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和解?

急遽アルディアとレッグロッドの会談に同席する事になり、予定なくオーランドが迎えに来て…


『オーランド殿下の顔色がどんどん悪くなるよ…大丈夫なの?』


お迎えに来てくれたオーランド殿下は微笑みを湛えるが明らかに元気が無い。

殿下に歩み寄り自分からハグをする。少しでも殿下の心が安らぐ様に抱きしめる。

すると私の意図を感じた殿下は小さい声で


「ありがとう…」


と呟き頬に口付けた。ふと視線を離し部屋の隅に控えるカイルさんが目に入る。彼も疲れが顔に出ている。殿下にことわりカイルさんの元に歩み寄り両手を広げて


「元気のお裾分けです」


そう言うと驚いた顔をしたカイルさんは、一瞬オーランド殿下に視線を送り、柔らかく抱きしめてくれた。


「多恵様は俺まで惚れさせる気ですか⁈惚れてしまったら責任とって下さいね」

「う…ん。それは大変そうなんでこの辺にしておきます」


そう返すといつもの様に楽しそうに笑ってくれた。こうして準備ができオーランド殿下のエスコートで会談する部屋に向かう。

道すがら他愛もない話をしリラックスしていたら、廊下の向こうからアーサー殿下が来た。そして駆け寄り私の手を取り口付けて


「お迎えに行こうと思いましたが、オーランド殿に先を越されたようですね。オーランド殿。私にも素敵な女性のエスコートをさせてもらえないだろうか?」


オーランド殿下が了承し、私の手をアーサー殿下に託しまた移動を始める。

少し歩くと広い通路に出た。夕刻で忙しそうに侍女や女官さんが慌ただしく行き交う。往来する女性の視線は両殿下に向かい、熱い視線が2人に注がれる。

この世界の男性は美丈夫しかいないが、王族は別格で美しさレベルが違う。


『でも2人とも秋波を気にもしてないんだよね…って言うか2人は私ばっかり見てるし…』


見つめてもらえる程の美貌を持ち合わせていないんだけどなぁ…

少し居心地悪くなって来た時にやっと部屋に着いた。部屋に入ると部屋の中央に珍しく円卓が用意されている。これなら誰が隣に座るかで揉めなくていい。チェイス様の配慮だろうなぁ…

しかし後にこの円卓は陛下ダラスの指示である事を知る。ここでも悋気やきもち全開の陛下ダラスに可愛さを感じ小さく笑ってしまう。


時間を無駄にしない様に着席し先ずば食事をいただく。陽気なアーサー殿下が話題を振ってくれ和やかに食事は進み、食事が終わると従僕さんと侍女さんが退席し、カイルさんとデュークさんが両殿下の後ろに控え本題が話し合われます。私も気持ちを切り替えて座り直す。

心なしかオーランド殿下の表情が固い。そりゃそうだよね。ここでアルディアからも反対されたら、私のレッグロッド行きが更に遠退いてしまう。表情が固いオーランド殿下を見たアーサー殿下は苦笑し唐突に


「我が国の黒歴史になるが、多恵殿が誘拐・軟禁された時にレッグロッドとモーブルが騎士団を引き連れて来た事がありましたね」


何の話が始まるのか分からずアーサー殿下を見つめていたら、アーサー殿下は微笑みウィンクして


「あの時貴殿は私に“不甲斐ない国に乙女を預けて置けない”と多恵殿の身を渡す様に詰め寄ったのを覚えていますか?」

「・・・」

「今、私と貴方は逆の立場となっている。今の貴方の心境をお聞きしたい」


あれ?アルディアは私のレッグロッド行を支持してくれるのではないの?不敵な笑みを浮べ真っ直ぐにオーランド殿下を見つめるアーサー殿下。ごめんなさい!頭の悪い私にはアーサー殿下の意図が分からない。でもあの時確か2人は口論の末に決闘寸前まで行ったと聞いたよ。今いっぱいいっぱいのオーランド殿下をあまり追い詰めないで欲しいんですが…

顔を歪め辛そうな表情をするオーランド殿下。殿下の後ろに控えるカイルさんの何か言いたげだが、王子相手に発言するのは簡単では無くもどかしそうだ。

そして意を決したカイルさんが一歩前に出た時


「あの時は只々多恵様の身が心配で、アルディアを信じれず、この手で護りたい一心でアーサー殿下に失礼な発言を…」

「あの時の私と今の殿下の立場が逆転した訳です。今ならあの時の私の気持ちが分かるはず」


アーサー殿下はあの時の心情を語りだした。王子としてプライドからでは無く心から私を守りたい気持ちがあったと話す。そして今オーランド殿下も同じではないかと。


『アーサー殿下は意地悪で言ったのではなく、同じ経験をした自分だから今のオーランド殿下の気持が分かると言いたいんだ』


恐らく本心ではレッグロッドの内情をよく思っていないはず。しかしオーランド殿下の真剣な想いを理解し賛同してくれている。アーサー殿下の懐の深さに感動し、思わず泣きそうになる。そして私の表情から思っている事が分かったアーサー殿下は微笑みをくれる。アーサー殿下は柔軟な考えで行動力がある。でも偶にズレるけど基本いい人だ。


「あの時、オーランド殿下は最後アルディアに多恵殿を任せてくれた。あの後の色々あったが最後まで多恵殿の助けが出来、我らアルディアは誇りに思っている。だから今回の多恵殿のレッグロッド行はアルディアは異を唱えない。但しそれは手放しで了承した訳では無い。絶大な信頼をおく多恵殿が必要と感じ望んでいるからです。正直、レッグロッドの体制に良い心象はない。手放して賛同している訳ではありません。そこは間違わないで頂きたい。多恵殿に何か有れば我が国の騎士団が総出で多恵殿を迎え行く。そこを心して欲しい」

「アーサー殿下。ルーク陛下に感謝と未来変わらぬ友好をお伝えいただきたい」


やっとオーランド殿下の表情が柔らかくなった。臨戦態勢のカイルさんも元の位置に戻り表情を緩める。するとアーサー殿下は無表情で


「アルディアは異は唱えんがモーブルの説得は協力はしない。アルディアが味方と勘違いされぬよう」

「はい。理解しております」


そう言いまたオーランド殿下は表情を硬くする。ここで話は一段落し。雰囲気を変える為にアーサー殿下がキースから聞いた金融機関設立の話をしだす。キースが帰国後に直ぐにルーク陛下に話が行き、陛下が設立をお決めになったそうだ。レッグロッド側は話は聞いているようだが、詳細はまだ伝えられていないみたい。


「この案も多恵様が発端と聞いています。貴女は箱庭は良き方へ導いてくれる。未練がましいがやはり私は貴女がいい」

「えっと…」


予想外にアーサー殿下に口説かれ嫌な汗が出て来る。それまで意気消沈していたオーランド殿下がアーサー殿下に参戦し、二人にデレられ困ってしまう。

しかしここから緊張感がなくなり、一応私の伴侶候補同士で気が合うのか、穏やかに雑談し夜が更けていく。オーランド殿下の後ろに控えるカイルさんも顔色が戻り、アーサー殿下に付き添うデューク様はいつも通り優しく見守ってくれている。


気が付くといい時間になっていた。そろそろ解散のタイミングでアーサー殿下が最後にオーランド殿下に釘を刺す


「我がアルディアとレッグロッドには大きな確執は無いが、レッグロッドとモーブルの蟠りは大きいと聞く。ダラス陛下を説得するのは容易ではない。たとえ愛する多恵殿の頼みと言えども、簡単に首を縦に振らないだろう。しかし同じリリスの箱庭の住人だ。誠意をもって話せは理解いただけると私は信じている。間に入る多恵殿の為に尽力して欲しい」

「無論にございます」

「調整が出来れば3国で金融機関設立の話し合いを行いたいと思うのだが」

「はい。是非」

「いい感じに進みそうですね!私も仲間に入れて下さい」


一応この中で一番年上のアーサー殿下が話を纏めてくれ、アーサー殿下の男前っぷりに頬が緩む。私が見ているのに気付いたアーサー殿下が色っぽい顔をして


「今からでも私を選んでくれていいのだよ」

「えっと…今はお仕事が忙しくてそんな気分は無くてですね…」


お茶を濁すと分かっているよと笑うアーサー殿下。こうしてレッグロッドとアルディアの会談は無事終わり部屋に戻る。お2人は送ると申し出てくれたが、疲労困憊の私はお断りし、ケイスさんにエスコートしてもらい部屋に急いだ。

公式な会談でナイトドレスを着ていて苦しい。早く全てのものから解放され、生まれてままの姿に戻りたい。

結局体力が最後まで持たず、部屋まであと少しでへばってしまい、ケイスさんに抱っこされ部屋に着いた。こうなるのが分かっていたのか、モリーナさんと補助に初めましての侍女さんがスタンバイしていて、二人がかりで湯浴みを手伝ってくれ、マッサージを受ける事になった。やっとベッドに入った頃には8刻の鐘の音が聞こえ長かった1日を終えた。


翌朝てん君が早めに起こしてくれる。これは昨晩私がてん君にお願いした事。昨晩の内にダラス陛下に朝食と共にとお誘いしOKを貰っている。

正直、キース⇒オーランド殿下⇒アーサー殿下と続けての訪問で疲れが溜まっている。しかしここが踏ん張り時で頑張らないと…

いつもより早く起きてベッドの縁に座り気合を入れたら


「きゃっ!」

「何故だ今日は早いぞ!」


フィラに背後から抱き付かれて、ベッドに引き込まれた。どうやらいつもどうりに来たら私が起きていて驚いたようだ。だからってベッドに引きずり込まないで!


「昨日の約束をぶっちしたから陛下と朝食を共にする為に早く起きたの」

「ダラスなど放っておけ。最近多恵は俺に冷たい。俺も拗ねるぞ」


毎朝ベッドに潜り込んで来る人が拗ねるってどの口が言ってんだか…溜息を吐いて私から抱き付き朝の口付けをする。

すると蕩ける様な微笑みを向け首元にキスをするフィラ。印を付けると私が怒るからくすぐったいキスだけ。こうして婚約者の相手をして忙しい朝を迎えるのだった。

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