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突然の宰相チェイス様からの呼び出しに戦々恐々で

部屋に戻して貰えずそのままチェイス様の執務室へ連行中の私。エスコートを変わったチェイス様に何の話か知りたくて聞くけど、はぐらかされ全く答えて貰えない。

どんどん不安になって来た頃にチェイス様の執務室に着いた。そして入室するとそこには…


「陛下?」

「多恵殿?」


着替えをされラフな格好をしたイケオジがそこにいて優雅にお茶を飲んでいた。

陛下と顔を合わせフリーズ中。この感じでは陛下も知らされていないみたい。チェイス様の思惑が分からず立ち尽くしていたら、再起動した陛下が歩み寄り手を取ってソファーに座らせてくれる。


「チェイス説明を。多恵殿が困惑しておいでだ」


するとチェイス様は溜息をついて


「初恋を拗らせた身分のある男性が、仕事が手に付かず困っておられるので、お手伝いをしたまでです」

「はぁ?」


チェイス様が戯けてそう言うと苦笑いをした陛下は、小さい声でチェイス様に礼を言っている。礼を言われたチェイス様の表情は柔らかく優しい。そしてチェイス様が私に向き直り


「多恵様がお忙しいのは重々承知しておりますが半刻でいい、その男に時間を与えてくれませんか?」

「えっと…私でよければ。でも夕刻に予定があるのであまり長くは無理ですけど…」


そう言うと2人は微笑みを向け礼を言われる。


「私はアーサー殿下にモーブル滞在中の予定をお聞きして参りますので、この部屋はご自由にお使い下さい。陛下必ず部屋の扉を開け紳士の振る舞いを…」


チェイス様は陛下に釘を刺し退室していった。お茶と私の好きなチョコ菓子が出され、文官さんは退室し陛下と2人きりになる。

何を話したらいいか分からず視線が泳ぐと、陛下は照れくさそうに…


「家臣に気を使わすダメな君主だなぁ私は…」

「いえ、いい家臣をお持ちだと思いますよ」


前任のエリアス様に比べチェイス様は柔軟な考えと行動力があり有能だ。陛下は立場上弱さを隠さなければならない。しかし陛下も人の子で弱さも欠点もある。そこを見えないところでフォローするのが宰相チェイス様の役目なんだろう。


『陛下も寂しいと思う…あれ?私何か忘れている気が…』


カップを片手にモヤモヤの元を考えていて…


「あっ!」

「どうした?何かあったのか⁉︎」


立ち上がり陛下に深々と頭を下げて


「ごめんなさい!私陛下との約束を破ってしまいました」

「約束…あぁ…朝食の件か?」


そう!朝食だ。昨晩はオーランド殿下と夕食を共にする代わりに、陛下と朝食を共にすると約束を私からしたのだ。それなのに寝坊してブッチしその上、先にアーサー殿下を食事をしたんだった。


焦る私に優しい眼差しを送る陛下は、立ち上がり隣に移動し私の手を取ってご自分の頬に私の手を当てた。


「正直忘れられて拗ねたのだ。いい歳の男がだ。でも多恵殿が疲れていて起きれなかったのは十分理解している。それにアルディア側が予定よりかなり早く着いたこともあり、余計に貴女との時間を取られ…気持ちが落ち込み…」


目の前のイケオジは眉尻を下げ情けない顔をしている。ここにいる男性はあの威厳のある王ではない。


『なんか可愛い…』


しょげる陛下の手を握り微笑むと抱きつかれた。でも…なんだろう…欲情がなくて子供が寂しくて親に甘える感じ?

こんな事されるとまた48歳のおばちゃんが奥底から出てくるではないか!

短い腕を目一杯伸ばし陛下の背中を撫で宥める。そして甘えるように陛下は私の肩に頭を置き目を瞑る。暫く抱き合い会話も無くお互いの体温を確かめ合う。


「王は…誰にも頼れない。寂しさも辛さも悩みも己に留め、国民を護り先導せねばならない。しかし王とて人の子だ。耐えれん時もある。そんな時は妃が支えになるのだが…」

「…」

「私はそれをシャーロットとの間に築け無かった。いや…初めは有ったが途中からすれ違ってしまった。今は貴女が心の支えだ。だから嫉妬心と決断に迫られ悩む私の支えになって欲しい」

「陛下…」


弱さを隠さず頼る陛下に母性全開の私。強い男性が弱っていると守ってあげたくなる。ふと…



『昔の曲で男性を守ってあげたいって歌詞の曲があったなぁ…』


と陛下を抱きしめそんな事をぼんやり思っていた。そして溜息を吐き腕を緩めた陛下は、真っ直ぐに私を見つめて


「恐らくアルディアのルーク殿は多恵殿のレッグロッド行きを賛成するだろう。アルディアは多恵殿に絶大な信頼があり、貴女の考えを支持するはずだ。しかしアルディアとレッグロッドの関係性と、我が国とレッグロッドの関係性は大きく異なる」


レッグロッドに何百年も前から悪影響を受けて来たモーブルはレッグロッドに対していい心象がない。だから自国の問題もまだ完結していないのに、心象の良くないレッグロッドに許可出来ないのだろう。


「だから…」

「だから?」


また黙り込む陛下。その表情は葛藤している様だ。陛下の辛そうな表情に


「レッグロッドに行く前に王妃様にも会いに行きたいし、まだ決断するには時間があります。もっと話し合いましょう。陛下としっかり話し合いたいです」


唖然とする陛下の表情は見た覚えがある。雪が怒られると思っていたのに、私が怒らなかった時にこんな表情をしていた。


『かわいい…』


陛下は私の実年齢より一回り以上下だ。陛下だけではなく求婚者は皆んな年下なんだよね。


『あれ?フィラは?そう言えばフィラの年齢知らないや』

それは今は置いといて…


求婚者の皆さんは普段から雄々しく年下に見えない。でも偶にこんな風に弱い所を見せられると、何とかして上げたくなる。その思いから無意識に陛下の頬に自分から口付けていた。


「!」


驚いた顔をした陛下は少年の様な顔をして頬を染め嬉しそうだ。

こうして陛下とレッグロッド行きについては、アーサー殿下とオーランド殿下が帰られてから、時間を取り話し合う事で落ち着いた。

そして気がつくと5刻を過ぎていてやっと部屋に戻る。部屋を出てハグをしふと見上げた陛下は顔色が良くなっている。そして


「いい家臣をもって私は幸せだよ」

「でしたらその家臣チェイスにあまり心配かけないで下さいね」

「あぁ…」


陛下はこの後公務がありチェイス様の執務室前で別れた。やっと戻れるけどチェイス様の執務室って私の部屋から一番遠いのだ。


この箱庭は歩く事が多くちょっと食事を抜くとすぐ痩せてしまう。こんなに広い城内だからキックボードや自転車が欲しいと思ってしまう。そんな事を考えていたらケイスさんが覗き込んで心配ている。どうやらアイリスさんから私の様子を注意深く見る様に言われてようだ。

皆さんに心配させないように元気に?歩き出す。

そしてやっと部屋に戻ると交代したモリーナさんが待っていて、すぐに着替えを手伝ってくれ寝室に直行。少しでも休みたくてベッドにダイブし、お休み5秒で眠りについた。


『たえ おきれる?』

『う…ん 眠い…もう少し』

『モリーナ まってる』


てん君に起こされたけど目が開かない!怠いよ…


『たえ やめとく?』

『へ?』

『むり だめ』


「多恵様!そろそろご起床いただかないと!」


モリーナさんが扉の向こうで声をかけている。なんか既視感デジャビュだ。


『わかった モリーナ うるさい たえ やすむ アーサーもオーランドも やめる!』


てん君がそう言うと腕の中の毛玉が消えた。慌てて目を開けるとてん君が寝室の扉へ走って行く。なんかヤバい気がして起き上がり


「モリーナさん!起きた!でもちょっと待って!」


今扉を開けたら凶暴な顔をしたてん君がいる!


『てん君!なでもふするよ!』

『なでもふ!』


てん君は踵を返し嬉しそうな表情をして私の元へ戻ってくる。そして私の膝の上に座り、高速のなでもふをうけ恍惚の表情をしている。


『危なかった…』


てん君を撫でいたら困り顔のモリーナさんが入って来た。モリーナさんの困り顔が気になり、寝ている間に何があったのか聞いたら


「マジて?」

「はい…」

「頑張って用意します。だからお願い手伝って!」


朝と同様に急ピッチで身支度をする。そして部屋に行くと


「多恵様!」

「えっと…殿下…お迎えにありがとうございます」


そう予定になくオーランド殿下が迎えに来たのだ。モリーナさんもケイスさんも心配そうに見ている。気疲れと連チャンの面会で痩せる思いだ。否!絶対に痩せている。


『皆んなのせいだからね!”痩せたとかー”とか”ちゃんと食べろー”とか言わないでよね!』


キラキラ王子オーランドに向かいながら心の中でやさぐれる私だった。


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