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打合せ

シリウスの腕から逃げれない多恵は…

「お邪魔でしたか?」

「いえ!大丈夫ですから。取りあえずシリウスさん離れて!」


抱きかかえたまま絶賛感動中のシリウスさんの胸元にパンチを繰り出すが腕は緩まず、困ってカイルさんを見ると苦笑いをしてシリウスさんの腕を解いてくれた。離れた後も燃えちゃうくらい熱い視線を受けて居たたまれない。やっとソファーに移動しカイルさんから報告を受ける。

お茶を入れてくれたフィナさんは頗る機嫌が悪い。何故なら夕食の途中だったからだ。

でも決してフィナさんが自分が未だ食べ終えて無いからでは無く、私が食べ始めた時にシリウスさんが来てしまい食事が終わっていないのに、カイルさんも来てしまったからだ。


『でも忙しい二人に食べ終わるまで待って何て言える訳ない。就寝前の食事は胃に良くないのは分かっているけど仕方ないね』


そう思いながらお茶を飲みカイルさんからの報告を聞く。

初めに陛下と殿下からの謝罪文を受取り、例の従僕を取り調べ他に反感を持っているの者を聞き出している事が伝えられた。


「あと、洗濯場で耳にした多恵様に害を及ぼそうとしている者達についてですが、裏が取れたので暫く登城禁止致しました」

「でもそれでは普段のレックロッドはわかりません」

「ですが何か有ってからでは!」

「何でも未然に防いでしまっては、本当のレックロッドを知る事は出来ません。流石に身に危険が及ぶのは嫌ですが、いじめ程度の事は覚悟してここに来ましたから」


そう言うと3人の表情が曇るがここは譲れない。無理を言って予定を立て視察に来ているんだから全うしたい。皆さんは私の強い意志を感じてくれ、危険が及ばない限り静観する事を約束してくれた。それより何故あの時にウィルスさんがあそこにいたんだろう? 疑問に思いカイルさんに聞いたら


「多恵様を普段から素行の悪い従僕が案内していたのを見て不審に思い、傍にいた侍女にスコット殿を呼びに行かせ、貴女達の後を追跡したようです」

「彼は何者なんですか?」


そう言うと少し考えたカイルさんは


「彼は優秀な文官ですよ。家の方も前乙女レベッカ擁護派ではなく…あ…母君が()()()の人ではありますが信頼できる家門です。それに多恵様に好意を持っている様で味方になり得る人物だと思います」

「味方が居てくれるのは嬉しいど、恋愛感情は拒否(ノーサンキュ)かなぁ…!」


焼つくすほど熱い視線を送っていたシリウスさんは急に凍り付きそうな空気を醸し出し、部屋の空気が一気に冷えていく。余計な一言を言ったカイルさんをひと睨みし、シリウスさんを落ち着かせるために手を握って微笑んでみた。すると私の意図が分かった様で、深呼吸をしていつものシリウスさんに戻る。やっと落ち着いた所で明日の予定の確認をしやっと解散となった。


今の時刻は7刻半。やっと夕食を再開するが食事はすっかり冷めてしまっている。フィナさんは食事を温め直すと言いてくれたけど、女官設定の私がこんな遅い時間に温め直してもらうなんてありえない。だからこのままでいいと言い、残りの食事を食べて明日の為に早めにベッドに潜り込んで眠った。


そして翌朝。恒例のフィラの訪問を受け目薬を点眼し、寝ぼけながら身支度を整えて朝食に向かう。部屋に着くとモーブルの皆さんが既に揃っていて食事を始めていた。着席すると昨日の事を皆さん知っている様で心配そうに声をかけてくれる。その気遣いがとても嬉しい。食事が終りかけた時にアダムさんが


「今日は我々騎士は城内の文官や侍女達の元へ行き、多恵様とフィナ嬢は騎士の訓練の見学となります。我々は昨日見てきましたが、騎士にも偏見を持つものも多い。貴女様に悪意が向く可能性があり、是非1名だけでも騎士をお付けいただきたい」


心配性のアダムさんがそう言うと、騎士の皆さんから真剣な眼差しを向けられる。昨晩私の気持を聞いているシリウスさんは苦笑いをし騎士さん達を見ていた。


「お心遣いありがとうございます。身に危険が無い限り静観して下さい。ありのままのレックロッドを目で見て実感したいんです」

「!」


他の騎士が立ち上がり何か言おうとしたらシリウスさんが制してくれた。皆さんのお心だけ受け取り、準備の為に一旦部屋に戻った。部屋の前まで来るとウィルスさんが立っていた。朝から何の用だろう? するとフィナさんが私の前に立って牽制してくれる。フィナさんの圧に苦笑いしたウィルスさんは両手を上げ悪意が無い事を示し、ポケットから何かを出しフィナさんに渡した。

そしてそれを注視しているフィナさんの隙を狙って私の手を取り口付けて


「昨日の飴ですよ。お気に召したようなので。城下の菓子店で手に入る庶民向けの飴です。良ければ召し上がって下さい」

「ありがとうございます」


美味しかった飴を貰いテンションが上がっていたらウィルスさんは微笑んで


「また食べさせて差し上げましょうか?」

「「!」」


そう言えば昨晩お腹が空き過ぎて、あーんしてもらったのを思い出した。その場に居なかったフィナさんは絶句している。


『これ絶対後でフィナさんに怒られるやつだ』


固まるフィナさんのフォローは後にして


「えっ遠慮いたします」

「残念ですね」

「それより何か御用ですか?」

「モーブル帰国までにお時間をいただきたい」


またナンパされてしまった。こういう時は権力のある人から断ってもらった方が角が立たない。という事で視察団代表のシリウスさんの許可が無いと無理だと告げる。一瞬難しい顔したウィルスさんだが


「ではシリウス殿から許可を頂き、またお誘いいたしましょう」

『絶対シリウスさんが許可する訳ないと思うよ』


何故か自信ありげにウィルスさんが立ち去り、ほっとしていたらフィナさんに手を取られ部屋に押し込まれる。そして…時間が来るまでフィナさんから警戒心の無さと無防備ノーガードを注意される事になった。

そして時間になり案内役の近衛団副団長のルドフ様がお迎えに来てくれた。ルドフ様は背の高いゴリマッチョなのに雰囲気はとても優しい。


『ケイスさんに少し感じが似ている?』


そんな事を思いながらルドフ様の後について騎士棟へ見学に向かった。そして騎士棟に向かう間も小さな陰口を受けながらやっと騎士棟に着いた。建物に入るが隊長や分隊長は会議中でお会いできず、他の騎士の訓練を広場で見学する事になった。

ルドフ様から説明を聞きながら騎士の訓練をみていたら、騎士さんがルドフ様を呼びに来て案内役の交代を告げルドフ様は騎士棟に行ってしまった。代わりにルドフ様を呼びに来た騎士さんが説明をしてくれる。


「レックロッドの騎士は寒い地で常日頃訓練し屈強な男ばかりです。乙女様にはご安心頂けるかと」


そう言い胸を張る騎士さん。逞しいと思いながら見ていたら騎士さん達は休憩に入った様で、各々水分補給をしたり着替えたりしている。すると数名の騎士が集まり何か話し込んでいる。

雑談でもしているのかとぼんやり見た居たら…2人の騎士がこちらに向かって来た。

咄嗟にフィナさんが私の前に出ようとしたが手を掴み止める。すると目の前に来た騎士二人は胸に手を当てて会釈し


「モーブルのお嬢さん達に乙女についてお聞きしたい」

「乙女ですか?」


そう言うと騎士達は乙女に反感は無いが、良くない噂を聞くとことが多く乙女について知りたいと話した。この後2人から色々話を聞くことができ大体わかって来た。

程なくして休憩が終わると2人は隊列に戻って行った。そしてルドフ様が騎士棟から戻られ


「失礼いたしました。今から騎士棟の中をご案内しましょう」


そう言い騎士棟に案内してくれ騎士団の上層部の方々にご挨拶し、騎士棟内の案内を受けお昼過ぎに戻って来た。昼食後部屋で休んでいたら、フィナさんがお茶を飲みながら


「私思う所が…」

「?」


フィナさんの話を聞いていたら、アダムさんが打ち合わせが始まると迎えに来てくれた。明日は7日目の視察最終日。朝から城下を視察しその後は少し街ぶらできるらしい。レッグロッド国民の()()を聞けるチャンス。それに買い物できると思うとテンションが上がる。


『ウィルスさんに貰ったあの飴を沢山買って帰ろう。いいお土産になるぞ』


そんな事を考えていたら打合せをする部屋に着いた。部屋にはモーブルの皆さんとレックロッド側からはカイルさんとルドフ様が同席される。実は城内見学を終え各自の感想を話し合う場が設けられ、各自が感じた事をレックロッド側に伝える。そして各々感じたことを話すが…


「皆さん大体同じですね」


そうモーブル側の感想はほぼ同じで、それを聞いたカイルさんは険しい顔をしている。そうモーブル側が感じた事は位が高い者ほど前乙女レベッカを崇拝し、平民や下位貴族は前乙女レベッカを尊敬はすれども崇拝はしておらず、寧ろ妖精の加護がない事を憂いている。


「それでモーブル側の判断は…」


モーブル側の表情が険しくレックロッド側は固唾を呑み私を見ている。私は感じたまま素直な気持ちを…


「大丈夫だと思いますけど」

「たっ…貴女の判断嬉しく思います」


本人の"大丈夫イケる"に安堵し表情を緩めたカイルさん。しかしシリウスさんが立ち上がり


「まだ1日ある事と結論はモーブルに帰り陛下に報告し、話し合いの上返事させていただきます。その旨陛下にもお伝えいただきたい。無論、箱庭のもう一国のアルディアにも報告書を送っておきます」


やっと緩んだカイルさんの表情はまた引き締まる。そのやり取りを聞いていたルドフ様が


「確かに高位貴族の者の前乙女レベッカ崇拝が強いが、彼らも馬鹿ではありません。乙女様の身を害する事まではしないでしょう。ただ…」


そう言い言葉を詰まらすと発言許可を求めたアダムさんが


「レックロッドの御方が言い難いと思いますので、あえて言わせていただく。レッグロッドの女性の力は強く男がそれに従っている様にお見受けし、レックロッドの教育に問題があると感じました」


苦言を呈したアダムさんにモーブルの皆さんが賛同し、カイルさんとルドフ様が押し黙ってしまう。でもレベッカさんがレックロッドを救ったのは事実。それに個人の想いや考えを国が教育という名目で強制するのも違う気がする。


『また難題だよ…私無事に使命(仕事)を全うできるの?』


議論は続き話が尽きないが時間になり解散となった。部屋を出ると何故かウィルスさんがいてシリウスさんに歩み寄る。嫌な予感がする…


「視察団代表のシリウス殿にお願いがございます。半刻でいいのでエリカ嬢と2人でお話させていただきたい」

「「!」」


まさか本当に直談判すると思って無くて固まってしまった。

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