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やきもち?

折角アッシュさんにご招待いただいたのに途中で帰る事になり…

「あの…キース下ろし…」

「今の多恵の悲しい気持ちを分かち合いたいのです。話してくれますか?」

「えっと…」


キースの膝の上で抱きかかえられ、キースのキレイなお顔が近い。気恥ずかしくて視線が激しく泳いでいる。

キースは瞳は優しく私が話すのを待ってくれている。いつも無理強いせず私から話すのを待ってくれるんだよね。そんなところが好きだ。


「うんとね…」

「はい」

「“女神の乙女”なんて言われているけど、そんな立派な人間でも無いし聖女でも無くて醜い感情も持っているし、人を妬んだりもするの…」

「…」


まばたきで相槌を打ってくれるキース。少しずつだが自分の気持を話して


「自惚れだけど出会った時からキースはまっすぐ気持ちを向けてくれたでしょ。それに慣れっこになって、キースが他の女性とその…親しいっていうか、距離が近いのが何か嫌なの。でね私の悪い癖で沢山の女性が憧れるキースの相手が私なんかで良いのかと思うと落ち込んで来て…」

「それは…」


キースは驚いた顔をして真っ直ぐに私を見ている。恥ずかしいから一気に言いたい事を言ってしまおうと続けて


再従兄弟はとこの奥様だし長い付き合いの様だから、親しくて当たり前なのに、エラさんと気取らず話すキースに戸惑ったの。だってキースはまだ私に敬語じゃない⁈だからねエラさんが羨ましくて…あ?これってやきもちになるの?」


自分で話したらブルーな原因が分かり少しスッキリした。すると優しく何度も口付け、キースの手は大切なものを扱う様に触れてくれる。


「多恵は真面目でリリスの願いの為に頑張っている。本当は役目を終えるまでは恋をしたくなかったのでしょう?しかし我々の願いを受け入れてくれ婚約してくれた。だから私も己を律し抑えてるんですよ」

「へ?」

妖精王フィラやグラントの事は私がとやかく言うつもりはありません。しかし私は多恵の頑張りの邪魔にならないように、私の想いを抑えてるんですよ。それをやめると歯止めが効かないのを自分が一番よく分かっているので。多恵が役目を終えた時は覚悟しておいて下さいね。多恵への想いは誰にも負けませんから」

『普段の溺愛は本気じゃないの?』


目の前のキースは色っぽく微笑み見つめてくる。これ以上の愛情を受け止めれるか不安に思いつつも、私の状況を理解して我慢してくれている事が嬉しかった。


“コンコン…コン”御者の小窓がノックされるとキースは腕を緩めて


「あと少しで着く様です」

「あ…うん」


キースの膝から座席に移ったら、甲斐甲斐しくキースが私の身なりを整えてくれる。そして笑いながら


「多恵の目にはエラは美しく淑女に見えるでしょが、ああ見えて乗馬や剣術に優れ幼い頃はお転婆で令息を泣かせていたんですよ。アッシュはおおらかで器の大きい男なので彼しかエラ相手はできない。私やグラントでは直ぐに喧嘩になり夫婦になればすぐ離縁です」

「そんな風には…」

「多恵が正式に私とグラントと婚姻したらエラとは親戚になるのです。その内エラの本性が分かってきますよ」


そう言い楽しいそうに笑うキース。そして手を握り


「今回無理をしてでも来てよかった。正直グラントが長期間モーブルに滞在し多恵の役目に協力し、二人の仲が進んだのではないかと思い嫉妬に苦しんでいたのです。ですが多恵が私の事をちゃんと想ってくれているのが分かり安心しました。距離があっても大丈夫だと思え、帰ってまた頑張れそうです」

「うん…」

「それに恥ずかしいと言ってくれなかったあの言葉もいただけましたし…」


そう言い色っぽい視線を送るキースに照れ隠しのつもりで言った言葉がキースを煽る事になり…


「『愛してる』の第1号はキースだからね」

「真ですか!」

「えっあっ…はぃ」


後悔先に立たずだ。王城に到着したのに馬車の中で熱烈な口付けを受ける事になった。案の定HPを削られ腰が抜けて立てず、満面の笑みキースに抱っこされ部屋に戻る事に…

すれ違う人の視線が怖くてキースの胸に顔を埋め腕の中で小さくなる。するとキースの足が止まりふと顔を上げると


『げっ!シリウスさん』


眉間に皺を寄せたシリウスさんがそこに居た。キースは私を抱っこしたまま優雅にシリウスさんにご挨拶している。無言でキースの腕の中の私を覗き込んだシリウスさんが


「グレン殿下の文はと届いておりますか?」

「あっはい。今晩お伺いしようと…」


すると表情を明るくしたシリウスさんは


「でしたら7刻前にお部屋にお迎えに上がります」


すると私の頭を抱え込んだキースが


「いえ、そのような遅い時間なら私が多恵を送りとどけます」

「へ?」


シリウスさんに手を取られて驚いていると


「グレン殿下の部屋は王城の奥の王族の居住区にあり、貴殿が立ち入れる場所ではない。殿下の護衛責任者である私がお迎えに上がる」


険悪な2人が悪目立ちし行きかう貴族やお仕えの皆さんが見ている。早く部屋に戻りたくて


「喧嘩しないで下さい。キース下ろして!リチャードさーん!」


そう今日の護衛のリチャードさんが馬車まで迎えに来てくれ、距離をあけてついて来ていた。リチャードさんは苦笑して困りながら


「キース殿。多恵様をこちらへ」

「…」


中々下ろしてくれないキースの肩をシリウスさんが掴み一触即発な雰囲気に思わず


「私揉め事は嫌いです。2人共いい加減怒りますよ!」

「済まない…」

「申し訳ございません」


やっとキースが下ろしてくれたが、まだふらふらの私をキースが支えてくれる。


「シリウスさん。伺うのは殿下が眠られるまでですよ」

「はい」

「ではお迎えお願いしますね」

「はい!!」


いい返事をくれたシリウスさんは私の手を取り口付けて去って行った。その背中を睨むキース。その表情もカッコよくて城内の女性の秋波を集めている。

そして振り返るといつも通り優しく微笑みエスコートを再開しやっと部屋に戻る事になった。

部屋に戻ると何故かフィナさんが軽食を用意してくれていた。どうやらアッシュさんの所で殆ど食べていない私を気遣い、キースが用意を頼んでくれていた。さすがキース!

大好きなクロワッサンサンドとフルーツが出てテンションが上がる。向かいに座るキースは目を細め私を見ながら


「多恵は美味しそうに食べますね」

「そう?きっと料理が美味しいからだよ」


そう返事をするとキースとフィナさんから温かい眼差しをいただく。元の世界でも“美味しそうによく食べる”と言われていたなぁ…

『単純に食いしん坊なだけです』恥ずかしいから言わないけど。

食後はキースと並んでアッシュさんとエラさんに手紙を書く。勤務の都合上キースが帰るまでにアッシュさんと王城で会う事がないそうだ。それを聞いて気にするなと言われても、やっぱりテンションが下がる。するとキースは笑いながら


「男と煩い幼馴染エラに特別会う理由が無いので気にしないで下さい。今回は2人に私の婚約者を見せつけに行くのが目的でしたから」

「はぃ?」


どうやらアッシュさんとエラさんは所謂政略結婚で、愛し合って婚姻した訳では無いらしい。お互い嫌いでもなく家柄が釣り合うという理由で夫婦になっているそうだ。だからキースは本当に愛した人と婚約できた事を自慢したかったんだって。

冷静沈着で感情に流されないイメージがあったキースがそんな事を思っていて意外な発見で、少し可愛いと思ってしまった。

最近仲良くなったアイリスさんに感化され、男性を可愛いと思ってしまう。


『でも冷静に考えたら、元の私の年齢半分以下で、息子でもおかしくない彼らが可愛いく思うのは当然かも…』


そんな事を考えて手が止まっていてキースが微笑ましく見ているのに気付き、慌てて書きキースの分と一緒に文官さんにお願いする。

そして夕食までの短い時間、キースは後ろ髪をひかれながら明日の帰国の準備をしに一旦部屋に帰って行った。

私は夜に向けて体力回復する為に昼寝をする事に。


頬に柔らかい感触で目が覚めると


『たえ キース きた てん いく』

「へ?」


てん君の肉球パンチで目覚め起き上がると部屋は薄暗い。てん君が扉を前脚で叩くとフィナさんが扉を開け、てん君はまっしぐらにキースの元へ。

私はフィナさんが持って来てくれた果実水で喉を潤していると、てん君を抱っこしたキースが寝室に来た。

てん君はキースに撫でられ恍惚とした表情をしている。てん君はキースも大好き。でも何故か婚約者の中でフィラだけ仲が悪い。


『相性の問題?』


そんな事をぼんやり考えていたら、キースはベットの縁に座り触れるだけのキスをしてベッドの上にてん君を下ろした。


「帰り支度は終わった?」

「大方は…」

「?」


キースの表情は優れない。顔を覗き込むと


「今己と闘っているんですよ」

「何で?」

「明日多恵を連れ帰りたい…」

「あ…」


グラントも帰る前同じ事言って中々離してくれなかったなぁ…

やはりさっきも話だけど、キースはまず初めに私の状況を理解して我慢してくれる。

ここで連れ帰ると言うと私が困るのを分かっているんだ。彼の優しさに泣きそうになる。

でも私はリリスの役目が優先だから…


「!」

キースに抱き着き自分から…えっと…でぃーぷな…その…ちゅぅを…


「多恵」

「モーブルの問題も大方終わり、後はバスグルとレックロッドで半分終わったの。頑張るから待っていて欲しい」


そう言うとキースはベッドに上がり掛け布団を剥ぎ取り抱きついて来た。


“バタン”

「へ?」


部屋につながる扉を見たらてん君がお尻で扉を閉めこちらに走って来て


『てん もどす』

『はぁ?』

『てん くうき よめる』

『ちょっと意味が…』

『はやく!』


てん君にそう言われててん君を戻すと!

キースが荒々しく口付け、夜着に手をかけ肩が露わになる。


「ちょっと!」

「少しだけです。婚姻するまで…我慢するので…印だけ…」


そう言ったキースは首元と鎖骨あたりに口付けを落として行く。恥ずかしさで体を捩るけど大きな体のキースに覆い被され逃げれる訳もなく、どんどん体温が上がりお腹の奥がむずむずしくる。


「っ!」


胸の谷間に小さな痛みがあり、びっくりしたらキースが体を起こし、そこをなぞって色っぽく微笑んだ。


「多恵に私の付けた印があるのはとても気持ちいい。永遠に残ればいいのに…」


そう言われて胸元を見ると、夜着がはだけギリギリ胸が隠れている状態で、胸の谷間に赤い小さな痣が!そう所謂キスマークだ!

焦っていると満足気なキースは抱きしめ耳元で


「はぁ…早く多恵と一つになりたい。ここで我慢するのは男としては辛いんですよ」

「えっと…そう言われても…」


キースは起き上がって私を起こし抱きしめる。そして凛々しい顔して


「リリスの役目を終え婚約者と正式に婚姻したら、初夜の順で他の夫と決闘になりますね。今から鍛えておかないと」

「ぶっ物騒なこと言わないでよ!私は平和主義者なんだから」


キースは冗談だと笑うが目が笑っていないから、半分…いやかなり本気なのが分かる。

これ以上は怖いので話を逸らした。するとすっごく控えめなノックをし、フィナさんが夕食時間だと声をかけてくれる。

返事をするとキースは立ち上がり扉を開け、何もなかったかの様にフィナさんと話している。

そしてあまりお腹は空いてないけど夕食を食べ、キースに待ってもらい先に湯浴みをした。バスタブで見下ろすとやっぱりあるキスマークに溜息を吐き、ドレスは首元の隠れた物にしてもらう。だって鏡で見たら鎖骨の下にも付けられている。


『煽ったつもり無いんだけどなぁ…』

「多恵様そろそろ…」

「はぁ…い」


こうして寝室でシンプルなドレスに着替え、時間まで部屋のソファーでキースとのんびり過ごす。そして7刻が近付き


「多恵様シリウス様がお見えになられました」

「お通してください」

「…」


さっきまで機嫌よく話していたキースの表情が曇る。そして颯爽とシリウスさんが入室しハグされる。


「お迎えありがとうございます」

「では!参りましょう」


そう言い腰に手をあて部屋を出ようとするシリウスさん。キースの機嫌は良くないから


「キースはどうする?ここで待つ?一旦部屋に戻る?殿下がお休みになったらすぐ戻ってくるけど」


すると柔らかく微笑み


「明日帰るので時間が許す限り共に居たいので、ここで多恵の帰りを待つます。シリウス殿。必ず()()()()()を帰して下さい」

「…えぇ」


こうしてキースに待ってもらい殿下の部屋に向かいます。シリウスさんが強く抱き寄せるから歩き難い。絶賛やきもち中の様だ。

すると後ろからリチャードさんが


「シリウス殿。多恵様がお困りだ。悋気が過ぎますぞ」

「あ…すまない」

「えっと…大丈夫です」


腕は緩んだがずっと斜め上から視線を感じる。フィナさんが真っ赤になりながら、ハイネックのドレスを用意してくれ、例のモノは隠れている筈なのに緊張する。

気不味く無言のまま殿下の部屋に着いた。許可を得て入室すると、満面の笑みのグレン殿下に癒される。

そしてベッドに入った殿下の横に座り、ここ数日の殿下の話を聞き殿下が就寝されるまで付き添う。

初めて興奮して話していたから、長丁場になると覚悟したが、驚くほど早く寝付き呆気に取られた。


『これ私必要だった?』


と思っているうちに繋いだ殿下の手が離れたので、布団を掛け額に口付けて寝室を後にした。


『さぁ!役目は終わった。キースの所へ…』


すると部屋にいい香りがしていて従僕さんがお茶を入れてくれていた。すぐ帰ろうと思ったのにシリウスさんにお茶を勧められ断るのも悪く、少しだけ付き合う事になった。

しかしこの後驚く事をシリウスさんから聞く事になり…

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