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意外

オーランドが来てからお疲れモードの多恵。更にアーサー殿下まで来て波乱の予感…

『たえ おきる! アイリス こまる』

『かまわん。多恵は疲れるんだ。寝かせておけ』

『だめ アーサー くる いそがしい』

『忙しい?』


近くで話し声が聞こえゆっくり目を開けると。いつもどおりフィラに抱きかかえられ、頭上ではフィラとてん君が睨み合いをしている。そして


「多恵様!そろそろご起床頂かないと、アーサー殿下のお出迎えに間に合いませんよ」

「!」


寝室の扉をノックしアイリスさんが声を掛けている。慌てて起きようとしたがフィラが更に抱え込み、布団を頭から被せ離してくれない。

どうやらアーサー殿下が来るのが気に食わないようだ。やきもち全開のフィラとアイリスさんを気にして私を起こしたいてん君が思念で言い合いをしている。

思念だから寝室は静かでアイリスさんはまだ私が寝ていると思っているだろう。

2人の言い合いが止まらないので、アイリスさんに返事をしようとしたらフィラに頬を両手で持たれて口付けされた。これじゃ声を上げれない!


『てん君!フィラを何とかして!』

『フィラ しつこい かむぞ』


てん君が牙を剥き威嚇してもフィラはキスを止めてくれない。扉の外が騒がしくなって来た。どうやら声をかけても起きない私を心配し、アイリスさんが人を呼んだようだ。今突撃されたらベッドでキスしているのを見られてしまう!絶対嫌だ!


『てん君!フィラを止めて』


“がぶ!”


「っつ!」


やっとフィラの唇が離れた。布団を退けて顔を上げたらフィラの肩にてん君が噛みついている。痛そうに唸るフィラ。直ぐにてん君にやめるように言い、フィラのシャツを脱がせ傷を確認した。


『凄い歯型…』


フィラの肩にはくっきりとてん君の歯形が付いているが出血はしていない。朝一から流血騒ぎはご免だよ。これで起きれると安堵するとフィラが腰を抱き寄せ色っぽい顔をして


「俺を脱がせて何をするつもりだ⁈俺はお前が望めばいつでも応えるぞ」

「はぁ?」


フィラはシャツがはだけ胸元が露わになり超色っぽく深夜臭がしている。直ぐにシャツを着せ胸元を押し仰け反って離れようとしたけど離してくれない。再度てん君が牙を剥いた所で寝室のドアが開いた。怖い顔をしたアイリスさんが仁王立ちし大きな溜息を吐いて


「お時間がございません。妖精王に申し上げます。お帰りを」

「俺は人の指図は受けん。アーサーなど待たせておけばいい」


妖精王にも怯まず苦言を呈するアイリスさんは相変らず男前だ。でも本当に急がないと時間がないから、自分からフィラに抱き付き口付け帰る様にお願いする。溜息を吐いたフィラは渋々帰って行った。ここから怒涛で湯浴み→着替え→ヘアーメイクと急ピッチで身支度をし足早に謁見の間に移動。


「多恵様。大丈夫ですか?」

「お腹が空いているけど大丈夫。頑張るから」


そう時間がなく食事はパスした。アーサー殿下にご挨拶したらすぐ昼食にしてくれるそうだ。

急ぎやっとあの苦手な大きな扉が見えて来た。扉前には何故かシリウスさんが待っていて当たり前の様にハグと頬に口付けされる。そして


「アーサー殿下がもう到着しておられます。お急ぎを…」

「お待たせしてすみません」


差し伸べてくれたシリウスさんの手を取り謁見の間に入室する。


「?」


入室すると予想外にダラス陛下とアーサー殿下は穏やかなに話をされている。少し安心していると、私に気付いたアーサー殿下がダラス陛下に許可を貰い私に向って来る。そして相変わらずキラキラ王子のアーサー殿下は胸に手を当ててご挨拶される。


「久しぶりでございます。お元気そう…」

「?」


突然フリーズしたアーサー殿下。何か粗相したかと不安になって来たら、いきなり私の頬に手を添えて


「お痩せになりましたね。モーブルの食事は合いませんか?」

「!」


アーサー殿下は心配して言ってくれたのは分かるけど、モーブル側の表情が曇りまだ手を取っているシリウスさんがぎゅっと掴んだ。そんな事は無いと否定するが心配するアーサー殿下はやっぱり少しズレた発言を続け、シリウスさんがどんどん無表情になっていく。焦ってまだ気付かないアーサー殿下に必死に別の話をふる。


「私がお聞きしていいのか分かりませんが、殿下の今回の訪問の用向きは?」

「あ…多恵殿の予定がいきなり変更になると聞いたのだ。アルディアとしても真意を確かめる必要があるからね」

「ア…ヤツパリ」


殿下の発言にダラス陛下の表情が険しくなり、シリウスさんは眉間に皺をつくっている。でも…


『あれ?でもアーサー殿下の表情が柔らかく、怒っている様に見えない…よ?』


意味が分からず困惑していたらチェイス様が皆さんに声をかけ各々が定位置に移動し、私はまた雛壇に上げられそうになったので、小さく抵抗しグレン殿下の後ろに陣取り目立たないようにしていた。

私の行動に皆が苦笑いの中、チェイス様が進行し公式な謁見がはじまる。何度も立ち会っても謁見の儀は言葉が難しく、何を言っているのかは何となくしか分からない。

そしてやっと挨拶が終わるとアーサー殿下が


「我が王から多恵殿に言葉を預かっております。お伝えする為に是非お時間をいただきたい」


アーサー殿下がそう言うと少し考えた陛下が許可をし、やっと謁見の儀は終わった。

そしてアーサー殿下が目の前に来て満面の笑みでハグを求めてきた。許可を出すと優しくハグしてくれる。


“ぐぅ~”


「「あっ!」」


我慢していた私のお腹は限界に達して鳴ってしまった。恥ずかしくて殿下の胸に顔を埋め唸ってしまう。するとアーサー殿下は強く抱きしめて耳元で


「相変わらず可愛いですね。出来るなら貴女と昼食を共にしたい」

「えっと…チェイス様に聞いてみないと?」


そう言いチェイス様を見たら頷いて許可してくれ、文官さんに指示を出している。そして気がつくとリチャードさんが背後にいて、アーサー殿下がお泊まりになる貴賓室に案内してくれるようだ。

腕を解いたアーサー殿下が腰に腕を廻しエスコートしてくれる。そして扉の近くまで来ると懐かしい顔が…


「兄様!」


兄様ことデュークさんがいて微笑みを向けてくれる。そして


「お会いできて嬉しいです!皆さんお元気ですか?」

「はい。おかげ様で…それより…多恵様はお痩せになって…食事は足りていますか?」


デュークさんにも痩せたと心配される。多分、朝を食べてないからだと思うけど…まだ鳴り続けるお腹にアーサー殿下とデュークさんが笑っていて恥ずかしい。

すると部屋の案内をしてくれるリチャードさんが


「多恵様は連日お忙しく、今朝は遅くにご起床され朝食を召し上がる時間がございませんでした。普段はしっかり召し上がっておいでですのでご心配ございません」


しれっと寝坊した事をリチャードさんに暴露され、それと同時に予定より早く来過ぎたアルディア側に嫌味を言っている。するとデュークさんがアーサー殿下に


「だからゆっくり行きましょうと言ったではありませんか。我々が予定より早く着いたせいで多恵様の食事の時間が無くなってしまったのですよ」

「それは悪い事をしたと思うが、それだけ私は早く多恵殿に会いたかったのだ」


私の寝坊が何故かアーサー殿下に責任になっている。そして食事の時にこの事についてアーサー殿下が気まずそうに話してくれた。

キラスの宿を予定より1刻半も早く出発した上、休憩も取らずノンストップでモーブルの王城まで来たそうだ。予定通り来ていればあの時間に起きても私は朝食を食べれた訳。そしてその無理は馬達か被り、モーブルに着いた馬達の疲労困憊に王城の馬番さんに冷たい目で見られたそうだ。

デュークさんに咎められ少し拗ねているアーサー殿下。でもそれだけ会いたいと思ってくれていたのは嬉しく素直に“会えて嬉しい”と告げる。

するとさっきより更に強く引き寄せられ熱を帯びた視線を送られる。その眼差しに焦り話を逸らせようとして


「アルディアに問題ありませんか?」

「あぁ…例年より流行病に罹る者も減り心配ないよ。そうそう陛下をはじめ皆から文を預かっているから後で届けさせよう」

「本当ですか⁈嬉しい!」


“くぅ~”


「あ…」


どれだけ空腹を主張するんだ私のお腹!また笑われると思ったら目を細めた殿下が額に口付け耳元で“可愛い”と呟いた。いや腹の虫は間違いなく可愛くないし!

お腹は空くしデレられまだ昼にもなってないのに疲れてきた。そしてやっとアーサー殿下が宿泊する貴賓室に着き、入室すると部屋は美味しそうな匂いに包まれ、また盛大にお腹が鳴った。

こうしてやっと食事にあり付けやっとお腹も心も満たされ落ち着く。そして食後のお茶を飲み終わったアーサー殿下が


「多恵殿は今、困っているのではないか?」

「へ?何で分かったんですか?」

「貴女を愛しているからだよ…」

「えっと…」


突然の告白に少し困ったら笑いながら


「済まない。それどころでは無かったな。恐らくレッグロッド行をダラス陛下から反対されているのではないか?」


殿下の思わぬ発言に固まってしまう。殿下の次の言葉が想像できず怖い。すると


「貴女を安心させたいので、アルディアの答えから伝えよう。我がアルディアは貴女の判断を支持する」

「って事は…レッグロッド行を認めてくれるの?」


殿下はとても素敵な笑顔で頷いてくれた。予想外の反応に嬉しくて、気が付くと立ち上がり殿下に抱き付いていた。殿下は優しく抱きしめてくれ背をぽんぽんし宥めてくれる。

どうやらルーク陛下は初めダラス陛下の様にレックロッドの体制を危惧し私の身を案じ反対したそうだ。しかし殿下達をはじめグラント、キースが私の意思を尊重しレックロッド行を賛成してくれた。


「正直、今のレックロッドの体制に思う所は多い、しかし多恵殿が(レッグロッドを)何とかしてやりたいと思っているのも分かっている。だから皆で陛下を説得したよ」


凄い!この箱庭は王が絶対。なのに皆で王に進言し説得してくれたのだ。感動して泣きそうになった。そして殿下は私を抱き上げ膝の上に乗せ、子供をあやす様に頭を撫でてくれる。

モーブルの様に反対されると思っていて、どうやって説得しようかと考えていたから想わぬ援軍に感動中の私。

こうして久しぶりに再開したアーサー殿下と沢山話せて心落ち着いた頃に、貴賓室に文官さんがやって来てオーランド殿下からアーサー殿下に面会の申込があった。すると少し考えたアーサー殿下が私にも同席して欲しいと言う。


「えっ?私が居ていいんですか?」

「はい、貴女が居た方が話が早いので是非」

「わっわかりました」


こうして夕食を両殿下と共にする事になりまた濃い1日になる事を覚悟し、アーサー殿下との昼食を終えた。貴賓室から一旦部屋に戻ろうとしたら、護衛騎士さんの交代時間になっていて、リチャードさんが退勤の挨拶をしてくれ、交代の騎士が迎えに来てくれていた。今日は公私共に充実しているケイスさんだ。嬉しい報告待ってますね!


「ケイスさん。今日もよろしくお願いします」

「はい。お任せを」


こうしてケイスさんのエスコートで廊下を歩いていたら、廊下の反対側からチェイス様が歩いて来る。会釈すると足早に来たチェイス様が


「もしよければお時間いただけませんか⁈」

「はぃ?」


まさかの宰相チェイス様からの呼び出し?私には思い当る節が無いよ!

そして高速で嫌な予感が襲って来た。チェイス様が話があるなんて陛下ダラスの事しか無いじゃん!


お読みいただき、ありがとうございます。

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