ミステリーショッパー
レッグロッド行きの打開策を陛下に提案するが…
「何だ?俺を待っていたのか?」
「うん!」
「可愛いがまた他の野郎の為の願いか?」
毎朝来るフィラはそう言い片眉を上げて少し不機嫌になる。
そうキースとアイリスさんの案を実行するにはフィラの手助けか必要なのだ。
フィラは少し考えて私を抱き寄せ口付けをせがんだ。フレンチキスをすると微笑み
「とりあえず話は聞こうか」
「ありがとう。うーとね…一時的に瞳の色を変えれる薬草とかない?」
今回の打開案として視察を提案する。その視察には私も同行するつもりだ。何故かと言うとアイリスさんが
『多恵様が実際にレッグロッドに行き、ご自分で見聞きされレッグロッドに行けそうか確認がされればがよろしかと…』
確かに自分でレッグロッドの現状を見て感じたら心算もできるし、要望や改善点も見えるはず。でも多恵のまま行くと忖度され本当のレッグロッドが見えない。だから変装する必要がある。私の特徴を上手く消さないといけない。
まず髪色だ。でもこの箱庭には多くはないが黒髪の人はいるから大丈夫ぽい(シリウスさんのサザライス公爵家の直系の男性は黒髪だしね)
問題は目の色で黒い瞳の人はいないらしい。だから
「だからね覆面調査員をするならこの黒目を隠さないといけないの。妖精の森ならそんな薬草があるんじゃないかと思って」
そうフィラに説明をすると少し考え視線を合わせて
「レッグロッドの問題は俺も関係しているから協力は惜しまないが、あの女にお前が傷つけられないか心配でならない」
「あの女?」
「あぁ…レベッカの生まれ変わりと言われているエミリアだ」
「あ…嗅覚破壊者ね」
話に聞く限り強烈な人みたいだけど、根っからの悪人っていないと思うんだけど。
「大丈夫!それにピンチになったらフィラが助けてくれるんでしょ⁈」
「勿論だ」
「だから心配していない。レッグロッドに滞在していても、朝は来てくれるんでしょ⁈」
そう言い甘えると蕩けるような微笑みを向けて
「あるぞ。但し元の瞳の色に近い色にしかならんが」
良かったあるんだ!私の黒色は灰色位には変えれるそうだ。レッグロッドで私を見た事ある人は少ない。だからそれだけ変われば分からないだろう。
フィラに薬の用意を頼んだらお礼を催促され、うなじにキスマークを付けられた。
『当分髪はアップにできないじゃん!』
キスマークをつけ満足したフィラは帰り、起きるとアイリスさんが入室し朝の支度を始めてくれる。
そして部屋に行きお茶を飲んでいるとアイリスさんが手紙を差し出した。
手紙は陛下からでオーランド殿下との話合いに同席を求めるものだった。
時間は3刻半から。お受けするとアイリスさんに返事をしてもらい、時間までてん君と遊んでいた。
「多恵様。そろそろお時間でございます」
「はぁ〜い」
陛下とオーランド殿下の話合いに同席する為移動中です。ケイスさんの惚気話を聞きながら廊下を歩いていると、前からイライザ様が歩いて来た。相変わらずお綺麗だ。
ご挨拶すると
「そう。私帰国が決まりましたの」
「えっ!そんなんですか」
短期留学を終えて帰国されるそうだ。あの一件から仲良くなり偶にお茶する仲で、帰国されるのは少し寂しい。するとイライザ様は何故か頬を染めて
「一旦帰国しますが、恐らく近いうちにここに戻ってまいります」
「?」
「その…あの…」
キーモス侯爵摘発時にハワードさんと密会する際に偽装工作をお手伝いいただき、その縁でお2人の仲が進んでいたようだ。
将来を約束したと頬を染めて可愛く微笑むイライザ様はとても綺麗だ。
“人の幸せは蜜の味”の私は心が温かく幸せな気持ちでいっぱいになる。
「また帰国前にご挨拶に参りますわ」
「はい。その時は惚気話を聞かせて下さいね」
こうしてイライザ様と別れて先を急ぐ。するとまた声をかけられる。振り向くとシリウスさんだった。
「朝から貴女に会えるのは幸せだ」
「おはようございます。任務ですか?」
「はい。恐らく貴女と同じかと」
どうやらシリウスさんも陛下に呼ばれているようだ。エスコートを代わったシリウスさんは腰を抱き寄せ甘い雰囲気を醸し出し、すれ違う女性からため息が溢れる。
「とても嬉しそうですが、何かいい事がありましたか?」
「はい。友達が幸せそうで、お裾分けしてもらったんです」
「俺は貴女が幸せそうに微笑んでくれるだけで全てを許せる」
「大袈裟ですね」
そう言うと顔を寄せたシリウスさんは激甘なセリフを耳元で言い顔が熱ってしまう。
顔が赤いまま部屋に着いて入室すると、陛下とオーランド殿下に熱があると心配される。
「調子はいいですから!それより話し合いを始めましょう」
必死に心を落ち着かせ真面目な顔をする。この後直ぐにチェイス様が来られ話合いが始まった。そして開口一番オーランド殿下が陛下に
「どんなに我が国が多恵様をお迎えできると申し上げても信用していただけない。ならば陛下が信用をおく家臣で視察団を編成し、我が国を視察していただきたい」
「視察だと」
「はい。お見せ出来ぬ所もありますが、可能な限りお見せします。そして多恵様のお世話をする者の為人も確認いただきたい」
オーランド殿下は胸を張ってキースの案を陛下にプレゼンする。昨晩遅くまで私といたのに、プレゼンの資料まで作成している。
陛下とチェイス様は資料を見て考え込んでいる。援護するつもりで手を上げた。
陛下は表情を緩め優しい眼差しを向けてくれる。そして陛下に
「視察は私も同行します」
「「!」」
さっきまでいい感じだったのに急に陛下の表情が固くなり、また反対し出した。
ここで二の手であるアイリスさん案を披露する。
「確かに私が行けば敵地で嫌な思いをするかもしれません。でも視察団には家臣の1人として参加します」
「ですがどんなに変装しても多恵様だと…」
『ですよね!だから』
自信を持って次の説明をしようとしたら風が吹き、背中が温かくなり大好きな香りがして
「フィラ?」
「俺の手助けはいるか?」
フィラはそう言い顳顬に口付けた。そして目の前に小瓶取り出し私の手の上に置いた。
「多恵のご所望の物だ。うだうだ説明するより見せる方が早いだろ」
「フィラ…やっぱりいい男だね」
「お前限定だがな」
フィラは私の手を取り小瓶から液体を取り、私の目にさした。刺激はなく普通の目薬って感じで違和感はない。瞬きをし目薬が馴染むまで目を瞑る。そして数十秒して目を開けると
「「「何と!」」」
部屋のみんなが驚いた顔をして私を見ている。理由が分からず不安になりフィラを見上げると額に頬にフィラの口付けが降ってくる。
「お前の輝く黒い瞳も好きだが、灰色も美しいなぁ…」
「変わりました?」
そう聞くとチェイス様が手鏡を渡してくれた。恐る恐る鏡に映る自分を見ると…
「これが私?」
顔立ちは変わっていないが、瞳の色が変わっていた。瞳一つ違うだけでこんなに変わるんだ…
「淡い瞳の貴女も美しい…」
「これなら多恵様とは判らないですね」
「…」
フィラにお礼を言うと私を抱きかかえソファーに座り抱きしめてくる。
陛下はまだ眉間に皺を寄せて考えている。
『これでもダメなの?』
「ダラスよ。大切なものを囲むだけが愛情では無いぞ。信じ見守るのも愛だ。特に自分を持つ多恵のような者にはな」
「フィラ」
援護してくれたのが嬉しくて自分から抱きついた。私の髪を撫でながら
「俺はいい夫になるぞ」
「うん」
チェイス様とシリウスさんは視察に賛成のようだ。まだ眉間の皺が深い陛下に
「私が直接見聞きしレッグロッドに正式に行けるかチェックしてきます。それに数日だし陛下の家臣の皆さんは忠誠心があり、優秀な方ばかりだから信頼しています。だからレッグロッドに行くのに不安はありません」
「多恵殿」
陛下は私の前に来て手を取り、真っ直ぐ見据えて
「辛い目にあったり身に危険が及んだ時は、有無も言わさずモーブルに戻ってもらいます。いいですか⁉︎」
「はい!ありがとう陛下。許可してもらって嬉しい」
やっと折れてくれたのが嬉しくて、フィラの腕から抜けて陛下に抱きついた。するとお礼にとチークキスをせがまれる。最近求められる事が多く慣れてしまい普通にしたら、初めて見たフィラがやきもち全開で超不機嫌になり大変なことになった。
「多恵は婚約者の俺より先に他の野郎にこんな事しやがって。俺の気を引きたいのか」
「えっと…そんなつもりは無くてね」
「まぁいい。この後妖精城で説明してくれるんだよな」
「…やっぱり⁈そうなりますよね」
話合いの後に説教部屋行きが決まり、フィラは話合いの邪魔になるからと一旦帰って行った。
フィラが帰り視察団について話し合われたが、私は説教部屋行きに気が重く内容が頭に入らなかった。
こうして視察団のレッグロッド派遣が決まった。3日後までに視察団メンバーを決め、出発は5日後となった。
オーランド殿下は2日後に先に帰国が決まり、やっと話が決まり解散となった。陛下、チェイス様とシリウスさんは引き続き話合いをするらしく、私は部屋までオーランド殿下に送ってもらう事になった。
オーランド殿下は陛下を説得でき表情は明るい。カイルさんなんて破顔し歌い出しそうだ。
ご機嫌の2人に反して説教部屋行きに気が重い私だった。
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