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すれ違い

フィナとケビンのすれ違いをサクッと解決します!

まずはフィナさんの恋愛事情をリサーチするべく、それとなく自然にモリーナさんのお見合いの話から話をふって


「フィナさんはいつも想う方が欲しいと言っているけど、お見合いは受けないの?」

「えっと…残念ながらうちは貴族の位も低くお話は無くてですね…」

「えっ!こんなに美人なフィナさんに見合い話や告白してくる人はいないの?」

「私なんて…」


フィナさんは困った顔をして愛想笑いをするが、そこはばっちり事前調査リサーチ済みだ。フィナさんは家からのお見合いの話も、上司である侍女長や筆頭侍女からの紹介も断っている。


『女神の乙女のお世話に任意専念したい』


と言い、私を言い訳にしているそうだ。


『ケビンさんに想いがあるから断っているんだろう』


あからさまに誤魔化し話題を反らそうとするフィナさんに遠回しな探りは無駄だと判断し、ど直球ストレートに投げかける事にした。


「幼馴染のケビンさんと将来を約束していたと聞いたけど?」

「!」


目を見開き唖然とするフィナさん。そして表情を曇らし少し涙目で


「あの方にはモニカ嬢がいらっしゃるので、私が出る幕など…なく…」


ケビンさんも言っていたが伯爵令嬢のモニカ嬢が横恋慕しているようだ。実はワイズ子爵家に泊まった際にケビンさんから二人の話しを聞き、ある事を疑問に思っていた。そして帰って来て直ぐにエルビス様に調査を依頼してあったのだ。その調査の一報を昨晩貰い目を通してあった。


『王妃様の元への訪問、レックロッド視察、王子たちの公爵家訪問と、本当にエルビス様や宰相チェイス様に無理を言ってばかりだ。お礼に何か事務効率を上げる様な文具の提案が出来ればいいなぁ…』


そんな事を考えていたら、泣きそうな顔のフィナさんが


「ワイズ子爵領に行った際にケビンに何か言われたのですか?」

「うん。そして手紙を預かってきたわ」

「…」


すると涙を浮かべて顔を歪ませ


「私の様な者に気にかけて下さり…申し訳ございません。お手を煩わせ致しますが、その手紙は破棄下さいませ」

「なんで!」


顔を上げたフィラさんの瞳から雫が溢れ、慌ててハンカチを取り出してそれを拭い抱きしめた。なぜ急に泣き出したのか分からず困惑し、フィラさんが落ち着くまで抱きしめる。

やっと落ち着いたフィナさんの目は赤い。話が出来る様になったフィナさんは手紙を読むのが怖いと言う。


「彼は優しいから面と向かって破談を言い難いのですわ。だから手紙にしたのです」

「落ち着いて読んでみないと分からないじゃん!」


そう言い宥めるやっと手紙を読む気になったフィナさんは、震える手で開封し読み出した。


『うーん!恋愛漫画の一コマだ…』


そんな事を考えながら見ていたら、また瞳を潤ませ顔を赤くし震えているフィナさん。読み終えたフィナさんは動揺しながら


「彼が私に会い正式に求婚したいと書いてあります。これは本物なのでしょうか…あっでも筆跡は彼のものだし…誰かに脅され?」


そう言い私を真っ直ぐ見るフィナさん。疑われ焦りながら


「へ?私は預かっただけで、乙女の権限で書かせてなんか無いからね!」


疑心暗鬼のフィナさんに


「知っていると思うけど”女神の乙女”は国王と同じかその上の地位にあるわ。そんな私に手紙を預けるなんて初めましてのケビンさんには難しいはず。そんな状況の中でも私にお願いして来たのは、それだけケビンさんが真剣な上に必死だったんだと思うよ。何としても想いを告げたいのだと感じ預かったわ」 

「ケビン…」


手紙を抱きしめ頬を染め、またフィナさんの綺麗な瞳から雫がこぼれ落ちた。そしてフィナさんにケビンさんとすれ違いになったのは第三者が関与している事。そして王城で不正が横行していた事を話した。


「では私の手紙と彼の手紙が届かなかったのは彼女が⁈」 

「正確には彼女モニカのご実家の伯爵家が関与していたみたいだよ」


そう。モニカ嬢のご実家はクーパー伯爵家でバリバリの貴族派。例の大捕物で捕まる事は無かったが、元宰相エリアスに多くの賄賂をおくり、城内で便宜を図ってもらっていたようだ。以前から疑惑があり宰相チェイス様が調査を命じていたが、あの事件以降忙しく調査は中断されていた。

二人の不自然なすれ違いと事あるごとに名前が出てくるモニカ嬢を怪しく思い、文官を取り纏めるエルビス様に相談した訳だ。

全てはモニカさんが二人を仲を壊しケビンさんとの婚姻を願っての事だったと説明した。事情を聞いたフィナさんはずっとおかしいと思っていたそうだ。


「侍女仲間の中でもいつも私宛の手紙だけ届くのが遅く、その上いつもモニカ嬢が文句を言いながら届けに来たのです。そして何故か彼女は私の勤務日程を知っていて…もしかして私とケビンを会わせないために⁈」

「みたいだね。それもフィナさんだけでは無く他にも被害者がいるみたい。今エルビス様が調査をしてくれているから安心して」


そう、昨晩の報告書によれば応接室と郵便を管轄する文官長がモニカ嬢の従弟に当たる子爵家の男性で、その人に代わってから一部の人から送った手紙が届かなと何度かクレームが入っている事が分かった。そしてその部署の者全員を尋問した所、文官長からの指示で手紙を届けず文官長が預かったり、申請があるにも関わらず相手の意思も確認もせずに面会申請を勝手に断ったりしていた。どうやらエリアス様の息のかかった貴族派が王族派をけん制し手紙内容を確認したり、面会の邪魔をしていたようだ。


「我が家門とケビンの子爵家は中立な上に、財も権力も無いのに何で…」

「フィナさん達に関しては完全にモニカさんの横恋慕だよ」



こうして全容が分かり安心したのか、表情が明るくなったフィナさん。この後ケビンさんとの事を聞き幸せな気分をおすそ分けしてもらい、楽しい時間はあっという間に過ぎ御者の小窓から


「多恵様。間もなく初めの休憩地に着きますのでご準備を」

「はぁ~い」


身なりをフィナさんが整えてくれ準備をしていて


「そうそう。誤解が解けたから伝えておくね」

「?」

「帰路は少し寄り道してワイズ子爵家に寄るから。しっかりケビンさんと話をしてね」

「しかし!」

「あと、侍女長にお願いして5日ほど休暇申請しておいたから、ケビンさんとゆっくり話をして来てね」


そう、当主交代を急ぐケビンさんに時間が無い。だから出発前にチェイス様にお願いして帰路を変更してもらい、二人が話し合い出来るようにフィナさんの休暇申請をしておいた。あとフィナさんのご実家にも連絡済みだ。ワイズ子爵家からは侍女さんが付かないが、自分の事は出来るし事情を説明したシリウスさんが私の世話ができると喜びで協力してくれる。


こうしてすれ違った恋人達の仲を取り持ってて幸せな気分で休憩地に着いた。馬車が停まり扉が開くと微笑んだシリウスさんが待ち構えている。手を借り降りると目の前に食堂?宿?がある。どうやらここで休憩をとるらしい。

今回は女官なのでエスコートは受けないので、気楽に入り予約してあったのか個室に通される。

ここでお茶と茶菓子を頂きのんびりする。さっきいっぱい泣いたフィナさんは紅茶に山盛りの砂糖を入れ糖分チャージし顔色も良くなった。そして私とフィナさんのガールズトークを見守るシリウスさん。あまりにも熱い視線を送られ渋い緑茶が欲しくなってきた。

こうして無事休憩をし本日の宿泊場所の侯爵家に向かい出発する。


予定より時間がかかり侯爵邸に着いたのは6刻半を過ぎていた。到着し馬車を降りるとサーヴァス侯爵様が出迎えて下さり、視察団長のシリウスさんにご挨拶される。何度も言うが今女官の私はフィナさんと一緒に一番後ろに控えご挨拶が終わるのを待っていた。ふと気が付くと聖騎士団のアダムさんが背後に立っている。目が合うと微笑んでくれた。


「エっエリカ…ご挨拶が終わるわ。前を向いて頂だい」

「あ…ごめんなさい」


慌てて前を向き侯爵様から声を掛けられお辞儀をする。そして各自侍女さんや従僕さんに案内され部屋に通された。部屋はフィナさんと2人部屋だ。ずっと”待て状態”だったてん君を呼び出し、夕食までの間部屋で自由に走り回っている。そして時折フィナさんの脚にすり寄り"なでもふ"をしてもらいご満悦だ。暫くするとシリウスさんが部屋に来た。てん君に戻ってもらい入室許可を出すと、サーヴァス侯爵様と入って来た。

そう、休憩や宿泊する領地の当主様には陛下が事前連絡をしていて、当主様だけは私の正体を知っている。そして侯爵様は胸に手をあてて深々とご挨拶される。挨拶をお受けし


「お世話になります。帰りもこちらでお世話になると聞いております。今回は女官としてきておりますので、他の方と同じ扱いでお願いします」

「事情は陛下よりお聞きしております。貴女のお役にたて光栄にございます。機会がございましたら、今度は"乙女”としてお越しくださいませ。わが領地を案内させていただきたい」

「ありがとうございます。リリスの役目を終えたら訪問させていただきます」


ご挨拶をお受けしている間にシリウスさんかフィナさんに指示をしている。どうやらこの後の予定の様だ。

そして挨拶を終えた侯爵様は退室し、一息つくと侍女さんが夕食の時間だと知らせてくれる。勿論夕食は大広間で一緒に来た騎士さん達と一緒に食べ、シリウスさんは侯爵様と夕食を共にされる。


フィナさんと話しながら歩いていたら、向かう先から赤毛の美丈夫が向かってくる。誰かはすぐ分かった。何故なら侯爵様ととても似ているからだ。すると案内をしてくれている侍女さんが


「ご嫡男のレイハント様ですわ。横にお並びになり会釈を」

「「はい」」


侍女さんに倣い廊下の隅に並び頭を下げると…


『あれ…ランプの油切れ?』


そう急に暗くなり少し顔を上げたら間近に綺麗なお顔があり悲鳴を飲み込んだ。隣のフィナさんも案内の侍女さんも目が点だ。そしてその美丈夫は”すんすん”と私の香水を嗅いで


「貴女は今日着いた視察団の者か?」

「はい。王城に仕える者にございます」


再度頭を下げて最低限の受け応えをすると、レイハント様は私の手を取り引き寄せた。突然の事で対応できず前につんのめる。そして顔を上げると…


「貴女からする芳しい香りは香水か?なんだろう胸の奥がムズムズし不思議な感覚だ。名はなんと言う?」


後ろに控えるフィナさんが真っ青な顔をしている。すると


「部下が何かしましたか?」


振り返ると険しい顔をのシリウスさんが立っていた。そして足早に来て手を払い背に庇ってくれた。すぐに駆け寄るフィナさんに後方へ誘導される。

睨み合う美丈夫二人に頬を染め夢見心地の案内の侍女さん。

やっぱりフィラが言った様に私臭う(くさい)の?

お読みいただき、ありがとうございます。

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