表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
302/442

オーランドの苦悩

オーランドの突入で修羅場になり…


「カイル!勝手な真似を!」

「このままではお前が壊れるじゃないか!」

「多恵様に心配をかけてはならんのだ!」


立ち上がったカイルさんがオーランド殿下の胸倉を掴み怒鳴り合いが始まる。男の人の怒鳴り声は怖い。私はフィラが耳を手塞いでくれているから耐えれるけど、部屋の隅の控えるモリーナさんは震えて泣いている。フィラの胸元を引っ張り


「お願い止めて!怖い」


そう言うと溜息を吐いたフィラは耳を塞いでいた手を外し軽く手を振った。すると風が吹きオーランド殿下とカイルさんは跳ばされ床に転がった。


「ちょっと!乱暴にしないで。怪我をするわ」

「これ位しないと奴らは頭が冷えんだろ」


唖然としていた殿下とカイルさんはやっと落ち着いて立上り、私とフィラに騎士の礼をして謝罪される。その様子を無表情で見ているフィラ。今思い出したけど妖精国とレッグロッドは揉めていて、今も妖精達はレッグロッドを許していないのだ。


『ここも問題山積だった』


取りあえずフィラに開放してもらい、足早にモリーナさんの元へ行き抱きしめ落ちつかせる。


「申し訳ございません。私が多恵様をお守りせねばならないのに…」

「私はフィラが居てくれたから大丈夫。ビックりさせてごめんね。落ち着いてからでいいからお茶を入れ直してくれる?」

「畏まりました」


そう言いモリーナさんは一旦退室した。そしてまだ罰がわるく立ち尽くすオーランド殿下とカイルさんの元へ行き、二人の手を取ってソファーに誘導し座って貰う。そして気が付くと背後にフィラ居て抱きかかえられそうになり、身を翻し一人用のソファーに素早く座った。

一瞬驚いた表情をしたから怒るかと思ったら楽しそうに笑っている。

やっと話が出来る状態になった。さてここは私が口火を切った方がいいのかなぁ…


「ご心配をおかけして申し訳ありません」


オーランド殿下が先に話し出す。


「カイルが何を言ったか分かりませんが、多恵様は心配しなくていいんです。俺が整え貴女が安心してレッグロッドに移れるようにしますから」

「だから何度言えば分かる一人で背負うな!このままではお前が壊れるぞ」

「おいおい。さっきから同じ事しか言ってないぞ。これでは拉致があかん」


恐らく好きな人に心配かけまいと無理をしている殿下。カイルさんはそれを黙って見ていれないのだろう。


「カイルさん。私はオーランド殿下が心配です。話して下さい」

「俺は!」

「こんな事したらオーランド殿下が嫌がるの分かっていても黙ってられなかったんですよカイルさんは。私は今のレッグロッドの現状を知るべきだと思う。問題があるなら一緒に考えたい」

「つっ!」


オーランド殿下は膝の上で両手を握り締め俯いてしまった。沈黙が続き気不味い空気か漂い息苦しい。無理矢理でも何か話題をと思ったらフィラが


「そもそも百年以上前のあの女をレッグロッドはいつまで引きずる気だ」


沈黙を破ってくれたフィラに心で感謝する。それに関しては私も疑問に思っていた。感謝や尊敬はするだろうけど、そこまでなの?


「…それは前乙女レベッカと王家に密約があり…」

「密約?」


初めて聞く前乙女レベッカとレッグロッドの密約。殿下の話ではこの話を知っているのは、陛下とオーランド殿下とベスパス公爵様の3名。カイルさんも初めて聞いた様で驚愕の表情をしている。


「この話は俺からはできません。でも信じて下さい。必ず国内を整え貴女を迎える」

「信じていますが殿下が無理をするのは嫌ですよ私」

「多恵様」

「お手伝いするのが私のお仕事です。一緒に悩ませて下さい」


そう言うと泣きそうな顔をしたオーランド殿下とスッキリした顔をしたカイルさん。そんなにレッグロッドの内情は大変なの?殿下とカイルさんでは無く他の人に聞いた方いいかも…


『あっそうだ』

「殿下。専属侍女さんと騎士様を同行されたと言われてましたけどお会いできますか?」


唐突だと思ったけど生のレッグロッド事情を聞き手がかりを掴みたい。状況が良くないならバスグルに行く前に少しでもレッグロッドに行った方がいいのかもしれない。

すると黙って話を聞いていたフィラが


「バスグルの前にレッグロッドに行くつもりか?」

「流石フィラだね。そのつもりだけど状況をみてからね」

「「…」」


黙り込む殿下とカイルさん。でもバスグルに行っている間に大事になりオーランド殿下が潰れてしまったら嫌だし、妖精達がもっと疲弊しフィラのキャパオーバーが早まっても困る。モーブル側の体制が整いつつあるから正直バスグルは急を要さないかもしれない。

とりあえず第三者の意見を聞きたくてオーランド殿下が同行して来た専属侍女さんと騎士さんに聞き取りしてみよう。

そうこうしているうちに気がつくとあと少しで4刻になる。

頭の中を整理して4刻半にレッグロッドから来た侍女さんと騎士さんと会いダラス陛下の所には夕刻に行くように予定を変更してもらおう。

考えが纏まったから善は急げ。モリーさんに陛下の元に行ってもらいオーランド殿下には侍女さんと騎士さんの面会をお願いする。少し悩んだ殿下は


「分かりました。ですがカイルを同席させていただきたい。信頼する家臣ではありますが多恵様に無礼があってはいけないので…」

「私は大丈夫です。カイルさん突然のお願いですみません」


こうして話が纏まりオーランド殿下とカイルさんは一旦退室して行った。2人をお見送りすると、フィラは強く抱きしめて口付けてくる。フィラにしては我慢してくれた方だと思う。きっとレッグロッドに対して思うところが多いはずなのに。

しかしここで不満をぶち撒けて私が困るのが分かってくれている。やっと唇から温もりが離れ


「やっぱりフィラは優しいね」

「優しいのはお前にだけだ。勘違いするな。お前以外は俺は心底どうでもいい」


そう言い大きな体で包んでくれる。レッグロッドの問題は妖精王のフィラにも関わってくる。だから


「がんばるね」

「無理するな。お前が苦しむのは見たくない。程々にしておけ」


暫くフィラの体温で癒されているとモリーナさんが陛下の元から帰ってきて、陛下は時間の変更を了承して下さり5刻半に陛下の元へ行くことになった。


“ごぉ〜ん”


4刻の鐘が鳴り響き侍女さんと騎士さんの交代になり、アイリスさんとリチャードさんが来てくれた。勤務終わりの皆さんにお礼言うとアイリスさんがフィラに昼食を聞いている。


「まだ多恵のご機嫌を取らねばならんから昼はここで済ます。用意してくれ」

「畏まりました」


こうして久しぶりにフィラと食事をする。今まで気付かなかったが、妖精王であるフィラは普段食事は人と同じ物を食べているのだろか?妖精だけに草花や大地から妖力を得て、食べ物は基本食べないとか?

そんなくだらない事を考えていたら手が止まっていた様で


「どうした?そんなに見つめて俺が欲しいか?」

「なっ!」


深夜臭をだし色っぽく見つめてくるフィラ。そんなふうに見たつもりないけど、変な意味で誤解されているから慌てて


「そんなんじゃない!妖精王って人と同じで食べ物から栄養摂るのかなぁって疑問に思って」


必死弁解すると悪い顔をして


「多恵を抱いたら数日は食べなくても元気だぞ」

「もぉ!昼からそんな話しないで」

「多恵がふったんだろう」

「だから食事の話だよ」


ムキになる私が楽しいフィラ笑っている。少し拗ねたところでフィラが


「俺は半分…いや10の内6は人だ。自然から活力エネルギーをもらうが人でもあるから食事は摂る。しかし人程量は必要ないんだ」

「よかった…食べないのに無理に私に合わせてるのかと思ったよ」


すると笑うのをやめて蕩けるよう表情をして


「だからお前は愛しい…その優しさが俺だけに向けばいいのだが」

「私が優しい?普通の事しかしないし言わないわよ」

「その無自覚が人を惹きつける。俺ら婚約者は気が気じゃないんだぞ」

「?」


さっきまで笑ってて今は何故か怒られている。なんか腑に落ちないなぁ…

少し頬を膨らますと


「妖精城で1人食べる食事は生命維持のためで味がしない。しかしお前となら水すら上手く感じるよ」

「それはないでしょう!でも何でもそうだけど人と共にすると、何でも良く感じるものだよ」


そう。普段の食事は侍女さんがいてくれるけどいつもは1人で味気ない。だからこうやって偶に誰かと食べるのはすご嬉しいのだ。たしかニュースで孤食により健康に影響が出ると聞いた事がある。

叶うが分からないけど、侍女さんや騎士さんに食事を一緒にしてもらえたら、より美味しく感じていいのかもしれない。

そんな事を考えながらフィラと食事を楽しんだ。食事を終えるとフィラは抱擁し軽く口付けて帰って行った。

アイリスさんが何も聞かないがフィラが来ているのと、急遽昼からもレッグロッドの面会が入った事から察してくれているようで、食後に寝室で少し休むように言ってくれる。こうやって察してくれる人が傍に居るのは心強い。


ベッドに寝転がると直ぐに寝付いていつも通りてん君の前脚ビンタで目覚めた。深く眠っていた様で扉をノックするアイリスさんに気付かなかった。


『午前中の()()だけで脳が疲労しているんだ』


そう思い苦笑いしながら返事をすると扉を開けたアイリスさんがカイルさんの先触れが来たと伝える。慌てて起き上がるとアイリスさんが身なりを直してくれ部屋に行く。

すると既にカイルさんとレッグロッドの騎士さんと侍女さんが待っていた。


「すみません。お待たせして」

「いえ、お疲れの様ですね…って俺がそうさせてしまい申し訳ございません」


恐縮するカイルさんにいつもの軽いノリはない。そして来てもらってお2人に


「突然お呼びだてしてすみません。えっと…リリスに召喚された多恵です。今日は色々お話を聞きたくてお越しいただきました。乙女何て言われてますけど、元々平民なので気さくに話していただけると嬉しいです」

「「…」」

「あれ?また何かしでかしました私?」


するとカイルさんが2人に何か言おうとする前にアイリスさんが


「発言失礼いたします。多恵様の専属侍女を務めさせていただいておりますアイリスと申します。お見知りおきを。多恵様は身分関係なく接せられるお方で、畏まられるのを苦手をされておいでです。レッグロッドが乙女レベッカの事をどの様に思われているか存じませんか、同じではないとご承知おき下さい」

「アイリスさん!」


ずっ友認定のアイリスさんはレッグロッドを敵と認識し、知らない間に臨戦態勢になっていて焦る私。また午後から修羅場か?



お読みいただき、ありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。


Twitter始めました。#神月いろは です。主にアップ情報だけですがよければ覗いて下さい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ