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伝書鳥

レッグロッドの視察も決まり嬉しい反面…


「お疲れ様でした。今から視察団受け入れの準備に入りますので我々はここで…」

「はい。ご無理なさらないで下さいね」


やっと陛下の許可をもらいレッグロッド行きが見えて来た。オーランド殿下やカイルさんはやる気が漲りいい顔をされている。

そして前触れもなく顔が近付き…


「!」


そうさっき陛下にしたチークキスをされた。

頬にキスされるより恥ずかしいのは慣れてないからだろうか。頬が熱くなるのがわかる。

すると


「可愛いいですね。唇に貴女を感じるのもいいが、頬に感じるのも悪くない」

「えっあ…」


オーランドはそう耳元で呟くと抱きしめて


「レッグロッドを好きになってもらう様に先に帰国し貴女を待っています」

「えっと…飾らずいつもの貴方の国を見せてください。楽しみにしています」


暫くオーランド殿下の腕の中にいたら部屋の扉が開きモリーナさんが顔を出し目が合った。モリーナさんは真っ赤な顔をしてまた部屋に戻り、カイルさんが殿下に離すように促す。そして殿下とカイルさんは戻って行かれた。恐らく退城の挨拶まで忙しく会う事はないかも知らない。


『無理なさらないといいけど…料理長にお願いしてポテチの差し入れをお願いしておこう』


そしてやっと部屋に戻ると…


『あ…こっちがあった…』


緊張しながらモリーナさんがお茶を出している。相手はもちろん…


「遅いなぁ⁈また他の男の愛を受けていたのか」


不機嫌そうにお茶を飲みながらソファーにフィラが座っている。彼が来る前に守君こと鉄布のローブで身を隠そうと思っていたのに先に来てしまった。フィラは眉間の皺を深め見つめてくる。


常日頃からフィラに監視されているので、密かにゴードンさんに頼み鉄布を入手してもらってフード付きのローブを作ってもらっていた。

他の殿方に手紙を書いている時や、邪魔してほしくない時は使っている。

ローブの存在はフィラは知っているけど、彼は敢えて何も言わない。常に妖精たちが見てるから私の行動は筒抜けなのに、いきなり気配が無くなるからもう知っているよね。


『結婚してフィラ以外の夫とイチャイチャするなら、鉄布で部屋を作らないといけないかも…』


そんな事を考えていたら目の前が暗くなり…


「多恵は意地悪だ」


そう言い抱き上げ寝室の方へ歩き出した。慌てて抵抗するが勝てるわけもなく、寝室のベッドに押し倒される。

そしてキスの豪雨が降ると思ったら…


「へ?」


フィラは私の頬に自分の頬をつけ抱きしめる。そして頬をすりすりして


「何でも俺が一番がいいが無理なのは分かっている。だが他の男にした愛情表現は俺にもくれ。それを他から知るのはショックだ。俺は嫉妬深いんだよ」

「うん…分かった」


私を抱きしめたフィラに甘い雰囲気はなく、まるで母に甘える子供みたいだ。こうなると私の胸の奥からは母性が溢れてくる。思わずフィラの頭を抱きかかえる。


『なんかフィラはかわいい』


イチャイチャするのもいいけど、こうしてお互いの存在を確認し合うのもいいもんだなぁ…

暫く抱き合っていたら控えめにノックしたモリーナさんが、食事の準備ができたと知らせてくれる。


「フィラも一緒する?」

「一緒に食べてくれるのか?」

「うん!一緒したい。」


怒り?やちもち?が収まったフィラは機嫌よく私を抱き上げテーブルまで運んでくれる。

できる侍女のモリーナさんはフィラの食事まで用意済みで、フィラから礼を言われ頬を染めていた。そして会話を楽しみながら仲良く食事をしフィラは機嫌が良くなる。

そして帰り際にフィラはレッグロッドに行く迄に目薬をつくる事を約束してくれた。てっきりご褒美を催促されるのかと思い警戒していたら、目を細めて優しく私を抱き寄せ


「俺はお前が嫌な思いもせずに帰って来てくれればいい」

「てっきりまたお礼に”印を付けさせろ”とか言うのかと思ったわ」

「俺を発情期の動物みたいに言うなよ」


そう言い少し拗ねた。するとてん君が


『フィラ いつも さかってる』

『盛ってる何が悪い。惚れた女を前に我慢できる訳ないだろう』

『いやらしい かお』


そしてまた言い合いを始める1人と1匹。てん君はフィラと相性が悪い様ですぐケンカになる。困っていると申し訳無さそうにモリーナさんが声をかけ手紙を差し出した。なかなか帰らないフィラにてん君が牙を剥きやっと帰った。


手紙を受け取り差出人を見ると王妃様からだ。すぐに開封して読み出す。どうやら話があるらしく会いにきて欲しいと書かれている。5日後にレッグロッドに行ったら10日ほど帰らない。先に行ったほうがいいかもしれない…


「モリーナさん。デスラート公爵領に行くには何日かかりますか?」

「2日はかかるかと…この時期は農作物の収穫時期で荷馬車が多く行き交うので、もっとかかるかもしれませんわ」

『2日か…行って直ぐ帰ればレッグロッド出発までに帰って来れるかも…』


恐らく私がレッグロッドに行っている間に陛下が王妃様に会いに行かれるだろう。王妃様はそれが分かっていて先に私と話がしたいんだ。これは行かないといけない。

直ぐにモリーナさんに陛下がチェイス様にお目通りしたいと伝えてもらい、届けられた金融機関の設立案を読みながら返事を待つ。


少しすると帰ってきたモリーナさん。


「陛下はご公務中ですのでチェイス様がお会いになるそうです」

「じゃ!今から行きます」


そう伝えるとモリーナさんが外で待機するリチャードさんを呼んでくれた。

こうして直ぐにチェイス様の執務室に着いた。許可を得て入室するとデスクの山積みの書類に埋もれているチェイス様。


「直ぐ終わりますからお掛けになってお待ち下さい」

「あっはい」


リチャードさんがソファーに誘導してくれると、すぐに従僕さんがお茶を入れてくれた。

ぼんやり部屋を見渡していたらある肖像画が目に留まる。綺麗なピンクブロンドの美人さんと栗色の髪の美少女が描かれている。


『奥様も娘ちゃん?』


ガン見していたらいつの間にかチェイス様が向かいに座っていた。


「奥様と娘さんですか?」

「はい。疲れた時に元気をくれます」


そう言い肖像画を見るチェイス様はパパの顔をしている。娘ちゃんはグレン殿下と同じ歳くらいかなぁ?


「多恵様ご用向きは?」

「あっ急ですみません。レッグロッド出発前にデスラート公爵領…いえ王妃様に会いに行きたいのです。日がないのは分かっていますが、何とかなりませんか?」


お願いすると考え込んでしまうチェイス様。普段から忙しい上にレッグロッドの視察団派遣で大変なのは分かっている。でも…


「ギリギリですね…」

「はい。無理を言っているのは分かっています」


難しい顔をしたチェイス様はベル鳴らす。すると文官さんが入室して来て、チェイス様は文官さんに何か指示した。そして足早に退室した文官さんを確認すると


「多恵様がレッグロッドに行かれている間に、陛下が王妃様の元へ行かれるのをご存知で…」

「やっぱりでたか。誰がに聞いた訳ではないのですか、多分そのタイミングがベストだと思ったので。それとは別に王妃様から会いに来て欲しいと手紙をいただきまして」

「…」


チェイスはますます難しい顔をし黙り込んでしまった。とても気まずい…手に汗をかいて来た。静まり返る部屋に居心地悪くなって来たら誰か執務室に来た。チェイス様が許可を出すと宰相補佐のエルビス様が入室して来た。エルビス様は私を見て一瞬驚いた表情をし直ぐご挨拶される。そして着席したエルビス様にチェイス様が


「王都からデスラート公爵領までの道の状況はどうなっている」

「今は大麦の収穫が最盛期で大型の牛車の往来があり混雑しております」

「やはりか…往復は…」


顳顬押えるチェイス様。モリーナが話していた通り収穫時期で道が混んでいるとは聞きていた。無理なのかなぁ…

また沈黙が続きやはり無理なのだと諦めかけた時にリチャードさんか発言許可を求め


「多恵様。馬車ではなく馬でなら往復は可能でございます。しかし乗馬慣れされておられない多恵様のお体にご負担に」

「馬なら…」


車が無いこの箱庭では収穫した農作物を運ぶ為に大型牛車が行き交う。元の世界で例えるなら荷馬車がトラックで、馬車が車そして馬がバイクだ。渋滞の時バイクならすり抜けていける。


「チェイス様。馬で行けば可能ですか?」

「…ですが貴女の負担が大きい」

「頑張ります。だから行かせてください。今行かないといけない気がするんです」

「お気持ちは分かりました。陛下の許可をいただきましょう」


無理を言っている事を謝り一旦部屋に戻る事になった。部屋に戻る道すがらリチャードさんに


「馬で行けばどのくらいで着くんですか?」

「我ら騎士なら早朝に出発し、最低限の休憩を取り向かうなら深夜には」

「流石それは私には無理なので、もう少し緩めじゃなきゃ…」

「チェイス様なら適切なスケジュールを立てて下さいますよ」


こうして返事をもらうまで部屋で待機していた。そして夕食を食べて落ち着いた6刻半前にエルビス様が部屋に来てくれた。


「ご無理言いすみません。で陛下は?」

「はい。許可をいただきました。今からご説明いたします」


エルビス様はまず同行する騎士さんについて話しだす。


「王城から同行する者は騎士団から3名、専属騎士からランディン卿と専属侍女からアイリス嬢の計6名です。王都を出てからは通過する各領地から騎士を派遣してもらい、その領地内を護衛させます」

「そんな急なのに連絡できるんですか?」


アルディアにはなかったけどモーブルはこの箱庭一領土が広く情報伝達に時間がかかることから、伝書鳥が用いられている。後で木板タブレットで調べてみたら鳩の様に帰巣本能をもつポーロという鳥が働いている。

王城と各領地に伝書鳥の鳥舎があり、調教師がいて手紙を各領に仲介しているそうだ。


『元の世界で言うところの電報かしら?』


もちろん陸路で手紙や荷物を届ける郵便や宅配機能もちゃんとあるが、急ぎの場合は伝書鳥の方が早くよく利用されている。


「陛下にお伺いした際に丁度サザライス公爵がいらっしゃり、事情をお聞きになられ明日領地に戻られる公爵様が道中の護衛を申出て下さったのです。そして公爵様は多恵様が通過する各領でそこの騎士に護衛させれば、王城の騎士の負担を減らせると仰りまして」


確かに今回の王妃様のお見舞いと視察が続けてあり騎士さんの負担が大きい。デスラート公爵領までの護衛を通過する各領地でしてもらえれば騎士さんの負担は減るし、何より勝手知っている各領の騎士さんなら安心だ。


「もう日が暮れ伝書鳥は飛ばせませんので明日朝一に通過する領地に連絡を入れます。そして王都からサザライス領内は今王都に滞在しているサザライス公爵家の騎士団から4名同行いたします」

「ありがたい事です。公爵様に御礼を伝えたいわ」

「陛下と食事を共にされておられますので、まだ城内にいらっしゃるはずです。お会いできるか確認いたしましょうか?」

「はい。お願いいたします」


こうして協力いただく事になったサザライス公爵様にお礼に伺う事になった。

文官さんを呼んだエルビス様はサザライス公爵に面会の申込を指示し、返事が来るまで間に他の説明してくれる。

程なく公爵様から返事が来てお会いいただける事になり、応接室へ移動する事なった。


朝から濃い1日で正直疲れているけど、もうひと頑張りして来ます。


お読みいただき、ありがとうございます。

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