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作戦会議1

エリアス様の帰国が決まりまた問題発生。もぅ溜息しか出ない!

ゆっくりしている場合では無く、身なりを整えて陛下の執務室へ向かう。

いつもエスコートする時は必ずデレるシリウスさんが真剣な顔をしていて、事の重大さを感じる。恐らく品種改良の件だろう。キーモス侯爵邸から何か証拠が出たのだろうか?


陛下の執務室に着くとチェイス様と初顔の品のいいおじ様がいる。誰だろう?

私に気付いた陛下が駆け寄り抱きしめる。


「もう体の方はいいのか?」

「はい。ご心配お掛けしました。ちょっと寝過ぎまして」


あまりにも深刻な雰囲気に戯けてみたが誰も笑ってくれない。はい…すべりました。

陛下は私の手を取りソファーに誘導して隣に座る。デーブルの上には沢山の書類がありチェイス様が初顔のおじ様と何か相談している。私のお茶が出されたら人払いがされ、やっとチェイス様がおじ様を紹介してくれる。


「多恵様。このお方はモーブルのアカデミーで植物を研究し教壇に上がるヘイズ博士です」

「このままで失礼します。ヘイズ・ワートンでございます。平民ゆえ不作法お許しいただきたい」

「いえお気になさらず。川原多恵です?」


あれ?ヘイズ教授の周りに光の玉が…あれ妖精だ。一般の人の近くに妖精がいるのを初めて見た。何故か気になって妖精とコンタクトを取ると、色とりどりの妖精が姿を現し訴えてくる。


『たえ たすけて かわいい くさばな いじめられてる』

『それって…人が植物に手を加えている事?』

『そう この おとこ くさばな みかた』

『分かった。ちゃんと話を聞くから安心して』


そう言うと妖精達は私にキスをしてヘイズさんの元へ戻っていった。


「多恵様?」

「あっごめんなさい。お話は?」

「実はキーモス侯爵邸から差押えた書類や茶葉を精査したところ、とんでもない事が分かりまして…」

「あ…植物に人が手を加えている事ですか?」

「「「「!」」」」


驚愕し固まる4人。時間が無いので巻で話をして行きましょう!あまり詳しくは言わず長寝の間にリリスから啓示があったと伝えた。


「リリス、妖精王フィラに妖精達も嘆いてます。元のモーブルの自然に戻しましょう」

「敬愛する女神リリスがお嘆きに…」


皆青い顔をしている。さて話を巻いて巻いて!まずはこの問題が判明する所になった書類を見せてもらい目を通す。

それはエリアス様からキーモス侯爵に宛てた手紙と資料だった。

手紙にはチャイラの技術で実りを早める術を勧める内容の手紙と資料。資料には成長の早い品種と実りが多い品種の受粉を人工的に掛け合わせ、新しい新種を作る手順書だった。


「これは育て方はキーモス領で試したのですか?」

「はい。生育記録も押さえここに…お読みいただければ分かりますが、失敗し1アカ(現代で言う1ha)の大麦を枯らした様です。他にも芋や茶葉に根菜類など輸出する作物ばかり試している様です」

「酷いですね…妖精達が泣いているわ」


“ガタン”


立ち上がったヘイズさんは私の前にきて手を握り複雑な顔をして


「そうなんです。自然の物は妖精の力と人のほんの少しの手間で実るのです。人が手をかけてしまうと妖精達の加護は消え忽ち枯れてしまう。キーモス領だけでもかなりの量を枯らしている。腹ただしい!」

「土壌も全て妖精が?」

「はい。基本は妖精達が整えてくれます。我々は収穫後の葉や蔓を刈取り土に埋めます。いつからか分かりませんが、先人が偶然刈った草や蔓以外も物を埋め、土壌が豊かになること知り、一部の農作物には卵の殻や落ち葉なども一緒に埋めるようになりました。その追加の物で若干育つ物の味が上がるとされていますが、土に埋めるだけで土壌は土の妖精が作り出し我々は手をかけません」


ヘイズさんが説明をしてくれている後ろで、眉間の皺を深め苦々しい表情のシリウスさんが目に入る。確かアカデミーで地学を学び土壌の研究をしていた聞いた。こんな無茶な方法をとる彼等に腹を立てているのだろう。

チェイス様は別の資料も見せてくれた。


「これは領収書?」

「流石多恵様。そうです。キーモス侯爵がチャイラから輸入した堆肥と品種改良された種の領収書です。妖精の加護の無いチャイラの土をモーブルに入れ土壌を汚している」


『あちゃーやらかしてますね…あっでも?』


色々資料や書類を見るがキーモス侯爵は全てエリアス様からの指示のもとで動いている。エリアス様のお家は侯爵家。そっちも何かしてる?

気になり聞いてみたらエリアス様の領地は農地が少なく料理人や庭師などの職人を多く輩出している領地。


『って事は自分の手を汚さず人にやらせてるの?ずるい奴』


今回のガサ入れで摘発したのは7件。事前調査通り脱税はキーモス侯爵含め3件でいずれもエリアス様からの品種改良に加担し、農地の1部をダメにしている家だ。


『良かった…バートンさんとジョエルさん家は不法滞在者の雇い入れだけだ』


関与は少なく安心する。でもお咎めなしとはいかないだろう。後2件は脱税した家の隠れ蓑の役割をしチャイラから来た堆肥や品種改良した種や苗を預かっていた。


「って事は今回の件は大元がエリアス様で確定ですよね。この容疑で家宅捜査出来ませんか?」

「それが…」


今回のガサ入れで見つけたエリアス様とのやり取りは、全てエリアス様の実筆でなく誰が書いたものが分からない。受け取った者はエリアス様から直接貰ったと証言している。しかしエリアス様にこの証拠を突きつけても、”陥れるために偽装された”と主張すればエリアス様の罪は実証出来ず、今回捕まった貴族達はトカゲの尻尾切りで終わる。


なす術が見つからず、みんなの顔色が悪くなる。


「我々では策が無く困っておる。多恵殿何か無いか?」

「ゔ…ん。暫しお待ち…あ…」


思い付いたが私の力では…


『てん君!』

『たえ?』

『てん君。アルディアとかに手紙届けれるじゃん⁈モーブルのエリアス様の屋敷に行く事に出来る?』

『できる てん ゆうしゅう』

『おぉ!じゃーエリアス様の書斎とか倉庫とか入れる?』

『みてくる』


てん君は張り切りエリアス様の屋敷に…

私の中からてん君の気配が消えた。


「多恵様?」


私が俯いて黙り込んだから皆慌ててる。ちょっと考え事とはぐらかして、てん君の帰りを待つ。少ししたら


『たえ あれ むり』

『何故?』

『たいせつなもの いやな もの かくす』

『嫌な物?』

『てつぬの』


どうやら大切な書類は鉄の布を使い、妖精の侵入を防いでいるようだ。


『この段階でもう真っ黒やん!』


「陛下。今回捕まえた貴族達からはエリアス様に関する証言は取れているんですか?」

「あぁ…証言は取れたがだが書類の偽装や虚偽だと言われたら、それを覆す物証がこちらには無い」


はぁ…また振り出しに戻ったよ。

また沈黙が続くとアラン団長が来室された。陛下が許可を出す。

入室したアラン団長は空気の重さに一瞬怯んでいた。そして陛下に書類を渡し陛下はすぐ目を通し


「多恵殿。落ち着いて聞いて欲しい。今アラン団長から受け取った報告書は毒ドレッシング事件のものだ。結果から話すとエリアスの義弟の領地から王城に仕入られていた。当初はバスグル人の作業員の勘違いから混入したと言っていたが、詳しく調査したらそのバスグル人はこの事件翌日に定期便ではなくチャイラの民間船でバスグルに帰国している」

「って事は…エリアス様が企てたの?」

「その可能性が高い。それにエリアスの家の者がバスグル人を港に送っているのを目撃されている」


その罪状から家宅捜索出来ないだろうか⁈


「パルス伯爵邸の捜索はこの事件から可能だが、やはりエリアスまでは無理がある」


本当に狡猾なる人だ。全てに於いて自分まで辿れない様にしている。

ここで疑問が…これだけ貴族派が身柄を拘束されている。残されたエリアス様の家臣に知れたら、証拠隠滅されるのでは?

陛下に聞いたらまだ情報は漏れてないそうだ。エリアス様の侯爵邸は騎士が監視し報告を受けている。


でも明日帰って来たら隠すのは難しいだろう。


「ゔ…ん」


無い頭を使い痛くなってきた。策が見つからないまま時間だけ過ぎていく。


“ごぉ〜ん”


正午を知らせる鐘が鳴る。ここで一旦各自部屋に戻りお昼休憩をとり、4刻半から再度陛下の執務室に集まる事になった。お昼を食べてエネルギーチャージしたら閃くといいなぁ…

お読みいただき、ありがとうございます。

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