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キース滞在2日目、3日目

王妃様付きの侍女長シーラさんの対応に困り…


「私から説明を…」


チェイス様が事の経緯を話し出す。事の始まりは陛下がアルディア訪問から帰り、帯同した文官が陛下が乙女に心酔し、第2妃に迎えると噂した事から始まる。そしてそれを聞きた王妃様が、嫁ぐ前から仕えていた乳母に離縁したいと話をしていたのを侍女が聞き、侍女長のシーラさんに報告した。


「その時私は箝口令を出し話を離宮内に止める様に致しましたが噂は王妃様の耳に入り、王妃様は私をお呼びになりこう仰いました」


そう言い眉間に皺を寄せ少し戸惑いながら


「乙女様の事は関係無く離縁の意志があり、近々陛下に離縁を願うと仰っておられました。今回陛下が乙女様に想いを寄せられ、王妃様は心からお喜びに。そして陛下が離縁し易いように噂はそのままする様に指示されました。王妃様は私にゆくゆく乙女様が陛下の後添えとなられるので、乙女様が王妃として困らないに様に心を配りなさいと」

「そんな前から王妃様は…」

「先ほどは私の想いが先走り、失礼な態度を取ってしまいました。王妃様の為に乙女様には立派な王妃になっていただきたく…」

「…」


王妃様が意図して噂をそのままにしていて、その噂を信じたソフィアさんが私とキースが婚約解消すると思い込んだんだ。

やっと事情が分かりスッキリした。でも確実に外堀を埋めていかれている気がするんだけど…気のせい?


「乙女様!ぜひ王妃様のお心を受取り、是非陛下と…」

「それは…」


するとやっと口を開いた陛下が


「王妃に対する忠誠心も想いも分かった。しかし其方が口出す事ではない。まずは離宮の認識を正し、乙女殿に害が及ばぬ様に対処せよ」

「御意…」


シーラさんはチェイス様に付き添われ退室していき、部屋に陛下と2人きりになってしまった。気まずく視線が泳ぐと陛下が苦笑いしながら


婚約者キースが滞在中は口説か無いから安心しなさい。今回の事は本当に済まなかった。アルディアから戻った私は心から愛する人…すなわち貴女に会え歓喜し、王妃を思いやれていなかった。心の狭い男だと笑ってくれ」

「陛下…」


するとワインを飲み一息ついた陛下は、キースが帰ったら王妃様に会いに行くと言い、話し合いをして来ると言う。


「私も同行します」

「嫌、別にして欲しい。貴女が一緒だと私の気持ちが揺らぐ」


言われればそうだ。気の利かない嫌なやつだ。でも…あれは早く渡してあげたくて


「陛下。この後手紙を書くので直ぐに王妃様に届けていただけますか?」

「分かった。早馬を出そう。きっと王妃も喜ぶだろう」


キースが滞在中は行く事が出来ないからせめて鎮痛剤だけでも…

でも何故か妖精王フィラからもらった事は言えなかった。初めは政略結婚でも確かに陛下と王妃の間にも愛がある。そんな愛している女性ひとの命の火が消えかけているなんて言えない。


この後、他愛のない話をしながら昼食をいただき部屋に戻る。何度も断ったが聞き入れてもらえず、今陛下に腰を抱かれ部屋に戻っている。すれ違う貴族はさっきと同じ反応で、微笑ましい視線を送ってくる者と、そそくさと挨拶だけして逃げる様に立ち去る貴族。この差が分からず困惑していると陛下が


「気まずそうにしている者たちは、恐らく離宮に仕える侍女や女官の家の者で、噂を鵜呑みにし其方を蔑んでいた者達だ。事が大きくなり慌てて火消しに奔走しておるのだろう。噂をそのままにした王妃に非がある故に、仕える者としての不作法は厳重注意するが、罰する事まではしない」

「そうなんですね。やっと理解できましよ」

「口説かんと言ったが、周りに迷惑かけてもやはり私は多恵殿を諦める事はできん。悪いが一生涯愛する事を許してくれ」


そう言い更に引き寄せ陛下は頬に口付けた。陛下の色気にあてられていたら、強烈な視線を感じ前を向くと


「キース!」

「陛下…恐れながら多恵と陛下には何の間柄もない事をお忘れ無きよう」

「確かに今は無い。しかし得れる様に…」

「陛下!送っていただきありがとうございました。キースが来ましたのでここで結構です。お忙しいのに感謝いたします」


陛下の発言を遮るようにお礼を言い陛下のホールドから逃れようとしたら、更に引き寄せられ抱きしめられた。


「ちょ!陛下ややこしくなるから離して下さい!」


すると耳元で愛を囁き耳を甘噛みされた!もーやめて!


やっと陛下に解放されるとキースに抱き込まれる。陛下はキースの肩を軽く叩き立ち去っていった。キースの腕の力が強く苦しくなって来て必死でもがくとやっと解放され、キースを見上げるとその臙脂色の瞳に激しい嫉妬が濃くうつりこの後の修羅場を覚悟した。

そしてキースは軽く屈み私を抱き上げた。

この後何度も下ろしてとお願いするが、返事の代わりに口付けされ、周りの女性から悲鳴があがり、気分は露出狂みたいで消えて無くなりたい…


やっと部屋に着くと無表情でアイリスさんに退室を命じているキース。らしく無い態度にかなり怒っているのが分かり寒気がする。クールダウンしてもらうつもりでアイリスさんを紹介すると、私の意図がわかったようで大きく深呼吸してアイリスさんに挨拶をするキース。

この短い間に状況を理解したアイリスさんが苦笑いしながら


「恐れながらあまり悋気が強いと多恵様は辛くなられ、閣下の元を去られるかもしれませんわ。心中ご察し致しますが、もう少し押さえて下さいませ」

「アイリスさん!」


最近アイリスさんが私の気持ちを察してくれ助け舟を出してくれる事が増えた。初めは色々行き違いもあったけど、流石ケイティさんの従姉妹だ。この細やかな気遣いはとても似ている。

視線を感じ見上げるとキースが見下ろしていて、いつもの優しい表情で微笑みかけ触れるだけのキスをして


「アイリス殿。感謝する。愛する女性ひとを困らせる所だったよ」

「多恵様を慕う者が多く閣下の心中はご察し致しますわ」


すると私をソファーに下ろしてアイリスさんに手を差し伸べたキースは


「私の大切な婚約者をお願いしますね。貴女なら信用できる」

「光栄にごさいます。誠心誠意お仕え致しますのでお任せ下さいませ」


アイリスさんとキースは馬が合うようだ。グラントとは最悪だったけどね…

こうして落ち着いたキースに少し待ってもらい、王妃様に手紙を書く事にした。私の前ではキースも書類に目を通している。

やっぱり働く男性はカッコいいし、私の婚約者は特にかっこいいのだ。見惚れているとキースがウィンクしてくれ顔が熱くなり、慌てて手紙に集中する。やっと書き終えてフィラからもらった鎮痛作用のある樹皮を小箱に入れて、アイリスさんにチェイス様に届けてもらう様にお願いする。


アイリスさんが退室すると直ぐにキースに抱きかかえられ、濃厚な愛を注がれまたぐったりする羽目になった。


後日に王妃様から綺麗なシルクのショールと樹皮のお礼の手紙をもらった。手紙にはフィラが言っていた通り、薬草では痛みが取れなくなっていて、床に伏せる日が増えていたそうだ。


『乙女様のお陰でつつが無く過ごしております。これなら陛下や王子が来てくれても病状は誤魔化せそうです』


と喜ばれていた。嬉しい反面複雑な気持ちだ。本当は病気を知らせて最後の時間を家族で過ごして欲しい。でも本人が望んでいなくてもどかしい。


私に何かできればいいけど…



キース滞在3日目


気分転換に半日城下にキースとウインドウショッピングに出かける事になり、騎士団から数名とファーブス公爵家の騎士団からも数名ついてくれる事になった。


『う…ん大所帯だ』


馬車に着くとジョエルさんと知っている顔が並んでいてホッとする。

思わずジョエルさんの元に行きご挨拶していたら、後ろから腰を引き寄せられ冷たい顔のキースが騎士の皆さんにご挨拶している。

するといつもの軽い感じでジョエルさんが


「いや〜こんな素敵な婚約者いたら、俺らなんて多恵様の視界にも入らない訳だ。でも多恵様は俺の初めての想い人なんで、勝手にお慕いするんでよろしく!」

「ジョエルさん⁈」


余計な事を言ったジョエルさんを思わず睨むとウィンクされ、背後にいるキースから冷気が発生し身震いをする。

思いっきりキースに愛想を振りまき何とか馬車に乗り込みやっと城下に向けて出発した。馬車の中ではキースに金融機関の説明をして、アルディアに帰ったら陛下に提案して欲しいとお願いする。

話を聞いたキースは途中から手帳を取り出し、必死で私の話を書き留めていてその表情は真剣でまた惚れ直す。


「流石私が惚れた女性ひとだ。港では金品の紛失が元で船主と荷受け人とのトラブルが絶えない。実際お金が動かず帳簿上で取引をすれば、確実にトラブルは減るだろう。そうすると我が領地の港は円滑に周りこれまで以上に活気づくでしょう」


そう言いメモを取りながら色々考えている様だ。金融機関に関してはオーランド殿下がお見えになったらもっと詳しく話す予定だ。

手応えを感じながら目の前のキースを見ていたらある物が目に入る。


『まだ使ってくれているんだ!でも大分傷んできたなぁ…作り直そうかなぁ』


私の視線に気付いたキースが栞を持ち上げキスをした。自分にキスされた訳でも無いのに顔が熱くなる。そしてキースは大切そうに栞を手帳に挟み胸ポケットに直した。

キースが片眉を上げ何か言おうとした時、馬が嘶き馬車が停まった。どうやら城下に着いたようだ。


外から声をかけられ扉が開き先にキースが降り手を借りて降りると、城下の外れに馬車は停まっていてここからは歩きで散策する。

目立たないように商家の娘風な装いをし、キースもシャツにベストとラフな服装をしている。


『でも隠し切れない高貴なオーラがダダ漏れなのよね…』


恐らくキースは商人のつもりだろうけど、どう見ても高位貴族様だ。でも本人が満足しているから敢えて何も言わない。

そんな事を考えながらキースを見ていたら


「多恵。時間は少ししか無いのでが早速散策しましょう。欲しい物があったら何でも買いますから言ってください」

「見るだけで楽しいからいいよ」

「相変わらず欲がないですね…」


そんな話をしながらウィンドウショッピングを楽しみ、歩き疲れてジュースを買い、噴水の縁にキースと座りジュースをシェアしている。グラントともシェアしたから公平にキースともジュースを分け合う。

少し落ち着いたらキースが肩を抱き寄せて


「グラントがモーブルから帰って来て、直ぐモーブルでの多恵の様子を話してくれたよ。危険な目にあったり、精神的にかなり無理をしたと聞き、グラントは無理矢理にでも連れ帰りたかったと言っていた」

「心配かけてごめんなさい」


するとキースは穏やかな表情で


「私も多恵が心配でならない。しかし多恵は責任感が強く頑張り屋だから…私は見守る事にしたんだ」

「キース…」

「本心は我が領地に連れ帰り閉じ込めて独り占めしたい。でもこの箱庭のために頑張る多恵が好きなんだ。守られて庇護されるのを良しとする多恵は違う。そうだろ⁈」


大きく頷き嬉しくて涙腺が緩くなり涙目になってしまう。クールな目元を緩ませキースはわざと戯けたように


「グラントはモーブルは多恵を危険に晒すから預けておけない!と憤っていたが、アルディアでも多恵は危険な目に沢山合っていたよ。他国のことは言え無いと私は思うんだけどね」


こういう場面でキースは客観的に物事を見て取れるのだ。こういうところ凄く好きだ。

私の気持ちが顔に出ていたようで、キースは頬を染めて、


「あまり可愛い顔をすると私は抑えが効かない」

「ふっ普通だよ」

「多恵は私に全てくれるのですか⁈」

「!」


いきなり深夜モードになるキースにタジタジになり嫌な汗が滲み出る。


「失礼致します。そろそろお戻りの時間でございます」

「え〜もぅそんな時間なの?」


まだ物足りなくて少し拗ねたら、キースが手を取り歩き出した。馬車と反対方向で意図が分からず困惑していると


「注文していた品を受け取りに行きたいのです。付き合って下さい」

「はい」


少し歩いて着いた店は服屋で入店すると、品のいいご婦人が応対してくれ、キースは注文の伝票を渡した。ご婦人が奥から綺麗な箱を2つ持って来て、試着の為箱を開けると…


「ナイトガウン?」


そう箱にはナイトガウンが入っていた。シルクで肌触りが良く高級品だ。そしてキースが手に取り羽織らせてくれる。


「これって…」

「あぁ…私の色に包まれた多恵は本当に綺麗だ。毎日着て私を感じて欲しい」

「あっありがとう」


そうガウンは臙脂色でキースの瞳の色だ。嬉し恥ずかしくて一人で挙動っていたら、もう一つの箱からキースが何かを取り出して羽織った。


「!」

「私は多恵の色を毎晩纏い多恵を感じるよ」


そうキースは黒色のナイトガウンを仕立てていた。光沢のあるシルクガウンがとても似合っている。

お互いの色のガウンなんて何か恥ずかしいし、嫌でも閨事を意識してしまう。

どうやらキースは何かお揃いの物が欲しいと思っていたようだ。そしてモーブルを訪れた時に、この洋服店が目に入りガウンを注文していたのだ。

よく見ると胸のところに刺繍がされている。見覚えのある文字だ…


「あっ!」

「気づいてくれましたか⁉︎多恵の世界の文字で、多恵と私を表す文字です」


そう栞に刺繍した【T to k】がキースのガウンに。【k to T】が私のガウンに刺繍されている。なんかその心遣いが嬉しくてキースに抱きついた。


「キース大好き」

「多恵。もうお忘れですか?そうじゃ無いでしょ?」

「えっと…アイシテル…」

「本当に愛しい…今すぐ頭から食べてしまいたい…」


バカップル全開でご婦人に迷惑をかけてしまい、気まずくなりながら店を後にし、馬車に戻りやっと王城に帰る事になった。

馬車の中では引き続きバカップル全開で、キースに愛をしこまた注がれ、HPが10を切り昼食も食べずに昼寝でチャージする事になってしまいました。


私の婚約者はハイスペックでいい男ばかりだが、いつも私のHPを奪い去る悪い男でもあるのだ。


『やっぱり愛情過多の彼らを相手するなら体力がいるわ。眠る前に腹筋でもしようかなぁ…』

と思いながら直ぐ眠ってしまうのでした。


お読みいただき、ありがとうございます。

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