り強引に引っ張って行く。怖くてシリウスさんを見るとウィンクされた。

どうやらシリウスさんは何か知っている。

そして陛下の真ん前に連れて来られ、慌ててカーテシーをして頭を下げたら、陛下は立ち上がり私の手を取り手の甲に口付けたので会場にどよめきが起こる。そして陛下は大きな声で


「お初にお目にかかる。レッグロッドの王のハロルドだ。オーランドから貴女の話はよく聞いており、初めてでは無い気がするよ。本当に聞いていた通り愛らしい女性だ」

「えっあ?」


このままだと正体をバレると焦りオーランド殿下に視線を向けると


「はい。多恵様は私の女神ですから」


殿下の言葉でレッグロッドの人々に正体がバレてしまった。後ろに控えるフィナさんは卒倒しそうになっている。すると貴族の中でも一番上座にいる顎髭を蓄えた中年の男性が一歩前に出て声を荒げる。


「恐れながら陛下。オーランド殿下の発言が正しいのであれば、その女官は"女神リリスの乙女"となりますぞ!」


すると貴族達は口々に聞いていないと声を上げ敵意を私に向け、殿下は私を背に庇い貴族達の鋭い視線から守ってくれた。すると陛下が悪びれる様子も無く


「あぁ…そうだ。この女性レディは間違いなく敬愛する女神リリスが召喚した乙女。この度は乙女のたっての希望で身分を隠し視察に参られた。乙女として来ては我が国の本当の姿が見えないと仰ってな」


そう言うと大半の者達は口籠り黙ってしまった。しかしあの顎髭貴族は更に陛下に噛みつく。恐らく前に殿下から聞いたレベッカ嬢の直系のべスパス公爵だ。陛下も殿下も冷たい視線を公爵に向け吠える公爵を見ている。


「敬愛するリリスの乙女が我らリリスの子である私共を欺く様な事をなさった。これに対し陛下は思う所が無いのですか!」

「思う所?あぁ…あるな。きっと乙女殿は()()()()()()()()の考えに拘り続け、妖精の加護を失くし存続の危機にある我が国を知り呆れられたのではないかと心配しておる。それに高位貴族の者達が視察団の方々に酷い態度をとったと報告を受けている。嘆かわしい…我が国の貴族の品は地に落ちたものだ」


レベッカの【密約】がありべスパス公爵に頭が上がらないのだと思っていたから、陛下の辛辣な言葉に驚いた。あたふたする私に陛下が優しい微笑みを向けてくれ


「多恵殿も我が国に幻滅したであろう。知らなかった事とはいえ、我が国の者の酷い態度に王として陳謝する」


そう言い膝を着いて胸に手を当て最上級の謝罪をしてくれた。畏れ多くて挙動不審になってしまう。べスパス公爵以外の貴族達は国王自ら膝を折って謝罪した事で、事の重大さを知り慌てて同じ様に陳謝した。

それでも謝罪をする気の無いべスパス公爵にモーブル側は冷たい視線を送り、事の成り行きを静かに見ている。取りあえず陛下に手を差し伸べて


「頭をお上げ下さい。身分を隠す事も悪意を受ける事も私が望んだ事なので、謝っていただく事は有りません。私に対する態度が本心なのでしょうし、それに対して文句を言うつもりはありませんから」


すると後ろからオーランド殿下に手を取られ


「陛下。私は多恵様と出会い我が国は人を思いやる気持ちと自然に対する感謝が足りないのだと感じました。その心の狭さが妖精達との間に溝を作ったのでしょう。是非多恵様のお力をお借りし昔の様な豊かな国にしたいのです」

「オーランド殿下…」


殿下の発言を嬉しそうに聞いていた陛下が、ベスパス公爵に向って


「其方の()()()()がした事をどの様に思っておるのだ⁈」

「…」


顔を歪め黙り込む公爵。しかし意を決したように口を開き


「お言葉ですが先代の乙女レベッカ様のお陰で物の流通が良くなり我が国が発展したのは事実でございます、それを齎した乙女レベッカ様を敬愛するのは当然の事でございます。故に乙女様のお力は我が国には必要なく…」


そう言い切る公爵に陛下は冷ややかな視線を送り血を這う様な低い声で


「其方はいつからレッグロッドの王になったのだ」

「…」

「この国は先代の乙女レベッカのお陰で豊かになったが、代償として自然を無くしてしまった。それは歪となりこのまま行けば国は滅んでしまう。それを判らんとは情けない」


流石の公爵もそれ以上の発言はできず黙り込んでしまう。少しの沈黙の後、1人の貴族男性が陛下に発言許可を求め、許可を得て一歩前に出て胸に手を当て挨拶をいただく


「お目にかかれ光栄にございます。私、ラテール侯爵家当主のジャイロと申します。我が家門は乙女様を歓迎し、レッグロッドが昔の様に妖精の加護を受け豊かな国になる為に尽力致します」


侯爵様の挨拶を受けるとオーランド殿下が耳元で、ラテール侯爵家は王族派でベスパス公爵家に次いで影響のある貴族だと教えてくれた。


「って事は味方になってくれる人ですか?」

「はい。頼りになる男です」


そんなお方が味方をしてくれると思うと心強い。ラテール侯爵と陛下をベスパス公爵は睨み付け顔を歪めている。そんな公爵をみてラテール侯爵が


「エミリア嬢が乙女様に危害を加えた後に、大地が揺れベスパス公爵家町屋敷の塀が崩れたと耳にしました。公爵家町屋敷の近隣では被害が無いと報告を受けております。エミリア嬢の愚行に箱庭の大地が怒り揺らしたのではありませんか⁈」

「!」


ラテール侯爵はトーンダウンするベスパス公爵を気にせず、このまま先代の乙女レベッカを崇拝し続けると、レッグロッドの大地は倒壊するかもしれないと陛下に進言する。するとレベッカを崇拝して来た貴族達は真っ青な顔をして俯いてしまった。するとシリウスさんが発言許可得て


「あの場にいた者から聞きましたが、エミリア嬢が乙女様の髪を引っ張り上げると、突風が吹きエミリア嬢を吹き飛ばし、光の玉が乙女様を守ったそうです。これはすなわち妖精…いやリリスや妖精王が乙女様を守ってらっしゃる。その乙女様に敵意を向けるという事は、ラテール侯爵殿の言われた通りこのままでは…」


「「「「!」」」」

『うわぁ!シリウスさんしれっと脅してる…』


そう思っていたら風が吹きフィラが現れた。そして無表情でベスパス公爵を見て


「今回は塀だけで済ませたが、次は無いと思え」

「!」

『あ…フィラも参戦した』


フィラ登場に不安を持ちつつ、口を出せる雰囲気では無く暫く成り行きを見守る事にした。


お読みいただき、ありがとうございます。

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