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キース滞在2日目

ソフィアさんの一件でバタバタしたキース滞在初日。【王妃様の後添え】が大手を振って一人歩きしていた様で…

『たえ あさ おそい』

「へ?そんな時間なの?」

『キース ごはん きてる』

「!」


慌てて起き上がると背中が寂しい。寝室を見渡すがフィラが居ない!昨日のソフィアさんの発言は聞いているはずだから、絶対朝から嫉妬心全開で来ると思っていて、HPを削られる事を覚悟していたのに…


『たえ?』

『フィラが来ない』

『フィラ キース いる こない』

『うん分かっているけど、昨日の件があるからてっきり…』


てん君は起き上がり私の膝の上に座り、掃き出し窓の方を見て耳を立てている。そして


『フィラ こない きのう はなし たいしたこと ない』

「えっ!そうなの?」


自分で思っているより大きな声が出て驚いていたら…

“バン!”扉が勢いよく開いてキースが飛び込んで来た。驚いて立ち上がり膝の上からてん君を落としてしまった。でもてん君は綺麗に床に着地しそのままキースの元へ走って行く。キースは駆け寄るてん君を抱き上げ足早に私の元へ来て抱きしめる。キースの腕の中はてん君もいてとても暖かい。


「何かありましたか?」

「あ…大丈夫。それよりおはよう。疲れはとれた?」

「はい。でも多恵が一緒に眠ってくれたら絶好調になりますよ」

「えっと…婚姻したらね?」


そう言うと嬉しそうに口付けてくるキース。そしててん君にもキスをした。


「あの…多恵様…宜しいでしょうか?」


扉の前で真っ赤な顔をしてもじもじするフィナさん。朝一からイチャイチャを見せた彼女に心の中で謝る。そしてキースがフィナさんに私の身支度をお願いし、キースはてん君を抱っこして寝室を出た。フィナさんは真っ赤な顔をして興奮気味に


「キース様はお優しい。愛する婚約者の為に私の様な侍女に“お願いします”なんて!多恵様のご婚約者のグラント様もご立派なお方でしたが、私はキース様の方が…!申し訳ございません。なんて不敬な事を!」


「いいよ。畏まらないで。そうね…キースの方が気さくかもね」


婚約者を褒められて自分の事のように嬉しい。するとフィナさんが身支度を手伝いながら


「今朝は妖精王フィラはお見えになられておりませんね。キース様にご遠慮なさったのでしょうか?」

「う…ん。そうなんだけどね、私は昨日のソフィアさんの件があるから来ると思っていたんだけど…」


フィラの行動がいまいち分からずまだ戸惑っている。ぼんやり考え事していたら身支度が終わっていて、部屋に行きキースと朝食をいただく。

またしれっと私の横に移動しようとするキースに、“あーん”はしないと先に釘を刺す。悲しそうな表情をしながら向かいの席に戻るキース。

そんな顔してもダメなもんは駄目です!こうしてキースと楽しく食事をしてキースは仕事に向かう。私に会いに来たのもあるが、グラントと同じで半分仕事だ。


「昼食は商談相手といただくので、お茶の時間に戻って来ます。いい子で待っていてくださいね」

「うん。お仕事頑張ってね」


そう言い触れるだけの優しい口付けを残し、キースはお仕事に向かった。てん君と廊下を歩いていくキースを見送くる。


『うーん。気分は新妻で少し嬉しい』


部屋に戻り暫くするとエルビス様が部屋を訪れた。彼の目の下にはくっきりと隈が…。もしかして徹夜?


「陛下とチェイス様が昼食を共にと仰っておられます。是非お受けいただきたく…」

「分かりました。お伺いするとお伝え下さい」


エルビス様はじめ文官の皆さんが徹夜して噂話の調査をしてくれたようだ。倒れないでねとエルビス様を労い、時間まで部屋で本を読んで過ごしていた。すると突然風が吹きフィラが現れてフィナさんに退室を命じた。


「今朝来ると思っていたのよ」

「何故だ?他の婚約者やろうが来ている間は来ないと言ったはずだ。俺を嫉妬で狂わせたいのか?」

「そうじゃなくて!でも王妃様の件が…」


するとフィラは鼻で笑い私を抱き上げソファーに座り、私を膝の上に乗せて抱きしめる。


「ダラスを相手に選んでも俺には関係ない。噂通りアルディアの婚約者と婚約を解消して俺一人の番になるなら話も変わるがな。俺以外はお前が受け入れるのなら誰か夫になっても大差ない。俺は全く持って興味も関心もないさ」

「あ…そういう事ね」


どうやら今回の騒ぎはアルディアの伴侶候補の話しでフィラには関係なという事だ。確かにそうだね。妖精に近いフィラらしい反応に妙に納得し安心した。全開でやきもちを妬かれると、恐らくいや絶対瀕死状態になる。


「その説明に来たの?」

「違うこれを王妃に届てやってくれ」


そう言い布袋に入った樹皮を渡して来た。


「何これ?」

「鎮痛作用のあるモルランの樹皮だ。これは妖精の森の深くにしか自生しておらず、人が踏み込む事の出来ない場所ある。そろそろ王妃は普通の薬草では痛みはとれなくなっているはずだ。これなら当面は何とかなる」

「あ…」


そうだ。王妃様の所にも行かないと!

でも何でフィラか王妃様の為に持って来てくれたのだろう?フィラの顔を覗き込んだら、表情の無い綺麗なお顔で


「悪いが善意からではないぞ。俺は博愛主義を持ち合わせていないし、愛する者以外どうでもいい。早くモーブルの問題…いやこの箱庭の全ての問題を解決し、1日でも早く多恵を迎えそして…」


フィナは急に色っぽい顔をして何か言おうとしている。なんか雲行きが怪しい!


「おまえと…」

「ちょっと待った!それ以上は駄目だから!」


そう言いフィラの口元を手で押さえた。何を言うかは大体想像は着く。扉が少し開いて居るのに護衛の騎士さんやフィナさんに聞かれたら超恥ずかしいじゃない!

思わずフィラを睨むと目が笑っていて、覆った私の手の平に口付けた。

瞳から色気が無くなったのを確認して、手を外すと楽しそうに


「俺に閨事を言わせたく無ければ、俺の唇をお前の唇で塞げばいい。そうしないなら大声で続きを言うぞ」

「うわぁ!それって脅しじゃん!意地悪!」


そう言い私の腰を引き寄せ抱きしめ見つめて来る。キスを強要された。自分からなんて殆どした事ないのに罰ゲームだ!

凄く楽しそうに私を見ているフィラ。恥ずかしいからとっととやっちゃいます。


“チュッ!”


触れるだけの口付けをしたら片眉を上げて


「そんなのでは俺の口は塞がらないぞ!しっかりじっくり塞いでくれ」

「ゔぅ…」


早くしないとお昼になりお迎えが来ちゃうよ!昨日から普段しない事ばかりで、嫌な汗ばかりかいている。私を見ているフィラは楽しそうだ。意を決してゆっくり薄くて形のいいフィラの唇に私の唇を重ね押し付けた。


「!」


フィラは私の後頭部と腰に手を回して固定し私の唇を割って…ここからフィラになすがまま、されるがままになり酸欠と色気にあてられ火照ってしまい大変な事になった。所々意識が飛び出してん君が唸り声を上げてくれやっと解放された。

ぐったりした私を抱えて満足げなフィラ。色っぽく自分の唇を舐め耳元で愛を囁いている。予想外のHP切れに今日1日体力が持つのか心配になって来た。


「ありがとう」

「?」


掃き出し窓から光の玉(妖精)が花を1輪持ってこちらに向かって来てフィラがそれを受け取った。疲れていてその様子をぼんやり見ていたら、フィラは花の蜜を指で取り私の唇に塗った。やわらかい花の匂いがして、つけた途端に唇が潤いビックリする。 


「フィラ何これ?」

「妖精の森にしかない”シアー”と言う花だ。蜜は保湿効果がありすぐ効く。これならどんなに乾いたり荒れた唇でも直ぐ美しい唇になる」


キスし過ぎて腫れたと思った唇がプルプルになった。凄い!何でもありの妖精の森!

こうして満足したフィラはあっさり帰って行き、HP切れの私は今から陛下と食事だ。

今日無事に終えれるのか不安になって来た。

行儀が悪いけどソファーに寝転がり、HP回復に努める。


「多恵様。お迎えが参りましたが…大丈夫ですか?」

「うん…なんとか…」


今日の当番のアイリスさんの手を借り起き上がる。アイリスさんは苦笑いしながら、髪とドレスを直してくれた。

今日の当番の騎士さんはリチャードさんで、いつも通りの騎士スマイルでご挨拶頂き、リチャードさんのエスコートで陛下の元へ向かいます。

いつも通り廊下歩くけど何故か貴族が多く慌ただしい。不思議に思いリチャードさんに聞くと困った顔をして、この後陛下から説明があると言い教えてくれない。なんか大事になっていそうで怖い。そして気付いた事にいつも通り和かに挨拶してくれる貴族と、私を見るなり踵を返したりして明らかに避ける貴族と二分化している。


「あの…これも…」

「はい陛下に…」


溜息吐くと苦笑いするリチャードさん。彼にこれ以上聞く事を断念した。そしてやっと部屋に着き入室すると…


『誰?』


ダイニングに着席した陛下とその後ろに控えるチェイス様。そして下座に40代位のお仕事着を着た女性が立っていた。

一応陛下に食事にお誘いいただいたお礼を言い女性に会釈した。


「また貴女に迷惑をかけ申し訳ない。今から事情説明をさせて欲しい」

「はい。謝罪をお受けします」


そしてチェイス様が私の元に来て女性を紹介してくれる。


「多恵様。こちらは王妃様付きの侍女長のシーラ殿です」

「あ…はじめ」


挨拶しようとしたらシーラさんは手で遮り少し困った顔をして


「乙女様は私より高貴なご身分のお方。その様に先に名乗られるべきではございませんわ。下の私から名乗を許可をされ、下の者の名乗りを受けてからが正式な挨拶でございます。アルディアではその様な(不作法な)挨拶が容認されておられたかもしれませんが、ここは大国モーブルでございます。それにゆくゆくは…」

「まだその様な事を申すか!」


陛下がいきなり怒鳴り声上げ、ビックリして身がすくむ。チェイス様が慌ててシーラさんに発言を控える様に言っている。


『なんだこれ?』


初めましてもしていないのに、注意を受け失礼な子扱いだ。唖然&釈然としなくて思わず苛立った言い方をしてしまう。


「失礼ですがその様な態度で来られたら、話を聞く事も出来ないし、私は一方的に言われるんですかね?

そうであるなら気分が悪いので失礼します」


そう言いお辞儀をして振り返り部屋の扉に手をかけた。すると背後から腕が伸びて扉を押して開けるのを妨害する。腹が立っているので、両手でドアノブを持ち思いっきり引っ張るが開かない。それどころか後ろに体重をかけ過ぎ手が離れて勢いよく後ろに倒れた。


「無茶をしてくれるな!」


抱き止められ見上げたら陛下だった。頭が怒りと混乱からショートしてフリーズしてしまう。陛下は屈み私を抱き上げ席まで運び椅子に下ろした。

その間シーラさんとチェイス様が言い合いになっている。思わず


「訳がわからん!」

「これは私の怠慢が招いた事なのだ。全て話す故に聞いて欲しい」


モーブル闇深過ぎて思わず心の声が漏れ出て


「嫌だ…」

「多恵殿!」


陛下は跪き両手を掴み泣きそうな顔で見上げて来る。そしてチェイス様と言い合いしていたシーラさんが


「大国モーブルの王が何という事を!」

「シーラ殿いい加減にして下さい!」


猛烈に部屋に帰りたいよ…そう思っていたら、てん君が思念で”呼んで”とお願いする。

思考停止状態の私は何も考えず呼ぶと、姿を現したてん君は牙を剥きシーラさんとチェイス様に唸り声を上げた吠えた。


『こいつら うるさい たえ あたま いたいなる』

『てん君ありがとう』

『まだ うるさい おんな かんで いい?』

『噛んだらだめだよ』


てん君の登場でやっと皆さんクールダウンした。失礼なシーラさんに陛下が叱責し、不満げな顔のシーラさんは一応謝ってくれ場は収まった。そして改めてご挨拶から始めやっと本題に入ることになった。

もう気分は週末1日仕事を終えたサラリーマンだ。もう帰っていい?ていうか帰らせて!

お読みいただき、ありがとうございます。

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