本音
キースもオーランドも来てくれると思うと心躍りスキップしたい気分。だけどその前にお仕事しないとね
「多恵様。今日はブブ豆パンですよ」
「やったー!嬉しい」
部屋に戻るとフィナさんが昼食の準備をしてくれていた。部屋にはブブ豆の香ばしい香りが漂いさらにテンションを上げてくれる。
着席し食事を始めるとフィナさんが午後からの予定を教えてくれる。午後からは労働基準会議が夕方まである。そして…
そう明日の貴族を招集しての労働基準会議が有るのに、私は出席しなくていいそうだ、本当は労働基準についての会議だから私が居た方がいい気がするが理由があるのだろう。この後の会議で陛下かチェイス様から説明があるかもしれない。
只管フブ豆パンを食べていたらフィナさんがフルーティーな香りのお茶を入れてくれた。
「お疲れの時は香りでリラックスして下さい。このお茶は私のお薦めです」
「ありがとう」
初めはモーブルに来るのが不安&心配だったけど、今は皆さんとも仲良くなりアルディアの様にリラックスして過ごさせてもらっている。モーブルの皆さんはいい人ばかりだ。フィナさんに感謝を伝え美味しいお茶でリフレッシュする。そして食後はてん君を呼び極上のもふもふでさ更に落ち着く。そうしている内に会議の時間近づきアッシュさんが声をかけてくれる。
すっかりキースの件で仲良くなったアッシュさんと雑談をしながら廊下を歩いているとある事に気付く。そう午前中に比べすれ違う貴族が少ない。少し嫌な予感がしてアッシュさんを見たら微笑んでくれ気にしない様にして進むと、すれ違うお勤めの人たちが笑顔で挨拶してくれる。午前中に比べ好意的な視線に安心して会議室へ。
会議室に入ると直ぐに陛下が来てエスコートしてくれ上座に座り資料を頂く。そして甲斐甲斐しく陛下が私の世話をしてくれる。
てっきり明日の説明をしてくれるのかと思ったら直ぐに会議が始まってしまう。
会議資料は纏った労働基準が書かれていて、今から明日の貴族への説明前に微調整をするそうだ。すこし時間を貰い資料を読み…
まずこの労働基準は身分関係なく労働者全て者が対象とされる。で詳細は
・労働者は週1日以上の休みを与える
・労働時間は3刻(休憩も含む)とする
・お昼休みと別に午前と午後に短い休みを与える(短時間の休憩は国で決めた砂時計を基準とする)
・住み込みの場合は1部屋3人までとし、プライベート空間をつくる
・年1度の健康診断を行う
・体調が悪い者は医師の指示に従い療養をささる
・賃金払いは労使で相談し各領地で決める。
・賃金は国が決めた額を以上とする
・労働者の財産は領主が責任を持ち、帳簿をつけ預かる。帳簿は労働者の希望でいつでも開示し、労働者の希望に応じ引出せるものとする
・労働者は国が定めた税を納める
・領主は労働者から預かった税を決められた方法期限で国に納める
日本の労働基準に沿った内容になった。満足する私と少し不安げなモーブルの皆さん。現状のモーブルの働き方と大幅に違い戸惑いを感じている様だ。
そして後はバスグルへの送金問題。これについても話し合いが必要。
労働基準がある程度形になりホッとした反面、必死に取り組んで来たがまだまだ長い道のりにテンションが下がる。
気がつくと従僕さん達がお茶を淹れてくれていた。どうやらここで少し休憩を挟む様だ。でも何故か私だけケーキ付。ケーキは色とりどりのフルーツたっぷりで顔が綻ぶ。
フルーツを食べていると陛下が私の方を向いて頬杖をついて見ていて、葡萄をフォークで刺したところで
「?」
何か話があるのかと陛下を見ていたら、陛下は徐にフォークを持つ私の手を取って…
「あっ!」
私が食べたフォークで葡萄を食べた。ビックリして間抜けな顔をしてしまう。
すると陛下は私からフォークを取り上げ次はクリームを掬い私の口に運んだ。
所謂”あーん”で一気に顔が熱くなる。
さっきまで皆さんお茶を飲みながら雑談していたのに静まり返り、こちらを注視し陛下のデレぶりに驚いている様だ。
「陛下やめて下さい。子供じゃないので一人で食べられますから!」
「聞いた話だがアルディアでは想い合っている男女がこうして食べさせ合っていると。ならば私達もするべきだろう⁈」
「それは人前でする事では無いし陛下とはまだ…」
そう言い陛下からフォークと取り返す。すると途端に悲しそうな顔をする陛下。でも本当の事だもん!
話を逸らしたくて陛下にあの質問する事にした。
「陛下に質問です」
「何でも聞いてくれ」
「明日の会議なぜ私は不参加なのですか?」
「あぁ…それはな」
陛下の説明を聞き納得した。今回つくった法案は私の世界の労働基準を元につくられており、内容は箱庭には無い考え方で恐らく受け入れられるまで時間がかかる。それ故貴族の反発も予想されるだろう。しかし提案しているのが【女神の乙女】だ。公爵などはそれなりに地位も発言力もあり納得いかないと意見出来るだろうが、下位貴族達は恐らく意見すら出来ない。
陛下は全ての貴族の率直な意見や本音が聞きたくて私を外した。そして高位貴族と下位貴族も分けてより意見しやすいように配慮されたのだ。
「陛下…流石です」
「惚れたか?」
「はい。人として」
あからさまに肩を落とす陛下。イケおじがしょげている姿は意外に可愛いぞ。そしてここで初めて私の明日の予定を知らされる。明日は朝からグレン殿下と一緒にシリウスさんからの弓の指導を受ける事になっている。
でも弓の訓練をするならドレスやワンピースでは危ない。急な話に服装をどうしようか悩み、アイリスさんの様にスラックスが欲しいと陛下に言うと顔を真っ赤にして
「ならん!其方のお身脚を他の者に見せるなど!ましてや恋敵に見せるなど許せるわけない。ドレスでやりなさい」
「いや反対に危ないですから!」
ここで陛下と言い合いになり周りの人が困った顔で見ている。するとチェイス様が会議の再開の伝え来て私に
「今、従僕をゴードンの元へ行かせました。あの者なら多恵様が動きやすく、その…陛下が危惧されるお身脚が出ない装いをどんな事をしても用意する筈です。ご安心ください」
そう言ってチェイス様は陛下にも会議に戻る様に言い皆さんが席に着き会議が再開される。
この後、まだ何も決まっていない送金方法について意見が出される。
頻度や手数料の他にバスグルでの受け取り方など意見が飛び交う。この世界には金融機関などは無く、他国へ送金する場合は各家がお抱えの騎士や傭兵を雇い各自で金品を運ぶ。別の箱庭に金品を送る場合は船の所有者に依頼し各家の従者が船に乗り直接運ぶそうだ。
『非効率な上に危ない。送金システムを作って簡素化&安全に出来るはずだけど…』
モナちゃん達が雇主(貴族)は送金をしてくれないと言っていたのが良く分かった。
腕組みをして考え込んでいたら視線を感じ、顔を上げたら皆さんの注目を集めている。そしてその眼差しは何故か優しいけど何で?
すると咳払いしたチェイス様が私に意見を求める。でもまだ考えが纏まっていないので、とりあえ元の世界の話をする。と言っても銀行務めもした事ないし、詳しい事なんて知らないから分かる範囲で
「私の元の世界では“銀行”というお金を扱う機関があります。銀行は預金(預かる)・送金・貸付を行い、手数料と送金と利息を取る事で成り立ち儲けを得ます。
実施にお金の行き来は殆ど無いです、帳簿上で管理しています。ですから外国に送金する場合は実際にその国に持って行くのではなく、こちらが送る金額と、先方がこちらに送るお金を相殺するんです。実際にお金は動かないので危険は少なく…あれ?」
会議室が静まりかえっている事に気付き、変な事を言ってしまったのかと焦るとチェイス様が
「素晴らしい!考えも付かなかったです。こちらも検討していきましょう」
この後送金事情を聞くと金品を運ぶとなると護衛が必要な上、やはり賊難や海難事故等で危険を伴っているそうだ。
その話を聞きやはり金融機関は設けた方がいいと提案した。(金融機関を)作るなら国営の港と王都がいいと提案する。他の箱庭への送金には港を利用しリリスの箱庭内なら王都を。
新たな雇用も生むまれいい感じじゃない?
一人で密かに自画自賛していたら、陛下がチェイス様に金融機関立上げの担当者選任を指示していた。そしてある事を思い付いて
「陛下。宜しいですか?」
「貴女の話は何でも!」
「モーブルで金融機関の目処が立ったら、アルディアとレッグロッドにも提案し金融機関を設立してもらいましょう。相手先も金融機関が無いと取引が成り立ちません」
すると慌ててメモを取るチェイス様に、陛下は破顔し私の手の甲に口付ける。
こうして知識の乏しい私だけど、箱庭に金融機関を立ち上げに携わる事になった。因みにこの世界(他の箱庭)は通貨と言語は共通なので問題無し!だから通貨の換算の必要が無く送金も難しくない。
『金融機関と言っても難しいからとりあえず送金メインで、ゆくゆくは貯金とかも出来たらいいかもね』
もう直ぐキースもオーランド殿下も来るから金融機関の話をするのに丁度良いかもしれない。そう思うとますます2人が来るのが楽しみになって来た。
そして気がつくと窓の外が薄暗くなって来ている。他の皆さんはもう少し明日の準備があるらしく、私だけ退室する事になった。
皆さんに退室の挨拶をすると陛下が立ち上がり、抱きしめて両頬に口付け耳元で愛を囁く。イケボに身震いすると軽く耳を甘噛みした。
「なっ!」
「可愛い顔をしたらその先を望んでしまう」
「しまわないで下さい!悪戯が過ぎると嫌いになりますよ」
するとオーバーアクションで謝る陛下。気安すぎて偶に国王である事を忘れてしまう。
こうして入室して来たアッシュさんにエスコートしてもらい部屋に戻る。
今日もない頭を沢山使ったからお腹ぺこぺこだ。夕飯を楽しみに部屋の前まで来ると誰かいる。日も落ち少し薄暗くなった廊下で誰か分からない。すると私に気付いたその人は駆けてくる。そしてアッシュさんが私の前に出で庇うと
「多恵様!」
アッシュさんが大きて前が見えないけどこの声は…
「ゴードンさん?」
「はい!訓練着が出来上がったのでお届けしました!是非御試着を!」
アッシュさんの壁から横にずれて覗くと満面の笑みのゴードンさんがドレスを手に立っていた。お腹ぺこぺこなのに試着するの?後でよくない⁈
そう思いなからゴードンさんと部屋に入る。
するとフィナさんが出迎えてくれ、フィナさんが用意してくれていたトルソーにせっせとドレスをセットするゴードンさん。
何のドレスが分からず呆然とドレスを見ていたら…自信満々にドレスの説明始める。
「多恵様のご希望に沿うようにリメイク致しました。まずはスカートですが…」
「おぉ!」
ゴードンさんが作ったのは訓練着だ。それはボリュームの無いロングスカートをリメイクし、ロングのワイドパンツに仕立て直している。幅広で脚のシルエットが出ずパンツなので足運びも軽く動きやすい。色は私の好きな紺色だ。そして上はブラウスいうよりカッターシャツに似ていて袖がタイトだけど窮屈では無く腕も動かし易い。そしてコルセット位の幅広ベルトで腰をサポートしている。ベルトは赤色で差し色になっていて可愛さもプラス。ゴードンさんの作る衣装はどれも素敵だけどこれは会心の出来だ。試着し鏡の前で感心して何度と角度を変えて見ていたら鏡越しに映るゴードンさんは涙ぐみ…
「え?私何かしました?」
「いえ…多恵様がこんなにも気に入って下さり感激して…」
そう言うと背後から両手を広げて近づいて来て…
「多恵さっ!ぶっ!」
「貴様何をしている!」
部屋の隅に控えていたアッシュさんがもの凄いスピードで来てゴードンさんの首根っこを掴み引き離し腕を捻り上げた。
そう普段は部屋に入らない騎士さんが部屋に待機していたのだ。
『ゴードンさんは前科があるからね…』
以前私にいきなり抱きついた事があり、ゴードンさんが部屋に来た時はこうやって必ず1名騎士さんが部屋に待機する事に(知らない間に)なっていた。やはり感極まって抱きつこうとし拘束されている。
『懲りないね…こういう芸術肌の人は感情豊かな人が多く仕方ないのかなぁ…』
「アッシュさんありがとう。大丈夫だから離してあげて」
すると低音ボイスで”次は無い”と警告し、ゴードンさんを解放してくれた。腕を摩りながら試着した私を真剣にチェックし手直し箇所をメモ。そして脱いだ訓練着を持って足早にアトリエに帰って行った。若干の手直しをして明日朝に持って来てくれるそうだ。相変わらず台風みたいな人だ。
アッシュさんにお礼を言うと微笑を返してくれ退室して行った。そしてフィナさんが夕食を勧めてくれやっとご飯だ!さぁしっかり食べて明日に備えるぞ!
こうして明日の準備もバッチリ!だけど…後は私の体力かなぁ⁈
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