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償い

シリウスが見せてくれたモーブルの自然に自分が役立てたと実感し…

“ごぉ〜ん”4刻の鐘が鳴ると同時に私のお腹も鳴った。鐘の音と重なり多分シリウスさんには聞こえなかったはず…と顔を上げたら


「申し訳ない。直ぐに帰城しましょう」

「あ…すみません」


シリウスさんは耳がいいらしい。笑って誤魔化したら腕を解いて歩き出すシリウスさん。

騎士さんがシリウスさんの馬を連れて来てくれ、シリウスさんにまたマントで包まれ馬上に上げられ皆さんと一緒に帰る。

背中にシリウスさんの温もりを感じながら、シリウスさんの気遣いに感謝し身を彼に預けた。


帰城するとアイリスさんとケイスさんが待っていた。


『あれ?また距離縮まってる?』

2人は向き合い仲良く話している。そしてアイリスさんの肩の埃をケイスさんが取ってあげている。そして恋バナ様に微笑み合う。


「あま〜い!」


思わず心の声が出てしまう。慌てて独り言だとシリウスさんに言い誤魔化した。

到着し馬から下ろしてもらうと、文官さんがシリウスさんに耳打ちし、溜息を吐いたシリウスさんは私を抱きしめ頬に口付けて文官さんと何処かに行ってしまった。

キョトんな私はケイスさんとアイリスさんと部屋に戻る。


部屋に着くと昼食が用意されていて早速いただく。食べ終わったタイミングでアイリスさんが手紙が届いていると渡してくれる。裏返し宛名を見たら…


「ツーダン侯爵様?」


誰か分からず固まっていたらアイリスさんが昨日オーランド殿下の手紙を届けてくれたレックロッドの侯爵様だと教えてくれる。そうディアナ嬢のお父さんからだ。

嫌な予感がして直ぐ開封すると、ディアナ嬢の非礼の謝罪文だった。どうやらシリウスさんが連絡したみたいだ。


「まだ子供だからね…」


私がディアナ嬢に嫌味を言われた事をアイリスさんは知らなかったから手紙についても何も言わない。知ってたならキレて大変だったかも…

ゆくゆくはレックロッドに行くから出来れば仲良くしたいが、ディアナさんからしたら私は恋敵だから無理かなぁ…


そんな事を考えながらお茶を飲んでいたら誰か来た。アイリスさんが応対してくれ


「多恵様。ジョエル殿が面会を願っていますが、如何なさいますか?」

「今日は特に用事が無いからお受けします」


そう言い立ち上がりお迎えすると、凛々しい顔つきのジョエルさんが入ってきた。そして私の前で跪き手を取って


「我が家門を救って下さり感謝致します。まだ陛下から命は下っておりませんが、当主の父と話合い領地と爵位を返上する事にしました」

「えっ!」

「両親はアルディアの母方の親類を頼り隠居し、俺は準男爵まで落ちますが独立し騎士として王国に尽くす所存です」


確かジョエルさんの実家はオーギス侯爵の隠れ蓑役と不法滞在のバスグル人の雇用のみで罪としては軽いはず。正直そこまでしなくても…


「”そこまでしなくても”って顔に書いてありますよ多恵様」

「えっ?嘘!」


慌てて顔を触ると立ち上がり抱きしめてくるジョエルさん。騎士さんだからがっしりしていて身動き出来ない!

アイリスさんがジョエルさんから助けてくれようとするが、やはり女性の力では無理で外のケイスさんを呼びに行き、ケイスさんの迫力ある叱責でやっと解放された。


この後ご両親と陛下に上申に向かうそうだ。ジョエルさんはお父上が気弱で領主に向いていないと言い、隣接する歴史があり保守的なトラビス伯爵に管理してもらった方がいいと言う。


『それもありだろうけど…』


なにか釈然としない。確かに国に害を及ぼしたが、半ば強制だったし気弱かもしれないが真面目そうなのに、お家取り潰しは少し厳しい気がする。

アイリスさんに聞くとジョエルさんの実家のカナト子爵家は、そこそこ大きい農地があるらしく、領地で採れる農作物の多くはレックロッドに輸出されているらしい。


『そんな大きな領地をいきなり管理を任されトラビス伯爵が管理できるのかなぁ⁈そのままの方が…あっ!』


いい案を思い付いた!ダメ元で提案してみる。

こうしてジョエルさんに同席をお願いし、陛下の元に向かう事にした。ジョエルさんのエスコートで謁見の間に向かう道すがら、廊下ですれ違う次女さんや女官さんがジョエルさんに秋波を送っている。腹がきまったジョエルさんは精悍な顔をしてカッコいい。

当の本人は私をガン見していて気付いてないようだ。


苦手な謁見の間が見えて来た。少し緊張して扉前の従僕さんに謁見に同席をさせて欲しいとお願いすると、従僕さんここで待つように言い謁見の間に入って行った。

ジョエルさんと雑談して待つこと数分、陛下の許可下りてジョエルさんと入室する。


玉座に陛下とその後ろにチェイス様。

そして数段下がってアラン団長とシリウスさん他数名の騎士さん。そして部屋の真ん中にジョエルさんのお父様のカナト子爵様がいる。


私の登場にカナト子爵様は驚き、陛下とシリウスさんからは熱い視線をもらう。

ジョエルさんが私を陛下の元へエスコートし、その後にカナト子爵様の横に行き頭を下げる。


そしてカナト子爵様が今回の事件を陳謝し、領地と爵位の返上を願い出る。そしてジョエルさんも一騎士として国に仕えると申し出ている。すると陛下が私を見て


「多恵殿。思う所があり来たのであろう?話を聞こう」


さすが陛下!私の意図が分かってる!

思わず顔が綻ぶ。するとウィンクする陛下。


『もー!やる事何でも男前なのよねー』

そう思いながら深呼吸をしてゆっくり話し出す。


「カナト子爵の申し出とは言え、領地返上となれば国が管理するか隣接するトラビス伯爵様が管理となります。それは現実的なでは無く、国が管理しても伯爵家が管理しても負担が大きい。直ぐに対応できると思えません。それに領民は困窮するのが目に見えています。しかし子爵が償う気持ちはわかるので…私の提案です」


ここで考えついた案を皆さんに聞いてもらう。すると…


「なんと!」

「流石多恵殿だ!」


好評価に嬉しくなって来る。すると陛下がカナト子爵様とジョエルさんに問うと


「有難き幸せ!爵位を無くしてもモーブル国民の誇り胸に任せていただいた土地は必ず豊かにしてみせます!多恵様に感謝を」

「私もモーブルの為に誠心誠意仕えるとここに誓います!」


お2人は深々と頭を下げられ、陛下が宣言する。


「女神の乙女である多恵殿の知恵をいただき、カナト子爵家は本人の希望通り家門は取潰しとする。但し子爵領地はモーブル国営とし、カナト家に管理を任せバスグル人労働者の受け入れを担うものとする。そして嫡男ジョエルはカナト家から独立を認め準男爵とし、今まで通り騎士団に属するものとする。意義がある者は今ここで申せ」


すると部屋の皆さんが胸に手を当てて頭を下げて陛下の意見に賛同する。

陛下は私を見て微笑む。まるで”これでいいか?”と聞いている様だ。

嬉しくて思わず指でOKサインを出すと玉座から降りて来て私を抱きしめた。


「貴女は何度も私を惚れさす。罪な女性ひとだ」

「へへ!お役に立てて嬉しいです」


こうしてジョエルさんの実家の償いは決まり、後日関与した家門の罪が次々と決まりモーブルの国内に通達される事となった。

暫くの間は混乱するだろうなぁ…

次は労働協定と王妃様の病気かぁ〜


『近々会いに参ります』


先日オーランド殿下から貰った手紙書いてあったのを何故か今思い出した。来てくれるのは嬉しいが、キースも来るんだよなぁ。重ならないといいけど…

少し嫌な予感がするけど、今は気分が良いから深く考えない事にした。


話が上手く纏まり部屋に戻ろとすると陛下が上座から降りて来て私の手を取り謁見の間を出ようとする。


「陛下!お忙しいでしょう?騎士さんがいてくれるので大丈夫ですよ」

「今は一時でも貴女と共にしたい」


遠慮したけど結局断りきれず部屋まで送ってもらう。そして陛下からもレックロッドのオーランド殿下が訪問される事が告げられる。また嫌な予感がして


「あの陛下…アルディアのキース様も近々来ると聞いてるんですが」

「…恐らく滞在は被ると思われる」

「マジで!」


陛下を見上げたら嘘は言っていないようだ。ただ被りかと思ったが被るのは予定では1日だけ。

『なら何とかなる?』


先にキースが来るから恐らくキースは帰りを渋るのは目に見えているわ。でもキースは婚約者で来るなは分かるけど、オーランドは何でも?外交?

陛下に聞くとこの時期に来年の農作物の取引の契約に来るそうだ。毎年の事だから寧ろキースがイレギラーなのね。

キースにずらしてもらった方がいいけど、彼も仕事の都合があるから仕方ない。


近い未来に揉め事が確定してさっきまでの晴れ晴れした気持ちはあっという間に無くなり、足取り重く部屋に帰る事になった。もう…この後はてん君と戯れて現実逃避を決め込む事にしたのでした。

お読みいただき、ありがとうございます。

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