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報告会

帰城して他の作戦の結果を聞く事に

城に戻ると夕刻になっていた。馬車を降りるとリチャードさんが待っていて何処かに連れていかれる。この順路は…

『はい。陛下の執務室』

入室許可を得て入ると陛下とチェイス様、ティモン様、ハワード様に婚約者のグラントと錚々たるメンバーが集まり話をしていた。

私に一番に気付いた陛下が足早に来てハグして頬に口付けた。


「なっ!」遅れて気付いたグラントがソファーの端に珍しく足を打つけながら走って来て、陛下から引き離し抱きしめた。


『う…ん。今日もやきもち大魔王は通常運行だ』


その様子に友人のティモン様が楽しいそうに笑い、チェイス様は困った顔をしている。そして真面目君のハワード様が着席を促し仕切り直し話し合いが始まる。

皆さんはもう報告を終えているらしく、再度私の為に話をしてくれる。口元を緩めた陛下が第一声


「多恵殿。結果から話そう。万事全て上手く行ったよ。今、グラント殿に接近して来た貴族の名簿を元にアラン団長とシリウスがチーキス子爵を事情聴取をしている所だ」

「えっ!そんなとこまで進んでいるんですか?」


驚いた!急展開に驚く。どうやらハワード様がいい仕事をしたようだ。

ハワード様は子爵様とお兄さんが葉巻シガーの会に出発したのを確認し、騎士団の騎士数名と子爵邸に突入し、使用人と実母を制圧し子爵の私室の金庫を執事長に開錠をさせ帳簿や不正貴族達との密書を差し押さえた。そしてすぐ帳簿を精査すると…


「真っ黒でした。他にも色々やらかしていました。実父ながら情けなく腹ただしい!」


そして葉巻シガー会から帰った子爵様とお兄さんを拘束し王城に連行したのだ。

任務をやり遂げたハワード様だがやはり実父と実兄を捕まえ複雑な表情をされている。

そして次にグラントが報告してくれる。葉巻シガーの会で不正貴族は我先にとグラントに挨拶して来た。同行したグラントの補佐官が接触してきた貴族を控えていく。そしてグラントは接触してきた貴族全員に思わせぶりな態度をとり言質を取ったらしい。


「いや簡単な話だよ。“モーブルに入国しずらいならアルディアに入国し、国境の検問の審査を緩くすればいい”と助言しただけだ。するとは言っていないのに、彼らは私が協力してくれると思ったのだろう。先ほどから私の客間に接触してきた貴族から次々に手紙と贈り物が届いているよ」 


淡々と話すグラントを唖然と見ていたらグラントがウィンクして


「貴女の婚約者ならこれ位は出来なければ笑われてしまいますからね」

「凄いね!私ならすぐ顔に出てバレちゃうよ」

「惚れましたか?」

「うん!グラントかっこいい!」


何も考えずグラント褒めたら立ち上がり私に突進してくる。ここで溺愛はやめて欲しい!するとティモン様が半笑いでグラントに


「グラント…陛下の御前だぞ。それにこんな沢山の男の前で多恵様が恥ずかしいだろ。後で二人の時にしなさい」

『ティモン様GJ!』


思わずティモン様に親指を立ててしまい、それを見たティモン様は楽しそうに笑う。その様子にグラントは舌打ちをし陛下は言いようのない視線を私に向けて来る。何とも言えない雰囲気を払拭してくれたのはチェイス様で、次の作戦を説明してくれる。


グラントの名簿とチーキス子爵の証言が一致したら、その貴族の領主を王城に呼出しお茶会を催し私がお相手。その間に文官と騎士がペアーになりその貴族邸の家宅捜査する。そして探し出した裏帳簿を金庫番がその場で確認し証拠を押収。そして証拠が出た貴族はお茶会終了後に拘束し事情聴取となる。


『凄い!マルサだ!』


まるで映画を見ている様だ。でも…


「あの…」


手を上げてチェイス様に質問する。すると何故か部屋にいる男性たちが顔を赤くして、そっぽを向いたり口元を抑えている。陛下とグラントに居たっては焼ききれそうな熱い視線を送って来る。

この状況が分からずキョトンな私。この後にアイリスさんにこの時の事を話したら怒られた。そんな箱庭のマイナールールなんて知らないし!

顔を赤くしたチェイス様が声を上ずらせながら


「たっ多恵様何か?」

「チェイス様質問いいですか?」

「は…はいどうぞ」

「私が囮なのはいいんですが、何の会で誘き寄せるんですか?」

「その辺はもう考えてあります。多恵様がモーブルを視察するにあたり、訪問する順番を決めるために領地の説明を受けるという名目にしてお茶会を開く事にしました」

「はぁ…お仕事だから頑張りますが、お茶会は苦手なんですよね…」

「大丈夫です。精鋭の騎士を付けますから」


チェイス様に聞けば該当する貴族は7名程で、その他に4名程が脱税はしていないがバスグル人をチャイラの闇ブローカーから斡旋を受けている様だ。この4名は他に余罪がありそうなので一緒にしょっぴきます。


「少し困った事がありまして…」

「?」


困った顔をして話し出すチェイス様に嫌な予感がし思わず身構える。それは対象の貴族の令息が騎士団と聖騎士団にいること。その令息は仲間で信頼され有能な騎士だけに言いづらい様だ。


「分かりました。私が話しましょ!」

「え?」

「だって同僚だから話し辛いでしょ⁈」

「多恵様…」


そして誰か聞いたら…

まさかのバートンさんとジョエルさんの実家だった。意気揚々と私が話すとか言った事を今猛烈に後悔している。

ちなみに2人のご実家は脱税はしていないが、闇ブローカーから斡旋を受けた実績がチーキス子爵の証言から浮かび上がったそうだ。部屋が重苦しい空気に包まれた。2人とも騎士精神を持ち愛国心も有るいい人だ。

辛い…なぁ…でも真実を聞きいれる人達だと思う。後で知るよりいいよね…


「いつ話せば良いですか?」

「多恵様はお疲れなので明日時間を設け、同時に該当貴族にお茶会の通達が送られます。グラント殿ご協力頂きありがとうございました。御二方共今日はゆっくりお休み下さい。我々はもう少し話を詰めますので」

「えっと…はい」


すると陛下は席を立ちグラントのは元に歩み寄って手を差し出し


「グラント殿。この恩は必ず返すとルーク殿へ伝えてくれ」

「御意」


グラントは陛下と熱い握手を交わした。こうして私とグラントは先に部屋に戻ることになった。部屋までエスコートしてくれるグラントの手は温かくて安心し疲れが溶けていく気がする。私の部屋に着くとやっぱり人払いをして抱きしめてくるグラント。見上げると目尻を下げ振れるだけの優しいキスをくれる。


「寂しいですがもう自信がついたみたいだね」

「へ?」

「キースからモーブルに慣れないのもあるが、リリスの願いを完遂できるか不安がっていたと聞いていたので」

「キースが⁈」


キースはグラントと違い滞在も短く少ししか一緒に居れなかったのに、よく私を見てくれている。本当に心をもらった婚約者は私を理解してくれている。

嬉しくて少し涙目になった私にグラントが瞼に口付けし


「私は身分、能力に恵まれ他人と競った事がない。他人の評価も悪意も好意も興味がなかった。しかし多恵に関する事は陛下や妖精王であっても譲りたくない。故に嫉妬深くライバルを敵視して来た」

「うん…」

「だが、キースとはいう男は私に劣らず嫉妬深いが、己の感情より多恵の気持ちを優先できる奴で一目置いている」

「グラント?」


グラントの発言に驚き目が点になってしまう。確かにキースはやきもちも妬くが対応が柔軟。グラントの方が激しい。タイプの違う2人がいつの間にか仲良くなっている。驚き思わず


「いつから仲良くなったの?」

「仲は良くないですよ。ただ同じ女性を愛する同士として認めました」


どうやら私がモーブルに出発した日にヒューイ殿下が仲を持ち酒盛りをして、お互い腹の内を晒し夜通し話をしてそうだ。そして2人して二日酔いをし翌日寝込んだって。男の友情芽生えているじゃん!


「仲良くなってくれたは嬉しい。でもねお酒飲み過ぎないでね」

「今の心配はキースに対してですか?それとも…」


満面の笑みで分かって聞いてくるグラントに少し拗ねて軽くデコピンをした。突然の私の攻撃に目が点になり口を開けてフリーズしてしまった。そして


「大好きな人を心配するのは当たり前でしょ!分かってて聞いてくるグラントは意地悪だ!」

「!!」


この後慌てて謝り色んな所に口付けを落とすグラント。貴方は偶に加減を間違うよね…

これも愛情が()()()()()からですよね⁈義母ヴァネッサ様!

想いっきり抱き付き上目遣いで


「許す!」

「多恵…」


こうしてグラントの抱擁を堪能しバカップル炸裂していたら遠巻きに不満顔のアイリスさんが食事の準備をさせて欲しいと声をかけて来た。途端にグラントの機嫌が悪くなる。

他の侍女さんには丁寧な応対で優しい言葉をかけるのにアイリスさんには厳しいグラント。やっぱりアイリスさんの私に向ける好意を感じているのかなぁ…こちらもまだ未解決でした。


こうして夕食を準備してもらい二人でゆっくりいただき、食後にソファーでまったりする。グラントの膝の上にはてん君。すっかりグラントの膝の上はてん君の定位置になった。グラントもてん君を愛おしいそうに撫でている。ずっとこんなふうに穏やかに過ごしたいなぁ…


7刻半に近いた頃にチェイス様が来た。あの後も会議が行われお茶会が明後日に決まったと知らせに来てくれた。早馬でルーク陛下からグラントの滞在延長も認められて、この大捕物が終わるまで伸びた。

不正貴族を安心させる為にお茶会にはグラントも参加する。滞在が伸び私は嬉しいけど…キースが拗ねそうだ。またてん君に手紙を届けてもらおう。でも疑問が


「そんな急に決まって皆さん来れるんですか?一番遠い領地は5日もかかると聞きましたが…」

「大丈夫です。グラント殿が在城している今、グラント殿との接触を狙っており、確認しましたら皆王都の屋敷に滞在しています。それにバスグルからの密入国船は海岸がなだらかな王都近くの漁港に入り、そこから各領地に向かうため、受け入れいる貴族も王都に近い者が多い。遠いと移動に時間と費用がかかりますからね。ですから今回の不正を働いた貴族は王都に近いものばかりです」


ここで気になる事が…順調に運んでいるけどあの人は大丈夫なの?


「チェイス様⁈これだけ大捕物をしていて、エリアス様は気付いてしまうのでは?」


すると悪い顔をしたチェイス様は


「エリアス様は陛下の命でベイグリー公国へ特使として外交中です。エリアス様の配下の者も全て同行しているので、今が絶好のチャンスなのです」

「流石です!抜かりありませんね!」

「お褒めいただき光栄です」

「分かりました詳しい事が決まったら教えて下さい。チェイス様もお疲れでしょう⁈お早くお休みになって下さいね。睡眠不足は判断を鈍らせるので」

「お気遣いいただきありがとうござます。。…ふふ…」

「?」

「皆が貴女を慕うのが良く分かります。貴女は優しいく温かい」


持ち上げられて少し気分が良くなった所に右側から冷気を感じ見上げると…


『やきもち大魔王!降臨!』


慌てて話終わらせチェイス様には退室いただいた。このタイミングでまだ不機嫌なアイリスさんが来て高圧的な態度でグラントに退室を願う。


「閣下。多恵様は大変お疲れでございます。ご退室を」

「其方の私に対する態度は目に余る。何か思う所があるのか?」


『あっ!グラントが静かにキレた!』


慌ててフォローしようとしたらアイリスさんが私の手を引いて背に庇いグラントと対峙して


「閣下。侍女や他の者から最近多恵様がお痩せになったと聞いておりませんか?失礼承知で申し上げます。お役目でお忙しいのもありますが、明らかに閣下の愛情表現が激しいのが原因です。閣下との逢瀬の後は必ず疲れ切りぐったりとしてお部屋に戻られます。多恵様を愛しておいでならもっと愛しい方のお体をお考え下さい!」

「なっ!」


グラントの表情が険しくなり確実に怒っている。こんな怖い顔のグラント初めて見た。

それなのにアイリスさんは一向に怯むことなくグラントを睨んでいる。一触即発で緊張が走る。

どなたかお医者様は…じゃなかった!お助けマンは居ませんか⁈

お読みいただき、ありがとうございます。

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