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新任騎士

バスグルの問題は後少しなのに中々進まず…

『たえ そろそろ おきる』

「はぁい…」


優しくないてん君の前脚パンチで目が覚め、いつも通りフィラの抱擁から朝が始まった。

フィラは昨日出来事にまだ怒っている様で機嫌が悪い。どうやらダラス陛下の説明にイマイチ納得していない様で複雑な顔している。

多分私が処分をしないように進言したから余計にだ。でも令嬢はちゃんと真実を伝えてもらっていなかった。私が憎くてもちゃんと真実を知っていたらあそこでビンタとか多分しなかった。改めて思うけどモーブルは女性に甘すぎると思う。体力的には男性に頼る事も多いが女性も自分で考え意思をもっていないと。フィラを見たらさらに眉間の皺を増やして


「あと数日でキースが来る。それも面白く無いのに、さらにオーランドも来るんだろ。俺はおかしくなりそうだ」

「2人が来ても会いたい時は来てね。私も会いたい時は呼ぶから」

「多恵…朝から煽るな自制が効かん」

「今の会話のどこにあお…」


興奮したフィラにこの後熱烈なキスを貰う事になった。そうしていつも通りやり過ぎてん君に噛まれ追い帰されるといういつものパターンだ。

やっと起きて朝一湯浴みするためにアイリスさんを呼ぶと元気に部屋に来てくれる。最近アイリスさんと仲良くなって来た。初めは彼女の考えや行動が理解できず悩んだけど今はいい友達だ。一時は恋愛感情を向けられて悩んだが、彼女の大好きな“可愛い”を装備した男性ケイスさんとの仲が急接近しリア充なアイリスさん。

でも…ケイスさんは私のせいで謹慎を受けちゃった。落ち込んで無いのか聞いたら


「あんな大きな体で落ち込んでいるなんて“可愛い”じゃないですか。昨晩こっそりお会いして“よしよし”してきましたよ」

「落ち込んでなかった?」

「しっかり落ち込んでいたので叱咤激励してきました。元々しっかりしたお方なので大丈夫ですわ。信頼して多恵様をお預けできます」


どうやら2人は知らない間にしっかり絆が出来ていた様だ。このままいい結果につながるといいね。朝から胸ドキして幸せを感じ、いい1日をスタートさせた。

朝食後に文官さんが来て陛下が呼んでいると伝えてくれた。陛下の部屋に向おうとしたらリチャードさんが新しい騎士さんと入室して来る。どうやらバートンさんの代わりの専属騎士が決まったようだ。


「女神リリスが召喚された乙女様にお目文字叶い光栄にございます。この度専属騎士を拝命いたしました聖騎士アッシュ・ランディンと申します。この身と剣で乙女様を全てのものからお護りいたします」

「あ…多恵と申します。よろしくお願いします。えっとですね元々庶民なので堅苦しいのは苦手なのでフランクに接して下さると嬉しいです」


そう言うと優しく微笑みをくれた。アッシュさんはとても背が高くフィラ位ある。青色のサラサラストレートヘアーにオレンジ色のパッチ二重の綺麗な瞳で、アニメに出て来るイケメンキャラだ。細マッチョでチョイ好みである。

こうして新任護衛騎士のアッシュさんと陛下の執務室に向う事になる。道すがら早く仲良くなりたくて色々話していると、いつもより視線を感じる。恐らく昨日のアレがあったからだろう。

城勤めの女性は政も学んでおり物知りで理解力がある。しかし令嬢達は狭い世界に身を置き学ぶ機会もなく政に興味がない。女性も自国の政の知識位はある方がいいと思うんだけどなぁ…


私が視線を気にしていると感じたアッシュさんが気にしない様に言ってくれる。


「私が申し上げるのは烏滸がましいのですが、多恵様がされて来た事は誇らしい事ばかりです。誇って下さい」

「へへ…ありがとうございます。褒めても何も出ませんよ」

「私は本心しか語りません」


見上げたらアッシュさんは心なしかお顔が赤い。歯の浮くセリフで自分で照れちゃったのかなあ⁈でも嬉しくて心の波が少し治まった気がした。


アッシュさんは生真面目そうだけど、私が変な言葉遣い(元の世界では普通)をすると口元を緩める。何度かご一緒したら仲良くなれそうだ。

安心してた所で陛下の執務室に着いた。アッシュさんが声かけをしてくれたら、勢いよく扉が開き出てきた陛下に当然のように抱きしめられる。

そして頬に額に瞼にと口付けの雨が降る。

陛下の背中を叩くとやっと止まり、心配そうに見詰めてくる。陛下が落ち着いた所でアッシュさんにお礼を言い、陛下との話が終わるまで外で待機してもらう。


「貴女を害した令嬢に温情をかけたと聞いた。本当にそれでいいのか?妖精王フィラは厳罰を求めている。恐らくこの事を知った他の国も同じ事を求めるだろう」

「勿論暴力を振おうとした彼女は悪い。しかしちゃんとした情報を与えられていなかったんです。だからちゃんと事実を知った上で罪を償ってほしい。そうじゃないと彼女の為にならない」


すると陛下は表情を柔らかくして微笑み


「やはり貴女は素敵だ。貴女の考えに沿う事にしょう」

「ありがとうございます」



こうしてモーブルの貴族に今回の不正貴族摘発、元宰相エリアスチャイラ逃亡、アンジェリク嬢の暴行未遂事件全てを再度通達する事になった。勿論女性達にもだ。

自国のことは理解出来る年齢なら知っておくべきだ。

陛下は腕を解いてソファーに座らせてくれる。そして従僕に茶菓子とお茶を頼んでくれ、お茶を飲み落ち着く。

そんてこの後アンジェリク嬢について陛下と相談し、孤児院に1ヶ月の社会奉仕で話がついた。

気位高い令嬢が平民の子供相手をするのは十分大変なはずだ。そして保護者の伯爵には希望していなかったバスグル人の受け入れさせる事になった。


「昨日はグレンに付き添ってくれ礼を言うよ。今朝朝食を共にしたが落ち着いていた。それに貴女と弓を訓練すると意気込んで逞しくなっていたよ。親として誇らしい」


陛下の表情は子を思う父親の顔だ。大輔が雪に向けるそれと同じ。血の繋がりはなくても確かに2人には親子の絆がある。だから近い将来やってくる悲しい別れも2人で乗り越えられるだろう。


「多恵殿?」

「いや…いいお顔されてるなぁ〜て。でも少し窶れてますけどね。ちゃんと休んでくださいね」


そしてこの後陛下からキースとオーランド殿下の訪問予定が伝えられる。


「あ…やっぱり被った…」

「被ると言っても1日のみだぞ」

「私の婚約者キースは嫉妬深いですよ」

「否…婚約者だけでは無いぞ。其方を想う者は皆嫉妬深いぞ」


笑って誤魔化した。でもキースが後3日で来ると分かると顔が綻ぶ。すると眉を顰めた陛下が顔を寄せて隣に来て


「私は面白くない。また嫉妬心を抑えねばならんのだ」

「えっと…」


甘い雰囲気になり慌てて話を逸らす。午後からも会議があり、明日の午前中は下位貴族達と労働基準の説明と要望を聞き、午後からは高位貴族となる。


おおかた纏まっており後は貴族から意見を取り入れて調整して出来上がる。


「労働基準が決まったら、不当に入国し帰れずに居るバスグル人の帰国について話し合う」

「やっとここまで来ましたね」


そう言うと陛下の表情が柔らかくなる。陛下の話では不正貴族が着服した税と、家門が取り潰しになった家の財産をバスグル人帰国費用に充てる。バスグル人は一度に帰す事は無理で数回に分け行う。そして帰国した者で再度モーブルへ出稼ぎを希望する者は、バスグルで新たに制定された就労ビザを取得し、出国審査か通れば正式にモーブルに入国する事になる。


「オーギス侯爵、キーモス侯爵この2つはかなり溜め込んでいた為、バスグル人全員を帰してやれる」

「ここで提案ですがバスグルからの就労希望者を全て受け入れれば、モーブル人の就労先が無くなる可能性があります。だから受け入れる貴族に受け入れ可能人数を申告させ、その人数を受け入れ下さい。多く受け入れれば結局今までのように不正がおこります。希望者か多くても管理できる人数を受け入れてください」


陛下は驚いた表情をして微笑み手を握ってくる。少し先が見えて明るい気持ちなると、陛下も同じ気持ちのようでいい表情だ。


こうして陛下との話も終わり部屋に戻る。陛下が送ろうとしたが文官さんからの報告があるらしく、苦笑いで見送ってくれた。そしてアッシュさんと部屋に戻っていると


「キース殿が訪問されるのですね」

「えっ?はい」

「私も楽しみですが恐らく婚約者に会いに来るので、私に会う間など無いでしょう」

「?」


アッシュさんに聞いてビックリ!アッシュさんのお母様とキースのお母様が従姉妹でした。つまりキースとアッシュさんは再従兄弟になるわけで…


『キースと結婚するとアッシュさんと親戚なるの?』


すると私を覗き込みクスクス笑うアッシュさん。そしてキースの幼い頃の話をしてくれアッシュさんと打ち解けた。


「私の婚姻式にキースは来てくれました。ですから私もお2人が式を挙げる時は是非出席させていただきたい」

「えっと…その時はよろしくお願いしますね」


この後、中々妻を娶らないキースを心配して親戚中で良縁を探していた話をしてくれた。そしてキースは何度かモーブルに来て、数名の令嬢とも顔合わせ?見合いをしているそうだ。


「彼はどんな美人や魅力的な容姿の女性と会っても眉ひとつ動かさない。それが多恵様にはメロメロだと聞き及びました。人目を憚らず口付けたり相当な溺愛ぶりだと…」

「お恥ずかしい限りです。すみません私なんかが相手で…」

「いえ。以前来た時は私は別の任務で居りませんでしたから、愛を得て変わったキースを見るのを楽しみにしているんですよ」

「あはは…」


笑って誤魔化すしかない。アッシュさんは初めご挨拶いただいた時は、超真面目でとっつきにくく打ち解けるのに時間がかかる思った。けどキースの話題で盛り上がりすっかり人見知りしなくなった。打ち解けると気のいいお兄さんで安心して話せる。

アラン団長が私の性格を考慮して選んでくれている。他の専属のケイスさんもリチャードさんもいい人で気が合う。

こうしてアッシュさんと話していたらあっという間に部屋に着いた。もう4刻になっていて、交代の騎士さんと侍女さんが待ってくれていた。さぁ!美味しいランチをいただきお昼からも頑張ろう!

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