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誘惑

モーブルに怒ったフィラに妖精城にお持ち帰りされて…

「お前は何も悪くない。逆恨みだ」

「うん…頭では分かっているんだけどね…」


妖精城の自室のソファーでフィラに抱っこされ慰めてもらっている。フィラの言う通り逆恨みで私が悪い訳では無い。でも…


『あっちから見たら私が嵌めた様に見えるんだよね…』


暫くリッキー様に対して罪悪感を引きずっていてやっと忘れかけていた時に、色仕掛けの件がカムバックして来てダメージを受けてしまった。


「それにお前も役目といえ好きでもない男の相手をして苦痛を受けある意味お前も被害者だ。しかしそのお陰で腐ったモーブル貴族を粛清出来たんだろ。感謝される事があっても恨まれる筋合いは無い」


私の頭の上で自分の事に様に怒ってくれているフィラ。本当にフィラが居てくれて良かった。グラントもキースも離れているから傍にいて欲しいと思っても会えないからね…

少し落ち着きふと窓の外に目が行くと日が傾きかけている。時計を見たらもうすぐ6刻だ。


「フィラありがとう。もう大丈夫。今日はグレン殿下に付き添ってあげないと」

「本心は帰したくない。しかしお前が幼い王子を心配する心情も分かるから帰してやるが、ダラスの説明によっては強制的にこっちに連れ帰るぞ」


私が帰りを望んでいるから帰してくれるけど、本当はモーブルの対応に納得していないフィラ。

フィラや妖精は純粋で懐に入れた人をとても大切にする。だから仕方ない事とはいえ、私が傷つくのが許せないのだ。

嬉しさとお礼を込めてフィラの首に抱き付き自分から口付ける。そしてぎゅーとして…


「ありがとう。大好きだよ」

「俺はお前の何十倍いや言い表せない位愛している事を忘れるな。お前に何か有ると俺はモーブルを破壊しかねないからな」

「…それは嫌だしちょっと怖い」

「なら自分を大切にしろ」

「はぁ…い」


こうしてまだ怒りが収まっていないがフィラはモーブル城に帰してくれた。

部屋に着くとアイリスさんとリチャードさんが待っていてくれて、深々とフィラに頭を下げ丁寧な挨拶をしている。そしてリチャードさんは陛下がフィラに事情を説明させて欲しいと仰っていた事を伝え、フィラは私に口付け陛下の元へ行ってしまった。


「多恵様。この後アラン団長とチェイス宰相がお見えになり事情説明をされたいそうです。如何なさいますか?お疲れであれば明日にでも…」

「いえ、お聞きして夜にはグレン殿下のお部屋に伺います。でも…」

「「でも?」」

「お腹が空いたので夕食後にしてもらえますか?今日はおやつも頂いて無いのでペコペコで…」


そう言うと2人は優しく微笑みアイリスさんは食事の準備を、リチャードさんはアラン団長の元へ向かった。

本当に疲れたの!ご飯を食べさせてください!


こうして直ぐに食事の準備をしてもらい美味しい美味しい夕食を食べ満足。そしてソファーでのんびりしていたらアラン団長とチェイス様がお見えになった。

立ち上げりお迎えすると2人共険しい顔で嫌な予感がする。2人共深々と頭を下げられ謝罪されます。


「多恵様を危険な目に合わせてしまい申し訳ございません。いくら城内とはいえ乙女様から騎士が離れるなど有るまじき行為、心から謝罪を」

「あ…私が一人になりたいって言った事なので、ケイスさん達を責めないで下さい。自己責任で一人で良いと言ったんです。それなのに騎士さんが叱責されると私が辛い」

「貴女は優しすぎる…騎士の二人と護衛中の騎士を呼び止めた文官には2日の謹慎を命じました。本来なら配置転換するべき案件です」


やっぱり騎士さんに責任がいってしまった。あの場合致し方ないと思うけど、騎士道のナンチャラカンチャラがあるのだろう。これ以上は言わない方がいいよね。

取りあえず落ち着いて話すために、着席いただきアイリスさんにお茶をお願いしチェイス様の話をききます。


「多恵様を害しようとしたアンジェリク嬢は今騎士棟の貴族用の牢に投獄しております。今父の伯爵を交え話し合いがされております。陛下が罰をお決めるに当たり多恵様の心情をお聞きしたいと」

「それよりアンジェリク様はお体大丈夫ですか?貴族令嬢が牢なんて経験無いだろうし、女性ですからその辺を配慮してくださいね」

「はぁ…貴女は優しすぎる」


そしてチェイス様からアンジェリク嬢の動機を聞くとになった。


アンジェリク嬢はキーモス侯爵家嫡男のリッキー様と婚約中で、近々式を挙げる予定だった。そんな時に女神の乙女が召喚される事になり、貴族達は乙女との縁を熱望する様になる。

しかし乙女がアルディアを選んだ時点でモーブルに来ることは無いと考えた多くのモーブル貴族は、いい縁を望み早々に婚約していった。

それがリリスが箱庭全ての国を救済する事を望み各国に乙女が渡ると知ると、まだ婚姻していない貴族令息は一抹の望みを持ち始める。そしてキーモス侯爵もチャンスがあればと機を狙っていたそうだ。

そして私との縁を画策するリッキー様は私がモーブルに来ると、アンジェリク嬢と距離を置き出した。

不安にかられるアンジェリク嬢。しかし婚約は解消されておらず、それを心の支えにアンジェリク嬢は過ごしていた。そこに例のお茶会が開催され参加した令息からリッキー様に乙女がすり寄り誘惑したと聞いたそうだ。

そしてお茶会後に私がお持ちかえりされたと聞き絶望する。

そして急展し翌日キーモス侯爵とリッキー様が謀反により拘束されたと聞き、私がキーモス侯爵家を嵌めたと勘違いし私を恨んだそうだ。そしてもともと乙女に対して良い印象が無かった上に婚約者を嵌められ憎んた。そして偶々城内で騎士が離れ1人でいる私をの見かけ我慢できなくなり…ビンタに及んだわけだ。


「ジョスター伯爵に聞いたところ、(リッキーが捕まり)ショックが大きいアンジェリク嬢に不正貴族摘発の詳細は話していなかった。伯爵は悲しむ娘を思って黙っていた事が、まさかこんな事になるなんて思っていなかったそうです」

「勘違いからなら…」

「いえ、伯爵は子を想っても厳しい事実を伝え、改めてモーブル貴族としての誇りと責任を再認識するべきでした。それを怠った伯爵は罰せられるべきだ」


それにしてもリッキー様はお茶会の時に婚約者はいないって言っていたぞ。嫌いチャラ男!彼を思い出すと鳥肌カムバック!

まだ混沌とする貴族社会が落ち着くのはもう暫くかかるだろうなぁ…


「ジョスター伯爵が多様様に謝罪に伺いたいと面会を希望されております。あと…伯爵が令嬢を修道院に送ると…」

「え!それは可哀想。まだ若いしこれから更生もできるし、いい縁もあるのに…それ無しにして社会奉仕とかにできませんか⁈」

「「!!」」


チェイス様もアラン団長も厳しい顔をすると、後ろに控えていたアイリスさんが発言許可を求め恐々許可すると


「私からもお願い申し上げます。このままアンジェリク嬢が修道院に入ると、多恵様が自責の念でお辛い気持ちになられます。私は正直アンジェリク嬢の事はどうなっても構いません。しかし私は心労が多い多恵様にこれ以上悩みは増やしたく無いのです。少しでも心穏やかにお過ごしいただきたい」

「アイリスさん…ありがとうその気持ちが嬉しい」

「私はどんな時の多恵様の味方ですわ」


アイリスさんと手を取り合いズットモする私達に咳ばらいをしたチェイス様が、私の意向を陛下に伝え追って報告すると言いアラン団長と退室していった。


後日アイリスさんに聞い話、アンジェリク嬢のお母様がレックロッド出身で前乙女レベッカの熱狂的に尊敬リスペクトしていて、アンジェリク嬢も私が召喚されてから、周りに敵視する発言を繰り返していたそうだ。そんな敵視する女に婚約者を嵌められたと知り更に嫌う事になった様。そしてここでも前乙女レベッカ絡みで敵を作っている事を知り、益々レックロッド帝国に行く事に不安が増す。


ビンタ未遂の詳細が分かり落ち着き、ふと時計を見るともう7刻近い。早く殿下の元に行かなと寝る時間になる。

リチャードさんにお願いしグレン殿下の元へ。そして殿下の部屋に着くとシリウスさんが出迎えてくれる。

入室すると殿下は湯浴み後でホカホカして可愛らしい。私を見付けると駆け寄り抱き付く。7刻が近づいているから寝室に向かい眠るまで側に居ることに。

小さくても異性なので寝室にはシリウスさんが同席する。


『ショタコンじゃないんだから私が殿下を襲う訳なし、殿下もまだ幼いから私を襲う訳ないのにね…』


そんな事を考えながら殿下にお布団を掛けベッドサイドに椅子を置いて座ると


「多恵殿。何かお話をして欲しい」

「お話ですか?」

「うん!多恵殿の世界のお話が聞きたい」

「う…ん」


話すなら昔話か…何がいいだろう⁈悩んだ末に桃太郎に決めて


「昔…昔…」


殿下は目をキラキラさせ話を聞いている。こんなに期待し興奮していたら反対に眠れないじゃないかと心配してしまう。そしておじいさんが桃を割るところで…


“くしゅん”


思いっきりくしゃみをしてしまった。集中していた殿下は驚き飛び起きた。


「ごめんなさい!驚かすつもりは…へ?」


急に大きな毛布に包まれシリウスさんに抱っこされ何故かシリウスさんの膝の上にいる。


「夜は冷えます。貴女が風邪をひくといけない」


がっしりホールドされ動けない。見上げるとシリウスさんの見目麗しいお顔が私を見ていて、前を向くと話の続きを目をキラキラさせ待つ美少年の殿下。

顔面偏差値の高さに久しぶりに気後してきた。


「多恵殿!続きを!」

「あっごめんなさい。では気を取り直して…おじいさんは大きな剣で桃をザクッと半分切ると、中から元気な男の子が…」

「「…」」

「あれ?」


ここ中々の見せ場ですけど?2人共顔色が悪い。殿下は黙り込みシリウスさんは残念そうに私をみて


「多恵様…殿下には酷な話です」

「はぁ?」


2人の反応が意味が分からずよくよく聞いてみると、男の子が入っているのに大きな剣で切り殺そうとしたと思ったようだ。


「なんでそうなるの?違うよ!大きい桃を拾ってハイテンションで桃を切って食べようとしたんだよ!」

「やはり残念な話ではないか!桃なるものを食べたかったのに…」

「いや確かに食べるために拾ったけど違うの!子供がいない2人は神様が子供を授けてくれたと喜んだんだよ」

「「!」」


日本の子と違う反応に焦ってしまう。そっか文化も風習も違うから、曖昧ファジーなニュアンスは伝わらないんだ。理解した私はこの後は説明を沢山挟み、普通の倍長い桃太郎を語る事になりました。


殿下はというと興奮し過ぎたようで、犬が出て来た所ら辺から目を擦りだし、猿の登場で寝てしまいました。

穏やかな寝顔と寝息に自然と顔が緩み、こちらまで幸せな気持ちになれた。

シリウスさんにもう大丈夫だと言い、解放してもらい殿下の布団を掛け直し静かに寝室を出た。


そろそろ部屋に帰ろうとしたら後ろからシリウスさんが抱きついてくる。

背中が温かくいい香りに疲れを忘れていく。


「令嬢の件聞きました。俺が傍いれば危険な目に合わせなかった。ずっと俺を傍に置き護らせてくれ」

「えっと…ずっと一緒は流石に疲れるかなぁ⁈」

「俺は片時も離れたくない」


この状況どうしたものかと悩んでいたら、リチャードさんが戻りを促して来た。


「シリウス殿。多恵様は今日はお疲れです。そろそろお休みいただかないとまた痩せてしまわれる」

「…」

「いや、このくらいが丁度いいと思うけど?」

「・・・いい」

「なんて?」


シリウスさんが独り言を言い腕を解いて頬に口付けて再度抱きしめた。


「俺が送ろう」

「でも殿下が」


殿下が就寝されたので大丈夫だと言うシリウスさん。そういえば最近ゆっくり話す機会が無かった気がする。2人になるとディアナ嬢が突入してきたもんなぁ…

部屋までの少しの間だけどお付き合いするか。


「お仕事が大丈夫なら…リチャードさん大丈夫な感じ?」


リチャードさんからOKを貰いシリウスさんと雑談しながら部屋に戻る。ここで再度ビンタ未遂の話になり、シリウスさんがモーブルの令嬢事情を話してくれる。


「モーブルはレックロッドとの取引が多く、貴族間の縁組も多い。だから特にレックロッド出身者の女性が多い。既にお聞きかもしれませんが、レックロッドでは前乙女レベッカは女性達にとって絶対です。故に貴女を敵視する者が多い」


前乙女レベッカは山に囲まれ通行事情が悪いレックロッドに地下通路という神の道を齎した。尊敬するのは当然だし同じ女性として憧れるのは至極自然な事だけど、話に聞くレベッカさんは自己中で傲慢。それを見習っているレックロッド女性は残念になっている。

シリウスさん曰く私が向かう前に改善する様にアルディアとモーブルが求めているらしい。


「オーランド殿下も心砕かれている様だが、長きに渡り培った人の感情は簡単には変わらない。だから…」

「?」

「俺をモーブルに連れて行ってくれ」

「いや!殿下の護衛の任があるでしょ!」

「貴女と傍に居れるなら何も要らない」

「…」


突然の申出に焦る。でも変わり始めたモーブルにはシリウスさんが必要。シリウスさんだけでなくダラス陛下を支える家臣が必要なのだ。

でも必死に懇願するシリウスを拒む事ができない。かと言って受け入れる気は無い。困ってしまい歩み止め俯いてしまった。するとシリウスさんは私の前に移動して跪き手を取り覗き込み


「答えは焦らなくていい、俺の命が尽きるまで愛するんだ。時間はたっぷりあるさ」

「ごめんなさい。今は返事できない」

「ほんの少しでも俺の事を想ってくれるだけで十分だ」


こうして部屋まで送ってもらい、疲れて湯浴みもせずにベッドに潜り込む。そして長く色々あり過ぎた1日を終えた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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