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キース滞在最終日

グレン殿下の寝かしつけは思ったより早く終わり、明日帰るキースの元に帰ろうとしたらシリウスさんに呼び止められて

明日昼前にキースが帰るから早く部屋に戻りたいのに、上機嫌のシリウスさんが世間話を始め中々開放してくれない。キースが来てからお相手してないから暫く付き合っているが…


「シリウスさん。そろそろ…」

「キース殿が明日帰国されるのでしたね」


とてもいい笑顔でキースの帰りを話すシリウスさん。ライバルが帰るのが嬉しい様だが、明日はオーランド殿下が来るんだけど…

キリがないので戻ろうと思い立ち上がると、シリウスさんは私の手を取り


「我が国の問題も大半片付き次はバスグルです。バスグルにはグリード殿下がおいでですが、モーブルで制定された労働基準や金融機関立ち上げについては殿下はご存じない。ですから多恵様がバスグルに向われる際に同行者が必要になります」

「言われればそうですね」


確かにシリウスさんの言う通りだ。私も内容は把握しているがモーブル側で内容が分かっている人が同行した方が話が早い。そこまで考えてなかった。すると


「その同行者として私が選ばれました」

「へ?」


そう言い掴んだ私の手の甲に口付けを落とした。


「モーブル滞在中は私はグレン殿下の護衛の任があり、貴女に付き添う事が出来なかった。そこでバスグルに渡る際に護衛を志願したのです」

「はぁ…」

「そしてやっと陛下の許可を頂き同行が決まりやっと貴女に伝えられる。これ程嬉しいことはない!」


予想外の展開に固まってしまう。こんな話キースにしたら…帰国を延期しそうだし、グラントも黙っていないだろう。


『どうせするならキースが帰ってからしてよ!』

「俺が同行がご不満ですか?」

「いえ、そうじゃないけど…」


立ったまま困惑していたら立ち上がったシリウスさんが抱きしめてきて


「バスグルでは貴女を危険な目に遭わせない。俺が命をかけて護ります」

「いや、命はかけないで下さい」


そう言いながら見上げると、嬉しそうなシリウスさんのお顔が…あれ近くない?もしかしてキスしようとしている?


「シリウスさん!」

「ダメですか?」

「ダメですよ」

「なら額で良いので」


もうキスするまで離してくれそうに無いので仕方なくOKすると、嬉しそうに額と頬に口付ける。

こうしてやっとシリウスさんにエスコートしてもらい部屋に戻る事になった。シリウスさんは超ご機嫌ですれ違う人が二度見するほどだ。元々綺麗なお顔されているのに、どちらかと言うと仏頂面で人を寄せ付けない雰囲気がある。でも今はきっと背には花畑が見えるはずだ。

少し行くと王族の居住区の入口に着き、常駐する騎士が見えてきたか…


「!」


そこにキースがいる。部屋で待っていたはずが待ちきれず迎えに来たようだ。途端に機嫌が悪くなる2人。仲良しになれとは言わないけど、この空気は周りの者が気を使うから…


「あのね。毎度毎度そうやって悋気やきもちが強いと周りが気を遣うの。こんな調子ならエスコートはしなくていいですよ!専属の騎士さんがいてくれるし」

「「!」」


そう言うと穏やかに表情をし悋気を隠す2人。シリウスさんの後ろで控えているリチャードさんが小刻みに震え明らかに笑っている。

溜息を吐きシリウスさんに送ってもらったお礼を言い、さっきの事は言わないでと目で訴える。そして頷いたシリウスさんは


「では多恵様俺はここで。明日キース殿が帰国の挨拶の場で、陛下から先ほどの話があるはずです。心算が必要でしょうからキース殿には先にお話しした置かれた方がいいかと…」

「な!」


言わないでって合図アイズトークしたのに言われた!慌ててキースを見たら表情がまた険しい。


『あ…キース滞在最後の夜に修羅場が確定した』


気が遠くなってきたらリチャードさんがとりあえず部屋に戻ろうと促してくれる。そして機嫌の悪いキースに抱きかかえられ部屋に戻ってきた。せっかくの最後の夜なのに甘い雰囲気は無くキースの機嫌は頗る悪い。キースはソファーに私を降りし、フィナさんにお茶を頼んだ。そして隣に座り私の頬を両手で包み目を合わせて


「多恵。こんな状況では私は明日帰れない。納得行く説明をして下さい」

「ですよねー。でも私も聞いたばかりで、詳しくは分かってないんだよ」


そう言うとフィナさんがいるのに荒々しく口付けてきて、小さな悲鳴と共にフィナさんが走って退室して行った。

心の中でフィナさんに謝る私。そして必死でキースの胸元や背中を叩くけど、中々やめてくれない。


『たえ てん よぶ!』

『へ?』

『てん キース とめれる』

『噛んだらダメだよ!フィラと違うからね!』

『はやく てん よぶ!』


一抹の不安を持ちながらてん君を呼ぶと、てん君はキースに向かって唸り吠えた。


「!」


そしててん君はキースの上着の裾を噛み引っ張り、やっとキースの激しいキスは止んだ。

酸欠でぐったりしていると、てん君がずっとキースに吠えている。


『だいすき キース でも ダメ!』

『てん君…』


やっと我にかえったキースは跪き深々と頭を下げてん君に謝罪している。

その間私はソファーに沈没。


やっとてん君も私も落ち着いた所で話をする事に。キースがあんなに取り乱すなんて思ってもみなかった。

少し脳に酸素が行き渡り冷静になれたら、その横でてん君がキースに説教をしている。私はてん君の言葉が分かるがキースは何を言っているか分からないのに、真剣な面持ちでてん君の唸りを聞いて相槌を打っている。

その様子が可愛らしくもう許すしか無い。

 

やっとてん君を抱きかかえキースが隣に座り話し出す。事情を話すと真剣に聞いていたキースが急に


「てん殿メモを取りたいので、多恵の方へ移動願いますか?」


てん君は頷き私の膝の上へ。そして真剣な顔をして手帳に何か書き出している。そしててん君は私の膝から降りて、走っていきフィナさん呼びに行った。フィナさんは真っ赤な顔をして戻って来た。謝るのも違う気がして照れ隠しにお茶のおかわりをもらう。

やっと書き物を終えたキースが


「明日戻ったら陛下に報告します」

「へ?なんで?」

「”何故”では無いですよ。リリスの箱庭の乙女が他の箱庭に行くのです。護衛が必要になるし、先日聞いた金融なるものをバスグルも設立するなら、我がアルディアも取引する事になります。ベイグリーに比べれば取引は少ないですが、無いわけではない」

「あ…なるほど…ん?って事はアルディアからもバスグルに⁉︎」

「恐らくは…」

『マジか…』


凄い規模の大きな話になって来た。それにアルディアから人を出すとなると、多分レックロッドからも…

思わず頭を抱えてしまう。大変な事になって来た。でもモーブルにはバスグル側の改革が必要だ。てっきりシリウスさんの様に同行を希望するのかも思ったが、キースは


「出来ならば私も同行し、一番近くて多恵を護りたい。しかし港の管理もしかり、国を優先で考えなければなりません。明日帰り陛下とアーサー殿下と協議します。叶うなら同伴し他の男から多恵を護りたいの本音です」

「キース…」


ここ一番冷静に状況を把握し判断できるキース。勢いと行き当たりばったりの私には出来ない事で尊敬するし好きだ。


「やっぱりキース好きだなぁ…」

「!」


一瞬抱きつこうと両手を出したキースが止まる。どうやらてん君が睨みを効かせているようだ。本当にてん君は鉄壁の守りだよ。

でも今回は私の気持ちがキースより勝り、私から抱きついて顔を上げキスをねだる。


「多恵…」


キースの手が私に伸びて来たら、私の膝からてん君が飛び降り、一目散にフィナさんの元に行き察したフィナさんが退室して行った。そしててん君も居ない…


大きく温かいキースの手が私の頬を包み、愛情たっぷりのキスをいただく。こうして日付が変わるまで、いちゃつき最後の夜を過ごしたのでした。でもしてませんからね!


そして翌朝。キースが帰国するので早く起きて、湯浴みをしキースと朝食を共にする。

昨晩遅かったのに相変わらず綺麗なキース。

一緒に食事をしてキースの部屋に行き、時間まで2人で過ごす。そして文官さんが時間だと呼びに来て、2人で陛下にご挨拶に向かい廊下を歩いていると、例のソフィアさんとばったり会った。気まずそうなソフィアさんは綺麗なカーテシーをし帰国するキースに挨拶する。

まだキースに想いがある様で、熱を帯びた視線を送るソフィアさん。するとキースが


「私が最愛の人を得た様に、貴女にも素晴らしい出逢いがある様に願っております」

「…」


嬉しそうにそう言い冷たい微笑みをソフィアさんに向けるキース。冷製沈着だと思っていたけど、結構根に持つタイプかもしれない。

そして顔を引き攣らせながらソフィアさんは去って行った。


そしてやっと着いた謁見の間。キースのエスコートで入室すると、そこにはオーランド殿下が。

私に気付くとダラス陛下に断りを入れ、一目散に走ってくる。向かってくる殿下はどう見ても大きな犬しか見えない。そして勢いよく抱きつかれ頬にキスされた。

繋いだ手を強く握るキース。でも相手は王子でシリウスさんの様に強く言えない。

するとオーランド殿下の家臣のカイルさんがオーランド殿下を窘める。

そして腕を解いたオーランド殿下は嬉しそうに微笑みキースに


「キース殿済まなかった。想いを抑えされなかった。其方は今日帰国するのでだったな。陛下とアーサー殿下によろしく伝えてくれ」

「オーランド殿下にお目にかかれる光栄にございます。陛下に伝えさせていただきます。ですが…とりあえず私の婚約者を離していただけますか⁉︎」


キースご不機嫌にそう言うと謝り腕を解くオーランド殿下。殿下ってこういう所素直と言うか擦れてないのだ。


『だから可愛いのよね…』


今から帰るキースは機嫌が悪く、今から数日滞在するオーランド殿下は機嫌がいい。

板場み私は居た堪れない。

それでもキースは丁寧に滞在中の礼をダラス陛下に伝えると、陛下から例の話がされる。

聞いていたキースは冷静に聞き


「この件につきましては、我が王もバスグルに渡る乙女様の為に騎士を派遣すると仰る事でしょう。我が王は乙女様を愛娘の様に想われておりますので。詳細が分かれば是非連絡いただきたく存じます」

「分かった。ルーク殿には今までと変わらぬ友好を望むと伝えてくれ」

「御意」


こうしてキースの帰国の挨拶は無事終わり、馬車まで見送る事になった。キースは人目を気にせず私を抱きしめ、瞼、指先、唇にキスをして強く抱きしめた。そして耳元で


「多恵に会えないのは辛く苦しいが、いつも多恵を想いどんなに遠くもと愛を送り続けるよ。だからいつも私を感じて欲しい」

「うん。私もいつもキースを想っているよ。だって…」


キースの首に腕を回して抱きつき耳元で

『愛しているもん』


恥ずかしいけど頑張って伝えた。更に強く抱きしめてくれるキース。そして何度も愛の言葉をくれる。

長かったお別れも終わりキースは馬車に乗りアルディアに帰っていった。私は馬車が見えなくなるまで見送り、暫くその場から動けなった。


『?』


誰かに肩を叩かれ振り向くとシリウスさんだった。背後から優しく抱きしめ顳顬に口付け何も言わずに暫く抱きしめてくれ、背中が温かくなり少し泣きそうになった。

シリウスさんの配慮に感謝するが押し寄せる寂しさに不安になる。


『暫くはキースロスだなぁ…』


そう呟きシリウスさんに付き添われ部屋に戻った。

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