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ダラスの怒り

レックロッドとの面会が終わり今日最後のお仕事。しかし陛下ダラスとの面会が大変な事になり…

「多恵様⁈大丈夫ですか?かなりお疲れですが…」

「うん。正直疲れMAXだよ。でも、レックロッドの件は早く陛下に伝えておかないと」


そう言いながら陛下の元へ行く準備をしている。公式な謁見でもないからこのまま陛下の元へ行こうとしたら、何故かアイリスさんに着替える様に言われる。何度もこのままでいいと言ったけど強引に着替えさせられた。

そして時間が迫りリチャードさんと今日の当番騎士のザックさんと陛下の執務室に向う。アイリスさんには悪いけどドレスは歩きにくいから急ぐ今は嫌だったのになぁ…。

でもそんな事を言ってられなくて短い脚を精一杯回す。すると少し笑いながらリチャードさんが抱っこしようかと聞いてくる。どうやらリチャードは私を妹と認定したようだ。


『実年齢は貴女の叔母程上ですけどねー』


と苦笑いし頑張るとお断りする。そしてやっと陛下の執務室に着いたら、執務室からチェイス様が出て来たのでご挨拶をする。すると何故か笑いながら


「その装いはアイリス嬢ですか?」

「えっ?あ…はい。公式な謁見じゃないので着替える必要はないと言ったのですが、半ば強制的に着替えさせられたんですよ。アイリスさんは何がしたいんだか私にはさっぱり…」

「やはりアイリス嬢は優秀だ」

「あの意味が…」


何か悟ったチェイス様は笑いながら陛下の執務室のドアをノックし扉を開けてくれ


「陛下はここ最近で一番機嫌が悪いのです。ですが多恵様のその装いで少しは機嫌がよくなるでしょう」

「はぃ?」


意味が分からないまま陛下の執務室にほり込まれた。デスクに座り書類に目を通している陛下の眉間には深い皺が刻まれている。猛烈に部屋に戻りたくなってきた。

すると私に気付いた陛下が立ち上がり、今度は微笑んで足早に来ていきなり抱きしめた。


「貴女は常に私を魅了する。こんな可愛い事されたらなんでも許してしまいそうだ」

「?」


機嫌が急上昇中の陛下は頬に額に口付けて中々離してくれない。もがいてやっと解放されたら、手を引かれソファーに座り密着される。そして部屋の隅で気まずそうに待機していた従僕さんがお茶を入れてくれ退室して行った。やっと話が出来ます


「陛下あのですね…」

「午前中にオーランド殿が面会を希望し、とんでもない申出をしてきたよ」

「あ…バスクルより先にレッグロッドって話ですか⁈」

「やはり多恵殿にも話していたか…レッグロッドの内情は今に始まった事ではない。アルディアは知らんが何代も前からモーブルの王が苦言を呈してきているが中々前乙女レベッカの呪縛から解放されない。貴女が召喚されこの箱庭全ての国を救うとなってから、更に前乙女レベッカを崇める者達の反発が強まり忠告をして来た。それなのに改善もされず貴女を安心して任せれる環境にない。それどころかその状況を貴女の手を借り解決しようとしている。その甘い考えが許せんのだ」


温厚なイメージだった陛下が怒りを露わにしたので、驚き少し怖く感じ思わず顔が引き攣ってしまう。私の表情に気付いた陛下は指で眉間の押さえ、そして感情も押えようとしているようにみえる。

そしてモーブルの問題に着手した時に聞いていなかった話をここで聞く事になる。


モーブル側は今回の貴族派の脱税等の問題の根源はレックロッドにあると考えている。なぜならモーブルが前妖精女王シュリの番をモーブルから出した事により妖精の加護が過剰になったからだ。それまでモーブルは自給自足できていて余剰分をアルディアとレッグロッドに輸出し、生産と消費のバランスが取れていた。そこに前乙女レベッカ前妖精女王シュリの番を略奪し、妖精達が怒りレッグロッドを見限ってモーブルを加護しだした事から、モーブルの農作物の収穫が異常に増え輸出せざるを得なくなり、そこから外貨収入が増え貴族派の様に私利私欲を追求する者が出た訳だ。


「つまり今回の貴族派達は妖精の加護が増えなければこんな事は起こさなかったのだ。不敬承知で言うが前乙女レベッカが齎した負の遺産だ。それ故に私は正直レッグロッドに良い印象がない。その上、その末裔どもが愛する多恵殿に害を及ぼそうとしている。そんな改善もされていない国へ愛する者をやれん」

「あ…」


まさか反対されるなんて思ってなかった。モーブルが落ち着いて来たから気持ちよく送り出してくれると思っていて今プチパニック!


『困った…想定していなくて頭が真っ白だ』


焦っている私を力強く抱きしめる陛下。この力強さがレックロッドへの不信感を物語っている。もしかしたらアルディアのルーク陛下に話が行けば同じく反対されるかも…そんな事になったらレックロッドに行けなくなる。 


「困ったなぁ…」


そう呟くと陛下が覗き込み


「私は貴女に甘いが今回は悪いが反対だ。許可できん。諦めてくれ」

「でも今回はレッグロッドを助けるだけではなく、結果的に妖精王フィラそしてリリスを助ける事にもなるから…」

「それは理解している。しかしレッグロッドは貴女が召喚されてから今まで何をしていたのだ!結局は自国で解決できず、また前と同じ様に乙女に頼ろうとしているではないか!」

「…」


陛下の剣幕に何も言えなくなってしまった。陛下がここまで頑なになるのは理由があるのだろう。少し間を置いてしっかり話し合わないといけないかもしれない。うぇーん!誰か~援軍を呼んで来てくれ…

この後、様子を見ながら話をするが聞き入れてもらえず撃沈する。まじに困った…

窓の外が暗くなっているのに気付き肌寒くなったのを感じ身震いすると、更に陛下に抱き込まれ気分はぬいぐるみだ。

もぅ今日は何を言っても無理だと諦め大人しく陛下の腕の中。そしてしばらくすると…文官さんが急ぎだと入室許可を求めて来た。まだ不機嫌な陛下が許可を出したので開放してもらえると思ったが、読みは甘くまだぬいぐるみの私。真っ赤な顔をした若い文官さんが陛下に急ぎの書状を渡し一目散に退室。書状を手にした陛下を見ていたら、一瞬アルディアと書いてあるのが見えた。

嫌な予感がして来た!書状を開封している陛下から逃げようとしたが、陛下の腕は緩まずまだぬいぐるみ継続中。そして溜息を吐いた陛下が


「アルディアにもレッグロッドの話が行き、明日アルディアから使者が来る様だ」

「へ?」


また波乱の展開が想像できて身震いする。そして恐る恐る陛下に


「アルディアからは誰が…」


ここでグラントが来るとオーランド殿下・ダラス陛下・グラントの三つ巴になってしまう!


『でも正直な気持ちはグラントには来て欲しいけど…怖い事になるのが見えている。だって彼はやきもち大魔王だから…』


頭の中で色々考えていたらまた陛下が溜息を吐いて


「アルディアからはアーサー殿下が来る様だ」

「なんですと⁈」


ここに来てアーサー殿下!予想外!驚き固まっていると何故かホッとしている陛下。さっきの溜息は”安堵”の溜息の様だ。そして陛下は少し表情が柔らかくなり私の髪な掬い口付けて


「良かった。この状況でグラント殿が来たら私は冷静でいる自信がない」

「へ?なんで?」

「また、グラント殿が滞在中は貴女の心が彼で満ちてしまい、嫉妬に苦しまねばならん。やっとキース殿が帰りホッとしたというのに…国王と言えども私もただの男だ。嫉妬に苦しみもする」


そっか…アーサー殿下の求婚を断った事は知っていたんだ。それにしてもレックロッド行の話がどんどん大事になって来ている。オーランド殿下が来てまた2日しか経って無いのに…。またストレスまみれになる事を覚悟する。私はここ最近ストレスからか甘いモノが食べたくて困っている。このままいけば生活習慣病まっしぐらだ。


『異世界まで来てメタボとか勘弁して欲しい…』


ぼんやりそんな事を考えていたら遠くで6刻の鐘の音が聞こえて来た。疲れた…もう部屋に帰りたい。でもまだぬいぐるみ続行中で陛下は離す気がなさそうだ。すると文官さんが来て私にオーランド殿下が夕食を共にしたいと申込があったそうだ。折角機嫌が良くなった陛下の表情が曇る。でもオーランド殿下のメンタルが心配でお受けすると返事をして自分から陛下に抱き付き


「陛下の気持も分かりますが、オーランド殿下のメンタルが心配なので行ってきます。でもね陛下も心配だからお時間大丈夫なら明日の朝食をご一緒してくれませんか⁈」

「貴女はずるい。本当はオーランド殿の所へ行かせたくないが…惚れた弱みだ。明日朝食を共にしてくれるなら我慢するよ」

「ありがとうございます」


お礼を言うと陛下は指で自分の頬と突いた。口付けの催促だ。純日本人の私は本来こんな事をしないが、箱庭の皆さんに合わせていたらキスする事に慣れてしまったようだ。

躊躇せずに陛下の頬に口付けた。すると陛下から今日一いい笑顔を貰い、やっと解放されるほっとすると陛下が


「今日そのデイドレスを着ていなければ、オーランド殿との夕食は許可しなかったよ。貴女は男心を掴むのが上手な様だ」

「?」


意味が分からないけど陛下がご機嫌な内にオーランド殿下の元に行った方が良さそうなので、愛想笑いをして退室した。

この後オーランド殿下の元へ行く道すがら陛下の最後の言葉の意味をリチャードさんが教えてくれる。

まるっと忘れていたけどアイリスさんが選んだこのデイドレスは水色。思いっきり陛下の色(パーソナルカラー)だった。陛下との話し合いが上手くいく様にアイリスさんが忖度した訳だ。そう言い楽しそうに笑うリチャードさん。そしてガラスに映る自分を見たら思いっきり陛下の色(パーソナルカラー)。もう笑うしかない…


『だからずっとぬいぐるみのように私を抱っこしていたんだ』


そう思うと一気に顔が熱くなった。ホンとどんな時も知らないって無敵だと改めて思った。

さぁ!疲れているけどもうひと頑張り。オーランド殿下のフォローに行ってきます!


お読みいただき、ありがとうございます。

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