嗅覚破壊者?
オーランドの行動に動揺していたら、ラスボス?が登場して
凄く近くにオーランド殿下の顔があり、あたふたしていると殿下が小声で
『目の下に隈が見て取れます。睡眠不足でしょか?直ぐに部屋へ案内させます』
『ありがとうございます。でも今は女官として来ていますので、この様な対応は怪しまれますから…』
そう返すが殿下は思いっきりデレてくる。後ろでカイルさんが頻りに殿下を呼び何とかしようとしていたが…
「オーランド殿下!」
女性の甲高くヒステリックな声に身が竦み、目の前にオーランド殿下は思いっきり嫌な顔をし振返った。そこにはどピンクの重そうな総レースのドレスに身を纏い派手なメイクの令嬢が立ち、刺すような視線を私に向けている。到着後5分で悪意を向けられ困っているとフィナさんが小声で
「あの方が公爵家…前乙女の生まれ変わりと言われるエミリア嬢ですわ」
「あ…例の⁉︎」
のっけからラスボス?登場に青い顔をしているカイルさんとシリウスさん。不機嫌なエミリア嬢が優雅に階段を降り近づいた来たら…
『臭っ!』
強烈な甘い臭いが脳天を突き刺し嗅覚が一発で破壊された。聞いていたとおり【嗅覚破壊者】の様だ。もしかして臭いのは私だけかも思い、他の人を見ると皆さん目が死に真顔だ。でも流石聖騎士と王宮侍女だけあり皆さん顔に出さない。そんな皆さんに感動していたら、エミリア嬢が殿下の腕に抱き付き
「オーランド殿下。父からお聞きかしら?本日昼食を共にする事を」
「モーブルから視察団を迎える為に断ったはずです。今から視察について食事をしながら打ち合わせるので申し訳ない」
流石王族だ。エミリア嬢の臭いにも表情を崩さない。私なんて目に来て涙がまで出てきているに。それに気付いたカイルさんが殿下に耳打ちした後に、従僕と侍女を呼び私達を部屋へと案内をしてくれた。やっとここから脱せられると安堵し、殿下に心の中で応援を送る。
そしてやっと部屋に着き一息ついた所で先日モーブルでお会いしたセシルさんがご挨拶に来てくれた。どうやらセシルさんは乙女専属の侍女になっていて、乙女を迎える準備をしているらしく、今回の訪問では担当出来ないそうだ。仕方ないだって今回は女官として来ているからね。
「先ほどカイル様からあのお方とお会いになったとお聞きしました。大丈夫でございましたか?あの方はご自分を最上位と思われ、何方に対しても蔑む様な態度をされるのです」
「う…ん。(想像より)上のいく方でしたね」
セシルさんは謝り表情を曇らせる。気していないと言い色々話をしていたら、部屋付きの侍女さんが昼食の準備ができたと迎えに来てくれた。ここでセシルさんと別れて食事に向かう。廊下を歩くがレックロッドは予想以上に寒く上着を羽織ってくればよかったと後悔していたら、向かいから従僕さんが来て案内役の侍女さんと代わった。あまり深く考えず従僕さんについて行くと、急に角を曲り細く暗い廊下に入った。少し緊張すると従僕さんが突き当たった部屋の扉を開けて入る様に促す。そして先に私が入ると何故か扉が閉まり、外でフィナさんが焦って私を呼んでいるいる。
『ヤバい!もしかして正体がバレて拉致監禁!』
焦り扉を開けようとしたら物音がして身が竦む。そして音のする方を見ると人影が…
『正体がばれしてもいい!まずは逃げないと』
そう思い大声を上げようと息を吸ったら
「多恵様…」
「へ?」
その人影がこっちに向かって来て顔がはっきり見えたら…
「オーランド殿下!」
「会いたかった…」
殿下は私の名を呼び抱きついて額や頬に口付けを落とす。意味の分からない私は固まり殿下のキスを受けていた。するともう一つ気配を感じ確認したいが、殿下の腕が緩まないから確認できない。すると
「オーランド。多恵様が驚いている。まずは状況説明をしなければ」
「カイルさん?」
この声はカイルさんだ。それでも殿下の腕が緩まず、最後はカイルさんが殿下の頭に拳骨を一発入れて解放された。
「私を敵視する輩に軟禁されたと思いましたよ。それより一緒に居たフィナさんは大丈夫ですか?」
「信頼できる従僕が視察団の元へ案内しておりますのでご安心を」
結果から言えばオーランド殿下の我儘で、二人で会う場を設けた訳だ。しかしどこで公爵家の者が見ているか分からず、このような方法をとるしかなかったようだ。
そして殿下は私の手を取り更に暗い奥の部屋に私を案内する。後ろにはカイルさんが居るから怖く無いけど、向かう先が真っ暗でやっぱり少し怖く繋ぐ殿下の手をぎゅっと握った。すると殿下が徐に屈み私を抱き上げた。そして額に口付け進んで行く。
そして階段を降りて前に回ったカイルさんが扉を開けると
『眩しい』
目を開けると可愛らしい装飾の小さな部屋で、部屋のど真ん中にテーブルがあり食事が用意されていた。そして殿下が椅子に私を下ろし向かいに座った。
「あの…視察団の方と食事する筈では?」
「あ…シリウス殿には連絡してありますし、うちの者には貴女は体調を崩し医務室で休んでいる事にしていますから安心して下さい」
ビックリしてカイルさんを見たら溜息を吐いて胸に手を当てて深々と頭を下げられ、今ので状況を察した。恐らく殿下が我慢できず二人で会えるように手を回したのだろう。苦笑いしながら目の前にいる窶れた顔で嬉しそうに微笑む殿下を怒る事が出来なかった。
こうして数週間ぶりに殿下と食事を共にし、色んな話をし楽しい食事となった。
食後はこの部屋から地下通路を通り医務室へ移動。そこにシリウスさんが迎えに来てくれフィナさんが待っている部屋に戻る事になった。長い地下通路を歩き階段を上り扉を開けると消毒液と薬品の匂いがした。どうやら医務室の薬品庫の様だ。カイルさんが扉の向こうを確認しノックすると、白衣を着た初老の男性が扉を開け殿下に会釈する。
どうやら医務室には人が居ず安全な様だ。殿下に手を引かれ医務室に入ると
『!』
眉間の皺を深めたシリウスさんが仁王立ちし立っていた。その姿もカッコいいのだが私にはホラーにしか感じない。そして足早に私の元に来て手を取り背に庇い
「オーランド殿下。この様な危険な事はなさらないでいただきた。多恵様は素性を隠し視察に来ているのです」
シリウスさんが叱責しているのに機嫌のいい殿下に、シリウスさんの怒りのボルテージは上がる一方で、カイルさんが2人の間でおろおろしている。今日一番の被害者はカイルさんだろう。
険悪なムードの中でお助けマンの登場を願っていたら、フィナさんが迎えに来た。
フィナさんは私の表情を見て苦笑いし、シリウスさんに耳打ちをした。
やっと眉間の皺が無くなったシリウスさんが殿下に戻る事を告げ、やっと部屋に戻る事が出来た。
戻る道すがらフィナさんがあの後の事を話してくれ、彼女にも心配かけたと謝る。するとシリウスさんが
「た…エリカ嬢もフィナ嬢も悪くない。気になされるな」
「ありがとうございます」
部屋に入るとフィナさんは何も言わずに寝室に行ってしまった。キョトンな私を後ろからシリウスさんが抱きしめる。
「王族であるオーランド殿下に意見できずもどかしい。一日一度でいいこうやって貴女の温もりを感じさせていただきたい」
どうやら悋気を妬いているようだ。レイハント様やバートンさんにはそこまで妬かなかったが、やはりオーランド殿下は正式な求婚者だからかもしれない。
大きく強い男性に甘えられると、母性?が溢れてきて
「いいですよ。でもオーランド殿下と揉めないでね」
「努力はします」
こうして静かに荒ぶるシリウスさんを宥めた。少ししたら満足したのか腕を解き、フィナさんを呼び明日以降の予定を教えてくれた。明日は王城内を視察し、乙女のお世話をする侍女や騎士と顔合わせをするそうだ。
「夕食まで部屋でお休み下さい」
「はい。お疲れ様です」
シリウスさんはこの後カイルさんと打ち合わせらしい。扉に手をかけたが、何故か引き返しいきなりチークキスをし、フィナさんが小さい悲鳴を上げた。
やっと満足したシリウスさんが退室し、顔を真っ赤にしたフィナさんの為にタオルを冷やし走ったのでした。
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