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悪者のお茶会

悪者達を集めたお茶会当日。前日衝撃的な事実を知り超不調な多恵。大捕物の山場に気合を入れたいが…

「温かい…」


目が覚めるとお腹には水色の毛玉。そして背中には全身を包み込む大きな体。癒しのサンドイッチ状態で目覚めた。


「おはよう。2人共ありがとう」


フィラは既に起きていて優しい琥珀色の瞳で見つめキスの嵐をくれる。


『フィラ かえる たえ いそがしい』

『てんは本当に俺を目の敵にするな!』

『たえ つがい グラント いちばん』

『はぁ?』


2人はベッドから起き上がり朝一ケンカを始めてしまった。でもそんな状況もほっこりさせてくれる。すると扉の外からモリーナさんが


「多恵様。ご起床ですか?」

「あっはぁーい」


“ばん!”

「へ?」


凄い勢いで扉が開きグランドが入ってきて私に抱きついた。


「多恵!なぜ妖精王フィラと床を共にしているんだ!」

「あ…これには訳があって」


抱きしめるグラントを見上げたら泣きそうな顔をしている。もしかして…エッチしたと思ってる?


「!いたして無いからね!」

「本当?まだ乙女ですか?」

「夫婦になるまでする訳ないでしょう!」


必死なグラントにフィラが


「残念ながら傷心の多恵を慰めていただけだ」

「傷心?多恵!何が!んっ」


グラントのヤキモチ発動前に先手必勝。自分からグラントにキスした。


「多恵!」


私からのキスが呼水になりグラントの激しいキスが始まった。


「グラント長い!俺に変われ!」


フィラがグラントを引き離してくれやっと落ち着いた。部屋の隅で困っているモリーナさんに視線を送ると申し訳なさそうに、身支度を急ぐ様に促してくれた。


男子には部屋を出てもらい身支度を始める。

用意が終わり部屋に行くとテーブルにフィラとグラント、それに何故かシリウスさんも着席していて驚く。私に気付いたシリウスさんが足早に来て手を取り手の甲に口付けた。


「おはようございます。今日も綺麗だ」

「ありがとうございます。シリウスさんは?」

「昨晩はお疲れの様で訪問しましたら既にお休みでしたので、今日のお茶会の説明に参りました」

「ありがとうございます」


シリウスさんは私が早く休んだ理由を疲れだと思っている。


『違うけど都合がいいわ。突っ込まれても言えないからね』


こうして食事をしながら今日のお茶会の手順を聞く。お茶会は予定通りでガサ入れ人員が若干代わる位だ。


「お茶会は4刻半からで、それまでお疲れの様なのでお休み下さい」

「はい。お気遣いありがとうございます。シリウスさんはガサ入れに参加ですよね」

「はい。貴族派の大元のキーモス公爵家が担当です」

「大変だと思いますが頑張って下さい。あっ怪我しないで下さいね!」


激励のために手を出すと引っ張られ抱きしめられた。日に日にサイズアップするシリウスさんのお胸に、ゴリマッチョにならないでと祈る。

嫉妬深い婚約者達に引き離されたシリウスさんは渋々退室し、フィラ→グラントの順で帰っていった。

少し時間があり寝室に籠り久しぶりに木版タブレットを出し、腹部や内臓に関する病気を調べる。

情報が少な過ぎて特定出来ないし、分かっても知識が無いから診断できない。


「治すのは無理でも何か出来る事があれば…」


大切なお茶会の前なのに心が騒つく。膝を叩かれ顔を上げると、てん君が前足を乗せている。そして


『おちゃかい たいせつ おうひ あと』

『うん。分かってるよ。ちゃんと切り替えるから』


気持ちを入れ替える為に湯浴みをし、ゴードンさんがリメイクしてくれたドレスに身を包み戦闘準備OK!

ソファーでお迎えを待っていたら今日の護衛のバートンさんとジョエルさんが来てくれた。まだグラントは来ていないので部屋で待つことに。

少し心配していたが2人共いつもの精悍な騎士の顔をしていて安心する。そして2人はご実家の様子を話してくれ、改めてご実家はキーモス侯爵に協力させられていたのが分かる。早くキーモス侯爵の呪縛から解放してあげたい。


「それにしてもデザイナーのゴードン殿はいい仕事をするな…多恵様は何をお召になってもお似合いになるが、今日の装いは言葉が出ないほど綺麗だ」

「はい。御世辞ありがとうございます!」

「何でそんなに自己評価が低いんですか?俺らは本当の事しか言わないっすよ」


暇を持て余した2人が褒め合戦を始めどうしていいか分からない。


『早くグラント来て!この褒め殺しは長く持ち堪えられません!』


防戦一方で心の中でグラントに助けを求める。流石婚約者!私の心声を聞いた様でグラントが迎えに来てくれた。

いつもなら破顔して抱き付いて来るのに険しい顔をしている。そして


「遅くなったね。実はここに来る前にキーモス侯爵が会いに来たんだ」

「えっ!マジで!」


どうやらキーモス侯爵は婚約者のグラントに私の面会を一番にして欲しいと願って来たそうだ。そして


「そして賄賂を渡して来たよ」

「受けたの?」

「いや、時間がないと言いお茶会の後にと断った」


どうやらアルディアとの繋がりもそうだが、私に取り入りたい様だ。するとバートンさんが


「多恵様はモーブルの問題が解決したら次はレックロッドに向われると聞いています。キーモス侯爵はかなり前からレックロッドと繋がりを持つために画策している。しかしレックロッドは保守的で中々新規の取引をしない。そこで多恵様に取り入ればレックロッドとのパイプ役になると考えたのでしょう」

「わぁ…最悪」


2人は背筋を伸ばし必ず守ると力強く言ってくれる。こうして即席だが“チーム乙女”を再結成し団結してお茶会に向かった。


会場に入るとギラついたおじ様達の視線が集まり嫌な汗が噴き出してくる。エスコートしてくれるグラントは微笑みを向けてくれ“大丈夫だと”言ってくれている様だ。

会場の責任者として宰相補佐のチェイス様が進行を務められお茶会がスタートした。

初めにチェイス様から挨拶と今回のお茶会の趣旨を説明された。


「乙女様は貴族との交流を望んでおられる。モーブル貴族であるなら礼節を守り乙女様に失礼の無いように」


こうしてお茶会始まった。会場は立食で壁際にソファーと椅子、テーブルが用意され休憩したり食事をとれるようになっている。主賓となる私用に上座にテーブルとソファーが用意されている。会場入口は騎士が居て勝手に出入り出来ない様に見張られている。

開始と同時にドヤ顔でキーモス侯爵が挨拶に来た。ねちっこい視線に鳥肌が立ち生理的に無理だと思った。


「乙女様。この様な場を設けていただき感謝いたします。我が侯爵家キーモスはモーブルの素晴らしい農作物を国外への輸出をし国益のために尽力しております。是非我が領地にお越しいただきたい」

「お誘いありがとうございます。侯爵様の領地ではどの様な作物が採れるのでしょうか?」

「多品種とれまして…宜しければ愚息からご説明させていただきたく存じます」


こうしてお約束の令息を紹介され当たり前の様にグラントと反対側に座り手を取られた。横目でグラントを見たら…


『怒っているよ…ん!』


微笑みを称えてキーモス侯爵と話している。流石宰相補佐だ。ポーカーフェイスでお仕事をこなしている。プライベートなら私に他の男性に近づくだけで“やきもち大魔王”をすぐ召喚するもんなぁ…

こうして侯爵様にお願いされ、グラントはキーモス侯爵と外の貴族派の方々の話の輪の中に行ってしまった。

隣に座ったキーモス侯爵の令息のリッキー様は父上に似てギラギラしていて胸焼けしそうな男前イケメンだ。初めは真面目に農地の説明と作っている品種の話をしていたが、途中から私の好みを聞かれここから口説きモードになった。


『やっぱりか…めっちゃ口説かれてる』


距離もどんどん近くなって来て、途中でジョエルさんが注意してくれ、いったん離れてくれたが数分もするとまた接近してくる。そろそろ限界が来たら…


「乙女様。良ければ我が領地の説明をさせていただきたい。よろしいかリッキー殿」

「・・・」


顔を上げるとくりくり二重のタレ目の甘おじとアイドル系の美少年が目の前に立っている。誰か分からず首を傾げていたらバートンさんが後ろから


「ランティス公爵領に引けを取らな農地有するフルバス伯爵と令息のテット殿です」


と教えてくれる。そろそろリッキー様の圧が限界だった私は


「リッキー様。色々教えていただきありがとうございました。無知ですので他の領地の農作物の知識も学ばないといけないので…」

「多恵様は真面目な女性ひとだ。また後でお話しする機会を頂きたい」

「えっと…時間がありましたら」

『無いし嫌だからね!』


やっと解放されたがまた別の令息を充てがわれ遠い目をしてしまう。それに次の令息はどう見ても中学生くらい。ゆきと変わらない。


『なんか犯罪ちっくで複雑な気分だ』


苦笑いをしていたら強烈な視線を感じその先を追ってみると…

『げっ!グラント!』

やきもち大魔王は既に召喚されており凄い視線を向けてくる。


「乙女様?」

「ごめんなさい。えっと…伯爵領では何が採れるのですか?」


まだ女性を口説いた事も無さそうなウブな少年は中身おばちゃんを一生懸命口説いている。ものすごく居た堪れない…

私が疲れがMAXになった時点でチェイス様が休憩をさせてくれた。

グラントはまだ多くの貴族を相手にしていて、体力の無い私だけが一時退室する。バートンさんのエスコートで控室に移動したら、フィナさんとアイリスさんが待ち構えていて、男性陣には退室してもらいフッドマッサージと首と肩回りをほぐしてもらう。

リフレッシュし美味しいお茶を飲んでいたら、グラントが戻ってきた。そして開口一番


「皆、少し外してくれ…」


フィナさん以外顔を顰めた後に渋々退室した。


「グラン…うっ!」


抱きしめられ荒々しい口付けをされ、酸欠で目の前がチカチカしてきた。

ポーカーフェイスで貴族の相手をしていたが、次から次に年頃の令息に口説かれている私に限界がきた様だ。


『やっぱり”やきもち大魔王”は健在だった…』


少ししてやっと解放されて暫くグラントに抱っこされぐったりしていると


「多恵。沢山の御仁と話をしたが、多くの貴族はレックロッドとの繋がりを求めている。モーブルの中でレックロッドと取引している家は少ない。この後の令息達との接触は気をつけて」

「うん。分かった。皆さんギラギラして怖いんだよ!」


グラントの溺愛に思わず弱音を吐いてしまった。労わる様に沢山口付けをくれるグラントに癒されていたら、チェイス様がお見えになり入室許可を求めて来た。

許可を出しお迎えするとガサ入れの経過報告をしてくれる。


「予定の2/3は屋敷を制圧し、裏帳簿を押さえ不正を確認。残り1/3の報告待ちです。御二方共お疲れでしょうが、もう暫く貴族派達の関心を引いて下さい」

「分かりました。頑張りましゅ!…あ…噛んだ…」


皆んな笑いを堪えているのが分かる。


『いっそ笑ってくれ!』


恥ずかしくてやさぐれていたら、グラントが撫で回す。私は犬ではない!


和んだ所で第2ラウンド開始です。頑張るけど…好きでもない人に口説かれるのは結構辛いなぁ…

お読みいただき、ありがとうございます。

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