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ジェンダーレス

一触即発のグラントとアイリスさん。揉め事反対!

部屋の温度がどんどん下がり寒気がして来た。だがこの遅い時間に誰かが訪問する訳も無く、お助けマンの登場は無さそうだ。どっちを立てても後が面倒くさい事になる…困っていると


『てん いって くる』

『てん君どこに?』

『たいじょうぶ たえ まつ』

『ちょっ!』


私の中からてん君の気配が消えた。一体どこに行ったの?こうして居る間も2人は


「閣下、お戻りを!」

「其方の指図は受けん!私は多恵の婚約者フィアンセだ!」

『もぅ!何でも誰でもいいから何とか…』


すると風が吹き人の気配が…あ…誰か分かる…


「いい加減にしろ。多恵が困っているだろう」

「「妖精王フィラ!」」


グラントとアイリスさんはフィラに深々と礼をする。フィラはアイリスさんから私の手を取り、抱きかかえてソファーに座らせてくれた。そしてフィラの後ろからてん君が現れ私の膝の上に座る。そして3人が向き合い


「アイリス。それ以上の感情を持つなと忠告してあった筈だ。お前の想いは多恵には負担だ。それにグラントお前も多恵の体の負担を考えろ」


胸を張り2人に注意するフィラ。てん君が呆れた顔をして


『フィラ グラントのこと いえない』

『そうだね…フィラも愛情表現激しいからね』


フィラは2人を注意したが明らかにグラントは納得していなくて


妖精王フィラ。アイリス嬢への忠告とは何でしょうか?私は多恵にが関わる事は全て知っておきたいのです」


『それはこの場で言わないで!』心の中で叫び驚き思わず立ち上がってしまい、てん君が膝から飛び降りた。



「アイリスさんはアルディアで専属侍女をしてくれていたケイティさんの従姉妹で…」


必死にグラントに説明しようとしたのに、フィラは空気を読まず包み隠さず話し出す。


「そいつは多恵に家臣以上の情を持ち、俺ら婚約者に嫉妬しているんだ」

「「・・・」」


“し…ん”


深夜外の音もしなくなった室内は無音。私の焦る息遣いだけが響く。


『とうとうフィラが言っちゃったよ…どうすんのこの空気!』

すると凛々しい顔をしたアイリスさんが胸を張り


「失礼承知で言わせていただきます。人を愛する事に垣根はありませんわ。聡明で愛らしい多恵様に心を向ける事が罪になるのですか⁉︎」

「「なっ!!」」


グラントが絶句している。

アイリスさんの言い分も分かるし、確かに愛する気持ちは誰かに制限されるものではない。アイリスさんの主張は何一つ間違っていない。


『でもどうすんのこの状況…』


「其方の気持は分かった。しかし多恵は私をはじめ3名の婚約者がいる。其方が入る隙は無い…其方だけではなく誰も入れたくない」


グラントは吠えフィラは難しい顔をしている。そんな2人を総無視してアイリスさんは私の前に来て、跪いて私の手を取り手の甲に口付けた。


「「「!!」」」

「恐らく私の想いは多恵様に受取っていただけないでしょう。しかし想う事を許していただきたい」


真剣なアイリスさんに笑って誤魔化せる雰囲気ではない。


「気持ちは嬉しいけど…私の恋愛対象は異性で…」

「はい。婚姻したり体の繋がりを求めている訳ではありません。私は“カワイイ”が全て。貴女ほど“かわいい”が詰まっている方は居ない。一生側で愛でていたい。」

「はぁ・・・」

「其方は同性が(恋愛)対象なのか?」


困惑した顔をしてグラント聞くと、あっけらかんとした顔をしてアイリスさんが


「いえ。“カワイイ”が詰まっているのなら殿方でも愛します。ただ圧倒的に女性の方が“カワイイ”ので」


グラントは理解できないし、どう反応していいか分からないようだ。そんな中フィラだけは理解しているみたい⁈確認する為にフィラの横に行き手招きしてフィラの耳元で小声で


「フィラはアイリスさんの思考(趣向)理解できるの?」


微笑み軽く口付けたフィラは


「アイリスは人間より妖精に感覚が近いのだろう。妖精に性別は無く好む者(物)に愛着する」

「ふ〜ん」


フィラ説明が腑に落ちた所でフィラは再度私をソファーに座らせてアイリスに向かって


「多恵は駄目だ俺の番になる女。忍ぶ恋でも許さんぞアイリス」

「例え妖精王でも私の想いを止めれませんわ!」


今度はフィラとアイリスさんがバトラ出した。すると


“ゴォ…ン”


遠くで鈍い鐘の音が響いた。8刻(12時)だ。眠くて目がショボショボして来た。それに気付いたグラントが


「今日はもう遅い。多恵が寝不足で倒れてしまう。この話はまたの機会に」

「またの機会?」


またこの話をする気なの?正直勘弁してほしい…でも、そこは何故か3人とも了承して解散となった。私一人まだ困惑しているのに、皆普通に戻って行った。

明日はバートンさんとジョエルさんに重大ヘビーな話をしないといけないのに、こんなに遅く寝て私大丈夫?

夜着に着替えて寝室に行くとカーテンを閉めてくれるアイリスさん。彼女はいつも通りなのに私だけまだ変な気分だ。すると


「多恵様に愛の告白しましたが、お気になされずいつも通りになさって下さい」

「はぃ…」


何か考え出すと眠れなくなりそうだから、極上の安眠をくれるてん君に添い寝してもらい眠りについた。

しかしあれだけ悩んだのにアイリスさんの問題は後日にある人の登場で案外あっさり解決する事になる。


そして翌朝…


“痛い!”鈍い痛みに目が覚めると目の前にてん君の肉球が…


『たえ あさ おきる』

『は…い…』


正直まだ眠い。体を起こすとアイリスさんが入室許可を求めて来る。OKすると元気に入室して来て一番にカーテンと窓を開けてくれる。外から朝の澄んだ風が入って来て気持ちいい。昨晩遅かったのに元気なアイリスさんは湯浴みを促し、目が覚める様にミント系のハーブを入れてくれていた。

スッキリして上がり着替えて部屋の方へ行くと既にグラントが来ている。昨日ほど2人は険悪でも無いが微妙な2人。朝食を終えるとグラントは滞在延期でルーク陛下から追加の仕事を指示されたらしく忙しそうに出かけて行った。


私はソファーで寝転がりまどろんでいる。するとチェイス様が部屋を訪れた。

『あ…例の話ね…』まだ起きて半刻過ぎたとこなのに既に気分はブルーだ。

チェイス様は今日の予定を知らせてくれ、3刻半から続けて2人に話をするそうだ。バートンさんの時はアラン様が、ジョエルさんのときはレックス様が同席してくれる。


「騎士精神を持つ彼らです。ショックな事があっても取り乱す事は無いと信じています。しかしこれ以上貴女に何かあれば、国同士の争いに発展してしまう。陛下はそれを危惧しておられます」

「大丈夫ですよ。リリスの箱庭の方々はいい人ばかりですから…」

「はい。私もそう思っております」


必要事項を伝え忙しいチェイス様は退室して行った。退室する時にお2人のご実家の不正内容を纏めた資料を置いて行かれた。

2人を思うと辛いが真実を知って正確に話をしないと…


アイリスさんにお茶を入れ直してもらい、資料に目を通す。集中して読んでいたら眉間に皺が寄っていた様で、アイリスさんに注意される。


そして面談の時間が近付きケイスさんが迎えに来てくれた。


「多恵様は今日も愛らしい」

「ありがとうございます?」

「ですが…リボンが解けかけています。お嫌でなければ結び直してよろしいでしょうか?」

「えっ?ケイスさんが?」


侍女さんが席を外し誰も気付かなかったのに、何故かケイスさんが気付いた。それも結び直すって出来るの?

失礼だけど剣を握るその太く大きな指で結べるの?大輔なんてグローブの様な手で、雪が小さい頃は産衣の紐すら結べなかったよ。

優しく微笑むケイスさんに断れずにいたら、ケイスさんは私の手を取り椅子に座らせてくれ器用に結んでいく。


「まぁ!なんて綺麗に結うのでしょ!」


鏡にアイリスさんが映り頬を染めキラキラした目で見ている。そして足早に私に近付きケイスさんの手元をガン見している。興奮気味のアイリスさんはケイスさんを質問攻めにし、それに汗をかきながら答えているケイスさん。


『なんかケイスさんかわいい…』


アイリスさんがもう1枚鏡を持ってきてくれ合わせ鏡をしてケイスさんが結んだリボンを見せてくれた。リボンが薔薇の花のみたいになっている。


「凄い!何故こんな事できるんですか?」

「ケイス殿。是非私にご指南を!」

「あっえっと叔母が髪結が得意で歳の離れた妹の髪を結ってるのを見て覚えました。あと…アイリス嬢。私の様な無骨な騎士に教えを乞うのはお嫌では?」


アイリスさんの圧に押されケイスさんは汗をかきかき一生懸命答えている。


『あれ?何か生まれた?』


いい雰囲気の2人にブルーな気持ちがクリアーになっていく。


そうしているうちに面会の時間が迫り、今日の当番の騎士のライトさんが移動を促す。

アイリスさんに見送られ面談をする部屋に急ぐ。移動しながらケイスさんと話すけど、任務中だからか逞しい騎士さんだ。さっき髪結の話をしていた時と印象が違うなぁ…どっちが本当のケイスさんだろう。


関係ない事を考えていたら応接室に着いてしまった。


『やばい!何も考えてない…』 

焦っている間に扉が開き中に入るとバートンさんとアラン様が立ち上がり騎士の礼で迎えてくれた。


何か察しているのかバートンさんの顔色が悪い。そしてアラン団長の眉間の皺はMAXだ。

事前にチェイス様からバートンさんの実家の報告書を見せていいと許可いただいているので、詳細は読んでもらう事にした。私デリケートな内容だけにの説明が下手で良くも悪くも勘違いさせると大変だからね。

今にも泣きそうな顔をしてバートンさんは


「薄々気付いていました。ご存知の通りうちは貴族派で、領地は木材の加工を生業にしており木材はキーモス侯爵領から入り、キーモス侯爵に背かれると領地の産業が成り立ちません。それ故に代々キーモス侯爵家の言いなりでした。あの強欲な侯爵を相手をし何か良くない事に加担していると思っていましたが…まさかここまで…つっ!」


バートンさんは俯いてしまった。部屋は重い空気に包まれ息苦しい。貴族派の親玉ボスはキーモス侯爵。この後話をするジョエルさんの実家も貴族派でキーモス侯爵家と遠縁。モーブルに来た時に無理やり挨拶させろと迫って来たあのギラギラしたジジィだ。

ジョエルさんの実家もバートンさんの実家も罪はどちらとも軽いもの。しかし抑止力の為に一斉摘発する事になった。


『また黒多恵ラスボスの出番か?』


ここからモーブルの問題解決の山場!早く解決して皆んなが笑って過ごせるようになればいいと願わずにいれなかった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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